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95.パーリーピーポーレイド

『もう城が近いな。食事はどうするかね?』

 

私は食事の必要はないのだが、アリサは一応食べる。

食べるけど、どうせ後で私の魔力を吸う。

 

リティア君も食事は必要ないが、食べることは出来る。

だがどうせ後で私の魔力を吸う。

 

ゼムノア君は一応亜人族に身をやつしているから食べるはずだけど・・食べるよね?

200年も飲まず食わずで封印されていたので怪しいけれど。

 

こう考えると食わなくて良いヤツばかりだな!

 

そんな訳で、冒頭の提案は記者の腹を気遣っての事だ。

改めて感じるが、我々のメンバーは特殊過ぎるな。

 

「あー、そうねー、ねぇあそこの店に寄ってから帰らない?」

 

もう暗くなりかけている夕暮れの貴族街。

アリサがオシャレなレストランの窓に灯りが着いているのを見付けて指差した。

 

「そうですね、臨時収入も入りましたし、ゼムノアの賞金もありますし、また国王から誘われたら面倒ですし、わたしは構いません。」

 

取材権の競札金に加えて、実は妖精拉致実行犯の逮捕協力報償金も入ってるので路銀は潤沢だ。

ちゃっかりゼムノア君の賞金まで計算に組み込まれている。

リティア君、ジャイアニズム・・。

 

「わ、我もその方が良い。」

「やった!お城って堅っ苦しいのよね。」

 

堅苦しい会が苦手な連中ばかり揃ってるからなぁ、このメンバー

 

「王城に滞在してるのですか!?」

「うん、アタシらランクシャー領主の護衛として来てるし。」

 

王城は特別な来賓などでなければ、普通は泊まれない。

記者の驚きも納得だ。

 

「しかも国王陛下から晩餐会に誘われたのですか?凄いではないですか!」

「はぁ?こっちは出たくないのよ。多分今日も誘われてると思うけど、ブッチ切りたいワケ。」

「なんて畏れ多い・・」

 

ですよねー?

だが晩餐会はお断りだ!

身の上が特殊なメンバーばかりで、全員漏れなくポンコツ揃い。

ボロを出さない為にも、スルーが最善策だ。

 

「お酒飲めないし、じっとしてないといけないし、ぶっちゃけつまんないのよね。あれはないわー。面白くない!」

 

国王直々のお誘いをブッチ切る、地方領主の単なる護衛。

一般的感覚ではそっちの方がないわー

 

「アリサが酔って粗相しないなら飲んでも良いですが、不可能でしょ?」

 

リティア君にしれっと不可能扱いされてるアリサ。・・プッ。

 

「あの、ちょっと待って下さい。」

「何?」

「食事は木から摂るのでは?」

 

さっきそう言ってたねー

 

「はぁ?別に食事は木だけじゃないし。魔力吸えれば何でもいいのよ。」

「特定の吸収効率が良い木は重宝されますが、たまには嗜好に走ることもあります。あなた方亜人族も喉が渇いた時に水を飲むでしょう?でも水ばかりでは飽きるので、お酒も飲む。そういう事です。」

「なるほど!よく分かりました!」

 

分かり易い例えだ。


「けど、特に蜂蜜は最高よね!アンタも取材したいなら蜂蜜貢ぎなさい!賄賂よ!袖の下!」


何を公然と要求してるのか。

ちなみに、この国の法律では、賄賂は取り締まり対象外。

つまり合法ではある。

だが、一般的には揶揄される行為らしい。

そんな事をしなければ目的が達成できない無能者のする事とされており、基本的に忌避されている。

後ろめたい事なのは変わらないのだ。

 

「ではそこの店で蜂蜜酒でも奢りましょうか?」

「別にいいよ、さっき金貨貰ったからコッチが奢ってあげる!アンタも来なさい、飲むわよ!」

 

アリサが貰った訳ではないのだが、まあいいか。

お金は主にアリサしか使わないので、私達が稼いだお金は自動的にアリサのお小遣いとなる構図なのだ。

 

「では遠慮なく。」

 

結局記者も誘っての食事になった。

記者の若者が店に入り、食事が出来るか確認している。


『アリサ、ここは貴族街の店だから、いつもの騒がしくするのは駄目だぞ?』

『ええー?』

『ええー?じゃない!絶対駄目だからな!』

『はいはい、分かったってば、絶対ね絶対。』

『振りじゃないからな!』

 

嫌な予感しかしない・・。

 

「入れるみたいです。どうぞ。」

 

 

 

 

「ウェーイ!」

「ワハハハハ!」「いいぞー!」

「飲んじゃえ飲んじゃえー!」

 

やっぱりこうなった・・。

 

どうして注意勧告がまともに通らないのか。

絶対駄目だと言ったのが悪かったのか?

 

どうして注意勧告がフラグに変換されるのか。

フリじゃないって言ったよね?

分からない・・。

 

「シャチョーさま~わたし酔っちゃった。うふッ」

 

リティア君、君は酔わない。

 

「うう・・何だよこっち見るなぁ・・うぷっ」

 

ゼムノア君、君は酔うな。

それと君を見てるのは置物だよ。

 

『おのれ妖木!リティア様を酔わせて何をする気だ!』

『猛毒飲んでも平然としてるリティア君が酒に酔う訳がないだろう!鑑定スキルのクセにそんな事も判らないのか!』

 

私の周囲の人物は、どうしてこんなに自由なのだ!?

 

 

貴族街の上品なレストランは、今やそこらの安い酒場と大差ない騒ぎとなっていた。

客も店員もノリノリパーリーピーポーと化していた。

 

いつの間にか貸し切りになっており、いつの間にか飲み放題になっており、いつの間にかリティア君に踏まれた跡が痛々しい変装した国王が潜り込んでいた。

 

バカなのこの国王!?

どんだけ妖精が好きなの!?

 

「うあ~、明日も大勢の人に見られる、囲まれるぅ・・嫌だー!」

「キャハハハハ!ノアちゃん、それリティアだけど」

 

ゼムノア君はいつものようにヘベレケ酔いしており、隣に座っていたリティア君を抱き締めて悶えていた。

ぬいぐるみか、クッションと見間違えたのだろうか。

 

当然リティア君とクルティナ君が黙っている訳はなく、

 

「ゼムノアァ、わたしをクッション代わりに抱くとは、随分とご機嫌良いのですね?」

『ゼムノアァァーー!貴様なんて羨ましい事を!代われ!』

「ヒッヒィィ~!」

 

あー、怯えて隅っこに逃げて行ったではないか。

ほらほら、怖くないよー、コッチにおいで、お酒をあげよう。

 

『わたしを抱いて良いのはシャチョー様だけです!ですよね?シャチョー様。』

『抱き付く予定は無いし、君から抱き付いてくるとクルティナ君がうるさいので控えて欲しいのだが?』 


『妖木の分際でリティア様の抱擁を拒否するとは傲慢が過ぎる!』

『では抱き付いて来ても良いと?』

『妖木の分際でリティア様に抱擁されるとは傲慢が過ぎる!』

『どうすれば良いのか!?』

 

私達はボックス席があったので、食後はそこで飲んでいた。

 

「アリサちゃーん、あっちで一緒に飲もうよー」

「はぁ?今こっちで楽しんでんの。後にしてくれない?」

 

さっきからしつこく誘ってくるだらしない格好した男

コレ、国王である。

 

どうやってるのか、骨格や声まで別人のように変わっており、少し若返ったようにも見える。

服装や髪型も一般市民そのものだ。

誰も国王だとは気付かない。

変装スキルLv4、凄いな。

 

見た目は酒場によくいる陽気な酔っ払いにしか見えない。

 

「レイドォ、また妖精ちゃん誘ってんのか?」

「しつこい男は嫌われるぞ?」

 

二人の男は変装した国王の友人のようだ。

国王は変装中はレイドと名乗っているみたいだな。

 

「うるせぇ、マシュー、ロイド、お前らも誘えよ!」

「やだね、俺は嫌われたくないし。」

「俺はゼムノアさんの方が好みなんだよ。」

 

お、ゼムノア君ファンもいた。

 

「ちっ根性無し共め。」

「言ってろバーカ」

「お前もう一回リティア様に踏まれて来いよ」

 

彼等は相手が国王だとは知らないようだな。

会話が完全に友人のそれである。

 

ちなみにリティア君は、何故かファンからは様付けで呼ばれている。

 

「リティア、また踏んであげたら?」

「!」

「キモいので嫌です。」

「ガーン!」「ブハハハハ!」「変態!」

 

国王・・

 

「代わりにアタシが踏んであげようか?キシシッ」

「いや、普通に一緒に飲んで欲しい。」

「なんでアタシはダメなのよ!」

「ギャハハハ!」

 

貸し切りで飲み放題なので、店内はパーティー会場状態だ。

だが、社交会ではないので騒がしい。

 

「いやー、アリサちゃん面白いわー。ギャンブルに大勝ちしたから、憧れの店を貸し切りにしたけど、まさかランクシャーの妖精・・いや今や王都のアイドルがいるなんてね!ツイてるよ。妖精と飲むのも憧れだったんだ。」

 

饒舌に語るレイド(国王)

偶然を装っているが、会場からつけて来てたのは魔力感知でバレバレだった。

 

ギャンブルで大勝ちして、レストランを貸し切っているという名目だが、クルティナ君の情報では、実はこの店、国王直近の配下が運営してるらしいので実質無料である。

 

「レイド!あっちのお貴族様が一緒に飲もうってよ!今日は無礼講だってよ!」

 

それ、本来はレイド(国王)が言う言葉。

 

「蜂蜜酒があるらしいぜ。」

「蜂蜜酒あるの!?アタシも交じる!」

「お、良かったなレイド、ワハハハハ!」

 

結局アリサも飛んでいった。

蜂蜜あればすぐ釣れるな!

 

 

さて、アリサが粗相しないか会話を聞いておこう。

無礼講と言っても限度がある。

動く粗相アリサたからな。

つまり粗相イコールアリサ

アリサ粗相フェアリー

 

「いやぁ、楽しませて貰ってるよ。店を貸し切るとは豪気だねキミ。実はこのワインと蜂蜜酒は我が領地の特産品でね。良ければ飲んでくれ。」

 

あの貴族、どうやら領主のようだ。

馬車に積んでいたのだろうか、樽ごと店内に運び込んできた。

 

「そうなんですか!うおっ、ウマイ!普段行ってる酒場じゃ、こんなウマイ酒は飲めなかったよ。いくらでも飲めそうだ!」

 

いや、君は国王なんだから美味い酒くらい飲んでるだろ?

 

「そうかそうか!いいぞ、飲め飲め!」

「アーノルド卿も豪気ですな。」

「まあ今夜は記念すべき日の前夜祭と考えれば、このようなバカ騒ぎも愉快ですな!」

 

楽しんで頂いて良かったです。

 

「今話題のランクシャーの妖精までいるとは、家族に自慢できますぞ。」

「そうですな、しかし妖精族がこんなに酒好きとは知らなかったわい。」

「我々にとっては歓迎すべき事だな。」

 

すみません、ソイツだけと思います。

そう思いたい。

 

「武闘大会優勝候補のゼムノア殿は?」

「ノアちゃん、多分トイレ」

「ゼムノア選手は、あまり酒は得意ではないと・・」

 

実は彼女、弱くはないんですよ。

幾ら飲んでも翌日普通にしてるので、むしろ強い方だと思う。

問題は飲むとテンションが極端に下がってがぶ飲みを始めるから悪酔いすると言うか、勝手に沈んでいくと言うか・・。

 

「さぁさぁアーノルド様からの差し入れは行き渡ったかい?」

「感謝すんぜお貴族様!」

「バカ!ありがとうございますだろ!」

「ガハハハハ!良い良い!我が領民もそんな感じだ!」

 

一般人にも寛容な領主だな。

こんな騒がしい店に残るくらいなので、静かな雰囲気より賑やかな方が好みなのだろう。

 

「では改めて今夜の出会いに乾杯!」

「カルベネムロー領に乾杯!」

「蜂蜜酒サイコー!」


酔っ払いが集まると無敵だな・・。

私は静かな方が好みなのだがね・・。

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