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34.妬みと怨嗟と賢者の木

時が過ぎると色々な事が変わっていきますね。

妖木と妖精二人は、相変わらずですが。

また3年が過ぎた。

ランクシャーの町は相変わらず平和そのもの。

 

アイン領主は結婚し、子供ができていた。

亜人族の結婚は、基本的に一夫一妻制で、前世のように生涯添い遂げる事が多い。

妖精族のように結婚と離婚を繰り返して、子孫を増やすような事はしないようだ。

 

だが、裕福で甲斐性がある者なら多妻としても特に問題がない。逆に多夫一妻も有り。

逆にそれが奨励されている。

そうしないと、人口が増えない厳しい世情なのだ。

 

 

はぁ、結婚ね・・。

あー、はいはい。

前世で彼女すらできなかった私には、縁が無いものだがね!

 

一夫一妻?

モテない私への嫌味かね!?

 

そんな富を独り占めするけしからん奴は、

死 ね ば い い の だ !

 

・・なんて思っていた時代が私にもありました。

 

 

ふふふ、今の私にはもう、そんな激情を抱く必要も無い。

嫉妬に身を焦がす事など全く無い。

一 切 羨 ま し く な ん て な い !

 

なんせ色恋沙汰が不要!

植物は特定の相手がいなくても子孫を増やせるのだ!

 

ほぼほぼセルフサービス!

 

実をつけ、種を植えれば子が育つ!

 

私は勝者だ!

性の縛りから解き放たれた、完全なる存在!

私に魅力が無かろうと、地味だろうと、陰気だろうと、幸薄そうと憐れみを受けようと、金のオーラが全く見えないとか言われようと、全っっっ然関係ない!

ビクともしない!鉄壁だ!

私は異性にモテる必要が無い超越者となった!

 

ビバ植物!ビバ樹木! 

 

さようなら前世の若かりし頃の鬱屈した私!

樹木に異性の目を気にする必要などないのだ!

 

 

そうだ、だから・・だから、

 

ザイン君まで結婚して、子供が出来たなんて話も、

 

全 っ 然 羨 ま し く な ん て な い の だ か ら ね !

 

 

ガッデム!なんであんな胡散臭い男がモテるのだ!?

間違っている!

しかも、嫁さん、メッチャメチャ可愛いじゃないか!

 

奥さーん!その男胡散臭いですよ!騙されてませんか!?

 

私は神を恨む!

あんなに真面目に一生懸命頑張った私が、彼女すら出来ずに過労死したというのに

不 公 平 だ !

 

 

「シャチョー様・・御いたわしいです。」

「いたわしいって言うより、痛々しいだけね。」

 

しまった。心の声が思念通話でダダ漏れだった。

 

「オジサン大丈夫よ。今はこーんな激カワなアタシと同棲してんだから、元気出しなさい。」

「中身は116のBBAではないかね。」

「なんか言った?」

「いえ・・すみません。」

 

 

ちなみにアリサには、私に前世で人間だった時の記憶がある事をカミングアウトした。

一緒に居ると、リティア君と私の会話の内容で、変に思われていた所が節々にあったのだ。

長い付き合いだし、これからも一緒に居る事になりそうなので、他言無用を条件に打ち明けることにしたのだ。

  


―――――その時の話。

 

「どうりで人間の事、よく知ってるなぁって思ってたのよね。」

と、アリサは得心しただけで、特に驚かなかった。

「だってオジサン、会った時からすっごい変だもん。もう驚かないよ。」

私との付き合いが長くなり、異常な事に慣れたようだ。

アリサのこういう、深くは詮索しない、サバサバしたところは助かった。

また、このお喋り妖精でも、言っちゃダメな事は言わないので、そこは信用が出来た。

 

 

―――――という感じだった。

 

 

「そうですよシャチョー様、今のシャチョー様にはわたしが居るじゃないですか。もう結婚しているも同然です!え?やだ、結婚してるのわたし達?」

「リティア君は私の同意なしに、強制的に住み着かれたと記憶しているが?」

 

それを結婚というのか、甚だ疑問である。

だからクネクネするのをやめたまえ。

 

するとアリサが割り込む。

 

「それでもリティア、超美人じゃん。平然とそこら辺で着替えるから、ラッキーエロも盛り沢山。街の男が聞いたら、オジサン燃やされるよ?」

 

そのわざとらしいラッキーエロが問題なんだがね・・。

リティア君は恥じらいに疎いのか、ラッキーじゃなくて、狙ってやっているのだ。

チラチラこちらを窺いながら、ドヤ顔で脱いでるのを私は知っている。

本人はサービスのつもりなのかもしれないが、実に無用な押し売りだ。

 

それ要らない!

 

正直、元人間の男性なので、気持ち的には嬉しい。

さすが元女神だけあって、絶世の美女であり、前世の私が見たら一目惚れしてもおかしくはない完璧な容姿である。(中身は置いておいて見た目だけ)

美女の着替えシーンは、大抵の男性に需要があるものだ。

 

だが現在の私は木だ。

性的欲求を掻き立てられるものも、発散させる触感も神経もないのだ。

 

その為、そんなシーンを見たとしても、芸術作品を見たような感覚で、エロさを全然感じない。

身体が全く反応しない。ムラッと来ない。

 

常 時 賢 者 タ イ ム !

 

その為、何だか男として終わってるというか、虚しく悲しい気持ちになるのだ。

 

だが、元非モテ男という悲しい記憶が、気持ちだけを揺さぶって、精神的に悶々とさせる。

そしてやり場と行き場の無い感情に苦しむことになる。

ある意味の、永続おあずけ地獄。

「元人間の記憶がある木」という中途半端な存在故の、何とも御し難い苦悩となって私を困らせた。

 

しかも、街のファンクラブの男からは、リティア君が私に抱き付いてくる度に、嫉妬の視線と怒りの感情がビシビシ私に向けられるのだ。

私は悪くない!

 

第一、ただの木に嫉妬しないで欲しいものだ。

抱き付かれた所で、感触はないのだから。

 

それはリティア君のベッドや椅子に嫉妬するようなものではないか?と問いたい。

そこまで極まったバカはいない・・・え?居るの?

とにかく、これも「動いて喋る木」という妙に人間臭い中途半端な存在故の、謂れの無い中傷である。

 

 

そんな周囲の目があるので、リティア君には過度なスキンシップや余計なサービス等は自粛をお願いしている。

苦悩と怨念怨嗟を生むばかりで、良い事が無い。

 

だが、リティア君は聞いてくれない。

「またまた、照れなくて良いんですよ♡」とか言ってやめてくれない。

  

どうやったらそんな素敵な勘違いが出来るのだろうか・・。

 

本人に全く悪気がなく、良かれと思っているから性質が悪い。

この辺も彼女の天然がなすところだろう。

彼女には今度、やめないと秘書をクビ(秘書スキル機能OFF設定)にすると通告しようと思う。

 

 

また、街の男達からの怨嗟だけならまだ良いのだ。

何故か「鑑定」の結果まで荒れるのが、極めて困るんだがね。

 

鑑定の中の人、絶対リティア君のファンクラブに入ってるよ!

 

鑑定結果が殺人予告になってたり、脅迫文になっていたりする。

病的なんですけど!

サイコパスじゃないのか、中の神様!?

 

天然過ぎて使えなかったり、情緒不安定過ぎて恐かったり・・

 

神様って、もう少しマトモなヤツがいないのかね!?

 

 

クレーム出したら、この中の人もクビになるのだろうか・・。

 

 

「君達二人は、確かに見た目は美人なんだが、大人の嗜みや魅力がないというか、知的さや品性に欠けるというか、清楚さがないというか、残念な部分が際立つのだよ。」

 

私は素直な意見を述べた。すると、これが大不評・・。

 

「慰めたのに、嫌味が返って来て泣きたくなりました!」

「腹立つわー。言ってはいけない事をズバズバと、腹立つわー。」

「ええ?マズかったかね?」

 

事実を客観的に述べただけなのだが、女性二人から盛大にダメ出しを喰らった。

 

「そういう無神経な言葉が女を遠ざけてたんじゃないの?」

 

アリサが怒り顔で、頬を張ってプイッと横を向いた。

うぐっ、そうなのかね・・。

 

「その可能性がありますね。シャチョー様、デリカシーが無いって言われてませんでしたか?」

「言われていた。」

 

思った事を口に出し過ぎだと。

事実だけど、改めて言われると傷付くから、言わない方が良いと窘められたこともあったなぁ。

良くも悪くも正直だったのが裏目に出ていた。

  

「やっぱり。」

 

アリサがジト目で睨んでいた。

 

「すまない、悪気はないのだ。客観的意見として、ついつい口に出してしまった。」

 

私は二人に謝っておく。

 

 

「ま、さっきの言葉でオジサンの好みが大体察しがついたわ。」

「そうかね?よく分かるね。」

 

「深窓の令嬢みたいな、清楚可憐でおしとやかな女性・・違う?」

「ああ、そんな感じだね。」

 

アリサはたまに鋭い。

 

「ぶっちゃけ、そんな女、現実にはいないし。絶滅種っしょ。」

「何だって!?」

 

というか、何故君が判るのかね?

 

「オジサンが結婚出来なかった理由分かるわー、高望みし過ぎたんじゃないの?」

「そんな事はないと思うのだが。」

 

何だかアリサに結婚相談をしている気分だ。

 

「他に結婚するなら、こんな女性ってご希望はある?」

「読書が好きそうな、落ち着いた雰囲気の女性なんて良いな。」

 

「モテないヤツって、モテないクセに注文ばかり多いのよね。」

「グサッ!」

 

心 の 傷 が !

 

希望を言えと言ったから打ち明けたのに、極太の針で心臓突き刺された。

 

「居ないってばそんな幻獣みたいな女。」

「だが、何度かそんな雰囲気の人に会ったことがあるぞ。」

 

居ない(ゼロ)って事はないだろう。

 

「あ、それ養殖もの。キャラ作ってるだけだから。」

「夢が壊れる!」

「天然ものなんて滅多に居ないから。」

「高級魚扱いかね!?」

 

うーむ、得心いかないのだが、アリサの言う事も否定できない弱気な私がいる。

なんせ私は、結婚も、お付合いさえ出来ず、生涯独身を貫いた、自他共に認められる非モテ男である。

 

貫きたくなかったのだけれど!

 

ただ、アリサやリティア君と一緒にいる今の私は、他者から見れば「リア充」に見えるようだ。

確かに、世界や種族は違えど、こんなに女性と会話する機会は、前世では無かった。

前世では、そんな機会にも恵まれないまま、人生が終了したものだ。

 

そう思えば、今の環境は喜ばしい状況なのではないか?

いやしかし、騒がしいだけだと思ってしまうのは、贅沢な悩みなのだろうか?

 

だが、女性といくらでも会話出来る環境は、最大限活用すべきである。

女性の意見を知れば、私にもモテ期が到来するのではないか?

 

そう思うと、彼女達の話を、真面目に聞くべきだと思った。

 

 

「では、現実的な女性とは、どんな女性なのかね?」

 

私はアリサに尋ねた。

 

「ま、大抵腐ってるか、干乾びてるかな?」

「 夢 が 壊 れ る ! 」

 

「腐りかけとか、干物とかが美味しいって、亜人族の連中は言うじゃない?それと同じかな?そういうディープな世界から目を背けて、綺麗な部分しか見ようとしなかったから、オジサン結婚できなかったんじゃない?」

「ぐぬ、アリサ君が珍しく説得力のあることを言っている。」

 

何やら深い事を言われて、特に確証もないのに納得してしまった。

本当にそれが事実なのかは、保証はないが、でも有り得そう。

 

するとリティア君が嬉しそうに割り込んできた。

 

「シャチョー様、わたしは腐ってますよ!」

「リティア君、良いのは腐りかけだ。完全に腐ってしまっては駄目なんだよ。」

 

自信満々で腐女子アピールされたが、うん、それ要らない。

 

「そんな・・では、もう少し腐食度合いを引き下げます。」

「いや、私は出来れば腐ってない人と付き合いたいのだが・・。」

 

好んで発酵食品を食べる人という訳ではないからね。

腐ってないに越したことはないのだが、リティア君、分かってくれたかな?

 

「つまり腐っていない()()()()付き合いたいのですね!?分かります。」

「どこからリティア君限定の交際条件になったのかね?」

 

話の流れを途絶えさせる、天性の才能があるなこの娘は・・。

 

 

そんな会話の後、鑑定の結果が再び大荒れになった。

中の人、天から盗み聞きしているようだ。

 

そろそろクレーム入れるべきだろうか・・。

 

 

 

 

ちなみに近況では、領主アイン殿の息子はセイン。

ザイン君の息子がライン。

どちらも男の子で、跡継ぎとして大切に育てられている。

現在2歳だ。

 

ランクシャー領は私の葉や、年に1つだけ実る私の実から出来る薬を特産として、王都に謙譲。

その他にも私がアドバイスした品物が好評で、他の領地や王都からの発注等も増え、安定した収入を得ていた。

お陰で経済は潤い、生活は改善され、餓死するような貧民は減り、移民も増えて少しずつ発展をみせていた。

 

 

私はスキルポイントを温存し、魔力操作の練習をコツコツと続け、魔力によって身体を動かすことが、随分とスムーズに出来るようになっていた。

 

「見たまえ。もう自由自在だ。」

「さすがですシャチョー様。」

 

リティア君はニコニコしながら、私の練習の成果を認めてくれた。

 

 

 

そんな平和な町に、不穏な空気が駆け抜ける。

 

 

「大変だー!」

 

ん?

どうしたのだろうか。血相変えて自警団の一人が領主の屋敷に駆け込んで言った。

 

その後、早馬が飛び出して行き、ザイン君にも召集がかかる。

そして、町人が教会前の広場に集められた。

 

 

何事かと、不安と緊張が周囲を包み、日が落ちて、少しずつ暗くなる空に蝙蝠が舞い始めた頃、領主とザイン君が、閉め切っていた教会の中から出て来た。

 

皆の注目が集まり、彼の口が開くのを沈黙をもって迎えた。

そして、その言葉により平和な日々は、急に終わりを告げる事となる。

 

 

「隣国が攻め込んできたようだ。」

 

 

戦争が始まろうとしていた。

事態が急変。この世界では、侵略戦争はまだまだ普通に起きています。

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