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44.使えない鑑定スキルへの改善要請

しばらく上の空だったリティア君が正気に戻ったのを機に、私は本題である鑑定スキル改善に舵を切った。


「次に鑑定スキルだが、先日同じスキル持ちの人族に会った。」

「そうですか!それならば、大変有用なスキルだと喜びを分ち合ったのですね!」

 

嗚呼、無駄に前向きだ・・。

どうやったら、そんな素敵な勘違いが出来るのだろうか。

神様、教えて下さい。


って、その神様が素敵に勘違いしてるので救われない。

 

「ああ、彼は中の人を殴れるなら、殴りたいと言っていた。」

「歪んだ愛情表現!?」

 

「ちなみに、私も殴りたい。」

「まさかのドメスティックバイオレンス志向!?」

 

「殴るのは画的にマズイので、こうしておこう。」

「痛い痛い痛い!」

 

私は正座する彼女の両腿の上に、私の根を乗せて重しにした。

 

グリオン君の悲願を代理で叶えてあげた。

 

 

尚、流石にリティア君を、グリオン君に紹介は出来なかった。

彼女が鑑定の中の人だった、と紹介しても困惑させるだけだ。

 

つまり、彼女をグリオン君の生け贄に捧げる事は出来ない。

その為、私が代理で敵討ちした。

 

正座の重しには、グリオン君の無念と、私の鬱憤が乗っている。

これで少しは溜飲が下がった。

 

だが、段々リティア君が恍惚の表情に変わってきたので、これ以上はご褒美になりそうなのでやめた。

ええい!解放したら残念そうな顔をするんじゃない。

 

 

「ところでリティア君、今の鑑定の中の人も、君の知り合いっぽいのだが、もう少し感情を抑えるように言ってくれないか?同志も困っているのだよ。」

「なな、何の事でしょう?」

 

相変わらず惚けるのが下手過ぎる。

リティア君同様の女神が、中の人をやっているのは判っている。

その後継者もクセが強過ぎて使えない。

鑑定スキルがポンコツなのは、彼女達の自由過ぎる仕事ぶりが原因なのである。


私は鑑定スキル持ち全員の代弁者として、直談判を決起した。

 

「君の秘書仲間、えーと何て名前だったかな?」

「クルティナです。」

「ああ、そうそう、そのクルティナ君。」

 

なるほど、クルティナという女神なのか。

知らなかったが、今判明した。

 

簡単に誘導尋問に引っ掛かる。チョロい。

 

「クルティナ君は、どうやら君のファンみたいでね。君が秘書としてこの世界に来たのが、お気に召さない様子で、私が君に構うと、鑑定の結果が荒れに荒れるんだよ。」

「そんな馬鹿な、鑑定スキルの報告は、スキルレベルに応じた事実を告げる事しか出来ないはずです。」

 

鑑定結果を個人ブログにしてた君がそれを言うのかね?

 

 

「では、試しに鑑定をしてみようか?」

 

論より証拠。

私は近くにあった適当な植物を鑑定した。

 

取得情報「 ワイタの幼木、薬効:Lv2(皮膚炎効果)、魔力:2、可食性:不可(食べても良いが喉がカブれ、呼吸困難となる。食べて欲しい)、錬成素材価値:小(樹脂は表面保護膜として利用可能)、価値:安価、弱点:火、概要:面倒だから解り易く言えば、前の世界の漆みたいな木。そんな事より馴れ馴れしくワタシの名を呼ぶな汚らわしい妖木め!そしてリティア様から離れろ!消えろ!リティア様に折檻するなど、なんて羨ま・・ではなく万死に値する!代われ!そして、リティア様・・好き。やだ言っちゃった♡ 」

 

もはや鑑定結果ではなく、大半はクルティナ君のクレームと願望連絡書と化していた。

最後は遂に私宛ではなく、リティア君へのラブレターになっている。

鑑定スキル、仕事しろ!

 

これも鑑定結果として自動保存されるのだが、保存したくない。

削除機能がないのが、気が利かない。

 

「・・・これ、どう思うかね?」

「 ク ル テ ィ ナ ー ー ! 」

 

後継者が真面目に仕事をしていない証拠を突き付けられ、リティア君がキレてくれた。

流石にアレを見れば、先輩として指導せざるを得ないだろう。

 

『かん・・』

「ん?何だ?」

 

思念通話で声が聞こえた。

 

『鑑定し・・なさい』

 

うわ、クルティナ君、神のお告げで直接話かけてきた。

この世界の神ってやりたい放題か・・。

 

こんな下らない事で神のお告げなんて聞きたくなかった。

はぁ、出ない溜め息の変わりに大量の酸素を気孔から吐き出してしまった。

 

 

スルーすると、また文句を言うだろうから、仕方なく鑑定を使用する。

 

取得情報「 多分薬草、以下省略、概要:リティア様はそこの邪悪な妖木に騙されているのです!即刻お戻りになって下さい。ワタシと共に未来永劫幸せに過ごしましょう! 」

 

殆 ど 省 略 し た ー !

 

そして対象物すら単なる予想!

多分って何だ、多分って!それなら私だって中の人ができるぞ!

 

しかも内容は鑑定一切関係なく、リティア君へのメッセージしか書いてない。

鑑定スキルをチャット機能に使うな!

 

「クルティナ、私はちゃんと言いましたよね?シャチョー様の為になる情報を誠心誠意伝えるようにと!これではレベル7なのに、伝える情報としては少な過ぎます!」

 

いや、多い少ない以前に、関係ない情報の方が多いのだが。

 

「まぁ少しの和み成分はあっても良いでしょうけど、何ですかコレは!あなたの個人的な話しか入ってないではないですか!」

 

盛 大 な ブ ー メ ラ ン !

 

君の鑑定も個人的な感想ばかりだったよ!忘れたの!?

 

「まったく、あなたは昔からわたしの事となるとムキになる癖が抜けませんね。慕ってくれるのは嬉しいですが、義務を放棄してはいけませんよ。」

 

言ってる事はマトモなのだが、リティア君が言うと腹立たしいのは何故だろうか?

 

 

『かん・・』

「ああ、はいはい。」

 

取得情報「 そこらの雑草、以下省略、概要:リティア様、そこの邪悪な妖木に情報を与えるのは世界の害悪です!これは世界平和の為なのです!決してジェラシーから意地悪してる訳ではありません!これはワタシの誠意であり、正義なのです!うん、ワタシ良いこと言った!それと嬉しいって!ズキューーーン!有り難き幸せー! 」

 

ブレないなこの女神様。

言うことを聞かないところも、リティア君そっくりだ。

 

女神って、こんなのしか居ないの?

天 界 の 人 材 不 足 具 合 が 深 刻 過 ぎ る !

 

「クルティナ、シャチョー様を悪く言うと嫌いになりますよ?」

 

おお、リティア君の眉間に青筋が・・


取得情報「 土、以下省略、概要:そ、そんな事は・・おい!そこの妖木!フォローしろ! 」

 

空気を読んで、言われる前に鑑定を発動してあげたら、間髪入れずこのメッセージ。

嫌いになるというワードに、激しく動揺してた。

そして敵視する私にまで、フォローを頼る始末。

 

君はプライドは無いのかね?

 

可哀想なので、仕方なくフォローを入れておいた。

 

「ま、まあクルティナ君も私に君を取られて悔しいのだろう。私はもう少しだけ、鑑定の内容が改善されればそれで良いので、許してあげてくれないか?」

「はい、シャチョー様!」

 

も う 許 し た !

 

許すの早過ぎて、言動に信頼性ゼロ!

 

取得情報「 石、以下省略、概要:お、おお!見直したぞ妖木!分かっているではないか!よし、今後は少しだけサービスしてやろう。べ、別に貴様の為に情報を与える訳じゃないからな。勘違いするな。今後ともリティア様へのワタシのフォローをよしなに頼むぞ。頼んだからな! 」


いや、鑑定スキルなんだから情報を与えるのが普通だろ!

勘違いするなって言いたいのはこっちだ!

何で普通の事が普通に出来ないの!?

 

それから私は君のサポート役ではないのだが!

逆だよね?

本来鑑定の中の人が私をサポートする方だよね?

 

鑑定スキルがどんどん壊れて行く!

 

これ以上は本気でマズい。

しっかり釘を刺しておかなければ、益々駄目スキルに退化しそうだ。

 

「クルティナ君、では君のフォローをする代わりに、こちらから条件だ。鑑定の結果を、相手の好き嫌いで変えない事。面倒臭がらない事。事実をありのまま伝えること。そして、それは鑑定スキルを所持する生物全員に平等だ。言っておくが、これは鑑定の結果として当たり前の事を要求している。いいね?」

 

取得情報「 空気、以下省略、概要:おのれ妖木、調子に乗りおって・・だが分かった。善処しよう。リティア様、たまにお戻りになられてはいかがでしょうか?ワタシのリティア様成分がそろそろ尽きかけておりまして・・その、もう限界で、世界を滅ぼしてしまいそうです。」

 

そ ん な 下 ら な い こ と で 世 界 を 滅 ぼ す な !

 

下らないのに影響力の規模が世界破滅レベル!

何この、子供のおもちゃ箱に核ミサイルの発射ボタンが紛れてるような状態!

 

「リティア君、彼女あんなこと言ってるが?」

「シカトで良いのです。わたしがシャチョー様の傍を離れる理由には一切なりません。」

 

世界を滅ぼすと言ってますけど!?

シカトが一番まずくないかね!?

 

「シャチョー様、世界が終わるまで、ご一緒しますわ。やだ、言っちゃった。」

 

も う 嫌 だ こ の 女 神 達 !

 

もう少しこの世界を大事にしたまえ!

 

もういい!

反省を促す為にも、世界の為にも、リティア君には天界に帰って貰おう。

 

「では、秘書スキルをOFFにする事にする。」

 

世界を滅ばされてはかなわない。

たったそれだけで、世界が守られるなら、こんな残念秘書は即返品だ。

さようならリティア君。

戻って来たくば、クルティナ君を更生させてからにするのだな。

 

まったく、何故この世界の命運を私が握らなくてはならないのだ。

無いはずの頭が痛い気がする。

 

それから、世界を滅ぼすのは魔王の役目だろう。

何故女神がその役を担っているのだ!

 

「そんな!何故ですか!」

「 世 界 が 滅 び る か ら だ よ ! 」

 

さっきから言ってるだろ!

 

「酷過ぎます!」

「少しの間、実家に帰省するだけだろ!」

「妻に実家へ強制送還するのですか!?」

「妻ではなく、君は秘書ではなかったのかね?」

「ひーん!シクシクシクシク」

 

また泣き始めた。

泣 き た い の は 私 な の だ が !

 

『グッジョブ』

 

いいから天啓をそんな軽い言葉で下すんじゃない!

 

 

そんな事があって、鑑定の結果はリティア君の献身の甲斐あって、少しだけ改善した。

改善の要因は、クレームが通ったからではなく、クルティナ君の機嫌が直ったから。

なので根本的解決にはなっていないが、問題の引き延ばしには成功した。

 

これで世界に散る鑑定スキル持ちに、微力ながら貢献できたのなら幸甚だ。

グリオン君、私は成し遂げたよ。

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