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69.とんでもないモンスターを生み出してしまった

宿場町を後にして、再び王都への旅路を走る。

妖風盆栽+自称秘書の妖精の皮を被った残念女神+蜂蜜大好きギャル妖精✕使えない鑑定スキル連れ

という、異色の過ぎる護衛体制で、牛馬車は快調に進み、エリーベート領へと至った。

 

エリーベート領は端の方を掠めるだけなので、三時間程で通過出来てしまう。

進もうと思えば次のスカーゴルト領まで進めるのだが、本日はエリーベートの宿場町で一泊する事になっている。

 

王都への街道は往来が多く、街道を行く商隊や部隊が落とすお金や交易品は、エリーベート領にとっては、重要な財源。

その為、領主たる者、素通りはマズいそうだ。

ここで一泊し、エリーベート領に何かしらの益を落とさないと、後でバレたとき嫌味を言われるらしい。

 

少し早いが宿を取り、この日は町の散策で時間を潰す事になった。

 

 

「私は今からこの店で商談がある。夜までかかるだろうから、恐らく食事も店主と取るだろう。帰りも送って貰えるので、今日は自由にしてて構わない。宿で待っててくれ。」

 

どうやら店の主とアイン領主は馴染みの間柄らしく、護衛は不要と言われた。

アイン領主はそう言って店に入って行った。

 

「やったー!ねぇねぇ!街を見に行こう!」

 

アリサのテンションが急激に上昇。

この娘は旅を心から楽しんでいる。

 

「町を散策すると言っても、盆栽付き妖精2体は目立つのではないかね?」

 

実際、既に注目を集めている。

私達の周囲には、物珍しさに人集りが出来ていた。

目立ち過ぎて、店に迷惑になりそうなので上昇し、屋根の上に待避。

見物人達の「あー」という残念そうな声を置き去りに、その場を離れた。

 

「オジサン心配性ね。大丈夫だってば!」

「不安しかないのだが?」

 

どこに楽観視出来る要素があるのか教えて欲しい。

 

「シャチョー様、安心して下さい。優秀なる秘書がいますので、何も心配いりません。」

「余計に不安が増したのだが?」

 

主張する根拠が全く響かない。

 

『おのれ妖木!リティア様が問題ないと言っているのだ!どこに問題があると言うのだ!』

「クルティナ君の、その盲目さが不安なのだよ・・」

 

三人三様に根拠が皆無なのに、溢れ出る謎の自信。

彼女達の主張を聞いても、嫌な予感しか伝わらなかった。

しかし、私に彼女達を止める術はない。

 

「アタシに任せて!取り敢えずアソコに行ってみようよ!」

 

アリサがリティア君の手を引き、賑やかな広場へと飛翔する。

強制的に私も連れられてしまう。

 

広場には大道芸を披露している集団がいて、技が成功する度に大きな歓声が沸いていた。

私達はその周辺に広がっているバザーの天幕の上空からそれを眺める。

 

「さあ次は誰かな?この円の外に僕を出したら勝ちだよ!どんな手段でもいいぞー!」

 

地面まで届く大きな盾を構えたゴツい男が、半径1m程の円の中で、胡散臭い笑顔を振り撒いて挑戦者を煽っていた。

 

「よぉーし俺の番だ!」

「いいね!じゃあ料金銀貨1枚、まいどありぃ!」

「今8人失敗だから、勝ったら銀貨9枚だぞ!」

「絶対押し出してやる!」

 

なるほど、失敗した人の分だけ、賞金が増えるのか。

仲間の声援を受けて、鼻息の荒い挑戦者がタックルの構えをする。

 

「さぁ来い!制限時間は10だ!」

「うおりぁーー!」

 

挑戦者の突進が男の盾に衝突した。

ガン!と大きな音がしたが、盾の男はビクともしていない。

あの男、盾の下に杭を仕込んでるな。

あれじゃいくら盾に当たっても意味はなさそうだ。

 

「7、6、5・・」

「くっそぉーー!」

 

挑戦者は負けずに押し込むが、盾の男は動かない。

地面には小さな粒の砂利もあって、足が滑るのか押し切れない。

あの砂利も盾の男の仕込みなんじゃないか?

 

「3、2・・」

「これでどうだー!」

 

挑戦者は盾の縁を掴んで横に回り込み、体勢を崩そうとした。

しかし、時間切れだ。

 

「ゼロ!はい、挑戦失敗。また次の機会にどうぞ!」

「チクショー!」

「さあさあ、次は誰かな?今なら銀貨10枚だよ!」

 

賞金がどんどん上がっていくのが魅力的で、また挑戦者が立ち上った。

 

「僕が10連勝したら、賞金は銀貨3枚に戻るからね。今がチャンスだよー!次からは2人目までは銀貨3枚!その代わり盾は無し!3人目からは盾を使うけど賞金が1枚ずつ増えていくよ!」

 

なるほど、元手ゼロでおいしい商売だな。

 

「面白い事を考えますね。」

 

リティア君が感心していた。

 

「リティア君は参加してはダメだよ。反則過ぎるからね。」

 

彼女なら空中に持ち上げてしまえるからね。

浮かせてしまえば、相手は抵抗は出来ない。

同様に私も土魔法で跳ね上げてしまえば勝ちだ。

 

「あんな亜人族に飛びつくなんて絶対に嫌ですが、シャチョー様の命令ならば仕方ありません。私があのような筋肉ダルマに揉みくちゃにされ汚されるのを、愉悦の表情で眺められるのでしょうか?屈辱ですが、有り寄りの有りなプレイです。秘書として!」

 

ツッコミどころが多過ぎて処理できないから、大部分はスルー。

とにかく、どこに秘書要素があるのか、皆目見当が付かない。


「私は『参加するな』と明確に伝えたはずなのだが?曲解もここまで来ると清々しいものだね。」

「お褒めに与り光栄です。」

「リティア君の前向きさが怖いよ・・。」

 

嫌味を褒め言葉に脳内変換されたら打つ手がない。

 

「あれ?アリサは?」

 

思念でそんな会話をしていたら、アリサの姿を見失っていた。

あのトラブルメーカーはどこに行った!?

 

「次はアタシが相手よ!」

「「「おおおおおおお!」」」

 

「・・・。」

 

少し目を離すとコレ!(木に目はないけど!)

リティア君に呆れて、魔力感知の意識が薄れた間隙を縫ってのアリサ参戦。

 

体格差に怯むことなく、堂々の宣戦布告である。

勝利の算段でもあるのだろうか?

 

いや、あれは取り敢えず参加したかっただけだろう。

お祭り好きのアリサの事だ。

盛り上がればオッケー♪としか、考えてなさそうだ。

 

「・・これはまた驚きの挑戦者だね。参加料銀貨1枚だけど良いのかい?」

 

盾の男は突然の妖精の登場に困惑しながらも、挑戦者として扱うことで平静を装っていた。

恐らく心の中では「妖精族!?何で妖精族!?何で町にいるの!?しかも何で挑戦してんの!?あんな小さな身体で!?」と何故何故コールが鳴り止まない事だろう。

 

うむ、それは観客も含めて、皆同じ気持ちだと察するよ。

 

「勿論!それよりアタシの賞金準備しときなさい!」

 

しかも謎に過剰な自信。

観客がどよめく。

 

「ははは、妖精族なんて初めて見たけど、秘策でもあるのかな?」

「無いに決まってんじゃん!アンタ舐めてんの?」


無 い ん か い !

 

じゃあ何故出てきた!?

そして無駄に煽ってくる。

 

「妖精族は皆、君のように好戦的なのかな?」

「んー?ま、多分そんな感じね!」

 

テキトーに答えた!

絶対違うと思います!

アリサのせいで、妖精族の印象が捻じ曲がって伝わってしまいそうだ。

他の妖精族の名誉の為に、あの子は特殊であることを、弁明しておきたい。

 

「ルールは分かってるかな?」

「アンタが10数える間に、円の外に出せばいいんでしょ?楽勝よ!」

「言うねー。妖精族がどんな手を使うのか予想が出来ないけど、じゃあやってみようか!」

 

アリサが銀貨を渡して勝負が成立した。

 

「「「おおおお!いいぞー!」」」

ここ一番の盛り上がりを見せる広場。

気付くと人集りは凄い密度になっていた。

 

「頑張れ妖精のお嬢ちゃん!」


あ、ソイツ113歳のBBAですよ?

おっと、アリサが睨んでいる。

目を合わせないようにしないと。

 

「じゃあ行くよ、10・・え?」

 

男が盾を構えて踏ん張り、カウントダウンを開始した直後、アリサは高速で飛翔。

あれは風の魔法Lv1フォローウインドを利用した高速移動技だ。

フォローウインドは魔力を込めて範囲を絞り込むと、妖精を急加速させるには十分な、かなり強い風圧を得られる。

一瞬で上昇したので、男は面食らっていた。

 

そして弧を描いてから、アクロバットに急降下して男の後ろに回り込む。

地面に着地した後、すかさず魔法発動!

 

「エアロスプレッド!」

 

男の後方下から、風の魔法Lv2エアロスプレッドが炸裂。

この魔法、任意の場所で圧縮した空気を破裂させる魔法だ。

 

パン!と大きな音が鳴るので、アリサは相手を驚かせるだけの、舐めプ用ネタ魔法と認識していたようだが、私が「原理的に極めて強力な魔法だよ」と解説した事で、価値が一変した。

 

この魔法、魔力を込めれば込める程に圧縮力が高まり、破裂させた際の威力が強くなる。

有効射程は20~30m程度で、あまり離れると圧縮力が弱まる。

 

この魔法の何が強いのか?

それは”任意の場所で小さな爆発を引き起こせる”という点である。

 

殺傷力は弱いが、弱点や急所を突けば有効打になり得るのだ。

顔面で破裂させると目潰しや鼓膜破りにも使え、撹乱能力が極めて高い。

 

運用方法としては、予め魔法を仕込み、空気を圧縮して設置しておくのが強い。

「自分の前方1m程の場所」という様に位置を固定すると、移動しても自分の前方1m程を保って付いてくる。

あとは好きな時に起爆して、破裂させれば良いのだ。

 

すると、どんな事が起きるのかと言えば・・

 

パァーーン!

「おあ!・・あがっ!」

 

アリサは男の()()()()()させた。

 

何てえげつない事を・・。

 

グラリと力なく蹲る男に、アリサの無情なる追撃。

 

「アリサキック!アンド、フラッシュブレス!」

「おげぇ!」

 

風魔法Lv3フラッシュブレス

任意の物体を加速させる魔法だ。

アリサの突進キックでバランスを崩した男は、その慣性をフラッシュブレスによって増幅され、吹っ飛んだ。

転がりながら観客の壁に当たって止まる。

 

どんな手でも、円の外に出したら勝ちと言っていたが、あれは酷い。

 

「「「おおおおおおお!」」」

「すげぇぞお嬢ちゃん!」

「妖精族って強いんだ!」

 

広場は割れんばかりの歓声に包まれた。

小さな身体の妖精が、筋肉ダルマを瞬殺で圧勝したのは、誰も予想出来ない結果だったのだ。

 

「あれ魔法だよな?あんなに高位の魔法なんて初めて見たぞ!」

 

あ、やっぱりLv3の魔法でも人間にとっては高位って認識なんだ・・。

 

それより盾の男の股間は大丈夫なのだろうか?

急所の痛みで、下腹部を押さえて動けないようだ。

()()()()()になってないよね?

 

「楽勝!」

 

満面の笑顔で勝利宣言するアリサ。

再び歓声が巻き起こる。

 

その後、何とか立ち上がって青褪めた顔で賞金を渡す男。

今日はもう商売にならないだろう。可哀想に・・。

 

「っしゃー!酒場は何処!?銀貨10枚全部使うわよ!」

 

稼いだ賞金、全部飲み代に溶かすつもりらしい。

確か、銀貨1枚は、日本円にすると5千円くらいの貨幣価値だったはず。

 

観客が酒場に案内してくれる様子だ。

 

「オジサン、リティア!酒場に行こう!」

 

あー、こっちを見て手を振るんじゃない。

 

「うおおー!もう一体妖精がいるぞ!」

「すっげぇ!」

「おい、酒場に付いて行こうぜ!」

「お金持って来なきゃ!」


こうしてエリーベート領の町でも酒場は大盛り上がり。

ランクシャーの妖精は、その知名度を高めて行くのであった。

 

アイン領主が夜、宿に戻る際に、異様な熱気を伴う酒場が気になって覗いてみたところ、その中心をチラっと見て溜め息を吐いたそうだ。


更新再開します。

時間が出来ました。

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