表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/186

65.私、旅立ちます。

私は再び幼木の姿に戻ってしまって、魔力操作で枝を動かす練習を重ねていた。

魔力操作スキルのレベルが上がったので、練習中アリサに笑われる事も少なかった。

 

「えー?つまんない。あのビクンってなるの期待してのにー。」

「私は君を笑わせる為に練習してたのではないからね?」

 

暫く練習していたら、本体までスムーズではないが、必要な動作は出来るようになった。

まあ、腕力1ではこんなものだろう。

 

 

 

 

そして、私が小さくなった事は、主要人物には伝えられた。

 

ザイン君は、

「おー!そりゃいい!じゃぁアッチの木の方は不在なんだな。」

「私の留守中に葉を勝手に採らないように!絶対採らないように!」

「それは採れって言ってんのか?」

 

フリではない!

 

ダムラ君は、

「これで吐いても旦那に怒られない!」

「だから私の木の下に吐くんじゃない!」

 

ガイム君達は、

「何だって!?じゃぁ次から荷車いらねぇな!」

「やっと滞ってた魔獣の討伐が再開できらぁ!」

「よし、魔獣狩りに行くぞ!」

 

概ね、自分達の都合の良い方向で歓迎されていた。

私がいいように使われているのがよく分かる感想だった。

 

御 神 木 の 扱 い が 雑 !

 

私の事、便利なアイテムと思ってるよね?

 

 

 

 

今は領主邸の応接室のテーブルに私は鎮座している。

視覚スキルで、中は見ているが、何気に初めて物理的に入室した。

 

「爵位授与式に王都へ呼ばれたよ。」

「それはおめでとう。では、暫くは戻れないね。」

「そうだな。その間はザインに上手いことやっておいて貰うよ。」

 

アイン領主とザイン君は、初めは殺し合いをする仲だったが、今では互いを信頼しており、当時の因縁は全く無くなっていた。

色々あったっからね。いがみ合っている暇なんて無くなったのだろう。

  

「そこでなのだが、王都までの道程、シャチョー殿に護衛をお願いしたいのだが、引き受けて貰えないか?」

「私か?何故私なのだ?ガイム君やダムラ君でも良くないかね?」

「彼等には仕事がありますので。」

 

なるほど、私は無職だ。

 

「つまり、暇をもて余している私が適任と。」

「有り体にいえば、そう言う事です。それに、シャチョー殿が護衛なら、何も恐くない。今の姿ならお願い出来るのではないかと考えました。」


うーむ、確かに暇なので引き受けても良いかな?

ちょっとこの世界の観光をしても良いかもしれない。

 

「判った。引き受けよう。」

 

私にも利になる話なので、報酬は格安にしておいた。

 

 

 

 

私はアリサとリティア君に、王都行きを伝えたら、二人とも喜んだ。

 

「面白そう!亜人族の国って、あんまり見たこと無いのよね!」

 

アリサはノリノリだ。

そうだ、彼女には何か街で買ってあげても良いかもな。

何だかんだと長い付き合いだ。

日頃の感謝も含めて、プレゼントだ。

 

「わたしはシャチョー様とハネムーンに行けるのが嬉しい!」

「リティア君、ツッコまないからね?」

 

移動中、私はリティア君に運んで貰う。

まずは、その時の私の乗り物を作っておかねば。

空から落とされたら、今の私の耐久力だと堪らないからね。

 

 

 

 

出発の前日。

 

私は特製の植木鉢に植え替えて貰った。

光合成と魔力を吸って生きている私に、土はあまり要らないのだ。

その為、鉢を底が浅く、小さめな物にして、軽量化を図り、私の動き易さにも考慮した形状になっている。

 

魔力操作により、私は枝だけは、ある程度動かせるようになった。

自分で移動したい時は、枝を使って、少しの距離なら移動出来る。

そこで、鉢の裏にローラーを仕込んで、車椅子のようにして貰った。

その為、枝が地に届き易いように、浅い鉢が好ましい。

 

そして、土の代わりに詰めたのがアダンの実だ。

魔力が豊富なので、緊急時の非常用魔力貯蔵庫として活用する。

吸収スキルで、スグに補給が可能だ。

 

また、リティア君に運んで貰う際は、吊下げて運んで貰う。

ヘリコプターの下に箱をぶら下げた様な感じだ。

 

幹にベルトを巻き、そのベルトと植木鉢を固定。

そして、植木鉢も吊下げる箱にベルトで固定。

リティア君には、腰と肩掛けにベルトを巻いて貰い、それに吊り下げて貰う。

これは私が絶対必要!と強く望んで取り付けた。

 

あの残念秘書、絶対ウッカリ私を落とすに決まっている。

その為、互いを強固に結び付け、一蓮托生とした。

 

矢で貫かれても落ちなかった彼女である。

これなら何があっても落ちる事は無い。安心だ。

 

「シャチョー様!それでは揺れが酷くないですか?」


彼女にぶら下がる形なので、どうしても揺れる。

だが問題ない。

 

「木には三半規管は無いので、別に酔ったりはしないから問題ない。」


木に乗り物酔いは無縁だ。

唯一怖いのは、飛行中の強風で、葉が痛まないか心配だった。

だが、魔力障壁を張っていれば守れると判り、解決した。

 

「わたしの身体に直接括り付けて頂いて構いませんのに・・ハァハァ」

「気持ち悪いから嫌だと断ったはずだが?」

 

そんな事をしたら、君は絶対、頬擦りしたり、舐めたりするだろ?

だから、涎を垂らしながらクネクネするのをやめたまえ。

 

「若しくはシャチョー様の身体に私を括り付けて頂ければ・・そ、それ良い!ハァハァハァ!」

「それでは動けないではないか。」

 

恍惚の表情でモジモジするのをやめたまえ。

 

「どんな姿で括り付けられるのでしょう!まあ、わたしったら!わたしったらぁー!」

「いいから話を聞きたまえ。」

「リティアって、アタシからみてもドン引きだわー。」

 

残念女神は、どこまでもマイペースだった。

 

『リティア様を妖木に括り付けるなど、そんな背徳的な事、絶対に許されるかー!羨まし過ぎる!今すぐ代われー!』

「括り付ける前提で話を進めるのをやめたまえ。あと、クルティナ君、うるさい。」

 

まだ括り付けてもないのに、何故私が責められるのだ?

私の回りには、マトモな人物がいない。

 

 

 

 

「では、離陸しますね。」

 

アイン領主は牛馬車で向かうが、私達は空の旅だ。

牛馬車はガタガタ揺れて、乗り心地が悪い。

護衛として哨戒も兼ねるので、上空の方が都合が良いのだ。

 

リティア君が飛び上がると、私も吊られて浮き上がった。

初めて空を飛んだときは感動したものだ。

木になって、空を飛べるとは思っていなかったからね。


この小さな身体も悪くないものだ。

 

 

領主の牛馬車を下に見ながら、私は上空からの風景を楽しんでいた。

この世界は自然豊かで美しい。

 

ガンプ大森林から、ここまで来る途中も、凄い景色を見てきたが、人里に近い場所でも緑が豊かだ。

 

遠くには雪を被っている高い山々も見える。

ランクシャー領に流れ込む大きな河川も、雪解け水が水源だ。

そう言えば河川の治水工事もしておいた方がいいな。

 

「シャチョー様、寒くないですか?」

「いや、問題ない。太陽光も当たっているから、極めて快適だよ。」

 

私達はアイン領主の牛馬車の上空、200~300m辺りを飛行している。

牛馬車に随行する形なので、速度は緩やかだ。

特段風も強くなく、眺めも良くて快適な空の旅だった。

 

「うふふ、なんだかキャビンアテンダントと乗客の会話みたいですね。」

「ははは、確かにそうだね。」

 

リティア君なら、前世の話題でも遠慮なく出来る。

 

「では今晩はCAプレイですね!むふふふ・・」

「何故君の頭の中は、常時ピンク色なのかね・・。」

 

どんな事を妄想しているのやら・・

私は木なのだが・・。

 

『リティア様とのCAプレイ!』

「クルティナ君、落ち着きたまえ。」

 

「CAプレイって何ー?」

「アリサ、君は知らなくて良い。」

「えー?」

 

そんな馬鹿馬鹿しい会話をしながら旅は続く。

 

眼下には私が整備した街道が伸びていた。

以前の閑散とした往来が嘘のように、今では多くの行商の牛馬車が往来していた。

 

これから向かうのは隣のリバーエイカー領だ。

そこで一泊する。

その後はエリーベート領、スカーゴルト領、シェルダグラス領を越えて、王都エレングレイドへと至る6泊7日の旅となる。

 

ランクシャー領は南の辺境なので、王都はなかなか遠い。

この距離を駆けつけて来てくれる王国軍には、頭が下がるな。

 

と思っていたら違った。

私は思念通話があるので、牛馬車に同乗してなくてもアイン領主と会話が可能。

アイン領主曰く、王国軍は本部だけ王都にあり、本隊は衛星都市に駐屯しているらしい。

基本的に王都は国王軍が守っているので、王国軍は要らないのだ。

 

王国軍は、専ら辺境の領地からの要請を受けて派遣されるので、辺境と王都の中間地に拠点を構えていると知った。

なるほど、合理的だ。


 

 

 

休憩時間は地上に降りて水分補給。

快適に旅を続けていた。

 

暫く行けば峠に入り、その先で私が整備した街道は終わっている。

そこでは、リバーエイカー領から街道整備を受注した、ランクシャー道路公団が工事をしていた。

労いの言葉をかける為に、私達は先行して道路公団に接触する。

アイン領主の牛馬車は、今峠を登っているので、暫くは追い付かないだろう。

 

「やあ、精が出てるね。」

 

私は公団の面々に声をかけた。

 

「え?シャチョー様の声?」

「ご神木様か?どこだ?」

 

彼等には私が小さくなった事は伝わっていないので、何処に居るのか判らないようだ。

 

「上だよ、上を見たまえ。」

「あ、リティアたん!」

「アリサたんもいるぞー!」

「シャチョー様は?」

 

アリティアファンクラブが目ざとく見付ける。

 

「ヤッホー!頑張ってるー?」

 

アリサが下に降りて行った。

私達も降下する。

 

「おうよ、シャチョー様みたいな早さで進められはしないが、同レベルの街道をキッチリ仕上げてんぜ!」

 

そこで私は今の姿をお披露目した。

 

「え?シャチョー様?何だその姿!?」

「旅をするので、縮んだのだよ。」

 

実際は違うが、そうしておく。

 

「相変わらず何でもアリだな。」

「流石ご神木様。」

「目立たなくて良いんじゃねぇか。ハッハッハ!」

「でも、その姿なら不気味さは無いな。」

「無いか?」「あるだろ?」「あるなー。」

 

いや、そこはお世辞でも無いと言いたまえ。

 

牛人族達こそ、相変わらずの雰囲気だ。

見た目はイカツイのに、気の良い連中である。

 

「差し入れだ。これでウマイものでも食いたまえ。」

 

私はリティア君に言って、私の財産から硬貨を差し出した。

 

「うおっ、いいのか!?」

「ああ、良い道を作ってくれ。目指すは王都までの高速道路だ。」

「高速道路か・・いいなそれ!よーし、お前ら、気合い入れるぞー!」

 

少し時間の陣中見舞いで、軽い談笑をする。

やはり私がいないと、工事がなかなか進まないので、人手が欲しいと言っていた。

この旅の途中で、ランクシャーに移民を希望する良い人材がいれば斡旋しよう。

 

アイン領主の牛馬車が追い付いたので、会話を切り上げて先を急ぐ

峠を越えれば、そこはもうリバーエイカー領だ。

 

私は初めての他領。

どんな街なのだろうか。

楽しみである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ