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91.進まない武闘大会と妖精実況

『えーっと、次何すればいいの?』

『アリサ、お願いだからもう少し司会らしくしてくれる?』

「ハハハハハハハ!」

 

慌てて司会者さんが耳打ちに向かう。

 

『あーはいはい・・決勝トーナメントの説明ね!リティアよろしく!』

『説明聞いたアンタがしなさいよ!』

『覚えきれないんだから仕方ないでしょ!あたしを舐めてんの!?』

『逆ギレ!?』

「ハハハハハハハハハハ!」

 

早くもグダグダだ。

しかし、観客にはウケていた。

  

『説明めんどくさい!』

『アンタがそれを言うな!』

「ハハハハハハハハハハ!」

 

『リティア代わって説明してよ。』

『え?嫌だけど?』

『普通に嫌がるな!』

『アンタも嫌がってるじゃない!』

「ハハハハハハハハハハ!」

 

醜い争いが始まった・・。

 

『アタシは実況がやりたいの。これは司会者の仕事よ。』

『どっちもアンタの仕事よ!誰がそんな事決めたの!』

『え?アタシだけど?』

『独断が過ぎる!』

「ハハハハハハハハハハ!」

 

実況と解説が大会の説明を必死にサボろうとする前代未聞の事態。

しかし会場は大ウケだった。

清々しい程に常識外れなので、返ってそういう演目だと認識されたようだ。

国王も笑っていた。

 

『あ、そうだ、司会者のおじさん、思念通話繋げるから代わりにやってよ。』

『自分でやる気がサラサラ無い!?それにあの変な髭の司会者、この国じゃそれなりの地位の人みたいよ。あとで怒られても知らないからね。』

 

リティア君、サラッと髭をディスるのをやめたまえ。

 

それからアリサ、ナチュラルに私の思念通話を濫用するな!

君の思念通話でやりたまえ!

レベル的に出来ないだろうけど。

 

ちなみに変な髭の司会者さん、クルティナ君によると騎士爵を持つ国王軍上層部のお偉いさんらしい。

よく通る声の大きさを買われたのか、指揮官や訓練官等を兼任する有能な人だ。

 

片方だけクルンと巻いたユニークな口髭で、あれは手入れが大変だろう。

私はオシャレだと思うのだが。

 

ちなみに、国王軍の多くの人が「変な髭だ」と思っており、会場の観客も「変な髭だなぁ」と思いつつも口に出せない状態だった。

よく言ってくれた!と心の声が思念に届いていたよ。

 

『大丈夫よ、変な髭だもん。』

『髭が基準!?』

 

髭が何の根拠になるのか・・アリサの感性は不可思議だ。

それから髭イヂりをやめなさい。司会者さんがプルプルしてるぞ。

 

『変だから変って言っても大丈夫よ。』

『本人の前で変変って連呼するのやめた方がいいんじゃない?』

 

いつの間にか怒られる原因が髭に変っていた。

偉い人をコキ使おうとしたから怒られるって主旨だった筈だが・・。

  

『先に変って言ったのリティアじゃない!』

『髭と怒られる理由は別でしょ!』

『え?同じじゃないの?』

『あら?何ででしたっけ?』

「君達いい加減にしろ!それから私の髭は変じゃない!」

 

あ、変な髭の司会者さんがキレた。

 

『ほら怒られた』

『あれはアリサに言ってるんです。』

「私は両人に言っている!」

『え?』

『え?』

 

「「「アッハッハッハッハッハ!」」」

「ひー、おかしい!もうやめてー!」

「笑い過ぎて腹が!ハァハァ」

「武闘大会に来て、なんでこんなに笑ってるんだ私は」

「ハァハァ、大会が全然進まねぇぞ!何やってんだ!」

「あーもう可笑しい。いやですわ、おほほ・・ブハッ!」

 

国王、苦笑い・・。

すんません!ウチのバカ娘がすんません!

 

仕方なく変な髭の司会者さんに思念通話を開通させ、彼が説明をする事になった。

 

 

決勝トーナメントの対戦表は予選の成績で試合が決まる。

 

第一試合 予選1位リューザ 対 予選6位バルザック

第二試合 予選2位カサバ  対 予選7位マホメット

第三試合 予選3位ゼムノア 対 予選8位ディノス

第四試合 予選4位ゲイズ  対 予選9位エス

第五試合 予選5位ラーズ  対 予選10位レオン

 

このようになっていた。

第一、二試合の組は三回勝てば優勝

第三、四、五試合の組は四回勝たなければ優勝出来ない。

有利不利ありそうだが、昔からこの構成らしい。

 

尚、勝敗のルールは予選と同じようだ。

 

説明が終わると早速第一試合である。

 

 

第一試合は予選一位のリューザ対予選六位のバルザック

 

リューザは大きな婉刀と盾を使い、軽装で相手を翻弄するスタイル。

バルザックは重装備の槍を使い、ドッシリ構えて中距離から抑え込む戦法のようだ。

 

では実況の様子を聞いてみよう。

 

『バルザックの槍はリューザの盾に防がれて当たらない!でもリューザもバルザックの槍さばきで、なかなか懐に入れて貰えない!』

『間合いの取り方が上手いのでしょうね。』

『あんな重そうな鎧着てて、よく動けるよね。』

 

二人とも上手く実況が出来てるじゃないか。

 

「凄い凄い!見えないのに、試合がどうなってるのか分かるぞ!」

「これ毎回やってくれねぇなか?」

「声だけで十分楽しめるな。」

「遠くから観戦するより、こっちの方がよく分かるぜ。」

「あー!でもやっぱり試合は見たい!」

 

二人の実況放送は、今のところ会場の中も外にもかなり好評のようだ。

軽快なトークで楽しく試合観戦が出来るので、聞いていて飽きない。

 

『リューザ、鋭い突きを盾で受け流して一気に間合いを詰める!ねぇ、あれウマくない?』

『今のは槍の選手が誘い込まれましたね。わざと隙を見せて、相手の踏み込みを誘い、それに合わせたカウンターで一気に懐に飛び込んでいます。』

『槍の渾身の一撃を捌ける自信がないと出来ない芸当ってことね!』

 

リティア君なら解説も完璧だろう。

パッと見では判らない地味だが高度な技術でも、彼女が見れば一目瞭然。

なんせ元鑑定スキルの中の人だ。

この世のあらゆる事象を説明できるのだから、解説としてこれほど有能な人物はいない。

 

そういう有能な部分を何故秘書として発揮してくれないのか謎である。

私といると才能の無駄遣いばかりするので「え?まさかこれ私が悪いのか?」と無駄な罪悪感さえ覚える。

 

『肉薄したリューザの猛攻!ここで決めるか!?いやバルザック、まさかの槍を捨てて体当たり!リューザ吹っ飛び距離を取られた!』

『鎧の防御を信じて体当たりに行きました。ダメージ覚悟で、相手を吹き飛ばすことに成功しましたね。』

『バルザック、再び槍を拾い間合いを取る!リューザ、また近付けない!』

 

第一試合から高度な戦いが繰り広げられているな。

観客は二人の実況を固唾を飲んで聞きながら、夢中になって歓声を上げている。

 

守りに撤して、チクチクと隙の少ない攻撃で相手を寄せ付けないバルザック。

対して機動力を活かし、婉刀の斬撃を当てに行くリューザ。

白熱していた。

 

すると試合に動きがあった。

 

『リューザ、婉刀を槍に当て大きく弾いた!』

『あれは狙っていましたね。甘い攻撃を待って槍を弾き、大きな隙を作ったと思います。』

『バルザック再びタックル!だけどリューザの攻撃が速い!鎧の上から強烈な斬撃!バルザックの巨体が吹っ飛ぶ!』

『タックルも読んでましたね。』

『リューザの追撃!ここでまさかの下段!バルザックの脚から鮮血が散る!これ決まったんじゃない?』

『勝負ありましたね。』

 

脚に深い傷を負ったバルザックは、極端に動きが鈍くなり、これ以上戦っても勝てない事を悟って降参した。

激闘を制したのはリューザ。

予選をトップ通過した実力は本物のようだ。

鑑定結果にはスキル持ちと出ていたが、先程の試合ではスキルは使っていなかった。

決勝まで切り札として温存するのだろうか?

 

勝負がつくと物凄い歓声が上がった。

会場が振動していた。

相手選手は医務室へ運ばれる。

結構深い切り傷だが大丈夫なのだろうか?

 

『では勝利したリューザに一言貰います!試合を振り返ってどうでした?』

「・・・・。」

『んーはいはい、なるほど。ほうほう・・うん、うん、分る分る。』

 

リューザ選手は言葉を発しているが、思念通話を彼に繋いでいないので会場には届かない。

アリサが聞いて、代わりに伝えるようだ。

 

『相手強かった、勝てて嬉しいとの事でした!』

『端折り過ぎよ!もっと色々言ってたでしょ!真面目に伝えなさい!』

『だってリューザちゃん、コメント長いんだもん。』

『それ伝えるのがアンタの役目でしょ!あと選手にちゃん付けしない!』

「ハハハハハハハハハハハ!」

 

リューザ選手も苦笑いしてた。

寛大な人で良かったよ。

あんまりな扱いだったのでリティア君が代わりに伝えると、リューザ選手を拍手が讃えた。

 

 

少しのインターバルを置いて続く第二試合。

予選2位カサバ選手対予選7位マホメット選手だ。

 

ま、アカの他人の試合なので、ここはすっ飛ばそう。

この試合はカサバ選手の勝利で終った。

 

 

そして注目の第三試合、遂にゼムノア君の出番である。

相手は予選八位のディノス選手。

巨体に大盾と槍を使う、地味だが守りが固いスタイルだ。

 

『さあ今大会唯一の女性選手の登場だ!その名もゼムノア!ちなみにあたし達の仲間だよー!』

 

ゼムノア君の登場に、会場が一段と沸騰した。

注目の選手として報道され、一躍有名になっており、一際大きな声援が闘技場に注がれた。

 

当のゼムノア君は・・あ、満更でもない感じ。

200年前もアチコチで暴れ回っていたと聞いてるし、あー見えて目立つのは嫌いじゃないようだ。

その頃、どんな事をしていたのか、クルティナ君に詳しく聞いてみたいものだ。

彼女の新たな黒歴史を紐解く事になりそうだが・・。

 

 

『彼女は高い魔力量で魔法を駆使して戦います。出場選手の中でも異色の存在!過去に例を見ない変則的なスタイルの為、相手は対策が立てられず、圧倒的な強さで予選を突破!果たして決勝進出者は彼女の快進撃を止めることが出来るのか!?』

 

アリサがお手本のような的確なアナウンスをする。

 

・・有り得ないな。絶対カンペ読んでる。

 

あ、やっぱりカンペ持ってた。

司会者さんが渡したようだ。

  

『ゼムノア、特別にあなたにも思念通話を繋げるので、好きに喋りなさい。』


身内贔屓も甚だしいが、これリティア君の意地悪だな。

あーあー、ゼムノア君、突然の話でキョドってるよ。

 

ただでさえコミュ障なゼムノア君に、大勢の前で喋れなんて無茶振りが過ぎる。

本人は迷惑千万だろう。

 

『そんな配慮要らな・・わ、我には不要だ。』

 

素で答えそうになって、慌ててキャラ変えた。

  

「キャーー!ゼムノア様ぁー!」

「うおおお!深淵の魔女の声が直接頭に響くぅ!」

「くぅ!耳元に居るみたいだ。堪らん!」

 

あ、凄く好評みたい。

 

『対するディノス選手は大盾の堅い守りで相手の攻撃を寄せ付けない。ゼムノア、あの盾の防御を貫けるか!?』

『ゼムノア、自信の程を言いなさい。』

 

リティア君の圧が強い!

 

『も、問題ない。我が魔導の前に敵は皆無と知れ。』

 

匂い立つ言わされてる感!

 

「キャーー!ゼムノア様カッコいいー!」

「さすが深淵の魔女だ!」

 

有無を言わさないリティア君の圧の前に、ゼムノア君は絞り出すかのようにコメントしてた。

可哀想なゼムノア君。

精神耐久値がモリモリ減ってるのが分かる。

あーあー、顔が青い、脚が震えてる!

このままだと試合の勝敗関係なしに、リティア君からの圧に精神削られてリタイアしそうだよ!

 

そして試合が始まる。

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