68.出張アリティアライブ
アイン領主は宿を取り、アリサ達のリクエストに応えて、酒場へ食事に誘ってくれた。
実はアイン領主、アリサに甘い。
ランクシャー領のマスコットキャラ兼アイドルとして人気を博す、アリサとリティア君は、私が提案したフィギュア化が、商人達から好評を得ていた。
ランクシャーは妖精が棲む町として、全国的に噂になっており、観光客すら訪れるようになっていた。
妖精フィギュアは、お土産として人気があり、店頭に並んだ瞬間に売り切れる。
お陰で昨今は収益が伸び続けており、町の発展に妖精は切っても切れなくなっていた。
だから、アイン領主としては、妖精の町の象徴として、アリサとリティア君にはランクシャーの町に居付いて欲しいと願っている。
だが、リティア君はランクシャーの街に居付いているのではなく、シャチョーの木に居付いているだけ。
従って、アリサに愛想を尽かされると、もれなくリティア君も離れてしまいゲームオーバー確定。
その為、アリサには是が非でも街に居付いて欲しいと、厳しく接することが出来ず、甘やかしているのだ。
あのニートを甘やかすなんて、とんでもない!
それは悪手である事に気付いて欲しい。
甘やかすと簡単に図に乗ってしまうのがアリサだ。
またおデブ妖精にでもなったら、夢を壊された!とファンからクレーム入れられ、名声は地に落ちることをアイン領主は分かっていないようだ。
等と考えていたら、酒場に到着だ。
田舎の宿場町なので、この店が唯一の酒場。
行商人や地元の人々で賑わっていた。
私達は店に入りきらないので、店の前に置いてある簡素なテーブルと丸太の椅子に腰掛ける。
店に行く前から目立っていたが、着席すると余計に注目を集めていた。
うん、まぁ、普通に妖精が居るのでね・・。
身なりの整った若い男+妖精+妖精+妖風盆栽という異色過ぎる取り合わせは、大層目立っていた。
ざわざわ・・
我々が席に着くと、やはりジロジロと値踏みするような視線に晒された。
もしや歓迎されていない?
しばし緊迫したムードが漂っていたが、隣のテーブルの男が、険しい顔で話しかけてきた。
「やあ兄さん、そっちの妖精って本物なのかい?」
やはり連れの妖精が気になっているようだ。
相手が領主とは思っていないようで、緊張しながらも、気さくな感じで話し掛けられていた。
田舎町の酒場に、ランクシャー領の領主がいるとは思わないよな。
「ああ、私の町のマスコットだよ。」
「もしかして、ランクシャーか!?」
会話した男は、興奮気味にガバッと顔をアイン領主に寄せた。
「あ、ああ。」
若干引いた表情のアイン領主。
「すげぇ!本当に妖精が居たんだ!!」
「おおお!この町にも妖精が来てくれたぞ!」
どうやら全国的に噂になっているのは、本当のようだ。
酒場に歓声が響き渡った。
それからはもう、凄い騒ぎだった。
一気に火が着いたように客が座席に押し寄せた。
「ようこそ我が町へ!」
「これは奢りだ、呑んでくれ!」
気前のいいおっちゃんが、麦酒を奢ってくれた。
「えー?アタシ蜂蜜酒がいいなー。」
それを初対面の癖に無下に断り、リクエストまでするアリサ。
コイツの神経はどこまで図太いのだ。
「蜂蜜酒か!いいぞ、飲め飲め!」
「マジで!?じゃあ取り敢えず三杯ちょーだい!」
うわ、しかも三杯頼みやがった。
ないわー、アリサ、それないわー。
「げっ!?三杯!?」
「ギャハハハハ!やられたなバーグ!」
「いいぞ妖精のねーちゃん、飲め飲め!」
「下心見え見えなんだよバーカ!」
遠慮を知らないアリサの豪胆さが、何故かウケていた。
仲間からからかわれながらも、三杯の蜂蜜酒を頼んでくれたバーグ氏。
すんません、ウチの子が・・。
「妖精って酒が好きなのか?」
いえ、ソイツは蜂蜜なら何でも良いのです。
「スゲェ、俺達妖精と会話してるぜ。」
「喋れるんだな、妖精って」
正確には思念通話だけどね。
「俺、お嬢ちゃんの名前知ってるよ!アリナだろ?」
「全っっっ然違うわよバカ!ア、リ、サ!」
「ギャハハハハ!」
軽快快活なトークで、アリサは瞬く間に話題の中心になっていた。
実に場慣れしている・・。
「アリサちゃん、蜂蜜酒まだ飲むぅ?」
「飲む飲むぅー!やだ、なにここ最高じゃん!」
すでに駆け付け三杯を飲み干したアリサに、更に蜂蜜酒が貢がれる。
ホントによく飲むなコイツ。
ランクシャーでも、酒場のアイドルになってる意味がよく分かる。
「こっちもあるぞ!」
「OKアンタ達、じゃんじゃん持って来なさい!」
完全にアリサが無双してた。
客はアリサの一挙手一投足に夢中だ。
見た目はかわいいけど、その子、113のBBAだから・・って、アリサ、何故睨む!?
「リティアちゃんは飲まないの?」
「わたしはシャチョー様の汁しか飲みません。」
真性の変態か・・。
「シャチョー様って、その不気味な木のこと?」
「ええ!かわいいでしょ!」
「ま、まぁ・・。」
君、苦笑いはやめてくれ。傷つくではないか。
「こっちの妖精は変わってるなぁ。」
「フォレストフェアリーだから、木が好きなんじゃないか?」
常に私の下を離れず、木を持ち運んでいることを、種族的な特徴と勝手に解釈してくれていた。
お陰で私は怪しまれずに済んで助かる。
「変わってるけど、本当に綺麗ね。」
アリサは男ウケが良いが、反対にリティアは女性ウケが良かった。
彼女は基本的には大人しいし、黙っていれば美人なのだ。
動のアリサに、静のリティアなのだ。
「絶世の美女って、こんな姿なんだって思うよ。」
「女神様みたいねー。」
すみません、女神様なんです。
とても残念ですけど。
「明るいアリサちゃんと、おすましなリティアちゃん。」
「見てるだけで癒されるよなー。」
二人とも美人だからね。
見た目だけは良いのだよ、見た目だけは!
「君達、ランクシャーに来れば、アリティアファンクラブという団体が居てね。加入すると色々な特典があるよ。」
「行くよ!」「絶対行く!」
アイン領主がここぞとばかりに売り込んでいる。
二人のマネージャーかね君は・・。
するとリティア君の下に、アリサが飛んできた。
「ほら、リティア!二人で飛んでるとこ見たいんだって!行くよ!」
「アリサ一人で良いでしょ?」
「二人でって言ってんじゃん。」
「わたしはシャチョー様の下を離れる訳には・・」
渋るリティア君に、アイン領主が提案する。
「少しだけなら良いだろう。私がシャチョー殿を預かっておくから。」
『私なら大丈夫だ。行ってきたまえ。』
「んー、では頼みましたよ。」
アイン領主に私の鉢を預かって貰い、アリサに手を引かれて飛んで行くリティア君。
こうしてリティア君とアリサの飛行ショーが始まった。
実はこれ、ランクシャーの酒場では、大人気のショーなのだ。
アリティアファンクラブ考案の、彼女達の魅力を最大に引き出すショーだ。
アリサとリティア君が上品にお辞儀して、その後急上昇。
「おおおー!」と歓声が上がる。
ハート形を描くように飛び、その後は観客の頭上をサービス飛行。二体の妖精が、交差しながら縦横無尽に飛び回るのは、迫力があって見応え十分だ。
「凄ーい!」「綺麗ー!」
観客は大盛り上がり。
酒場の店員も喜んでいる。いつの間にか店は超満員だった。
二体で錐揉みしながら客の上空を一周したり、連続で宙返りしたり、観客の間を縫うように飛んだりと、アクロバティックで、アーティスティックな飛行ショーなので、かなり見応えがある。
フィギュアスケートを見ているようだ。
そして、この飛行ショー最大の見所が、
「ぶべっ!」「うわあ!」
ドジなリティア君が、必ず観客とぶつかるところ。
たまに柱にぶつかったり、グラスに突っ込んでお酒まみれになったりと、彼女のドジっ娘ぶりは、鉄板の笑いをとれる。
あと、妖精にぶつかられた人は、何故か喜ぶ。
「ひーん!顔面強打しましたー!」
「だ、大丈夫か?」
ぶつかられた男性がリティア君を心配する。
「問題ありません!」
「リティア、鼻血鼻血!全然大丈夫じゃない!」
「わははははは!」
明るく社交的なアリサと違い、じっとしていると、上品な美女って印象で、近付き難いオーラを放っているリティア君だが、このショーをやることで、彼女の天然ぶりが発揮され、一気に親しみ易さを獲得することになる。
このショーの後には、大抵リティアファンとアリサファンの二大派閥が生まれるのだ。
さすがはファンクラブの面々が考えたショー。
確かに二人の魅力を引き出している。
ラストはアリサとリティア君が手を繋いで、くるくると回りながら着地してお辞儀で終演だ。
お約束のごとく、リティア君が目を回してコテンと倒れ、フラフラと私の元に戻ってきた。
その姿もコミカルで、これによってまたリティアファンが増える。
「ひーん!疲れましたー!」
「頑張ったねリティア君。偉いぞ。」
「エロい!?」
「キミの耳はどうなっているのだね?」
その後も私達のテーブルには、妖精を一目見たいと、ギャラリーに囲まれる事になった。
私はひたすらに、単なる植木の振りをする。
「凄いなランクシャー!」
「行ってみたいね!」
図らずも、この旅がランクシャーの妖精出張サービスとなり、エレングレイド王国は空前の妖精ブームとなるのだった。
そして、その聖地がランクシャーと認定され、妖精を一目見ようと観光客が雪崩れ込む事となる。
それは、今この場に居た行商人達により広められたのだと、後になって知った。
えっと、キャンプと登山とブログが忙しくなったので、少しお休みします。
続きは書いてるけど、整えてないんです。すんません。




