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84.晩餐会に招待された・・だが断る!

「ところで、私達は今日泊まるところがないのですが、良い場所がありませんか?」

 

リティア君が事情を説明する。

 

「なるほど、確かにそれでは宿泊先に迷惑じゃな。」

「モーリスの邸宅に空き部屋はないのですか?」

「儂の家は取り上げられたのじゃ。」

 

は?

何この爺さん、ホームレスなの?

 

「勝手に王宮魔術師を辞任した罰として、家は取り上げられ、今は王宮に住んでおる。」


あー、なるほど。

ランクシャーに滞在する為に、王宮魔術師辞めてきたとか言ってたな。

何のお咎めも無しに、また王宮魔術師にさせる訳にもいかず、その辺で落ち着かせたのだろう。

 

魔法の真髄の為なら肩書きなんて紙屑同然と考える魔法バカである。

家を取り上げられたくらい、何の痛痒も無いことだろう。

周囲を納得させる体裁を調える為の家没収。

国王も上手いこと考えるものである。

 

しかし、となれば困ったな。

 

「今、貴族街のホテルは武闘大会観覧の為に訪れた貴族で満室じゃ。城の客室も空きがあまり無い。ランクシャー領主が泊まっている部屋に入らせて貰うか、この隣にある儂の客室でも良ければ使って良いいがいかがかの?」

 

そうか、貴族街のホテルを期待したが、武闘大会のお陰で部屋が残っていないのか。

これは困ったな。

 

『シャチョー様、どうしますか?』

 

リティア君が判断を委ねてきた。

ランクシャー所属の私達が、モーリス翁の部屋を間借りさせて貰う訳にもいかないだろう。

何故領主と一緒に泊まらない?と訝しがられるだけだ。

 

「仕方ありません。領主の部屋に泊まらせて貰います。」

「分かった。通達を出しておこう。」

 

モーリス翁の計らいで、急遽アイン領主に合流する事になった。

 

うーん、目立ち過ぎたな。失敗した。

 

 

 

 

「随分派手に暴れたんだな・・。」

「すまん、都会を舐めていた。」

 

アイン領主の宿泊先に案内された私達は、アイン領主から早速小言を言われた。

 

私達も目立ちたくて目立った訳ではないが、結果を見れば目立ち過ぎていた。

面目ない。

 

武闘大会の快進撃や妖精の逸話など、王城でも噂になっており、アイン領主はお茶会に引っ張りだこだったようだ。

断るのが大変だったとゲッソリした表情で語る。

 

叙爵式は無事に終わり、アイン領主は子爵位を継承した。

これからはアイン子爵である。

 

その際、妖精の事をアレコレと聞かれたそうだ。

国王も噂を耳にしており、妖精に興味津々だったらしい。

無難に返答して難を逃れたらしいが、まだ聞きたそうにしていたと語るアイン子爵。

 

公爵家の報奨授与式から彼の胃袋は酷使され続けている。

既にボロボロだろう。

このまま王城滞在時間が長引けば、いずれ胃袋が真っ白な灰になってしまいそうだ。

 

損な役回りをさせているが、彼に詳細な事情は話せない。

これは意地悪している訳でも、裏切り行為でもない。

彼とランクシャー領の未来の為に、語れないのだ。

 

 

国王暗殺と王女拉致計画が進行中、という重大な事を秘密にしてて良いのか?って話だが、アイン子爵に話してしまうと、彼の立場上報告しない訳にはいかなくなる。

 

すると、どうやってその情報を掴んだのか?という疑念が生まれ、私の存在を探られる事になる。

私の存在が明るみに出ると、私を狙う悪意ある存在がランクシャーに押し寄せる事だろう。

それは避けなければならない。

 

だから知らなかった事にして、事件が起きてからの立ち回りで防衛する必要があるのだ。

未然に防ぐことが出来ないのはもどかしいが、これは仕方がないのである。

 

 

彼も私達が理由もなく動いている訳ではないと察しているからこそ、小言で済ませている。

昨日の落雷事件も、私の仕業だろうと彼は気付いていて、王都警備隊の腐敗が明るみになった事で、悪意を持ってヴォルドアークを放った訳ではなく、王都の平和の為に動いた結果だと分かって、誇らしく思ったそうだ。

 

「シャチョー殿の事なので、何か掴んでの行動だと信じているが、私の胃袋が捩じ切れる前に済ませて欲しい。」

 

切 実 な 願 い を 打 ち 明 け ら れ た !

思わぬタイムリミットがセットされていた!

しかも期限は近い!

 

「この国の王には義理があるからね。悪いようにはしない。任せておいてくれたまえ。」

 

まさか、国を割るような大事件の裏を掴んでるとは思わないだろうなぁ。

彼の胃袋の為にもタネ明かしはやめておこう。

 

 

「こちらの部屋をお使い下さい。」

「感謝します。」

 

侍女に案内され、アイン子爵の付き人用の大部屋に通された。

現在は御者のオッサンが一人で使っていた。

 

旅の荷物が運び込まれ、子爵の部屋とは違い質素な内装だ。

だが、一般的な宿の部屋より断然綺麗だった。

その為アリサの感想は、

 

「わあ!豪華じゃん!ラッキーだよね!」

 

呑気なアリサは部屋の中を飛び回って無邪気に飛び回っている。

豪華・・とまではいかないが、掃除も行き届き、ベッドも綺麗だった。

 

「あ!蜂蜜あるじゃん!気が利いてるぅ!頂きまーす!」

 

テーブルの上に蜂蜜の壺が置いてあった。、

ウエルカムドリンクならぬ、ウエルカム蜂蜜だろう。

妖精を連れているという事が伝わって、急遽出された感ある。

気を遣われている。

 

「シャチョー様、狭い部屋ですが、どうかお寛ぎを。」

「ありがとう。」

 

リティア君は私を陽当たりの良い窓際に置いてくれた。

おー光合成が捗るなー。

 

その心遣いは有り難いが、狭いとか言わないでね。

自分の家じゃないんだから。

 

「ボクはこのベッドを使いたい。」

 

ゼムノア君は部屋の隅の暗いところを好む習性がある。

わざわざあんな離れた所を選ばなくても・・。

 

 

思い思いに過ごしていると、ドアがノックされた。

 

「どうぞ。」

「失礼する。」

 

来訪者は二人だ。何人か護衛の騎士も後にいる。

先に護衛が入り、後から主格を入れる手順は、王城内でも変えないのか。

城内でも気が抜けないのか、その手順が染み付いているのか、どちらにせよ護衛として立派な対応だ。

 

「あ、おじいちゃんと・・誰だっけ?」

「グリオンだ。もう忘れたのか?」

「あー、亜人族っていっぱいいるじゃん?覚えらんないんだよねー。」

 

この国の将軍を捕まえての軽薄な言動に護衛の騎士がピクリとする。

しかし、グリオン君が手を挙げて制した。

 

妖精族のアリサだから許されているだけで、他の人、例えばアイン子爵の従者が同じ言葉を使えば、不敬に当たり処罰さえあり得る。

 

アリサは亜人族の習慣やマナーには全く興味がない。

その為、国王にも同じ様に振る舞うだろう。

公の場では国王が許しても、周囲の人が許さない。

 

だから彼女を公の場には絶対に出せないし、国王にも会わせたくない。

アリサは蚊帳の外に出すことで、トラブルを回避するのだ。

 

 

さて、現れたのは見慣れた二人。

国王軍のグリオン将軍と筆頭宮廷魔術師モーリス翁だ。

 

以前彼等と共にランクシャー領を訪れたメンドクサイ王子・・ではなく、エレンバイド王子が居なくて助かった。

 

「長旅ご苦労だった。歓迎しよう。まさかアイン子爵が妖精を連れてくるとは思っていなかったぞ。」

 

グリオン将軍が歓迎の言葉を述べ、妖精付きであった事に驚いたと話す。

 

「護衛として同行したんだよ。亜人族の町を色々回って面白かったよ。」

 

アリサが経緯と旅の感想を簡単に答えた。

護衛の仕事は、主に私しかしてなかったがね。

 

クルティナ君に至っては、山賊を呼び込み、魔王を復活させる始末。

普通に反逆罪なのだが、本人は良い事したと思っているのでタチが悪い。

 

息をするように余計な事をする鑑定スキルさん。

頼んでもないのにトラブルをお届けする、迷惑極まりないデリバリーサービスである。

 

同じ鑑定スキル持ちのグリオン君には、こんなポンコツスキルを持つ者として同情する他ない。

 

そんな核爆弾(クルティナ君)が都の中心に届いた事を、王都の人々はまだ知らない。

クルティナ君がキッカケで、戦争にならなければ良いのだが・・。

それが有り得ないと否定できないのが、恐ろしい所である。

 

 

「ほっほ、邪魔するぞい。」

「さっきも思ったけど、ここではちゃんとしてんのね。」

「これは手厳しい。」


モーリス翁はアリサから、いきなり失礼なことを言われていた。

うん、城内では確かにピシッとしている。

王宮魔術師って威厳がある。

 

ランクシャー滞在中の後期は、魔法の研究に没頭し、身なりに気を遣わなくなっていたしな。

髪や髭はボサボサ、服装もクタクタ、町人Aのジジイにしか見えなかった。

 

「だってランクシャーじゃ、単なる魔法バカだったじゃん。」

「更に手厳しいのぉ。」

「ま、ここでも単なる魔法バカではあるがな。」

 

一国の将軍と筆頭宮廷魔術師に、これだけ軽口を叩ける存在も珍しい。

 

いや、その前にこの二人が揃って、国王の部屋を訪ねるのでもなく、ましてやアイン子爵の部屋に訪ねるのでもなく、()()()()()()()()()()()()ことが異常なのである。

何でここ!?みたいな雰囲気が、護衛の騎士からプンプンするよ!

 

確かに話題性は高いが、単なる話題の人は王都には幾らでもいる。

少し名が売れた程度の人物に、一国の将軍と筆頭宮廷魔術師が会合するまでは至らない。

 

にも関わらず、国の重鎮二人がこの一団に執着する理由を、入口を警護する騎士は気になって仕方がない様子だった。

 

ちなみにそんな護衛騎士の様子に、この場にいる主要人物は気付いていない。

ナチュラルに、当然のように、この状況を受け入れていた。

 

「アリサ殿、そちらの麗人を紹介してくれるか?」

「あ、ノアちゃんの事?ゼムノアー、呼んでるよー。」

 

グリオン君がゼムノア君に興味を示す。

ゼムノア君は彼の方を向いて一礼し、

 

「・・・・ゼムノア・・。」

 

そう言ってまた壁を背にして佇んだ。

 

 

・・・・。

 

 

・・・・。

 

 

挨 拶 そ れ だ け か い !

 

「ごめーん、ノアちゃん人見知りなんだよねー。」

「い、いや、突然声をかけて済まなかった。」

 

なんかグリオン君の方が気を遣っていた。

マジごめん!その娘コミュ障なんですよ。

 

「ほっほっ、シャチョー様の仲間は皆面白いのぉ。」

「モーリス、何か用があって来たのでは?」

 

リティア君が彼等がこの部屋を訪れた目的を話す様にモーリス翁に促した。

 

こっちの妖精も宮廷魔術師を呼び捨てか!?

護衛の騎士が驚愕している。

 

「おっとそうじゃった。国王様からの伝言じゃ。晩餐会を用意したので、出席して欲しいと希望されておる。」

 

何故子爵ではなく付き人に招待を!?

護衛騎士の脳はオーバーヒート寸前だった。

 

「え?嫌です。」

 

リティア君が即断で拒否した。

護衛騎士が二度見した!

 

「ええー?いいじゃん、行こうよー。」

「アリサ、公爵家で散々怒られた事をもう忘れたの?」

「あー・・・うん、やっぱ止めとこうかなぁ、アハハハ・・。」

 

アリサはリティア君に嗜められて遠慮した。

ナイスだリティア君!

 

そして護衛騎士は、絶賛混乱中。

何で付き人がシェルダグラス公爵の所に!?

何で国王様からの誘いをこうも簡単に断る!?

 

「ボクも遠慮したい。」

 

ゼムノア君も断った!

王宮晩餐会人気無ぇ!

ま さ か の 全 員 に 拒 否 ら れ た !

 

「そうじゃろうなぁ。」

「仕方ない、断りを伝えておく。」

 

え!?納得!?通すの!?

普通は強制出席の晩餐会が、付き人の都合でいとも簡単に開催中止に!?

護衛騎士は驚愕で固まっていた。

 

「第一、食事に誘いたいなら自分で伝えに来れば良いのです。礼儀がなってません。いい身分です。」

 

いい身分なんですよ、その主催者は!

何で上から目線なのあの妖精!?

護衛騎士は憤っていた。

 

「そうね、賄賂の蜂蜜くれるなら出てあげてもいいけどね。」

 

こっちは公然と賄賂を要求した!?

護衛騎士は混乱の極致だった。

 

・・もう何も考えない方がいいぞ・・。

 

 

その後、滞在予定などを少し話して、グリオン君とモーリス翁は退室した。

 

そこですかさず退室後の二人の会話を傍受。

 

『将軍、あの鉢植えに鑑定はしたのか?』

『ああ、だが鑑定不能と返された。』

『シャチョー殿と同じ妖木の苗木じゃからのぉ。そんな事もあるじゃろう。』

『城の苗木には効くのだがな。』

『ふむ、興味深いのぉ。』

 

クルティナ君に頼んで、鑑定を無効にして貰った。

グリオン君の鑑定対策だ。

 

こんな芸当は、本来の鑑定スキルでは出来ない。

クルティナ君に乗っ取られている故の裏技である。

この様に有用な部分もあるのだ。

 

無用な部分が多いのだけれど!

 

 

 

 

晩餐会は断った。

 

しかし、晩餐会は開催された。

 

何が起きてるのか意味が分からなかった。

ただ、アイン子爵が「助けてくれ」と衰弱した姿で、弱々しく救援要請を願ってきたので、助けるしかなかった。

 

国王、よほど妖精が見たいようだ。

 

 

先程アイン子爵の部屋に来た騎士とアイン子爵の会話。

 

「では、妖精はランクシャー領民ではなく、単なる自由な民で、国王が招いた賓客として頂き、無礼は不問とさせて頂きたい。」

「問題ない。その旨は既に通達され、国王様の名で不問を頂いている。」


こっちも先手打たれてた。

多分、妖精の自由具合を知っている、モーリス翁からの進言だろう。

大変助かる。

 

「ご配慮、痛み入ります。」

 

国王に心酔してる人から見れば、誰でもタメ口なアリサなんて、失礼極まりなく、腹立たしくて仕方ないだろう。

出来れば、そんな面倒なヤツに絡まれたくないし、鉢合わせしたくない。

とにかく列席していない事を祈るばかりだった。

 

「アタシとしても助かるわー、亜人族のルールとか知らないしー。」

 

自覚があるのかアリサ。

だったらもう少し気を遣えば良いのだが、そんなつもりはないのだろうな。

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