表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/187

43.戻って来た騒がしい日常と秘書(女神)への説教

今回からギャグ多めです。

書き貯めてあるので、しばらく連載します。

国王軍が帰還した後、いつもの日常が戻ってきた。


まず戻ってきたのは、アリサとリティア君だった。

 

「シャチョー様ぁー!」

 

リティア君が真っ先に突っ込んできた。

私の幹に体当たりするように抱き付いて来た。

私の太い幹が揺れたのだが、痛くないのかね?

 

「ああ!やっとシャチョー様エキスが吸えます!わたし、わたしはもう!」

「リティア君、気持ち悪い!」

 

エキスと言うな。

ハァハァ荒い息を吐きながら、私の枝に噛みつく彼女に、女神としての威厳は欠片も見当たらない。

もう身も心もダメ妖精になってしまっていた。

 

「あー染みるぅ!この濃厚さとコクが堪んないわね!」

 

リティア君と反対の枝には、いつの間にかアリサが食い付いて、私の魔力を吸っていた。

ヤブ蚊に食われた気分だ。

パチンと叩きたくなった。

 

「アリサ、私の魔力をラーメンのスープみたいに評価しないでくれたまえ。」

「ラーメンって何?美味しいの?」

 

そう言えば、この世界にラーメンは無かったな。

知らない言葉は、何でも食べ物と思い込む彼女の言動と事実が奇跡的に一致した。

 

「ああウマイぞ。」

「え?食べたいんだけど!」

 

アリサには、私が前世の記憶を持ち、別の世界の人間であったことを暴露しているので、この程度の話はしても問題はない。

 

「うーむ、この世界でも作れるのかね?」

 

ふと、そんな事を呟いてしまった。

私は口が無いので食べられないが、もしかすると、ランクシャー領の名物になるかもしれないし、再現してみても面白いかもしれない。

材料的に再現しようと思えば出来ると思うが、生憎私は知識はあっても料理が出来ない。

 

「シャチョー様、わたしが代わりに作ります!」

「リティア君。君は料理が出来るのかね?」

 

この迂闊で残念な女神が、マトモな料理が作れるとは思えないのだが・・。

 

「勿論です!秘書ですから!」

 

いや、秘書は料理より事務仕事を得意とする職業だよ?

君は家政婦の方が向いているのではないかね?

 

「そうか、では一緒に作ってみようか?」

「はい!お任せ下さい。」

「面白そう!アタシも手伝うよ!」

 

メンバーの意気込みは十分だった。

 

 

「では、まずは材料を揃えようか。」


この世界にも小麦はあるので、麺は何とかなるだろう。

ラーメンの麺にはかん水が必要だが、それが無い。

まぁ麺になれば何でも良い。

鶏のような鳥もいるので、スープも取れる。

醤油はないので、塩ラーメンにすれば良いだろう。

 

問題は私が味見できないので、完成品の味を確かめられない事だ。

その辺はリティア君に任せよう。

何でも食べる彼女なら、前世の世界のラーメンくらい食べたことがあるのではないだろうか。

 

「材料ですね。分かりました。」

 

リティア君がクルリと背を向けた。

 

「では、まずお湯を沸かしましょう。」

 

そして、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

リ テ ィ ア く ー ー ん !

 

 

出しちゃダメなヤツ出すなー!

 

「え?なになにコレ!変な紙ぃ!」


アリサがプラスチックの袋をガサガサ触っている。

やめてー!

それオーパーツ!オーパーツ!

 

このおバカ女神!

他の世界の物を簡単に持ち込むんじゃない!

 

「・・リティア君、何だねソレは?」

 

私が込み上げる怒りを噛み殺して、極めて冷静に尋ねた。

 

「ラーメンですが?」

 

それなのに、さも「当たり前の事を何故訊くのですか?」的な表情で、キョトンとした顔がイラっとくる。

ここを何処だと思ってるのだ、この駄女神は?

 

「私はこの世界で材料を揃えようと言ったのだが?」

「ですので、材料を・・あっ!」

 

やっと自分の過ちに気付いたようだ。

 

「す、すみません!チャーシューが無いですね!」

「 違 う ! そ う じ ゃ な い ! 」

 

どこまで天然なのだ、この娘は!


このままでは、私がチャーシューがない事に憤慨していると思われる。

心外だ!

もうストレートにツッコむ。

 

「余所の世界の物を持ち込むんじゃない!」

「だって、わたしが作れるラーメンはコレしかありませんから!」

 

威張って言うな!

インスタントラーメンが作れるだけで料理が出来ると言うな!

それなら私でも作れるわ!

 

それが無いからどうしようかと考えてたところなのに、神様パワーで瞬時に解決するのやめて!

 

何で女神の彼女より、私の方がこの世界への影響を気にしているのだ。

逆だろう、普通!

 

「リティア君、口を開けたまえ。」

「え?シャチョー様、一体何を?まさか、遂にわたしの身体を求めるようになって下さったのですね!」

「ああそうだ。」

「どうぞぉー!」

 

どうしてこの子は、こんなにも残念なのだろうか?

 

私はリティア君の口に小枝を2本差し込んで、左右に引っ張った。

 

「そーれーはー反則なのだよ、早く仕舞いなさい。」

「いひゃい、いひゃい、いひゃいれふ!」

 

彼女の頬が有り得ないくらいに変形していた。

 

「えー?ソレ食べれるんでしょ?コッソリ食べれば良いじゃん?」

「アリサ君、君は食べた瞬間から、それを周囲に言いふらすからダメだ。」

「何よ!ケチー!」

「言いふらすという私の批判を、まずは否定してから文句を言って欲しいのだがね。」

 

言いふらさないとは言わないところが、アリサらしい。

 

『シャ、シャチョー様の枝が私の口の中に・・コレはもしやご褒美!?』

「思念通話で自分の煩悩を暴露するんじゃ、って涎!」

『うへへへ、じゅる。』

「私の枝が食べられそう!」

 

身の危険を感じて枝を引き抜いた。

そう言えばこの娘は何でも食べるんだった!

 

「リティア、マジ引くわー。」

 

激しく同意する。

溜め息を出したいが、口がないので出せない自分がもどかしい。

出るのは酸素だけだ。

 

 

取り敢えずリティア君はインスタントラーメンを仕舞ってくれた。

何処に仕舞ったのか、不自然に吸い込まれるように消えた。

 

この事は他言無用とアリサに言い聞かせ、私はリティア君に説教すると言って、アリサに席を外してもらった。

 

では、人目のつかない場所に移動だ。

丁度良い、鑑定スキルについても、クレームを入れよう。

 

 

 

 

ここは教会の敷地の隅。

普段誰も来ない場所である。

 

「シャチョー様?こんな人気の無い場所に二人きりなんて!」

「普段より一層と妄想逞しいな。何かあったのかね?」

 

私の怒りを微塵も感じる事なく、高いテンションを保ち続ける、空気の読めない元女神。

 

「勿論、2日ぶりのシャチョー様ですから!あの亜人族、早く帰ればいいものを、2日も居座って!許しがたいです!絶滅フラグ立ててやりましょうか!」

 

おい、女神様。

 

「君は頭の治療に、一度天界に帰ってはどうかね?」

「て、天界とは何のことでしょうか?よくわかりません。」

 

今更誤魔化す必要性がどこにあるのか・・。

 

「ああ、言い方が回りくどかったね。秘書スキルをOFFにするから、休暇をとってくると良いだろう。」

「イヤー!切らないでー!クビにしないでー!」

 

泣きついてきた。

だから女神の尊厳を守って!

 

「では、これから私が言うことをよく聞くように。」

「はい!」

 

その瞬間、見事な正座をキメていた。

反省するフリをするのは、彼女の得意技である。

 

「まず、異世界の物をホイホイこの世界に持ち込んじゃダメだろ?」

「でも、それではラーメンが作れません。」

 

使命感が強過ぎる。

 

「作れなくてもいいんだよ。それより、異世界の物を持ち込んだら、それを出した君の正体がバレてしまうだろ?」

「そうでした!」

 

今更気付いた!?

 

「この世界にはプラスチックやウレタンフォーム等の樹脂製品の製造技術はまだ無いんだ。それを見た人はどう思うかね?」

 

何故私はこんな低レベルな説教を女神にしているのだ?

普通女神が人に説くものではないのか?

 

「スゴいと思います!」

 

回 答 が 小 学 生 !


「良くできました。」

「えへへー。」

 

反 応 も 小 学 生 !

 

「そう思った人は出所を探る。すると君に行き着き、君を拉致して無理矢理出させようとするだろう。」

「問題ありません。私はシャチョー様の秘書!この世界の人族の言うことなど聞きません!」

 

私は君の身は案じているのではない。

絶対死なないだろうし。

 

それよりリティア君を狙うヤツが現れ、私の周りにやって来るのが心底嫌だ。

私が望むのは安寧である。

せっかく木に生まれ変わって、ゆっくり出来るのに、刺客に纏わりつかれるなんてゴメンである。

 

「私は君(の秘密)を守りたいんだ。」

「 ズ キ ュ ー ー ー ン ! 」

 

何故か後ろ向きに倒れるリティア君。

 

「君を狙った輩が、ワラワラやって来ると面倒この上ないのだよ。くれぐれも人目のある場所で、この世界にそぐわないものを安易に出さないこと。いいね?」

 

「は、はひ。」

 

「リティア君?聞いているのかね?」

 

何故か茫然としている彼女を元に戻すのに時間を要した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ