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67.マッチポンプと予定調和が不憫過ぎたので救済を

その後も旅は順調だったのだが、アリサを始めとした三バカ娘が駄々をこね始めた。

 

「うー、つまんない!お酒飲みたい!蜂蜜食べたい!」

 

アリサは早々に旅に飽きたようだ。

 

「うー、同意ですぅ!シャチョー様抱き締めたい!シャチョー様食べたい!」

 

君は休憩の際に、常に抱き付いて、汁を吸ってるではないか・・。

 

『退屈だ。リティア様吸いたい!リティア様食べたい!』

 

鑑定スキルが一緒に旅してるみたいに言うな!

仕事してろ!

 

「お酒!お酒!蜂蜜!蜂蜜!」

「シャチョー様!シャチョー様!汁汁汁!」

『リティア様!リティア様!汁汁汁!』

「えーい、うるさーーーい!」

 

汁汁言うな!

コイツら、護衛の旅だと何度言ったら分かる!

 

「そろそろ次の町じゃん?酒場に行こう!」

 

アリサは蜂蜜酒にハマっている。

 

「そうですね!酒場でシャチョー様に絡み酒で、絡まります!」

 

リティア君、君は酔わない。

それと絡み酒は、物理的に絡まらない。

 

『それまでが退屈だ。いっそ空間を繋げてしまっては?』

「クルティナ君、そーゆーのやめて。」

 

無駄に超常現象を起こさない。

常識無視するのやめて。

 

『では、ちょっとしたアトラクションを用意します。』


この鑑定スキル、また不穏な事を言ったぞ。

 

「待ちたまえ。君は一体何をするつもりだね?」

『刺激を少し。旅のスパイスと呼ばれる、お約束のアトラクションですが何か?』

「もう分かった!それ以上言わなくていい!どうせ山賊だろ!」

『妖木の割に鋭いな。』

 

ダァー!やっぱり山賊だ!

異世界+旅+馬車=山賊の鉄板方程式。

 

普通は、そんなに都合よく(悪く)山賊が襲って来る事など、そうそうない。

それこそ呼び込みでもしない限り。

 

クルティナ君の事だ。何か超常的に山賊を呼び込む事が出来るのだろう。

護衛の仕事を請け負った人物が、山賊を呼び込むなんて前代未聞だぞ!

 

「不要!余計な事をするな!」

『もう発動した。』

「何を!?そして、せめて許可を取りたまえ!」

 

過去形が多い!

説明が足りない!

鑑定スキルのクセに説明不足って致命的だろ!

 

「ちなみに何をしたのだね?」

『この世界には、運命補正スキルという便利な強制確率変動スキルがある。一時的に起動した。』

「余計な事ばかりするな君は!」

 

神様権限を濫用するな!

 

あとそんな迷惑なスキルがあるのか。

絶対に欲しくない!

 

『この先、20km地点にて、エンカウント予定。』

「とんだマッチポンプ!」

 

仕方なく混乱を招かない様に、アイン領主にはお断りを入れた。

一応真実は隠して、アリサが山賊の蜂蜜を盗んで来たので、この先で待ち伏せに合いそうだ。

という設定にしておく。

「なんでアタシのせいなの!?」と文句言われたが、元は君が暇だと騒ぎ始めたのが発端だ。

その程度の不名誉くらい被りたまえ。

 

「自由過ぎるな・・。」

 

アイン領主がドン引きしていた。

自分の護衛が危険を手招きするのだから、本来なら呆れる他ない失態だ。

だが、私がいるなら安心なので、ちょっとした余興と思って楽しむ、と余裕の態度だった。

 

いや、山賊の襲撃を演劇みたいに言わないで頂きたい。

 

「じゃぁ、山賊退治で暇潰しよ!」

「クルティナ、たまには良い仕事しますぅ!」

『はい!有難き幸せ!』

 

いい事したみたいに言うな!

 

くそぉ、何故私ばかり苦労するのだ!

おのれクルティナ君、覚えてろー!

 

 

 

 

予定通り山賊が現れた。

山賊との遭遇が、予定通りというのが嫌過ぎる。

何が悲しくて私は、遭いたくもない山賊に、予定通り遭遇しなければならないのか?

 

原因が私の鑑定スキルという、意味が分からない状況なのが救われない。

「クルティナ君は邪神説」がいよいよ有力となってきた。

 

「オラオラ!そこの牛馬車、止まれー!」

「ここは通行止めだー!」

 

数人の山賊が林から飛び出して道を塞ぐ。

牛馬車はゆっくり、滑らかに停止した。

予定通りなので、全然驚かない。

 

山賊は雑多な亜人族の寄せ集めだった。

リーダー格は、屈強な牛人族の大男。

その他にも、なかなか力の強そうな男衆だ。

 

粗末な剣や斧等で武装しており、盾持ちが多い。

周囲を包囲して、ジリジリ寄ってくる。

 

クルティナ君、彼等は何と言う山賊なのだね?

 

『この周辺を縄張りにしている名もない山賊。戦闘力たったの5、ゴミ、カス、ザコ。リティア様にボコられるがいい!さぁリティア様!華麗に!スタイリッシュに!汚らわしい山賊をフルボッコにする姿を、私にお見せ下さい!』

 

楽しそうな声。

クルティナ君がノリノリだ。

完全にアトラクションとしか思っていない。

巻き込まれた山賊の方が憐れですらある。

 

しかし、そのリティア君と言えば・・

 

「キャー!怖ーい!シャチョー様ぁ!ひしっ!」

 

クルティナ君よりノリノリだった。

怖がる振りをして、私を前に出して、後ろから抱き付いていた。

枝が折れるので、強く抱き付かないでくれたまえ。

 

「クルティナ君?最大戦力がこんな事言っているが?」

『おのれ妖木!リティア様から離れろ!』

 

何故私が怒られるのだ?

 

山賊は乗っているアイン領主に出てこいと喚いている。

御者の従者は、山賊に捕まっているにも関わらず、アイン領主、悠然と中で本を読んでいた。

 

いや、挑発しないように!

 

「おい!コラァ聞いてんのか!」

「もういい、扉を壊して引き摺り出せ!」

 

あー、コラコラ、それは許さないよ。

 

光魔法Lv5 フォトンレイザー弱

 

太陽光を収縮した高熱のレーザーを照射し、山賊全員の手を焼いてあげた。

 

「熱ちぃ!」「ぎゃっ!」

 

思わず武器を取り落とす山賊達。

その隙に逃げる従者さん。

すると車内から出てくるアイン領主。

 

「これやったのはてめぇか!」

「そうだ。これ以上痛い目に遭いたくなければ、即時立ち去る事だ。」

 

アイン領主、私の正体を隠す為に一芝居打ってるようだ。

空気が読める人は助かる。

 

ところが、そんな空気を読めない残念な娘がここに居るんです。

 

「ちょっ!シャチョー様の手柄を横取りとは、良い度胸です!」

 

リティア君怖がる振りはもう良いのかね?

  

「よ、妖精!?」

「もう一匹いるぞ!」

「妙な木をぶら下げてやがる!」


妙ではない。私だ。

 

アイン領主は、出番は終わったなという表情で、やれやれと馬車の中に戻って行った。

いや、緊張感!襲撃されてるのだよ!?

それと、ウチのバカ秘書が空気を読めず、なんだか申し訳ない。

 

「今の魔法はシャチョー様の光魔法 フォトンレイザー。狙った場所は外しません!わたし達の護衛対象を、よくも襲いましたね。死をもって償う事となると知りなさい!」

 

いや、何だか君も私の手柄を横取りする勢いで目立ってるが?

 

それに、護衛対象を襲わせたのは君達だからね!?

言ってる事ムチャクチャだよ!

 

それに死をもって償う程の事、全然されてないから。

原理不明だが、お呼び立てして、わざわざ出向いてくれた人を殺すなんて、どんだけ鬼畜なのだ。

私は彼等を殺める気は無いからな!

 

 

「アタシはフォレストフェアリーのアリサよ!護衛対象への狼藉、見過ごせないわね!今すぐ土下座するなら、許してやってもいいわ!さぁ!土下座しなさい!」

 

アリサまで啖呵切って前に出てきた。

何故そんなに強気なのだ?

普段魔獣退治の時は、君達私の後ろに隠れているではないか。

 

「相手が悪かったわね!アンタ達全員フルボッコにしてやるわ!」

「わたし達を襲撃した不運を地獄で後悔するといい!」

 

スゴい勢いで煽り始めた。

しかも身振りが無駄にオーバーで芝居じみている。

 

分かった、コイツら演劇の主人公気分を味わいたいだけ!

つまり目立ちたいだけだ!

 

完全に山賊をアトラクションとしか思っていない。

 

 

『リティア様に逆らう下郎め。私の聖なる歌声で改心させてやろうか?』

「クルティナ、それだけはやめて!」

「クルティナ、駄目よ!絶対に駄目!」

「クルティナ君、早まるな!」

 

全員が一斉に必死に止めた。

お願いだからやめてあげて!

ここら一体が死の大地と化すから!

 

 

山賊達は初めて見る妖精に戸惑っていた。

何故か謎に自信満々なので、何かあるのか?と疑心暗鬼に陥っていた。

 

「妖精を護衛に雇ってるなんて、聞いたことねぇ。」

「俺初めて見たぜ。」

「あんな小さいヤツが、さっきの魔法を放ったのか?」

「妖精ってヤベェのか!?」

 

未知の生命体に畏怖の感情が芽生え始め、士気が下がっていく山賊達。

都合がいいな。

ならば、ここで脅しを入れよう。


土魔法Lv2 グランドアッパー連続発動

 

私はグランドアッパーを山賊の頭領に向けて放つ。

 

ただ、この魔法を使うと、街道がボコボコになる弊害がある。

その為、第一射を頭領の背後から、腰を押すように、ソフトな勢いで発動。

 

「おわ!?」

 

ドスッと腰を押された頭領が、街道の脇に踊り出た所で、

その周囲に鋭い勢いで射出した、四本の土柱を出現させた。

 

ドドドドッ!

「!!?」

 

自分の目の前に突き出た、恐るべき勢いで飛び出す土柱に、山賊の頭領は冷や汗を垂らし青褪めていた。

 

「今のは牽制だ。警告は素直に聞いた方が身の為だぞ?」

 

私は更に警告をした。

 

「どーよ!判ったら土下座よ!」

「ふふふ、シャチョー様の強さにひれ伏しなさい!」

『いえ、リティア様の美しさにひれ伏すがいい!』

「何故君達が威張っているかね!」


何もしてないよね?


「こ、この程度で俺達がビビると思ったか!」

「ふむ、では実際に一人ずつ減って貰おうか。」

 

可哀想だが、実力差を明示しないと、山賊達の被害が拡大する。

この程度の頭数と武装では、バイルランド国王軍の軍勢を手玉に取る我々には遠く及ばないのは明白だ。

だが彼等は、そんな事は知らない。

私達の事を、少人数でおいしいカモ程度にしか見えていないだろう。

 

君達が対峙しているカモは、妖精にカモフラージュした、戦闘爆撃機かもしれないぞ?

危ないから早く逃げなさい。

 

そこで、数人は痛い目に遭って貰い、そう感じて貰う。

勝てない事を悟って早々に撤退して貰う事にした。

 

光魔法Lv5 フォトンレイザー

 

「うぎゃっぐああ!」

 

山賊の一人に熱線攻撃を3本同時攻撃。

手の甲、脚の裏、背中と3点を焼く。

死角から防御不能の超高熱熱線照射。

突然襲った激しい痛みに転げ回る山賊一名。

 

山賊なので、余罪は多くあるはずであり、遠慮は要らないのだろうが、私達は実質被害を被っていないので、なんだか申し訳なく思ってしまった。

クルティナ君の暴走で、おびき出されてしまった不憫な山賊なので、情けをかけて軽い怪我で済む程度に威力を抑えておいた。

 

それでもかなり痛いだろうけど・・申し訳ない。

文句があるなら、クルティナ君に言いたまえ!

 

天に声を届けないといけないという、無駄に高度なクレーム申告が必要だが・・。

 

「サンギ!」

「この野郎!」

 

山賊も慌てて反撃で弓矢を放つが、上空に退避しているアリサには届かないし、私とリティア君には魔力障壁を張っているので当たらない。

 

「では、次は2人同時でどうかな?」

 

私の攻撃宣言と同時に、先程弓矢を放った二人が倒れ込む。

照射を受けた場所の服に火が着いていた。

 

「ギャアー!」「あちぃぃ!痛ぇ!」

 

先程の山賊と全く同じ場所を狙撃。

それも同時にだ。

流石にその異常性に気付いた頭領は、慌てて両手を振って降参アピール。

 

「わ、分かった。待て!ここは退く!」

 

山賊の頭領がそう告げたことで、場が収まった。

 

「賢明な判断だ。」

 

武器を捨てた山賊達は、いつ狙撃されるか不安で怯えていた。

全員見回すと、子供までいるではないか・・うーん、捕らえて引き渡すにしても、旅の邪魔になるな。

 

そこで私は山賊達に相談を持ち掛けた。

 

「ところで君達、相談なのだが・・」

 

 

 

 

「上手く馴染んでくれると有難いのだが。」

 

私は山賊達に、ランクシャー道路公団に入らないか誘ってみた。

腕っぷしと体力がありそうなので、人手不足を感じていた道路公団に適任だと感じたのだ。

 

道路公団の連中は、同じ強面で腕っぷしも強い。

しかも気が良い奴等なので、多少の荒くれ者でも、気にせず仲間に受け入れてくれるのではないかと考えたのだ。

 

すると、意外にも山賊達は前向きに考えてくれた。

どうやらアジトに、女子供もいるそうで、取り締まりもキツくなって来ており、このままでは子供達を養えないと感じていたそうだ。

 

元は狩猟や農民で、災害があって土地を放棄し、仕方なく山賊をやっていた身の上。

稼げる仕事があるのであれば、その方が助かると語っていた。

 

この都合の良さも運命補正スキルの影響か?

 

丁度よく、ランクシャー領主がいるので、その場で推薦状をしたためて貰い、後日峠辺りで仕事している牛人族に見せれば、正式に働けると伝えた。

 

「本当か!?ありがてぇ!」

 

領主が保証人となってくれたと聞いて、山賊達は喜んでアジトに戻って行った。

まぁ、逃げられても、ランクシャー領に損害は無い。

道路公団に加わって貰えたならラッキー。その程度の話だ。

 

山賊を逃がすのは良くないかもしれないが、ここはリバーエイカー領なので、私達が他領の問題を率先して片付けなければならない義務もないのだ。

それより旅を進めたい。

 

 

「さすがはシャチョー様です。見事な大岡裁き!」

 

この世界に来て、大岡裁きという単語を聞くとは思わなかった。

 

「なかなか面白い出し物だったね!」

 

アリサ、そんな評価をするんじゃない。

クルティナ君が調子に乗るではないか。

それから出し物でもない。

 

『たまにこうした催しを開くのも良いな。』

「良くない!君は鑑定スキルの仕事をしていなさい。」

 

クルティナ君から、運命補正スキルの操作権限を取り上げたい。

 

 

 

 

その後、しばらく進むと次の町が見えた。

 

「あっ!町が見えた!酒場~♪酒場~♪」

「絡み酒~♪絡み酒~♪」

『絡みティア~♪』

「クルティナ君は物理的に無理だろ・・。」

 

完全に酒場に行くつもりだ。

経験上、この流れは止められない。

 

アリサは駄目だと言っても、勝手に酒場へ行くだろう。

彼女を放置するくらいなら、一緒に行って目を付けている方がマシだ。

何をやらかすか、分ったものではない。

 

リティア君は駄目だと言うと、泣き出して鬱陶しい。

リティア君が泣くと、クルティナ君が暴れるので、更に鬱陶しい。

 

もう酒場に行きますか?という問いに、選択肢は「はい」しか出ない。

「いいえ」を選ぶと、ストーリーが進行しないのだ。

 

ああ、大丈夫だろうか?

きっと騒ぎになるだろうな。


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