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45.アリサのダイエット作戦①

バイルランド王国からの侵攻以来、平穏な日々が続いている。

そのせいなのか、

 

「アリサ、君、太ったんじゃないかね?」

 

デリカシーの無い事をレディに言うようだが、このままじゃマズいと思い、敢えて言った。

 

「やだなーオジサン、アタシに限ってそんな訳無いじゃーん、ウケるー。」

 

さすがアリサだ。見事に現実逃避をキメている。

 

「リティア君、どう思う?」

 

私の魔力感知スキルが誤作動をするとは思えない。

明らかに大きくなってるよアリサ君・・。

 

「一年前のアリサと比較しますと、体積が1.37倍に増加しています。」

 

無 慈 悲 な 測 定 結 果 出 ち ゃ っ た !

 

たまに優秀だよねリティア君。

たまーに、極たまーに。

 

1.37倍か・・確かにそれくらいポチャっとしてる。

いや、オブラートに包むと、アリサは聞く耳を持たない。

ハッキリ言えば、ポッチャリどころか、しっかりおデブな妖精になってた。

 

「ちょ、そんな訳無いでしょ!?ねぇ!嘘よね!?」

 

やっと現実逃避から目が覚めたかね。

 

「いえ、間違いありません。」

 

いいぞリティア君、キッチリ教えてやりたまえ!

 

「嘘よー!アタシはこの町のアイドルよ!アイドルは太らないんじゃないの!?」

「アイドルが太らないのは、努力してるからだよ。」

  

私の前世の知識から、アイドルという存在を認識し、自分に都合の良い部分だけ抜き出して解釈していたようだ。

君はアイドルという太らない生物種に進化したとでも思っていたのかね?

おめでたい。

何の努力もせず、食っちゃ寝してるニートは、アイドルとは言えない。

 

残念ながら、アイドルとは偶像なのだよ。

人の願望を具現化した創造上の生物。それがアイドルだ。

だからアイドルは太らない、歳食わない、うんこしない。

 

アリサ君もアイドルになりたいなら、太ってはいけないよ?

歳食わないのと、うんこしない所は、まさかの現実的にクリアしているが・・。

 

 

ところで、アリサを見て気付いた事がある。

 

「妖精も太るのだね・・。」

 

不思議存在なので、その生態が解らなかったが、人間と同様に食い過ぎると太るのだと判明した。

 

「どおりで最近、細めの蜂蜜壺の口に引っ掛かると思った!」

「自覚あるではないか!」

 

そのお腹では当然だろう。

 

「恐らく魔力太りでしょう。シャチョー様の濃厚汁を吸っちゃ寝て吸っちゃ寝てを繰り返してるからです。」

 

リティア君、濃厚汁と表現するんじゃない。

それにアリサが吸ってるのは、君と違って純然たる私の魔力だ。

 

「えー?じゃあ、魔法使えば痩せるんじゃない?」

「そうですね。」

「OK、じゃあダイエットよ!」

 

アリサのダイエット作戦が始まった。

 

「うむ、頑張りたまえ。」

「何言ってんのよ、オジサンも一緒よ!」

「は?何故太ってない私が随行せねばならないのだ?」

「オジサンの濃過ぎる魔力がアタシを太らせたんだから、薄めるべきよ!」

 

私の魔力はカルピスか・・。

 

 

「話は聞かせて貰った!」

「何の用だね、ザイン君。」

 

呼んだ覚えはないのだが・・。

胡散臭い牧師が勝手にやって来た。

 

「旦那とアリサのダイエットに、一肌脱ごうっていう俺の心意気を折らないでくれよ。」

「君が関わると、嫌な予感しかしないのだが?」

「何言ってんだ、良いことしかないぜ!」

 

良い思いをするは、主にザイン君だけだろ?

私の利になった試しがないではないか。

 

いつも私に無償労働を強いる、最悪のブラック企業経営者ザイン君。

私は退職届けを出したはずだが?

 

「バイルランド軍が攻めてきたせいで、西の森の魔獣が活性化してんだよ。旦那達の魔法で、ギャフンってイワせてきてくれないか?」

 

なるほど、恵み豊かな森に、このままでは危険過ぎて入れないという訳か。

それなら町の人々の手助けも兼ねて働くのも悪くないな。

 

「報酬は?」

「木は報酬要らねぇんじゃなかったのか?」

 

そう言って私を無償労働に駆り立てる悪の親玉。

 

「気が変わったよ。今回はアリサも参加するので、対価は欲しいところだ。」

「了解、勿論用意しとくぜ。」

 

ふむ、それならまぁ良いだろう。

何をくれるのかはお楽しみで良い。

基本的にアリサのダイエットが目的なのだから。

 

「では早速出掛けようか。」


私は地面から根を引き抜いた。

久し振りに運動だ。

植物に運動は必要ないし、逆に弱ってしまうので、動かない方が良いのだが仕方ない。

 

「は?準備が要るだろ。」

「私は裸一貫でガンプ大森林からここまで来たのだよ。支度が必要だと思うかね?」

「裸一貫!シャチョー様の裸体尊し!」

 

リティア君、話の腰を折るように、突然妙なワードに食い付いて奇声を上げるのをやめたまえ。

 

「リティア君、私が終始服を着た事があったかね?何故今更反応した?」

「そうでした!尊い!」

 

リティア君は放置の方向で・・。

 

 

「旦那はそれでいいが、俺達の準備が必要なんだよ。支度するから待ってくれ。」

 

こうして私は魔獣狩りに出ることになった。

 

 

 

 

そして、私達は西の森にやって来た。

 

連れはアリサとリティア君、そしてザイン君にランクシャー領の若い衆だ。

狩られた獲物を町に運ぶ為の要員との事で、結構な大所帯だ。

 

ザイン君が「魔獣の素材でウッハウハだぜ!」と取らぬ狸の皮算用で人を集めていたが、獣が狩れるかは判らないぞ?

 

基本的に獣は、人がいたら逃げるものだ。

ゲームのように、向こうから積極的に襲ってくるとは思えないのだがね。

 

現にバイルランド軍の侵攻で、住み処の森を追われて活性化している。

縄張りを追われ、別の魔獣の縄張りに入り、殺気立っているのが現在の状況だった。

つまり、基本的に魔獣の捕食対象外や、ヤバいと感じた相手からは即時逃げる事が予想できた。

 

そこで私が活躍する事になる。

私には、広範囲の魔力感知スキルがあるので、魔獣の認識外から捕捉する事が出来る。

私は「魔獣レーダー」として随行するのだ。

 

そして、エンカウントしたら逃がさない様に立ち回るか、見敵必殺の不意討ちで瞬殺する等すれば、獲物を得る事が出来るだろう。

 

そんな思惑で、取り敢えず行ってみる事にした。

 

ただ、飽くまでこの狩りはアリサのダイエットが主目的なのだから、狩りの成果を期待しないでくれたまえよ。

 

 

 

 

私の移動速度が遅いので、町外れまでは、戦時に活躍した荷車に乗せて貰って移動した。

森に入ると斜面が続くので、私の歩みと随行員の歩行速度に大差はない。

 

西の森はなかなかに広大で、大きな木々が立ち並んでいた。

木の先輩方が、間隔を広くとって生えてくれているお陰で、私が何とか歩けるスペースがある。

 

私は葉を傷付けたくないので、バンザイ状態で進むのだが、それがアリサのツボにハマったようだ。

 

「キャハハハハハ、オジサン何それ超ウケるんですけどー!」

 

私を指差し、お腹を抱えて笑っていた。くそぉ。

 

「うるさいな。枝を広げて移動すると、他の木に当たって枝葉が傷付くのだよ。以前それで葉を散らして、酷い目に遭った。」

 

その為、比較的木々の間隔が広いルートを選んで進んで貰っていた。

 

「でも、その格好・・ブッ!ダメっ!あー可笑しい!」

 

くっ、自分でも不恰好とは思うので反論が出来ない。

 

「アリサ!シャチョー様に失礼です!かわいいではないですか!・・チラッ、プッ!」

「リティア君、怒るぞ?」

 

悔しい。

今後は森の魔獣退治はお断りだな。

平原に誘い込むか、平原に追い立てられた魔獣だけを討伐するなら協力しよう。

 

「相変わらず旦那の移動は気持ち悪いな。」

 

ウネウネと根をうねらせて進む私は、正直キモい。

それは認める。

だが、ザイン君から言われると腹が立つ。

 

「それが人にものを頼んだ者の感想かね。」


笑われながら、悔しさを押し殺して同行している私に、何という言い草だ。

 

「旦那は人じゃないからセーフだよな?」

「私は礼儀の話をしているのだが?」

「そうとも言うな、ハッハッハッ」

 

笑って誤魔化された。

いい性格をしているなザイン君。

何かあっても君は助けてやらない。

今日の私は心が狭いのだ。

 

 

そんな風に会話しながら、ゆっくりと森の中を進んでいく。

暫く進むとゴツゴツした岩が転がっている渓流に出た。

苔むして滑り易く、亜人族には歩き難いが、開けているので私は逆に歩き易い。

私は岩に根を絡ませて進むので、垂直の崖でも平地と変わらないように移動できるのだ。

 

「休憩だ。」

 

ザイン君が討伐隊を停止させた。

亜人族の為に休憩を挟む。

水を飲んだり、携行食を食べたり、皆一様に和やかに過ごしていた。

 

私はやっと枝を広げられる。

日光が射し込む場所があったので、光合成が出来て幸せだ。

 

あー堪らん。もうここに住もうかなー。

 

などと呑気に光合成をしていたら、私の木陰は涼しいらしく、皆自然と私の下に集まっていた。

渓流を吹く風も相まって、涼を得るのに良い場となっていた。

 

 

そんな休憩時間に不穏な影あり。

 

 

私の魔力感知に反応があった。

感知レベルを上げて確認すると、お、魔獣だ。

 

「アリサ、出番だよ。」

「え?何の?」

 

渓流で水遊びをしていたアリサを呼んだ。

何の為にここに来たのか、もう忘れているようだ。

 

「魔獣がいる。」

「オジサンが倒せばいいじゃん。」

「この魔獣狩りの目的は、君のダイエットだろ!」


私を働かせてどうするのだ!

 

「あー、そうだったかも。」

「かもじゃない、早く行きたまえ。」

 

私は枝を魔獣がいる方向に向けた。

 

「はー面倒ね。じゃあリティア、行くよ。」

「え?わたしもですか?」

「あったり前じゃない!アタシだけじゃやっつけらんないでしょ!」

 

いや、知らんがな。

 

だが、確かにアリサの言う通りか。

彼女の風魔法Lv3、フラッシュブレスは、単体では対象にダメージは与えられない。

あれは石や矢などの威力を上げる魔法だ。

つまり、誰かの攻撃の補助魔法。

 

誰か攻撃する人がいないと成り立たないのである。

 

以前にリティア君とのコンビネーションで、キツツキを退治した実績がある。

魔力感知に映った魔獣を倒せるとは思えないが、倒せなくても問題はないのだ。

 

これはダイエット。

ひたすら魔法を使って疲れてくると良い。

 

 

リティア君はアリサに手を引かれながら、名残惜しそうにチラッチラッと私を見る。

こっちを見るな。

 

面倒だが激励をして、アリサのダイエットに付き合って貰おう。

 

「リティア君、私の秘書なら、魔獣くらい倒せるよね?」

「勿論です!」

 

フンフン言いながら、腕をグルグル回して飛んで行った。

あの自信はどこから来るのだろうか?

 

 

2体の妖精が飛び立った。

 

リティア君は、随行員の領民から矢筒を借りて飛んでいる。

自分の身体より大きな矢筒を平然と持って、揚力など生まれそうもない小さな羽根で飛ぶ彼女の姿は異様だが、魔力の成せる事だ。

深く考えたら負けである。

 

ところで、魔獣の正体が気になるところ。

結構大きな個体だが、果たしてあれは何と言う魔獣なのだろうか?

 

鑑定Lv7発動。

 

【取得情報】

ブイード(成獣)

耐力:100

魔力:9

可食性:可(肉は煮ても焼いてもウマい)

錬成素材価値:中(角は薬効あり、皮は革製品、骨は料理)

価値:中(肉と皮が売れる)

弱点:火・右後脚(打撲傷有)

概要:猪が魔力を接種し強化された魔獣。

魔力を得て俺TSUEEE!とチョーシこいてるDQN。

強力な突進が武器ですが、大空を駆けるリティア様には無力!

所詮は強化猪!魔力9なら魔法も打てない!

リティア様にフルボッコにされるがいい!

ハハハハハ!圧倒的ではないか我がリティア様は!

貧弱貧弱ぅ!ブイードがゴミのようだ!

 

 

おお、鑑定さん(クルティナ君)がマトモな回答を寄越した!

対象のHPとも言える耐力を表示する粋な計らい!

 

そして初めて弱点に、火以外の有用な情報が!

感動である。

 

中の人に直接交渉した甲斐があった!

 

相変わらずコメント後半は酷いものがあるが、差し引きゼロにできるだけ進歩だ。

 

ただ、元の世界のネタを織り混ぜてくるのやめて欲しい。

俺TSUEEE!とかDQNとか、この世界の人には謎の言葉だからね。

 

 

では、作戦をアリサとリティア君に伝えよう。

 

狩るぞ!ブイード!

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