表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/187

62.勝利の宴と呼んでない来訪者

その晩、勝利の宴で、ランクシャー領は大いに盛り上がった。

例によっての乱痴気騒ぎだ。

 

「凄いよな!俺達だけで、あの数の敵を退けたんだぞ!」

「城壁って倍の兵力も跳ね返すんだな。」

「でもやっぱご神木様の作戦があっての話だろ。」

「ああ、違ぇねえ!」

「ご神木様はこの町の英雄だ。」

 

アイン領主は大盤振る舞いで、街にある全ての酒樽を無料開放。

教会前の広場は、老若男女問わない酔っ払いで埋め尽くされていた。

 

「それだけじゃねえよ、俺達も強くなったんだ。」

「ラートの奴、敵と一騎討ちして押しきったもんな。」

「あーそれ見た見た!相手アレだろ?あんだけ石ぶつけても平然と城壁登って来たスゲぇのいたな!」

「敵ながらカッコ良かったわ。」

 

確かに何人か梯子で城壁の上まで到達した敵兵がいた。

それも危なげなく城壁の上で撃退したので、ピンチらしいピンチは一度も訪れる事はなかった。

一騎討ちなんてしていたとは知らなかったな。

 

「多分あれ、敵の将だぜ?ラートがそいつに啖呵切って一騎討ちだ!って言い出したとき、ビックリしたよ。」

「農民のすることじゃねぇよな!」

 

そのラート君とやらは、無茶な農民だな・・。

 

「なんか国王軍の騎士と模擬戦して勝てたから、イケるんじゃね?とか言ってたぞ?」

「実際捩じ伏せたもんな。」

「あれはシビれたよ。」

「勝負は一瞬だったけどな。ラートの打ち下ろしを受けた時点で終わったし。」

「岩を持ち上げるラートの一撃を受けれるわけねぇだろ。」

「身体強化ってマジスゲぇよ。騎士でもねぇ俺達が、歴戦の兵士を叩き潰せるんだもんな。」

 

あー、あの岩を平然と持ち上げる怪力の彼か。

調子に乗って剣豪への道を歩み出さないか心配だな・・。

 

「相手も肝座ってたな、梯子登って来て疲れたから、ちょっと待て!とか言って、一休みして一騎討ちしやがった。」

「ラートもアホだが、相手もアホだな。敵の城壁の上で座り込むって頭おかしいだろ。」

「それな」

「バイルランドにもあんなスゲェアホがいるんだなって、今回初めて知ったよ。」

 

確かにアホだな・・。

待てと言われて、待つランクシャー側も呑気だが・・。 

 

「そういや、あの敵将、生きてんだろ?」

「捕虜になってるな。負けた!って言って血だらけで笑いながらぶっ倒れたもんな。」

「牢に入っても笑ってたぞ。イカレれるぜ。」

「あんな豪快なヤツがいるんだ、今回は勝ったが、これからも油断出来ねぇよ。」

「そうだな、今回はバイルランドも準備不足だったし、本気で対策されたら、もっと手強いと思うぜ。」

「ご神木様に頼らずに、これからも鍛えて俺達だけで跳ね返せるようになろうぜ。」

「おう!」

 

おお、良かった。ちゃんと勝って兜の緒を締めているな。

楽勝だったので、調子に乗っていないか心配だったのだ。

 

「でもよ、城門のあの落ちてくる壁、エゲツねぇよな?」

「バイルランドの奴等、皆青褪めてたな!」

「ざまぁみろってんだ!」

 

「それに沼!」

「あの沼エグいわー」

「アタイ達の魔法で沼に落とした後のアイツ等の顔!」

「見た見た!あの顔!あはははは!」

「傑作よね!あー、これ無理だわーって顔してた!」

「戦意喪失って、あんな状態を言うんだろうな。」

 

城壁と沼のセットは凶悪だった。

今回の戦いで奪った敵の命は、大部分が沼だった。

沼を埋めるような圧倒的な物量で押し込まれない限り、あのコンボは有効だと判明したな。

 

 

この様に、口々に今回の戦いを振り返っては、ガブガブ酒を呷って盛り上がっていた。

自分達の力で、敵を退けた事が嬉しいようで、皆自信に溢れた顔をしていた。

 

「この城壁、ウチらの王国軍でも攻略出来ないんじゃない?」

「それな!」

「あんな凶悪な罠を思い付く御神木様がヤバいよ。」

「バイルランド兵が憐れに見えたの初めてだぜ。」

 

なんか私が凶悪みたいに言われてるのが納得いかない。

そう思っていたら、モーリス翁がやって来た。

 

「前回の侵攻をランクシャー領民だけで退けた理由は、やはりシャチョー殿じゃったか。」

 

アイン領主は誤魔化して説明していたが、何かあると怪しまれていたのは判っている。

今回の戦で、真相がバレてしまったようだな。

 

「前回は敵軍の数も、今回の半数だったし、準備不足だったので私が手を貸したが、今回は領民の手柄だろう?」

 

私はわざとらしく謙遜をしてみた。

しかし、それで誤魔化せる相手ではない事は判っている。

 

「じゃが、城門、城壁、罠の数々、戦術、戦力の底上げ、全てにシャチョー殿が絡んでおる。正直、我が王国軍の総力を上げても、この城壁の攻略は難しいであろうな。」

「そこ迄かね?」

 

モーリス翁は終始、戦況をつぶさに観察していた。

その時の顔は、普段の好好爺とした表情ではなく、宮廷魔術師としての鋭い顔つきになっていた。

やはり彼は、国王の右手か左手なのだろう。

 

「うむ、凶悪過ぎる。」

「嫌な誉め言葉だな。」

 

卓越していると言って欲しいものだ。


「ま、ワシはヴォルドアークが見れて満足じゃな。凄まじい威力じゃった。ホッホッ」

 

モーリス翁は満足げに笑う。

 

「それよりもクルティナ君の方が恐ろしいがね。」

「アレはヤバいのぉ・・唄を歌っただけと言うのが、もはや救われぬ。」

 

クルティナリサイタルはあ、ある意味反則なので、出来れば使いたくはなかった。

だが、今回は城壁や城門、集団魔法等の戦術がどれほど有効なのか、実戦データを取りたかった。

その為、問題なく籠城戦で勝利できる程度まで、兵力を削っておきたかった。

前回と同じように、私の魔法だけで削り切れたら良かったのだが、そうは行かなかった。

 

ある意味、クルティナリサイタルを使わされた形となった。

対妖精と私の魔法対策を織り込んだバイルランドの進軍作戦は、見事だったと評価せざるを得ない。

 

「内密に頼むぞ。」

「誰かに言ったところで信じて貰えぬじゃろうが、勿論言わぬ。ところで、アレが鑑定スキルの最終形態なのか?」

「いや、たとえグリオン君が鑑定を極めたとしても、アレには成れない。かなり条件が特殊なのだよ。」

 

クルティナ君はリティア君がいなければ、単なる使えない鑑定スキルのままだ。

加えて、あの暴虐の歌は、クルティナ君と会話が成り立ったが故に知り得たものだ。

普通は神と会話なんて出来ない。

 

そして、「神を従えし者」の権利、神への命令権の行使で、歌を歌って貰った。

それも普通は出来ない。

つまり、私しか使えない切り札なのだ。

 

勿論クルティナ君への命令権の対価は、リティア君の三日間貸し出しである。

他の対価などクルティナ君は見向きもしない。

全くブレない。

 

その為、リティア君は天界に帰って、今は不在だ。

盛大に泣きながら「アイルビーバック!」と言って消えていったけど、今頃どうしているだろうか?

 

ちなみにアリサは蜂蜜の壺に頭を突っ込んで離れない。

無心に蜂蜜を食っている。

 

「それを聞いて安心したわい。鑑定スキル所持者が、国を滅ぼす存在になる可能性を感じておった。」

「私が国を滅ぼせるように言っているようだが?」

 

暗にそう言っているに等しい。

 

「その気になれば出来るじゃろう?」

「出来ない。私は木だ。大勢で囲まれれば切り倒されるだけだ。私はノロマだからね。」

「その前に決着すると思うがの?」

 

買い被り過ぎだよ。それに、

 

「まず、そんな気になれない。私は光合成・・つまり、陽の光を浴びていれば、他に何も要らないからね。本来、私は人と交わるつもりはなく、その必要もない存在だ。」

 

私は木だ。

木は物言わず、そこに在るだけ。

それが樹木らしい生き方というものだ。

 

「木とは不思議な存在よな。」

「君も木になってみれば分かる。光合成は最高に幸せなのだよ。」

 

そう締め括ったところで、領民達が私のところにやって来て、感謝の言葉と酒を浴びせてくる。

くそ、また絡み酒の連中だ。

 

「シャチョー様ぁ~葉っぱちょーだーい!」

「コラッ!勝手に葉を千切るな!」

 

私の葉は酔い止めの薬じゃないぞ!

 

「いえーい!高ーい!」

「酔っ払って私に登るな!危ないだろ!」

 

そっちは枝が細いから行くな!

 

「御神木様を飾り付けぇ~、かわいー!」

「やめたまえ!それと服を脱ぐな!」

 

「ゲボゲボゲボ」

「ダムラ君、キミは敵の捕虜と一緒に牢獄に入れるぞ?」

 

毎回毎回、どうしてこう面倒な飲み方しか出来ないのだ!

この世界の亜人族に、酒の席のマナーを広めたい!

 

 

 

 

翌日からは、戦後の後片付けである。

敵軍の死体を集めて焼いたり、堀に沈んだ敵兵を引き揚げたり、城門を塞いだ石の壁を取り除く作業が始まる。

 

堀は水魔法を使って下流に流し、泥と一緒に敵兵の死体も一掃。

装備品は戦利品として接収。

かなりの武具が手に入った。

 

石の壁は亜人族の力だけでは、取り除くのに骨が折れるので、私が手伝った。

変形して収納出来ない部分は、吸収で崩して、撤去する事にした。

 

コンクリートは、私の吸収灰を利用している為、吸収Lv6でもなかなか崩れない。

魔法的な力で固まった物なら、容易に崩せるが、これは物理の塊だ。

何とか脆くは出来たので、あとは亜人族達に頑張って貰った。

 

 

そんな戦の後片付けをしていた時である。


バイルランド軍旗を掲げた騎馬が、10騎ほど街へ向かってくるのを感知した。

私は慌てて隠れる。

 

城門を潜り抜け、入口の脇に生える街路樹のフリをする。

 

「シャチョー殿?どうした?」

「バイルランド軍旗を掲げた騎兵が10騎向かって来ている。」

「え!?作業中止!全員町の中へ!警戒せよ!」

 

アイン領主はすぐに領民を避難させた。

 

1騎だけ、凄い形相で怒り狂って突っ込んでくる。

それを追いかけるように、9騎がやって来ていた。

 

  

その後、先頭の騎兵が城門の前までやって来た。

何だか様子がおかしい。

 

「うおおおお!領主を出せぇ!」

 

何だあの血気盛んな兄ちゃんは?

身なりが良いので、敵のお偉いさんっぽいけど。

 

「なっ!?あれはバイルランドのヘリオス王子!?」

 

城門の上から、その姿を確認したアイン領主がそう言った。

え?嘘?単騎で乗り込んできたの?

 

アホなの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] く、クルティナリサイタル、やばいなぁ…。 ん…?う、歌が?え?何々?リティア様の…宇わぁぁ!!!!! リティアたまー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ