表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/187

50.ランクシャー領の魔改造

壁はコンクリートで作る。

コンクリートなら、巨岩を積み上げる必要もなく、砂利を用意して、混ぜて木枠に流し込めば、後は固まるのを待つだけ。

少ない労働力で造れるのが魅力だ。


隙間なく平滑なので、登ることは出来ず、強固なので崩す事も叶わない。


城壁としては最強で、しかもコストが安い!

貧乏領地には最適の城壁建設法である。

 

鉄筋を入れたいが、高価なので買えない。

仕方なく厚みでカバーすべく、元の土壁を利用した。

外側は垂直の高いコンクリート壁、内側は土壁を支えにする事で強度を保つ。

 

大量の「吸収灰」が必要なので、私は連日吸収スキルを発動し続けていた。

 

まずは土壁の半分を垂直に削るように、私が吸収発動。

根が触れた部分から、サラサラと崩れていく。

垂直になったら崩れないように、まずは私の魔力障壁で補強。

その後、丸太や板で補強し、木枠を作る。

 

この作業には領民全員参加だ。

自分達の命と財産を守る為の工事である。

文句は言えないし、言う人もいなかった。

 

川や森からコンクリート壁の材料となる砂利や石を運び込む。

木を切り倒して木材を作る。

こればかりは、私一人では成し得なかった。

 

 

吸収ばかりしてると、魔力が飽和状態となり、吸えなくなる。

そこでまた雲を生み出して、モルタル作りの水道代わりにした。

また、この水が綺麗で美味しいと評判で、皆こぞって桶を持ち込んで、持ち帰りしてた。

 

私はウォーターサーバーか?

 

 

併せて門の製作にも着手する。

ここは工夫をする。

 

なんと二段構えの門だ。

 

普段はなんて事ない木の扉。

破城槌とか持って来られたら、打ち破られるだろう。

 

しかし、いざ戦時となり、敵が攻めてきたら第二の門扉が現れる!

 

厚さ30cmの鉄筋コンクリートの分割落とし板。

 

平時は門の上に格納しており、門に攻め込まれたら落とす。

レールとローラ―に乗せて滑らせて落とすので、3~5人で押せば落とせる。

緊急時の最終防衛機能だ。

 

突然降ってくる頑強な岩の板。

 

破城槌を受ければ、硬いので割れると思うが、鉄筋の網が残るので、邪魔して進めない。

通りたければ、アセチレンガスバーナーを持って来いと!

 

しぶといぞ、鉄筋コンクリートは!

 

ちなみに連結部は凹凸が嵌るようにしてあり、中央部は太くして強度も確保。

側面からの応力に対抗できるようにしてある。

 

但し、敵が退いた後、取り除くのが大変だ。

ワイヤー巻き上げにしても、攻撃受けて変形したら、引っ掛かって上がらなくなる。

ガイドレールを外せるようにして、外側にパタンと倒すことが出来るようにしておこう。

 

いずれにしても、門に滑車クレーンは必須だな。

門の設計は、入念にしなければならないだろうな。

強度計算は無理なので、取り敢えず無駄に頑強にしておく。

 

現在鉄筋やレール、ローラー等の金属部材を王都に発注中だ。

これくらいの出費は許容して貰いたい。

 

 

 

 

最後に籠城時の武器であるが、銃を渡す訳にもいかない。

どうしようか迷っていたが、そう言えばこの世界には魔法があるのだった。

 

何か良い案がないか、詳しい人に訊いてみよう。

 

「リティア君、この世界の魔法は、一人じゃないと撃てないのか?」

「どういう意味ですか?」

 

「何人か合同で魔力を出し合って、1つの魔法を行使する事が出来ないのか?という意味だよ。」

「つまり、魔法に必要なプロセスを分業して発動させるという事ですが、不可能ではありませんが、現実は難しいですよ。」

「そうか、やはりな。」

 

それこそ多人数の人が息ピッタリにタイミングよく、発動条件を条件を1つ1つ満たし、最後の一人がトリガーを引く。

言うは易しで、実際は困難を極める。

 

大縄跳びと一緒だ。

人数が増えるほど、難易度が上がる。

誰か一人でもタイミングを外したら終わりだからである。

 

しかも、戦闘中という緊迫した空気の中で、練習と変わらず冷静になんて出来ない。

失敗する可能性の方が高い。

 

そして失敗したら危険に曝されるハイリスクな状況で、そんなギャンブルは出来ない。

つまり、現実的には使えないという結論に達した。

 

 

それにこの世界の亜人族の魔力保有値が低いのも問題だ。

 

鑑定の結果、殆どの人が魔力10以下。

ザイン君でも、魔力8だ。

高威力の魔法を放とうとすると、どうしても大人数になってしまう。

 

そうして撃てばその瞬間動けなくなる。

極めて効率が悪い。使えない。

 

妖精族のアリサでも、魔力30。

それでもかなり多い方なのだ。

 

ちなみに光魔法Lv7ヴォルドアークの消費魔力は、知力補正が無い場合、なんと160である。

私は消費魔力たったの7で撃てるのが申し訳なく感じる。

正直反則だ。

アリサが文句を言う気持ちが判った。

 

「うーん、低い消費魔力で、高威力の魔法ってないのかね?」

「対亜人族という意味ですか?ありますよ。」

 

まさか、リティア君が理知的に活躍する日が来るとは思わなかった。

この子は肉体派だと思ってたよ。

 

 

 

 

離れたところに、ウサギのような獣の死体。

一撃必殺、お手軽だった。


「水魔法Lv2に相当する魔法です。」

 

結構エゲツない魔法だった。

 

リティア君が実演した魔法は、対亜人族に対して、脅威となる魔法だった。

ドン引きの威力なので、詳しくは言わない。

 

コレ、広めちゃ駄目なヤツだ!

 

銃なんかより、余程のぶっ壊れ性能。

コレが広まったら、戦争の概念がひっくり返る。

それ程のバランスブレイカー。

反則臭い。

 

「封印で」

「せっかく実践したのに!?」

 

やはり残念女神様は使えない。

 

 

 

 

ちなみに魔法のレベルとは、その魔法を発動し、維持する為に必要な消費魔力量で決まるらしい。

少ない魔力で行使できるのなら、レベルは低く、その逆だと高レベルとなる。

 

その為、同じ系統でも、同じレベルの魔法が幾つもあるそうだ。

例えば私の土魔法Lv2は、グランドアッパーだけと思い込んでいたが、他にも多くの魔法が存在するそうだ。

特に低レベルの魔法は、様々な亜人族や魔物が、少ない消費魔力で実現可能な魔法を模索した結果、かなりの種類があるらしい。

 

ここで重要なのは、()()()()()()()()()()()()()()()という事。

 

魔法レベルの高さは、威力や効果に比例しない。

ハイパフォーマンスの証明がレベルの高さではないのだ。

無駄に消費魔力が多いだけの、使えない魔法でも、高レベル魔法となる。

 

但し、魔力を込めた分、魔法の効力は強くなりがちなので、やはり高レベル魔法には、高威力・高効果の魔法が多いのは事実ではある。

 

だが決して、魔法レベルが高い魔法が最強という事ではない。

それは裏を返せば、魔法レベルが低くても、殺傷能力が高い魔法があるという意味を含んでいた。

 

それをリティア君は実演したのである。

 

でも、Lv1の魔法は総じてショボいのだが・・。

 

 

さて、 籠城戦の武器に、魔法は駄目となれば、物理しかない。

だが、それには金がかかる。

物資も不足しているし、男手も少ないランクシャー領。

 

何か魔法以外に良い手は無いのか・・。

 

ん?

魔法以外?

 

そうか!

 

 

 

 

「ふおおおおおおお!」

「力が、力が湧いてくる!」

 

領民AとBが、気持ち悪いムキムキマッチョになっていた。

気持ち悪い。

 

「ふおおおおおお!」

 

うるさい。

 

 

魔 法 が 駄 目 な ら ス キ ル が あ る 。

 

 

そう思い付いた私は、リティア君に尋ねた。

困った時のドラえ・・女神様。

 

 

 

 

「リティア君、このスキルはどうすれば取得できるのかね?」

 

私はスキルツリーを眺めて、一般人でも使えそうなスキルをピックアップ。

そして、幾つかのスキルの取得条件をリティア君に教えて貰えるようにお願いしていた。

 

「それは・・教えては駄目なのですが・・」

 

渋るリティア君

 

「まぁまぁ、そう言わずに、ささっ、これでも飲んで」

 

枝を差し出す私。

 

「はぁ、頂きます。」

「ところで、このスキルは魔力操作が必要なのだろ?という事は、その前段階にあるこちらのスキルは、別に魔力操作が出来なくても取得出来るのではないかね?」

 

私はスキルツリーを枝で指差しながら、私はグイグイリティア君に詰め寄った。

 

 

現在私はリティア君を接待中だ。

 

 

「そ、そう・・そんな気がしますね?」

「さすが優秀な私の秘書だ。かわいい!」

「か、かわいい!?」

 

ボンと顔を真っ赤にするリティア君。

本当に、何故この娘は私なんかを気に入っているのだろうか?

 

だが、好かれていて悪い気はしない。

もし人間に転生していれば、彼女のような美女に言い寄られたら、コロッと惚れてしまっていた事だろう。

だが、私は木になってから、その辺の感情が欠落してしまったのだ。

その為、常日頃は取引先の窓口嬢と仕事をしているような感覚で付き合っている。

 

その為、接待をするのもお手のもの。

情報を引き出すには、実にお手頃な相手でもあった。

 

「ならば、このスキルは一般人でも何かをキッカケに取得出来るのではないかね?」

「ええ・・じゃなかった、そんな気がしますね?」

 

なるほど、何らかのキッカケや条件が揃えば取得出来るのか。

 

「その何かが知りたいのだよ。勿論教えてくれるよね?だってリティア君は、私の秘書なのだし。」

「そ、その通りです!」

 

チョロかった。

 

その後も誘導尋問に引っ掛かり続ける彼女から、芋づる式に情報ゲット出来た。

 

リティア君は流石に言えない事は言わない。

だが、首を縦か横に振る事は出来る。

 

そんな人から情報を引き出すには、質問をして、YESとNOで答えられる状態で尋ねると良い。

 

リティア君の口から、そのものズバリの答えを聞き出すのではなく、あくまでも私の見解を羅列して、それに対して彼女は、曖昧に頷いたり、否定したりを繰り返しているだけ。

能動的に、直接的に、教えてはいない。

だからセーフ。

 

それだけでも有効な情報は得られる。

合致している事と間違っている事を分ける事が出来て、選択肢を絞り込める。

繰り返していると、確信に迫れるのだ。

 

この方法なら、私が得た情報は、あくまで私の勝手な解釈。

彼女は自発的には教えてはいないし、明確に否定も肯定もしていない。

だからセーフなのだ。

 

限りなくグレーだが!

 

ありがとうリティア君。

 

 

 

 

そして実証実験だ。

私が目を付けたのが「身体強化スキル」

スキルツリーで、初期に入手出来る位置にあり、そこから派生するスキルも多かった。

 

これの取得条件は、

①魔力10以上

②戦いの中で耐力が1/3になった時に闘志を燃やす

 

亜人族は魔力が低い。

その為、第一条件がクリア出来ないので、取得していない者が大半だ。

しかし、それは強制的にクリアが可能だった。

 

先般のアリサの()()()()がヒントとなった。

 

要するに、魔力の濃い物を摂取すれば、一時的に魔力が増大する。

この現象を利用する。

 

では、何を摂取するか。

亜人族は妖精のように私の魔力を吸えない。

だが、代わりに良いものがある。

 

それは私の葉だ。

 

私の葉は、1枚で魔力が7~15もある。

これを食べれば、体内に残留している間は、魔力が増しているのである。

鑑定結果で立証されていた。

 

そして、残る条件は②戦いの中で耐力が1/3になった時に闘志を燃やす

 

これも強制的にクリアさせる。

 

といっても、耐力1/3になるまで、無抵抗な人をボコボコにしてから戦わせるような非道な真似は出来ない。

私は悪魔の木ではないのだ。

 

では、どうすれば耐力値が減るのか確認した。

 

 

耐力であるが、この値は結構変動する。

怪我をしたり、病気になっても減少する。

 

実はヘトヘトに疲れた状態でも減っていることが、鑑定を繰り返して判明した。

ならば簡単である。

 

半信半疑の実験台、領民A、B

またの名をガイム君とダバオ君。

 

「も、もう無理だ!旦那、腕が!足が!腰が!」

 

ガイム君とダバオ君は、都合が良いので城壁造りの物質運搬を手伝って貰った。

砂利の詰まった袋を、持てるギリギリの重量を持たせ、徒歩で何往復もして貰う。

 

「ゲボゲボゲボ」

 

ダバオ君は相変わらず吐いている。

だが、私の根本に何故わざわざ来るのかね?

 

 

根をあげると軽い電撃(光魔法Lv1エレキテル)でシャキっとさせる。

ちょっと強めの低周波電気。

健康になる(かどうかは諸説あり)ので、ちょっと痛いけど大丈夫。(多分)

 

ガイム君は電撃にトラウマがあるのか、逃げるように頑張り続ける。

たまに本気で逃げるが、逃がさない。

ダバオ君はひたすらシバく。

 

「ウギャー!」

「ひいぃぃぃ!」

 

「ワハハハ、愉快愉快。」

「くそぉ!覚えてろー!」

 

これも身体強化を取得する為だ。

私は心を鬼にして、二人をシバき、体力を限界まで搾り取った。

 

ヘイトを稼いでおくのも必要だ。

最後に闘志を燃やしてくれないと取得に至らない。

 

「オジサン、ヒクわー、マジヒクわー。」

 

アリサがドンビキしていた。

これは今後のランクシャー領の命運がかかった実験なのだ。

私だって心が痛む。

だが、誰かがやらないといけない汚れ仕事なのだよ。

 

 

こうして昼夜問わず、ボロボロになるまでコキ使った後、鑑定をしたら見事に耐力が1/3を割っていた。

 

よし、では私の葉を食べて戦おうか。

 

 

 

 

こうして二人は無事に「身体強化スキル」を取得した。


戦いといっても、模擬戦でも良い。

闘志といっても、怒りの発奮でも良い。

ボロボロの身体で、一発殴りに来てくれれば、条件は満たすのであった。

 

尚、ボロボロの身体は、私の葉を食べたことで、翌日にはかなり回復する。

魔力という不思議パワーは万能である。

 

このブートキャンプを、防衛戦に参加する全員に施し、兵力を底上げするのだ。

今回は私が指導したが、今後は自分達でやって欲しい。

 

あまりやり過ぎるとヘイトを稼ぎ過ぎて討伐されそうだ。

 

 

こうして、ランクシャー領軍改造計画が、今始動した!

 

 

 

 

尚、身体強化された肉体は、ただの投石でもなかなかの威力を発揮した。

弓矢も通常の1.5~2倍位まで射程が延びた。

 

バイルランド軍にいた、リティア君を射抜いた英雄ロック。

彼も恐らく身体強化スキル持ちだろう。

 

身体強化を覚えると、そこから派生して「狙撃」「遠視」「跳躍」「俊足」等の強化スキルが開放されるので、各々に向いたスキルを、鍛練を続けていれば随時取得する事だろう。

 

また、身体強化スキルだが、条件的に耐力が少ない幼い子供の方が楽に覚えられると判明。

病気で弱ったり、遊び疲れたとき等に、私の葉を服用させ、早期に取得させる事になった。

 

アイン領主の息子セイン君、ザイン君の息子ライン君も取得していた。

 

 

後に、少々やり過ぎたと後悔するが、もう後戻りは出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ