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感情交差点  作者: くまグミ
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序章・相馬正はマイナス100点

「前の授業の復習なー。人の表現とは言動とー。

他にも、音楽、踊り、絵、演技などなど、いろいろあるって学んだよな~?」


心臓がビクッと音を立てて縮む。

この流れだと、次は生徒に前回の授業で学習したことを質問されるはず。

ってことは・・・。


「読んで字のごとく、表に現わすと書いて表現だから、表に現わす基になる中身作りが大切だったよな?では、人の中身は何でできているでしょうか?」


来た!やっぱりだ。

一段と心臓が縮んでいく音がする。


「今日は10日だからー・・・、相馬相馬(そうま)。なんでしょうか?」


1年2組10番、相馬正相馬正(そうまただし)。僕だ。


「はい・・・えっと、知識と想像と、経験です」

「早く答えなさい。それか分からないなら分からないと言いなさい」


口の前にティッシュがあったとしても動くことはない。

それくらいの微かな声だったかもしれない、でもちゃんと答えたのに。


「そ、想像と」

2度目の回答を口に出した瞬間には、僕の声は僕を揶揄する言葉や嘲笑に、いとも簡単にかき消されていた。


「相馬、マイナス1点だ。廊下に立ってなさい」


嘲笑に背中を押されて今日も廊下へと向かう。

もう慣れっことはいえ、教室と廊下を遮るこの戸を自分で閉めることには抵抗がある。

まるで望んでみんなと違うことをしているみたいじゃないか。


「相馬の奴、そんなに廊下行きたいのかよ笑」

「テストの点以外マジで無能だよな笑」

「黙れ~。それじゃ続けるぞー。えー、表現では、中身作りが重要になってくるわけだが・・・」


一歩教室の外に出れば、冥界にでも来たのかと思うほど静かだ。

どうして僕はこうなんだろうー。



日本に人生100年時代が本当に来て50年。

今じゃ3世帯住宅も珍しくない。


高齢者が本当に身近になったことで、一つの問題が浮上した。

人口の40%を閉める高齢者。彼らは、とにかく新しい物に抵抗する。


教科書によると、弱者ほど物事をネガティブに捉えるのだそうだ。

生存本能が強く働いている証拠らしく、小さな子どもと高齢者に顕著だ。


だけどこの50年間、世界は安全で安定している。

データ化や機械の進歩、新たな素材や構造の発見と実用化。


人口減少に伴って人の住める場所は中心部のみに制限され、地理的な孤立はなくなり、各都市の人口密度は2000年頃の東京並みだ。

移動距離が短くなり出会いが増えたことは、すなわち、人とコミュニケーションを取れない奴の居場所がなくなるということでもあった。


日本国における長期的なコミュ力向上ために学校で新たに導入されたのが、表現力の科目。

僕の表現力の評価は、今日でマイナスは100点になった。

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