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92.魔王ゼムノーディア・ダーククライシス(笑)

『さぁ注目のカード、試合開始です!・・あーっとディノス、守りを固めるかと思いきや開始直後に一気に間合いを詰める!』

 

試合開始直後、ディノス選手がいきなり仕掛けた。

敵ではないとか言われて、腹が立ったのかな?

 

『動き回らないとゼムノアの魔法の的になると、予選を見て対策してきたみたいですね。』

 

なるほど、風体の割に慎重な性格のようだ。

 

『対するゼムノア、なんと槍の攻撃を短剣で弾く!』

『あの娘は華奢に見えますが、魔力で筋力を強化してますので、そこらの大男より腕力が強いのです。』

「キャー凄いゼムノア様!」

 

しれっとネタバラシするリティア君。

ゼムノアファンが魔力だけじゃなく、力も強い事に歓喜していた。

 

『魔弾のストーンバレット』

『そして攻撃で動きが止まったディノスに、ゼムノアの魔法が飛ぶ!しかし大楯で防がれた!』

『あの魔法は牽制ですね。威力は大してありません。』

 

魔法の優れた点は、発動させる事ができればいつでも攻撃が出来るところだ。

武器での攻撃中や相手の攻撃を受けている最中でも、任意のタイミングで攻撃が出来る。

正面から武器で攻撃し、相手が防御したら背後から魔法で攻撃したり、逆に防御と同時に魔法で攻撃してカウンターをとる事も出来る。

 

それだけ聞くと反則臭いが、やろうとすると非常に難しい。

二つの事を同時にやらなければならないので、どちらも中途半端になりがちだ。

だがゼムノア君は瞬時に魔法を発動する事が出来るので、ちょっとした隙に魔法を挟み込む事が出来る。

先程のように防御した直後に魔法を発動させたりもできるのだ。

 

 

「魔弾のストーンバレットじゃと!?」

 

ん?国王の傍にいるモーリス翁がなんか騒いでるぞ?

ストーンバレットは土魔法Lv2相当の魔法ではなかったか?

彼が騒ぐほどの大した魔法じゃない筈だが?

 

土魔法Lv2のグランドスパイクと風魔法Lv3のフラッシュブレスの合成魔法のロックバレットなら高度なので、彼が反応するのも分かるが、ストーンバレットはそこらの小石を飛ばすだけの牽制魔法という認識なのだが?

 

うわぁ、モーリス翁がこっち向いてめっちゃ手を振ってる・・。

思念通話を繋げてくれアピールか・・めんどくさい。

 

「シャチョー様、ストーンバレットじゃ!ストーンバレットじゃ!」

「何だねうるさいな君は。」

 

面倒くさいが思念通話を繋げてやると、案の定興奮していた。

 

「魔弾のストーンバレットは、200年前に失踪した魔王のオリジナル魔法・・魔王の名はゼムノーディア・ダーククライシス!」

「そうそう、その魔王だよ彼女は。取り敢えず他言無用だからね。」

 

さすがは稀代の魔法バカ。

当然のように200年前の史実を知っていた。

 

そして勘づいたようなので早々に正体バラしてしまう。

隠す気もあまりないからね。

あんな挙動不審で酔ったら吐く魔王なんて、そこらにいても実害は無いからだ。

 

積極的に宣伝はしないが、訊かれたら答えても問題ない。

但し念の為他言しないように釘は刺しておいた。

 

「なんと!なんとなんとなんとぉ!あの姿こそが伝説となっておった魔法の始祖か!感激じゃ!まさかこの目でその姿を拝めるとは!感極まれりじゃ!長生きはするものじゃ!」

 

大興奮のモーリス翁。

魔法バカの彼にとっては、ゼムノア君はまさにヒーローだろう。子供のように喜んでいた。

興奮し過ぎて脳卒中とかにならないようにね。

君、いい歳なのだから。

 

ところでゼムノア君、以前はゼムノーディア・ダーククライシスと名乗っていたのか。

実に中二ロマン溢れるネーミングセンスだ。

あとでその名で呼んであげようか?

悶絶するゼムノア君が思い浮かぶ。

 

「ストーンバレットを見ただけでよく分かったね。」

「当然じゃ。あの魔法は、魔王ゼムノーディアが好んで使用した”ネタ魔法”じゃからの。」

「ネタ魔法?」

 

ゼムノア君、また変な事やってたようだね。

 

「あれは土魔法に見せて、実は土魔法Lv1と風魔法Lv3フラッシュブレスの合成魔法なのじゃ。無駄に魔力を食う割には威力が弱く、石を投げた方が強力という、無駄しかない魔法じゃ!」

「本当に無駄しかないな!」

 

本当に魔法でやる意味がない!

どこに使い道があるのだ!?

 

「ただただ地面から高速で射出される石礫がカッコいい、それだけに特化したロマン魔法なのじゃ。」

「確かにロマン成分高いな!」

 

ゼムノア君らしい使い道!

そして他にもそんな無駄魔法を作ってそう!

 

「石の無い場所では予め用意しておいた石を撒いてから使っておったという記録も残されておる!」

「ゼムノア君!恥ずかしい黒歴史が公に残されてるよ!」

 

恥ずかしい!そんなの記録に残されるなんてどんな拷問だ!?

有名になると、そんな所まで見られてしまうのか。

あと、わざわざ石を撒くなら投げた方が早いじゃないか!

 

「それより魔王ゼムノーディアと何処でどうやって知り合ったのですかな?」

「偶然だ。たまたま封印が解けたところに居合わせた。」

 

嘘ではない。

封印解いたのは私ではないからね。犯人はクルティナ君だ。

私は解けたところに居合わせただけ。

つまり全部クルティナ君のせい!

 

「どうして魔王ゼムノーディアを配下にしたのですかな?」

「配下ではないよ。仲間だ。そして私も仲間にしたくて仲間にした訳ではない。成り行きだ。」

 

クルティナ君の暴走がなければ、華麗にスルーしていたところだ。

普通邪神とか、魔王とか、初対面で仲間にしない。

 

ただ今では化けの皮が剥がれて、邪神とか、魔王とか、そんな威厳はズタズタになっているけど。

  

「取り敢えず彼女は私やリティア君の監視下にいる。元魔王と言っても害はないので、放置で頼むよ。」

「りょ、了解じゃ。」

 

200年前は自重せず暴れ回っていたらしいので、そんなDQNが王都に入り込んでいたら、王宮魔術師としては不安を覚えるのも分かる。

取り敢えず私の仲間で、監視下にあると言って、魔王が討伐されないように予防線を張っておいた。

 

「とにかく後日魔王ゼムノーディア殿にお目通りをお願いしたい!」

「食い付きがスゴいな。」

「当然じゃ!憧れの存在じゃからの!」

 

魔法バカにとって、この世界の魔法体系を生み出したゼムノア君は神にも等しい存在だろう。

 

・・実際神様なんだけど・・。

 

こういう信望者がゼムノア君の事を魔法の神、魔神とか呼んでたのかもしれないな。

 

「あ、今は魔王ゼムノーディアではなくゼムノア君だから、間違ってもゼムノーディアと呼ばないようにね。」

 

じゃないと嫌われるぞ?

過去の黒歴史がトラウマ化してるからね。

 

 

そんな事をモーリス翁と話していたら、ゼムノア君の試合がクライマックスを迎えているようだ。

 

『我から目を離すとは愚かだな。』

 

ゼムノア君は敢えて魔法を抑え、身体能力をメインに立ち回っていた。

身体強化に魔力を乗せて、変態的な反射能力で華麗に相手の攻撃をかわして翻弄していた。

 

するとディノス選手は魔法に対する警戒が緩む。

前のめりに攻撃するようになっていた。

あーこれ誘い出されてるね。ゼムノア君の戦術に嵌っているようだ。

 

独特のポーズをとりながら、無駄にカッコよく、スタイリッシュに立ち回るゼムノア君。

あんな立ち姿を披露する暇があったら、次の攻撃をすればいいのに。

 

あれを見てるとイラッとくる。

ディノス選手もイラッとしてるのだろう。

ウザいのだ。

そりゃ叩き潰したくなるよね。

  

『魔弾のストーンバレット』

 

あ、ネタ魔法。

あれを使ったと言うことは舐めプに入ってるのか。

どうりで大味で緊張感がない戦いだと思った。

モーリス翁のお陰で、ゼムノア君の余裕が見てとれた。

 

『我が魔法の深淵の前に盾など無意味。これで終わりだ!破滅のバーストストリーム!』


あれ?バーストストリームは「拒絶の」じゃなかったか?

あーなるほど、「破滅」の場合は指向性が付いて、相手を吹っ飛ばすのか。

拒絶が防御で、破滅が攻撃と。

 

そして苛立ち誘い込まれたディノス選手は、大きな隙を晒していた。

ゼムノア君の魔法を躱す事が出来ない。

 

『決まったー!魔法に吹っ飛ばされたディノス立ち上がれない!』

『あの魔法は衝撃波を伴い、相手の脳を激しく揺さぶります。相手は脳震盪を起こしたのでしょうね。』

『勝者はゼムノア!』

「「「うおおおおおお!」」」

 

リティア君の解説で、何故相手が立ち上がれないのか判明。

この試合の勝者が決まった。

 

試合を振り返ってみれば、ゼムノア君が相手を翻弄し、終始優位に試合を運んでいたように見えた。

相手が重装備だったのもあり、遠距離からヒットアンドアウェイを得意とするゼムノア君の動きに追従出来ていない事も勝因だった。

ディノス選手は、勝つためにはゼムノア君を追う必要がある。

だが、ゼムノア君は遠距離から一方的に攻撃出来るので、接近する必要がないのも有利だ。

 

この武闘大会、魔法や遠距離攻撃を主体に戦う選手が勝ち上がった事は殆んど無かった。

そのスタイルでは継戦能力が乏しいからだ。

亜人族は魔力量が少なく、弓矢等の遠距離武器は弾数に限りがある。

 

その為ディノス選手のような近接戦を主体にした重装スタイルが王道で、安定して強かった。

持久戦こそ武闘大会の必勝パターンだったのだ。

 

だが、豊富な魔力を誇るゼムノア君には、従来の定石は通用しない。

ディノス選手は十分な対策が取れず、ゼムノア君の優勢を崩せなかった。

相手が悪かったと言えるだろう。

 

しかしゼムノア君の舐めプはイタダケナイ。

ポーズだけ洗練されていて、動きは無駄が多く、攻撃は大技の単発狙い。

 

雑だ・・。

内容が薄っぺらい!

引き込む崩しとか、回避不能な連携とか、そういうテクニカルな戦いを期待していた私は不満だったが、そんな技を使うまでもなかったという事か。

次の試合に期待しておこう。

 

 

『月満つる刻こそ闇を翳すと知るがいい。』

 

勝者宣言後にキメ顔で意味が分からない煽り言葉!

あんな大雑把で無駄ばかりの戦い方で、何か意味深な事言われると腹が立つ!

雑に戦って勝っただけではないか!

謝れ!

技巧を尽くした相手の選手に謝りたまえ!

 

『ノアちゃん、圧倒的な実力差で完封だったね。』

『ゼムノアはまだ本気を出していませんね。』

 

二人の試合の感想が始まった。

 

『つまりノアちゃんは次も圧勝すると?』

『当然のように勝利するでしょう。』


ゼムノア君が調子に乗ってるのが面白くないようだ。

いじめっ子気質なリティア君が悪乗りを始めた。

 

『すると優勝候補筆頭ですか?』

『勿論余裕で優勝です。ゼムノアですよ?』

 

アリサとリティア君が悪乗りして、ゼムノア君のハードルをガンガン上げていく。

 

『一切攻撃を受けず?』

『汗ひとつかかずです。ですよね?ゼムノア?』

『難易度上げるのやめてー!』

「「「プププッ、クスクス」」」

 

二人の無茶振りに観客も笑いを漏らす。

 

『いっそ触れられたら負けでは?』

『勿論問題ありません。ですよね?ゼムノア?』

『そんなの無理ー!』

「「「ハハハハハハ!」」」

 

ゼムノア君イヂリで会場に笑いが溢れた。

素が出てるよゼムノア君。

 

 

こうしてこの日は計五試合が行われ、準々決勝は翌日に持ち越された。

 

明日は準々決勝

第一試合 予選1位リューザ対予選2位カサバ

第二試合 予選3位ゼムノア対予選4位ゲイズ

第三試合 第二試合勝者対予選10位レオン

第四試合 三位決定戦

 

準決勝と決勝は明後日となった。

あくまでも予定だ。

選手の傷の状態にもより、試合が延期される事もある。

ただ、対戦する両者の合意があれば、すぐに試合になる。

 

さて、ゼムノア君は期待に応えて優勝できるだろうか?


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