47.鑑定スキルがこれまで以上に困った事になった ~どこまでも使えない鑑定スキル~
ある日の話。
「ねぇ、暇だからまた鑑定して遊ばない?」
「アリサ、私の鑑定スキルは、君の暇潰し用の玩具ではないのだが?」
遂にアリサからも、ぞんざいな扱いにされるようになった鑑定スキル
終わっているな、このスキル・・。
「大して変わらないじゃん。」
身も蓋もない評価をサラッと下したな。
だが、否定ができない程度に、私も同様の取り扱いをしている為、閉口する。
実は私達の最近のトレンドは、鑑定結果へのツッコミと深掘りになっていた。
私は光合成さえしていれば極楽で満足なので、何もせずボーっとしていたい。
しかし、それを姦し妖精のアリサは許してくれない。
その為、私の枝に棲み着いてしまった妖精2体の暇潰しに付き合わされる日々を強いられている。
ある日、気紛れにアリサ自身の鑑定結果を見せてあげたら、
「何これ、ウケるー!」
と、気に入られてしまった。
以来様々な物を鑑定しては、その突飛でユニーク、且つ裏話的なトリビア満載の情報に、私達は一喜一憂して楽しんでいた。
その頃から娯楽コンテンツ扱いだ。
これに気を良くした鑑定スキル中の人、女神クルティナ君は、更にエスカレート。
遂には鑑定スキルを私物化。
今では、殆どクルティナ君とのコミュニケーションツールとなってしまっていた。
最近は鑑定スキルを使用してもいないのに、勝手に鑑定結果という名のメッセージが送られてくる始末。
SNSか!
ちなみにそこに鑑定結果の情報は一切含まれていない。
仕事しろ!
あまりに頻度が多いので、スルーしたら、神のお告げで「メールを開け」と催促してくる。
メールと言うな鑑定スキル!
鑑定スキルはいつから神からのメールスキルになったのだ?
い い か ら 仕 事 し ろ !
ちなみに、そのメッセージの一部を公開すると・・
『クルティナ:リティア様、完熟マンゴーが手に入ったのですが、食べに戻られませんか?』
もはや名前を隠さなくなっていた。
あと食い物で釣って、リティア君を天界に呼び戻そうとする姑息なクルティナ君。
ちゃんとお金は払ったのだろうか・・。
そう疑いたくなる出来事があった。
『クルティナ:リティア様、以前からご要望のあった、第3宇宙の地球から、シャチョーの遺骨の一部をくすねて来ました。お戻りになられませんか?』
・・・絶句した。
まず第3宇宙って、神様サイドの機密事項的ワードを私にも見られるメール(鑑定スキル)に記載しては駄目だろうに。
それに、そこへ出向き、死んだ私の遺骨を盗むとか、自由過ぎるぞクルティナ君!
あと、それを指示したリティア君!
墓荒らしか君達は!
しかも、遺骨の元である本人に盗みがバレバレなのはどうなのかね?
警察署に押し入り、堂々と備品を持ち去るに似た行為ではないか?
そしてこれを見たリティア君。
既読スルーが基本だったのに、この時ばかりは「でかした!」と興奮して、自ら秘書スキルをOFFにして天界へ戻って行ったリティア君。
欲望に忠実過ぎる!
あと、自分でOFFに出来るのか・・。
後程、何をしていたのか問い詰めたら、ずっとクンカクンカしてたらしい。
気 持 ち 悪 い !
そのクンカクンカのリティア君を、クルティナ君がクンカクンカしてたらしい。
気 持 ち 悪 い !
お陰でクルティナ君は上機嫌。
暫くはちゃんと鑑定の仕事をするようになった。
私がドン引きして、暫く秘書スキルをONにしなかったら、泣きながら神のお告げを下してきた。
「出来心だったんですぅ!悪魔の囁きだったんですぅ!許して下さぁーい!」
仮にも女神が悪魔の囁きにやられたらダメだろ・・。
「元に戻してくるように。」
「シクシクシクシク、はい。」
泣きながら、名残惜し気に戻して来た。
遺骨のどこにそんな魅力があるのか、理解不能だよ!
ちなみに私の会社は、その後も元気に営業を続けているそうだ。
それが聞けて安心した。
この時ばかりは、鑑定や秘書スキルに感謝した。
他にも問題は多々あった。
『クルティナ:リティア様、今何をされてますか?ワタシは別世界の温泉に来ています。先程現地の人間が、ワタシが温泉に入っているのに、斧を投げ込んで来ました。危ないので、「この斧はお前かー!」とクレームを入れたら「違います」と惚けるのです。おかしいな?と手元の斧を見れば、ワタシの神気で変質し、金色になっておりました。ヤッバと思って「コレあげる!」と言い残し帰って来ました。神気の含浸は短時間ですので、メッキ程度の薄さですから良いですよね?』
あの有名な童話物語の元ネタ!?
泉から出て来るヘルメスって、クルティナ君だったのか!
事実と物語の内容が違うという事は、随分脚色されてたんだな。
っていうか、金の斧がメッキだったとは・・
夢 が 壊 れ る !
『クルティナ:リティア様、最近お返事をくれませんね?お疲れなのでしょうか?妖木の世話など要りませんので戻られてはいかがでしょうか?』
リティア君を戻すのは、私も賛同なのだが、当の本人が盛大に嫌がるのが問題だ。
帰そうとすると泣き始めるので手に負えない。
『クルティナ:リティア様、ワタシそろそろリティア成分が不足して参りました。嗚呼、リティア様の匂いが嗅ぎたい!』
『クルティナ:ハァハァ、リティア様、今どんなパンツ履いてますか?ワタシはもう!ハァハァ』
ス ト ー カ ー で は な い か !
メンドクサイ人に粘着されてしまった。
この様に、鑑定スキルは別物に変質してしまった。
本来の機能である、公平性のある客観的な有益情報を得る為のスキルとはかけ離れ、単なるSNSアプリとして猛威を振るうこととなっていた。
こんな鑑定スキル要らない!
この状態、リティア君とクルティナ君の上司は知ってるの!?
こんな無法状態を放置してていいのかね!?
そして冒頭の話に戻る。
アリサのリクエストの鑑定遊びだ。
「じゃあ、今日はリティアを鑑定してみようよ!」
うわぁ、一番の地雷を踏み抜いたな、この子。
「わたしですか?別に構いませんが、恐らくエラーばかりで、何も判らないと思いますよ?」
そうだろうな。仮にも女神の端くれの底辺存在である。
秘密な部分が多いに決まっている。
そして、クルティナ君が、リティア君の個人情報を公開するとは思えない。
まあ、でも興味深いので、一度だけ試してみるか。
鑑定Lv7発動。
取得情報「神々しき美と愛の女神の化身・・という設定の妖精族(仮)リティア(永遠の20)」
耐 力:不死身
魔 力:星の数
可食性:可(食べていいのはクルティナだけ!)
錬成素材価値:不可(腐っている)
概 要:クルティナの嫁。
穢らわしい妖木に騙され続けている薄幸の美女妖精。
その香りは花の香り。特に脇が芳しい!
その美貌と天然により、全ての神・・じゃなくて、仲間から愛される天界・・天下一品のゆるふわ癒し系アイドル。
実はキャラ付けしようとして食いしん坊を演じたが、ブログ読者に引かれて凹んでいた。
石や鉄を食べるからと愚考します。
でも、そんなリティア様がワタシは大好きです!
なんかもう、好き放題書かれてた。
事実をねじ曲げ、単なる願望の報告書って誰が見たいだろうか?
丸めて捨てたいが、自動的に記録保存される厄介な機能が邪魔だ。
「クルティナー!」
案の定怒られてる。
「わたしを食べて良いのはシャチョー様だけです!撤回しなさい!」
怒 る と こ ろ 、そ こ だ け !?
他にもあるだろ!?
しれっと腐ってるって書いてあるぞ!
それと、何でも食べるのはキャラ付けだったの!?
鑑定の仕事もブログだったとディスられてるし・・。
「キャハハハハ!クルティナ面白ーい!」
アリサには大ウケである。
この妖精には、もう色々バレてしまっているので自重しない。
「よくもまぁ、これだけテキトーに書けるな。」
『テキトーではない、事実だ。』
クルティナ君、そんな反論で神のお告げを使わないで欲しい。
「じゃあさ、花の匂いがするって本当?」
「うーん、自分では分かりませんが?」
「アタシ嗅いでみたい!」
『アリサは許す。』
神のお告げが軽いなぁ・・。
女子会の会話だ。
そしてアリサがリティアの首もとをクンクン
『羨ましい!』
「そんな願望を天啓にしないでくれたまえ!」
もう私は神のお告げなんて信じないし、従いもしない。
絶対にだ!
無神論者だったが、実際に神様を見て、余計に神なんて居ないと確信に至った。
実に救われない話だ。
「ホントだ、メチャフローラル!スゴいよリティア!」
お?どうやら事実だった様子だ。
「あら、嬉しい。」
いや、あの顔はたった今、体臭を神の不思議パワーで花の香りに変えたに違いない。
その証拠に、顔があざとい。
チラッチラッ
臭って欲しそうにこっち見るな!
私は無視を決め込んだ。
しかし、それで諦めるリティア君ではない。
「シャチー様もどうですか?ほら、ほら、ほらぁ!」
顔が怖い怖い怖い!
血走った目で迫ってくる!
「えーい!身体を幹に擦り付けるな。私には鼻がないから臭えないのは知っているだろう。」
「そうでした!」
愕然としていた。
まさか忘れていたのか?
・・嘘だと言って欲しい。
『おのれ妖木!リティア様に寄るな!触るな!』
「冤罪だ!」
私は寄ってないし、触ってもいない!
「オジサンの臭いは何か変な匂いするよね?」
「それが良いのです!」
おっと、聞き捨てならない情報だ。
私にも体臭があったとは知らなかった。
確かに木にも香りがある。
檜などはリラックス効果もあるし、桜は甘い香り、楠などは樟といって、防虫効果等もある。
木の香りは、どれも良いものだ。
では、私の香りはどんな香りなのだろうか?
「ちょっと待ちたまえ。私は匂いがあるのか?」
「あるよ。何ていうのかなぁ、独特な匂い。」
不穏な言葉が聞こえた。
独特とか個性的とか、そういうワードは、つまり臭いに等しい。
「例えば?」
「うーん、何て言うか重い?濃い?くどい?怪しい?熟して落ちた果物が腐る一歩手前みたいな匂い?色で言うと紫っぽい。」
全然いい匂いに思えない!
とてもリラックス出来ない。
「ワインの醸造所のような香りです。」
発酵してる!
「なんだか嫌な臭いのような気がするな。」
「あ、別にクサいって訳じゃないよ。好き嫌いは分かれると思うけど、アタシはもう慣れたけどね。」
慣れが必要なのか!?
「お酒が好きな人は好むと思いますよ?」
「だからダバオ君が寄ってくるのか!」
酔いちくれた彼が、私の根本に吐く理由が今判明した!
「先般のキツツキもシャチョー様の香りが好きなようですよ。」
ああ、私の幹に巣穴を掘ろうとした鳥か。
あの時の私は鳥がやって来た喜びで、テンションがおかしくなってたな。
今考えたら危ないところだった。
アリサとリティア君が居なかったら、私は立ち枯れていたかもしれない。
「私は普段からそんな臭いを発しているのかね?」
自然の木もそうだが、木の臭いは傷を付けたり、樹皮を剥がないと臭わないはずだが?
「別に普段は臭わないけど、動いたりすると臭うかなぁ?」
なるほど、確かに動くと部分的に樹皮が剥げるな。
「あのキツツキはよく臭いを察知したな。」
『まずワタシが妖木抹殺の為に呼び寄せたからな。』
クルティナ君のせいか!
「わたしがシャチョー様の匂いを全身に擦り付けておりますので、寄ってきたのかもしれません。」
「全ての元凶は君ではないか!」
「痛い痛い痛いですー!」
小枝を巻き付けて、リティア君の頭を締め上げた。
今のやり取りで、リティア君の体臭は、私の匂いと判明した。
どこが花の香りだ!
そしてキツツキを、呼び込んだのはクルティナ君と。
ロクな事をしないな、この鑑定スキルと秘書スキルは!
『リティア様ぁ!おのれ妖木、代われー!』
「代われと言うな!せめて止めたまえ!」
「キャハハハハ!クルティナウケるぅー!」
「シャチョー様の棒がわたしの頭を!尊い!」
この様に、鑑定を1つするだけで騒がしく時が過ぎていくのであった。




