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Silver Rain Order.  作者: Sato kisa
第1章 新天地
2/3

000 ヒロイン?いいえ、主人公。(プロローグ2)

プロローグはpixiv小説にて公開しているモノになります。

今回は、プロローグ2になります。

季節が冬だからか、まだ暗いといった午前5時。

全体的に質素な一軒家の一室にアラームが鳴り、その傍らのベットから白く繊細な腕が伸びて、アラームを止める。

もぞもぞ。もぞもぞ。

布団の中から少しでも身体を出してしまえば、このぬくもりは無くなる。

そんな気持ちと起きなければという意志の格闘が始まる。

季節が冬だからか、寝起きが悪いものだ。



今どき珍しい、ベル付き時計のアラームで気持ちに打ち勝ちながら、起き上がる。うすらと桃色の唇、くりくりとかわいげのある目。肌の白さが余計に引き立て、まるで人形のよう。


「うぅ…さむい……」


そう呟きながらも立ち上がり、部屋から出る。

この部屋は二階にあり、階段を降りてすぐ横に風呂場がある。

1度踏み外したものの、なんとか風呂場の洗面台までたどり着くと、

パシャパシャと粗めに洗顔を済ませる。


「あれ…また増えてない、これ」


鏡に写る自分の、おでこのニキビの数を気にしていた。





「あれ、定?外行ってたの?」


「ちょっとランニングに…」


「うーん、そっか。ちなみに、ニキビには逆効果かもよー」


日課の朝ランニングから帰ってくると、皐月さんが起きていた。

春間 皐月。

僕の叔母にあたる人で、今年で26歳だ。

未だに結婚どころか、浮いた話も聞かない。

そろそろこっちが心配し始めている。


「皐月さん、そういうのは早く言ってよ…もう3週間目くらいだよ…」


「ごめん、ごめん。今日はどうするの?まだ8時なってないけど」


「明日のために、お菓子作りかな。マスターがおしえてくれるんだって」


明日はバレンタインデー。

なぜか僕もお菓子を用意する事になってしまったのだ。

男なのに。


「そう、じゃあ…おじさんにこの手紙渡しておいて」


「…なんの手紙、これ」


「女の秘密です!…たとえ、定でも見たら許さないからね?」


そこまで強く言われたら、気になるよ?

定って呼ぶのは、僕の両親と皐月さん、それと幼馴染の彼くらい。


「それじゃ、あたしはもう出るから!」


「え、日曜の8時前なのに、仕事?」


「そうなのよ、あの編集長め、許すまじ…」


独り言を言いながら、行ってきますと出掛けてしまった。

皐月さんは、月刊ルーの記者だ。ちなみに月刊ルーはオカルト系の情報誌で、編集長の切手 総治郎さんは『全国 いつ何処でも オカルトあり』の信条を掲げているらしい。

今日の日曜出勤もその影響だと思う。




あれからもう2時間近く経った。

時計は10時近くを指している。

この2時間した事と言えば、何の興味も無いテレビショッピングを見たり、読みかけの小説を読んだり。


「あっ、そろそろ出ないと」


まとめておいた荷物を持ち、鍵の確認を済ませたら、やっと出掛ける。

僕の家を右に出て、すぐ横の駐車場を過ぎると、もう着く。シックな外見に木製の一軒家、外見を損なわない看板があり、そこには『喫茶店 フラン』とある。

実はこの喫茶店、僕の幼馴染の伯父がやっているのだ。



カランカラン。

ドアを開けると、喫茶店と言えばというベルの音が鳴る。


「おー、定!おはよう!」


「え、え?信君、なんで居るの…?」


内装も外見と合わせた感じで、テーブル席が多めでカウンター席は4つしかない。

そのカウンター席に、彼は居た。

狭川 信治、僕の幼馴染で、お調子者。

ただでさえ、高身長にイケメン顔なのでより強調される。

僕はいつからか信君と呼んでいるけど、本人も気にしていないから大丈夫なんだと思う。


「居たら駄目なのか?ここ、俺の家なのに」


「え、いや…大丈夫だよ!うん!」


「だよな?よっし、じゃあ俺、味見役で!」


「……って、食べたいだけじゃないかーー!」


てっきり欲しいのかと思ったじゃないか。

こんなやりとりをしていると、キッチンの奥から男性がこちらに向かってきた。


「やぁ、定吉くん。おはよう」


「マスター、今日は御願いします!」


「あはは、そんなにかしこまらないでくれよ。」


この男性は、狭川 康平さん。

結婚はしているみたいで、子供も娘が居る。

まだ、43歳というのも愕きだけど。

これまた高身長だけど、ひげが似合う、ダンディーな人だ。

しかし、今日はなんだか機嫌が良いような…


「そうなんだよ。今日はな、信治もやらせてくれって言ってくれてさぁ!」


マスター、違いましたよ。

味見して食べたいだけでしたよ。


「それじゃ、始めるとするか!」


「「はーい!」」




そんなこんなで始まったお菓子作り。

終わったころにはすっかりお昼になっていた。


「さて、さすが貞吉くんだな。ちゃんと出来てる。それに比べて…信治」


「しょうがないだろ、あそこであれさえ無ければ…」


そう、信君サイドはモノを落としかけたりで分量があわなくなっていただけなのだ。

なんなら、途中で違うお菓子にシフトしてた。


「まぁ、途中でクッキーに変更したけど、なんでこうなった?ははっ」


「大体…この厨房が狭過ぎるんだろ!俺のミスじゃない!」


何を隠そう、それらの事故は狭い厨房で起きていた。

喫茶店フランは住居と一体化しているせいか、店内に懲りすぎたせいか、厨房が狭い。

2人で限界なくらい。マスターは子供なら3人いけると考えているみたいだけど、僕たち…もう高校生なんだよ?


「しかっし、信治。誰にこれあげるんだ?」


「えっ?定に決まってるだろ」


「…僕に?」


うーん、嬉しいはずなのに、嬉しくないな。

多分、理由は目の前の黒い物体。


「ははっ、それは鬼畜の仕業だろ、信治。ははっ」


「え、いや…嬉しいですよ?大丈夫、貰ったモノはちゃんと食べるからね、信君!」


「ははっ、それは止めときなよ、定吉くん」


「ほ、本当に大丈夫ですから。焦げてるだけだと思うし…」


うん、正直、皐月さんの始めのころの料理よりは確実にマシだ。

だって、あれはもはや“毒”だった。

食べた後、1週間は寝込んでた。


「良いよ…定。こんなん食べたら、体調崩しちゃうぜ…焦げてるだけだけど」


「それじゃ、それは処分しような」


「はいはい…ちっ、うまく出来たら定にあげようと思ってたのに」


「え、あれ…本当だったの?」


そっか。

ちょっと早いけど、あげちゃおうかな。

数もぎりぎり足りるか分からないから、買ったりして足そうと思ってたくらいだ。


「あの、信君…これ良かったら、貰ってくれない?」


「…良いのか、定。学校で配る用のだろ?」


「うん…ホワイトデーは多分暇じゃないしね。明日で貰ったら返さないと…」


ホワイトデーの3月14日は僕の誕生日なのだ。

いつもその日はマスターがケーキからパーティ会場まで揃えてくれて、誕生日会をしてくれる。


「そういうことだったのか。てっきり、女子サイドかと疑っていたんだが…」


「…マスター」「…おじさん」


「え、なんで…そんな目で見るんだ?」


なんで女子側に僕がつくのさ…確かに、小柄に女顔だけど。

これはお昼おごってもらわないと、ゆるせないなぁ。

すごんだ顔でマスターを睨む。


「わ、分かった。定吉くんも…信治も…そんな顔で見ないでくれ」


「「じゃ、何かおごって!」」


「分かったよ…あかねには内緒だからな?」


「「やっりぃ!」」


こうして、忙しいようで楽しいバレンタインデーの前日は過ぎた。

外食に出掛けようとした時に、あかねちゃんも帰ってきて、結局4人で焼き肉屋に行った。

おいしかった。

翌日のバレンタインデーは用意したお菓子を全て返すほど貰ったのは語らないでおこう。

いかがでしょうか?

2月13日(日)を書いたものになりました。

次回、001は3月14日(月)を書いたものになります。

pixiv小説の方とあまり変化はないかもしれません。

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