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42.同志との協定

お久し振りです。約3年ぶりの投稿です。

また再開しましたので、宜しくお願い致します。

 

今回は説明回で、ギャグが少なめ。

退屈かもしれませんが、次回へ繋げる布石ですので、ご容赦下さい。

2日後、国王軍は予定通り帰還した。

 

グリオン君は国王軍の将軍だった。

かなりのお偉いさんである。

 

この国、エイングレイド王国は、国王軍と王国軍、2つの軍隊を擁している。

王国軍は、文字通り国の軍隊だ。

国王軍は、国王直属の軍であり、王城を守る近衛兵や直接王命を受けて動くエリート集団。

 

本来、他国の侵略等に対応する、国防を担う任務は王国軍の領分。

だが、今回ランクシャー領へ派遣されたのは、国王軍。

 

アイン領主は「王国軍」に援軍要請を出したのだが、何故か「国王軍」が派遣されたと報告を受け困惑した。

当初報告が間違っているのでは?と疑っていた。

 

しかし、街の前まで来て、直接軍旗と紋章を確認して驚愕したそうだ。

 

「何故国王軍が?」

 

余程の事が無い限り動かない筈の国王軍が、貧乏辺境領地であるランクシャー領程度の要請に何故応えたのか?

 

 

その要因は私であった。

 

 

国王は王妃を快癒させた、不思議な実がなる木が、ランクシャー領にある事を知っていた。

そのランクシャー領の援軍要請となれば、優先的に軍を派遣すべきだ、と即決してくれたそうだ。

 

だが、そこで迷いが生じる。

本来ならば「王国軍」の出番である。

しかし、王国軍は武勲を得て成り上がった者も多い。

国王軍に比べると態度も粗野で、権力を傘に横暴な振る舞いをする者もいるそうだ。

 

規模が大きく、国王軍に比べると統制も執り難く、制御が利き難い。

 

「命が助かったのだから、礼をするのは当然だ。」

それを大義名分に、本来の駐留期間を超えて滞在しては、無償で飲み食いし、女性を要求したりと好き放題して帰っていく事が通例であり、各地の領主からクレームが上申されていたらしい。

国王も頭を悩ませていたそうだ。

 

ランクシャー領の援軍を王国軍に任せると、功に焦った者がランクシャー領を粗雑に扱うのではないかと国王は憂慮した。

 

恩義のあるランクシャー領に、敵軍を退けた見返りとして、礼を失するような事をしでかさないか不安があった。

 

そこで、信頼のおける国王軍を派遣する事を決断する。

こうした思惑もあって、異例の即決国王軍派遣劇となったのである。

 

そして国王軍将軍のグリオン君は、その主旨を聞き、忠実に使命を守った。

「ランクシャー領内で横柄な態度をとる者は、国王を貶める行為と同義とし、厳罰に処す」

と、軍全員に強く釘を刺してくれており、国王軍は一切の見返りを要求すること無く、引き上げて行った。

 

これには領民も驚いていた。

これまで王国軍が派遣された時は、バイルラウンド王国軍に占領された状況と大差ない見返りを要求されたからだ。

 

「国王軍は違う!」「国王様に感謝を!」

バイルラウンド軍に勝利した時と変わらぬ、喜びの声を上げていた。

 

 

以上が、私がグリオン君から聞いた裏話である。

 

 

鑑定スキル被害者の会メンバーとして打ち解け、意気投合した私とグリオン君は、互いに各々の事情を話し合った。

そして、色々な取り決めをした。

 

まず、グリオン君の王命任務は3つあった。

1つ、王妃の病を癒した木の実の正体を突き止める

2つ、その実がなる木を王都に移植出来ないか見定める

3つ、その木を育てた者に褒賞を与える為、王城に招く

 

しかし、ここで困った事実が判明した。

 

癒しの木の実の正体は判明した。

私の実だ。

これで第一の王命は達成した。

 

だが、その実がなる木が、意思を持っていたのは想定外だった。

 

グリオン君は戸惑った。

鑑定スキルで確認して、動いて、喋る妖木と判明した私を、果たして王都に移植して良いものか?

また、実を育てた者が、その妖木そのものという話を、どう説明するか?

あまりに異例過ぎて、困惑を極めたそうだ。

 

どうすべきか悩んだグリオン君は、私に色々ぶっちゃけて、自分サイドに引き込んでしまおうと画策した。

 

 

だが、私はお断りである。

 

 

せっかく平和を取り戻し、これからまた安寧の日々を送れると思っていたのに、王都等に連れて行かれたら、気が休まらない。

 

それでなくとも、非常識な存在と自認する私だ。

多くの衆目に晒されて、何もやらかさない自信はなかった。

 

変な輩に目を付けられて、葉や実を狙われる日々なんて嫌過ぎる。

まだ、ガンプ大森林の鹿の方が、撃退が容易いだけマシである。

 

それに、安全が保証されたとしても、自由に動き回れない生活など、退屈ではないか。

木が自由に動き回れる事を願うのも変な話だが、動けるなら動きたいのが、元人間のサガというもの。

 

それに、アリサやリティア君という、これまた非常識な住人もいるのだ。

王都への移植は、到底承服できる要請ではなかった。

 

 

そこで私とグリオン君は手を組んだ。

互いに悪い顔してたのではないかと思う。

私に顔はないがね。

 

 

まず、王命に可能な限り応える為、私の存在を報告する事を承諾した。

但し、グリオン君の鑑定スキルを知っている者だけ限定だ。

 

次に、王都への移植は、不可能という事を告げて貰う。

理由は3つ用意する。

 

1つ、私はランクシャー領の御神木と崇められており、その木を持ち出すと領民からの反意が噴出する事。

2つ、王都に行くと枯れてしまう可能性がある事

3つ、私自身の意思で嫌がっている事

 

これらは、決して嘘ではない。

1つ目は事実である。

特にザイン君やアリティアファンクラブの会員から、猛烈に恨まれる事だろう。

 

2つ目も、不自由な生活がストレスとなり、病気になる可能性もあるので、ランクシャー領の風土でしか育たない木であると言っても、あながち間違いではない。

 

そして、3つ目が肝だ。

 

国王が恩義を感じているのであれば、私自身の意思も尊重して貰えるのではないか、と読んだのが一つ。

また、決してランクシャー領が拒んでいるのではなく、私個人が王都行きを拒否しているのであれば、領主に責任が及ばなくなる、という狙いもあった。

 

そして、嫌がる木を無理矢理移植しても、実を付けないかもしれないという脅しにもなる。

2つ目の理由にも真実味が加わる。

 

 

私の価値は、高い薬効がある実や葉にある。

それが得られないのであれば、移植する必要性がなくなるのだ。

実のならない木は、単なる植木だ作戦である。

 

ましてやグリオン君は鑑定により、私が魔法を操る妖木である事を知っている。

その事実も報告して貰う。

すると、そんな危険な存在を、自らの懐に入れるべきか悩む事だろう。

辺境の領地で管理させていた方が得策と感じるに違いない。

 

これらを根拠として提示すれば、折れるのではないか?

と睨んだ。

 

 

だが、それだけではグリオン君の「成果」がない。

せっかく懐刀であるグリオン君を派遣したのに、答えは「NO」だけでは、国王の沽券に関わる。

 

そこで成果も提供だ。

私をランクシャー領に放逐するメリットも提示する。

まあ、交換条件ともいうがね。

 

1つ、実がなった時は非常事態を除き、最優先で国王へ献上する

2つ、種の発芽生育方法を確立し報告する

3つ、従来通り、私の存在は秘匿とし、ランクシャー領への滞在を許可する。

   その滞在許可を、王妃快癒の褒賞の代わりとする。

 

こう提示する事にした。

これなら国王の面子も保たれ、褒賞も受け取った事になりカドも立たない。

 

尚、実は上述の2つ目が目玉だ。

どうやら過去に献上した私の実から出た種を植えたが、一向に発芽しないそうだ。

これはランクシャー領でも同じだったので、予想通りだ。

 

多分私の低い精力値が原因だと思うが、私の存在自体が異常なので、原因がそれだけとも限らない。

 

私としても、自分の子孫とも言える種からの発芽は、願うところであって、私の子孫が王都で人々の役に立つなら本望だ。

 

生育方法の確立は、互いの悲願とも言えるので、最も可能性が高い私の傍で発芽を試みるのが得策だろうと提案した。

そして、発芽したのなら、その後の育成に関しても情報共有したいと思う。

 

 

この様な提案をグリオン君に伝えたところ。


「お前、本当に木か?」

 

と、心底不気味がられた。

何故だ!?

至極合理的で論理的で、互いの利に叶っていたはずだが?


「いや、気味が悪い程、人族特有な配慮に精通していたのでな。」


そうだった。今の私は木だった。


「人と関わって長いからね。」


そう言って誤魔化した。

 

 

グリオン君は私の提案に賛同し、それ以上互いに詮索しない事で合意。

彼としては成果を持ち帰れて満足。

私としても、意に反する事をせずに済んで満足である。

 

この提案はアイン領主にも秘密で、私とグリオン君との間には何もなかった事にした。

 

 

こうして国王軍は何事もなく、すんなりと帰っていったのであった。


ただ、この提案が、後に大きな影響をランクシャー領にもたらすとは、その時の私は予想が出来ていなかった。


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