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85.私、晩餐会にこっそり出席します

晩餐会の正式な招待が来た。

その前から用意はしているが。

 

なんと国王の命により、妖精用のドレスまで準備して貰えたのには驚いた。

どうやらアイン領主が妖精を伴って来ていると知り、その時点で製作に着手していたらしい。

幼児用のドレスを仕立て直して、間に合わせたようだ。

 

絶対に晩餐会に呼ぶ気だったんだろうな。

国王、妖精好き過ぎだろう・・。

執念すら感じるドレスである。

 

しかし急拵えとは思えない完成度。

王宮メイド恐るべし。

 

「えへへ、こんなの着たの初めて!来て良かった!」

「喜んで頂き光栄です。」

 

アリサはホルターネックの可愛らしいドレスを着て、素直に喜んでいた。

背中の羽根が出るように、背中は大きく開いているセクシーなデザインだが、アリサが着ると・・おっと、これ以上のコメントはやめておこう。

 

何故か睨まれている。

あの異様な迄に鋭い勘は、他には活かせないのだろうか?

 

「短時間で大変だったでしょうに。」

 

リティア君も侍女を労っていた。

彼女は私の事以外はすべからく無頓着なので、提供されたものは何でも可であった。

 

彼女の場合はドレスくらい、例の神業お取り寄せでいくらでも出すことが出来るのだが、それは禁じ手だ。

 

この世界の服飾縫製技術は意外に進んでいる。

魔素という不思議粒子が存在しているが故か、不思議な素材が得られるようで、化学繊維のような生地も見られた。

しかし、服飾縫製技術は進んでいたとしても、元の世界の技術には及ばないので、やはり「反則お取り寄せ」は無しである。

 

ところで鑑定スキルのクルティナ君曰く、生地の素材は蜘蛛の糸らしい。

へぇ。

と感心したのは、蜘蛛の糸の生地にではなく、クルティナ君が鑑定スキルらしい事を言ったからだ。

たまには仕事もするじゃないか・・の「へぇ」である。

 

だが、その前はリティア君の生着替えを覗いてはハァハァ言ってた。

もう素直に気持ち悪い。

クルティナ君が鑑定スキルという事を、時折忘れそうになる私を誰が責められるだろうか・・。

  

『リティア様の美貌には霞んで見えますが、心遣いは立派と評価しましょう。』

 

クルティナ君の上から目線は変わらない。

ま、物理的?にも次元的にも、上から見てる存在だから、当然なのかもしれないが。

 

ちなみにクルティナ君の神託通話は、私とアリサ、リティア君、ゼムノア君にしか聞こえない設定にしている。

アリサには、クルティナ君の言葉に反応しないように言い付けているが・・不安だ。

 

 

そしてゼムノア君は出席を頑なに拒んでいた。

侍女が着替えを勧めるが、蒼褪めた顔で寡黙に背中を壁から離そうとしない。

その様子を聞いたアイン子爵が胃を押さえて蒼褪めていた。

危なーい!

 

ゼムノア君!君はアイン子爵の瀕死の胃袋にトドメを刺す気か!

彼の胃袋のHPはとっくに限界だよ。

彼の胃袋は私が守る!

ここは私が取りなすところだ。

  

『ゼムノア君、ものは考えようだ。君は敵の王侯貴族から情報を得る為に自ら敵の本拠地に忍び込んだ魔王という設定はどうかね?』

 

ゼムノア君を動かすのに、最も有効なのは「ロマン」だ。

彼女に釣るのにエサは要らない。

こうしたらカッコいいというシチュエーションを提案すれば、簡単に食い付くのだ。

 

『敵陣の中枢に何でもないように潜入する魔王・・なるほど、いい・・。』

 

満更でもないという表情になり、ノリ気になっている。

チョロい。

 

『魔王が潜入しているとも知らず機密を漏らす敵、そして良い感じのところで正体を明かす!ふははは!我こそが魔王なり!仰天する敵!・・イイ!』

『明かしちゃダメだよ?』

 

釘は刺しておく。

それから晩餐会の出席者は敵じゃないからね。

 

魔王モードに入ったゼムノア君は饒舌になるので、晩餐会も無難に乗り切ってくれるだろう。

 

尚、基本スペックが高い彼女は、コサージュとレースをあしらった紫のIラインドレスがとても似合っていた。

素材を活かしたシンプルなデザインが多いので、スタイルが良くないと似合わない。

華奢で長身のスラリとしたラインに、クルティナ君が勝手に盛った適度な胸もあり、魔王モードでシャキッとしてる今は、見違える美女だ。

 

着付けを終えた侍女達が溜め息を漏らす程だった。

 

 

「では、会場にご案内致します。」

 

侍女の案内に従って、城内を歩く。

流石に広い。

 

城内に置かれている調度品等は上品で豪華だが、華美さより、質実剛健さに重きを置いた内装だった。

宮殿ではなく、あくまで城。

敵に攻められた時に、防衛に適した構造となっており、飾り気よりも機能に特化している。

 

その為、剥き出しの石造りの廊下や壁が多く、堅牢、無骨といった印象だ。

漫画等でよく見る、華やかなイメージとは全然違う、ガチな城。

やはりこの世界は、まだまだ物騒なのだろうか。

 

だが、城の奥にある宮殿は違った。

こちらは装飾多く豪華絢爛。

なるほど使い分けてるのか。

 

「こちらになります。」

「え?」

 

驚いた。

宮殿の中庭に案内され、その中央にテーブルがセットされ、大勢の給仕が滑らかな所作で配膳を進めていた。

 

「おお、アイン・ランクシャー子爵、よく来た!」

「国王陛下、本日は私などをお招き頂き、光栄の極みです。」

 

私達の到着を見て、一番に声をかけてきたのが国王のようだ。

この人がエレングレイド王国、国王エレンゼクト・ハイル・ジ・エレングレイド。

隣に座る女性が、王妃アスティナ・フォノン・エレングレイドか。

 

57歳とは思えないルックスだ。意外に若く見える。

だが、威厳ある姿とオーラをしている。流石は一国の王。

 

 

でも・・・痔なんだよなぁ。

 

駄目だ!最初に聞いたクルティナ君の余計な鑑定結果のせいで直視が出来ない!

あーあー私は知らない!何も知らない!

 

「おおおお!彼女達がランクシャーの妖精か!連れてきてくれて嬉しいぞ!」

「お喜び頂けたのであれば幸甚です。」

 

国王は興奮気味に、妖精二人を見た。

その他の列席者も、食い入るように見ている。

 

「やっハロー!お邪魔しまーす!」

「こんばんは、お招き頂き感謝します。」

 

マイペース!

どこまでもマイペーーーース!

 

そこらの一般人と対応が1ミリも変わらない!

 

「コラ、なんて口を」

「えー?別に良いってさっき聞いたしー。」

「少しは空気を読んで遠慮ってものを・・」

 

真面目なアイン子爵からすれば冷や汗が止まらないだろうな。

シェルダグラス公爵家での一件もあるし・・。

心臓握り潰されてるような感覚だろう。

蒼褪めた表情で、必死に取り繕っていた。

心中お察しする。食事が喉を通るのか心配である。

 

「ハッハッハ、良い良い!畏まったのは余も好きではない。アイン子爵も、もう少し砕けて良いぞ。」

 

国王は笑って許してくれた。

まあこの人、変装して市中に潜入するのが趣味みたいだから心配はしていなかったけどね。

 

「逆に父上はもっと威厳を示された方が良いと思いますが。」

 

お、エレンバイド王子だ。

色々あったが時間を戻したお陰で、全部忘れて無害化に成功している。

国王にチクリと苦言を呈していたが、それを言うなら君は、もう少し父上を見習って下々の者に丁寧に接するべきだぞ。

 

「アナタ、みっともないですわよ。落ち着いて席に戻りなさい。皆さん戸惑っていらっしゃるわ。」

 

アスティナ王妃が国王を嗜めてくれた。

相当な美人ではあるが、リティア君を見慣れているので普通に見てえしまう。

 

国王がジリジリ近付いて来ようとして、周囲に控えている騎士が警備の為に距離を縮めて来ていた。

いつでも殺れる。そんな威圧感さえ感じる。

 

あ、アイン子爵が胃を押さえてる・・。

 

「おお、済まなかった。では、来賓も揃った事で晩餐会を始めよう。」

 

王妃の言葉で我に帰った国王は、未練たらたら席に戻る。

余程妖精が見たかったようだ。

この王様、子供の頃はヤンチャだったんだろうな。

王子の性格からも、その遺伝子が窺える。

 

 

国王の言葉でグラスにワインが注がれた。

ちなみにアリサとリティア君は蜂蜜酒だ。

ゼムノア君は大丈夫だろうか。泣き上戸だからなぁ。

 

「では、エレングレイドに!」

「「「「エレングレイドに!」」」」

 

簡単な乾杯の挨拶で食事が配膳された。

ちなみにアリサとリティア君は蜂蜜だ。

 

「うまっ!この蜂蜜美味しい!」

「わたしは蜂蜜じゃなくても良いのですけど・・」

 

リティア君も妖精としてアリサとひと括りにされていた。

言えば替えてくれると思うぞ。

 

 

その後は列席者の紹介があった。

列席者の大半は王族だった。

正直、全員覚えるつもりはない。

クルティナ君に尋ねれば、判る話である。

 

王族以外の列席者で、興味を引いた者もいた。


「そちらは西のレイドナール領、フェノン・レイドナール男爵だ。」

「フェノン・レイドナールであります。」

 

固くなっている。

アイン子爵と同じくらいの若さである。

 

「明後日顔合わせの予定でしたが、国王が妖精を見たいと駄々を捏ねてしまいまして、急に晩餐会となりましたの。長旅でお疲れのところ、申し訳ないですわ。」

「とんでもございません!光栄の至りであります!」

 

王妃が事情を説明し、フェノン男爵が恐縮する。

そんなに緊張しなくても良いと思うぞ。

対面の妖精を見たまえ、ここはお前の家か!とツッコミたいほど寛いでいるではないか。

 

「キッ」

「・・・。」

 

ん?何故かアイン子爵を睨んだな?

あらら、嫌われてらっしゃる?

 

事情を確認すべく、クルティナ君に尋ねてみた。

余計な情報は要らないぞ!要点だけ、簡潔明瞭に頼みたい!

 

『事情としては、両領地の位置関係に端を発している。

レイドノール領はランクシャー領の北西に山脈を挟んで隣接。そしてレイドノール領の南西は、バイルランド王国の北東国境線に面している。』

 

なるほど、バイルランド王国からみて、北東がレイドノール、東がランクシャーか。

ランクシャー領から見ると、西がバイルランド、北西がレイドノール。ちなみにリバーエイカーは北東、ガンプ大森林は南だ。


『バイルランド、ランクシャー、レイドノールの境界には大きな湖のノドム湖があり、その周辺地域は、三者が所有地と主張している。現在では「誰の土地でもない」とされ、度々戦場となっていたようだ。』


あー、争っていたのは前ランクシャー領主、アイン子爵の父親か。

バイルランドも好戦的だし、レイドノールも、この生真面目そうな現領主を見れば、三者三つ巴で争っていた光景が目に浮かぶ。

 

『その為、レイドノールはランクシャーを目の敵にしており、長年対立していたようだな。』


うむ、よく判った。ありがとうクルティナ君。

なんだか別人のように判り易くて丁寧な解説だったが、本人だよね?



なるほど、この場にレイドノールの領主がいるカラクリが判った。


ランクシャーだけに褒賞が出て、レイドノールには何もないでは角が立つのだろう。

一緒にレイドノールも召集し、顔を立てた模様だ。

これ以上、両者の関係が悪化しないように、中央も気を遣っているのだな。

 

つまり、国王が早く妖精が見たい→晩餐会を開いてランクシャーを招けば良いではないか!→あ、レイドノールも召集してたんだった→一緒に呼ばないとマズいよね?

という風になった様だ。

 

面倒だな。

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