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31.気になる木のある日の風景1

ランクシャーの町でのエピソードです。

ランクシャーの町での私の日常を綴ろう。

 

電源設備のないこの世界では、夜の暗闇を照らす灯りは無い。

陽の光が基本的な照明となる。

その為、日の出と共に、人は動き始め、日の入り後は就寝が早い。

 

人間が夜も活発に活動するようになったのは、電灯の発達によるものが大きい。

エジソンは偉大であった。

 

 

さて、本日は朝から雲一つない快晴だ。

良い天気で光合成が捗るだろう。

 

「おはようございます、御神木様。」

 

まだ薄暗いにも関わらず、教会には朝早くから多くの人が礼拝にやってくる。

 

「おっはよう!シャチョー様!」

「おはようシャチョー様。」

 

「ああ、おはよう。」

 

シャチョー、シャチョーと呼ばれると、前世の通勤時の事を思い出すものだ。

 

「どもども、おはようございます、シャチョー様。」

 

昨夜にも見た顔・・ダバオ君だ。

教会前の広場にあるベンチで、そのまま眠ってしまって、今起きて来た。

 

「ダバオ君、君は酔っぱらうと、私の根本に吐きに来るのを止められないのかね?」

  

「いやー、タハハハ、何かシャチョー様のとこに行くと、翌朝調子が良いんでさぁ。さすが御神木!」

 

それは私が介抱してやってるからだ・・。

 

もう、君のゲロは見たくないのだが!

 

 

彼は何故か毎回、ヨレヨレに酔っ払うと、私にゲロを奉納しに来る。

来なくていいから!

 

あれから数時間ベンチで寝ただけで、もうケロッとしてる。

キチンと礼拝にも参加するくらいだから、肝臓は強いようだ。

 

なのに、毎度毎度あのだらしない体たらくは何なのだね?

彼は毎回どれだけ飲んでいるか・・。

 

 

ダバオ君、要注意人物!

 

 

 

 

礼拝が終わると、ゾロゾロと教会の中から人々が出て来る。

 

「ありがとうございました牧師様。」

「うむ、今日も御神木の加護があらんことを。」

 

 

この世界の宗教はインチキだと、私は確信している。

 

 

その教えは、国を造り上げた偉大な国王を崇めるもので、我々は、王の大地に住まわして貰っているので、国王に感謝と祈りを捧げなさい。そうすれば救われる。という内容だ。

 

そこまでは良い。

国王が税金とお布施の、ダブル取りが出来てウッハウハ・・みたいなシステムを作り上げたのだろう。

よく考えている。

システムは作った者の勝利だ。

 

問題は、教典や聖書みたいなものはなく、その先の細かな教えは、牧師に任されているので、地域ごとに独自の教えが広がる事である。

一応は総本山の王都教会から、定期的に視察がくるのだが、形だけの単なる接待出張なので、出迎えて歓待すれば、すんなりと帰って行くだけ。腐っている。

 

 

この野放しに近い独自性が、私からすれば盛大に疑わしいのだが、信者達は盲目に牧師の教えとお告げを有難く聞いている始末。

よく疑いもせずにスルーできるなと、溜息が出そうである。

 

気孔から酸素が出るだけだが。

 

 

そして、ここランクシャーの町の牧師が、それはもう胡散臭いのが問題だ。

果てしなく胡散臭い。

コイツは牧師にしちゃ駄目だろ!

と、何故誰も文句を言わないのか、不思議でならなかった。

 

 

「という訳で、国王様は偉い。そして、その代弁者である牧師の俺は、その次くらいに偉い。領主?あんなのはカスだな。偉さで言えば、俺の圧勝だ。」

 

現在の牧師は、ザイン君だった。

 

胡 散 臭 い !

 

やはりこの国の宗教は間違っており、教会は腐りきっている。

 

 

「いいかお前ら、今日は王都から商人がやってくる。そうすれば恐らく、例の薬に関して出所を訊かれるだろう。絶対に喋るな。知らない、わからない、不思議な豆か何かだ、とかテキトーに言って誤魔化しとけ。しつこいようなら教会に行けと言え。あとは俺が受け流す。」

 

このように礼拝は、神のお告げと称して、その日の注意事項や、これからやるべき方針などを、ザイン君が指示する場になっていた。

信者はザイン君の操り人形。

お陰でこの町は、やけに統率が取れており、私の存在が領外にバレていないのも、このインチキ礼拝によるところが大きい。

 

 

ザイン君はこの礼拝における煽動効果の有効性に目を付け、前牧師を騙し、強引に自分を牧師に認めさせ、領民を動かす地位を獲得していた。

 

インチキ牧師である。

 

「今日も御神木の加護があらんことを。」

「御神木様に祈りを!」

「シャチョー様に感謝を!」

 

ザイン君がそんな風に私を持ち上げたせいで、国教はもはや、ほぼほぼ御神木教になっていた。

 

宗教の乗っ取りだ。

問題にならなければ良いが・・。

 

 

そして、そんなインチキ牧師の胡散臭い礼拝は、何故か大好評だった。

遠くからでも、毎回欠かさず領民達は教会へやってくるほどに。

 

彼等は敬虔な信者、という訳ではない。

以前は教会はあるものの、大した信者は居なかった。

食う事に必死で、教会に来て祈る余裕さえ無かったのだ。

それがザイン君が牧師となって、爆発的に信者が増えた。

 

 

勿論、それにはカラクリがある。

まともな牧師が、正しき教えを説いても、こんな好評は博さない。

ましてや胡散臭いザイン君に、人心を惹き付ける徳があるわけがない。

 

だが、ザイン牧師には、彼らしい仕掛けがあった。

 

 

礼拝に来た者には、美味しいパンを配っているのだ。

このパン目当てで来る者が多いだけ。礼拝二の次!

 

 

このパンだが、一般的に家庭で作られているパンの何倍も美味いと大好評。

実は私の(というかリティア君の)アイデアで、格段味が向上したのだ。

お陰で「シャチョーパン」という固有名称まで付いた。

 

礼拝の後に配給するパンは、孤児達が作っており、毎晩パンを焼く香りが、教会には漂っていた。

生産量に限界があるので、礼拝は週に三回、三地域で分けた交代制で、均等に配給出来るようにしていた。

非売品なので、皆熱心に礼拝に通うのであった。

 

このパンの配給が、ザイン君の地位を磐石としていた。

 

 

「神を信じようが、パン目的だろうが、俺の指示を聞いてくれりゃそれで良い。」

「牧師が言って良い言葉ではないな。」

 

見も蓋もない牧師である。

 

一応は彼個人が私利私欲を肥やすような事はしていない。

領の発展に寄与するような事を告げて、民衆を上手くコントロールしていた。

そのお告げが絶大な実績を上げているので、彼の胡散臭いお告げにも、文句を言う者はいなかったのである。

 

 

そして、その有難いお告げの出所は、といえば・・

 

「旦那、次のお告げは何にしようか?」

 

私と相談して決めていた。

 

牧 師 は 君 だ ろ 、自 分 で 決 め な さ い !

 

 

私は身分自体が不法なザイン君に加担するのが嫌で、出来るだけ距離を取りたいのだが、彼はしつこく詰め寄って来るので困る。

 

「ザイン君、私は一応客として招かれてここにいる立場だ。この領を左右するような事を、部外者である私と相談するのは変ではないかね?」

 

「ケチケチすんなよ。もうこの領の御神木なんだし、皆御神木様の加護を有り難く頂いてるぜ。」

「あれは君が勝手に言ってるだけだろう!」

 

私は御神木になりたくて、ここに居るのではない。

 

「旦那のアイデアは効果抜群なんだよ。あの砂鉄と火魔石で作る硬い鉄とか、間引く事で美味くなる果実の育て方とか、昨年育ちが良かった果樹の花粉を、他の木に着けて回ると良いとか。特にパンは最高だったぜ!」

 

一応居候させて貰っている手前、少しだけ前世の知識を使って、生産力向上に役立ちそうなヒントを教えた。

それからは自分達で技術を発展させて行くように、触りだけ教える事にしている。

反則的な存在である私が、あまり介入すると、贔屓が過ぎて良くない気がする。

 

 

「あ、葉っぱ貰ってくぜ。」

 

ブチブチ

 

無遠慮に、荒っぽく葉を千切っていくザイン君。

 

「もう少し丁寧に採取できないのかね?一応、大切な私の身体の一部なのだが。」

 

「すみません」とか「頂きます」とか、もう少し配慮するのが礼儀だろう。

私は嫌味を伝えた。

 

「いいじゃねぇか、いっぱいあるんだし、どうせ増えるんだろ。」

「私は礼儀の話をしている。」

「はっはっはっ」

「今の会話のどこに笑いどころがあるのかね?」

 

ザイン君は「さぁて、今日も旦那の薬で儲けるぜ。」と意気揚々と教会に戻って行った。

 

はぁ・・朝から疲れる。

 

 

そして私を疲れさせる人物は、この町では事欠かない。

 

 

礼拝が終わると、既に働いている孤児達が仕事に出ていく。

すると、アリサとリティア君が起きてくる。

 

「ふあー、よく寝た。頂きます。」

 

カプ

 

起きて早々に私の枝に噛み付いて、魔力を吸う吸血妖精アリサ。

 

「アリサ君、まずは顔を洗うなり、体操をするなり、何かないのかね?」

 

彼女にとって私は、寝床兼食事なのだ。

 

「んあ?ふぁいけど?」

「吸いながら答えなくていい。」

 

何度行儀の悪さを指摘しても、ちっとも直らなかった。

 

 

「シャチョー様、おはようございます。」

「おはようリティア君。」

 

こちらは流石は女神だけあって、ちゃんと身嗜みを整えて行儀が良い。

しかし、行儀以前の問題が・・

 

「わ、わたしも魔力を吸っても良いでしょうか。シャ、シャチョー様の汁!もう、わたしはもう!ハァハァ」

「君に魔力を吸われると、何故か悪寒がするんだがね・・。」

 

汁じゃなくて魔力を吸えと、何度言ったら分かるのだろうか、このポンコツ秘書は・・。

 

「イタダキマス!」

 

聞いてない。

 

「ムハー!妖精最高!」

 

女神様のクセに、変身した妖精の生態を堪能していた。

 

 

「さて、今日も魔力操作の練習をしようかな。」

「シャチョー様、本日は町の外壁補修の依頼日ではありませんか?」

 

リティア君、今のは秘書っぽかったよ。

その調子だ。

 

「そうだった。じゃあ急いで向かおう。」

 

 

 

 

私は目立たないように、市街地は通らずに、教会の裏手から町の外れに向かう。

市街地の中を通ると、他領の行商人等に見られる可能性があるからだ。

教会の裏手は、孤児院運営の畑や農道なので、防風林に紛れて、あまり目立たないのだ。

 

私は「魔力操作」を使って根を動かし、何とか移動できるようになっていた。

夜、皆が寝静まってから練習していたのだ。

 

「スッゲェ!シャチョー様、ホントに歩けるんだー!」

「かっくいいー!」「きゃっきゃっ」「ワー!」

 

まだ働けない、孤児院の幼い子供とザイン君が同行する事になった。

子供達は私の枝から下がったブランコに乗って、移動樹木バスを堪能していた。

 

「久し振りに見たが、相変わらず気味が悪いな。」

「ザインさん、シャチョー様に失礼です。不気味というべきです。」

「同じじゃね?」

 

ザイン君が傷付く感想を述べ、リティア君がボケて、アリサがツッコむという態勢。

君達は漫才トリオでも組んでいるのかね?

 

 

穏やかな春の空。

藍や黄色や白等の色鮮やかな花々が咲き誇り、ポカポカとした陽気に包まれ、牧歌的風景が広がる丘陵地帯。

ランクシャー領の春は実に美しい。

 

私は途中、泉がある小さな森で休憩を挟んだ。

澄んだ綺麗な水なので、全員喉を潤す。

私も魔力操作に集中し続けて疲れたので、泉に根を浸けてホッと一息。

 

「お前等、ここから離れるなよ。」

 

ザイン君が子供達に注意を促していた。

 

 

「牧師様、ペーターがいないよ?」

「何だと!?」

 

言ったそばから問題発生である。

ちょっと目を離すと子供はコレだ。

魔力感知で探査すると、泉から流れ出た小川にいた。

魚か何かを追って行ったのだろう。

 

「そこの小川を下った所だ。」

「さすが旦那、見ててくれたのか。」

 

いや、今見たところだ。私だって常に全員を見ている事は出来ない。

 

「任せて!」「行ってきます。」

 

アリサとリティア君が連れ戻しに向かった。

 

 

だが・・これはマズいな・・。

私の魔力感知に、良くない”影”が映っていた。

緊急事態だ。

 

「アリサ君、リティア君、ペーター君を抱え上げて飛べるかね?」

「二人でならイケるかも。」

 

その後二人は、すぐにペーター君を見付けた。

ペーター君は町のアイドル妖精二人が迎えに来てくれて喜んでいる。

無邪気なものだ。

 

「急いで戻ってくるんだ、野犬のような動物の群れが近くにいる。」

「ええ!?」

 

 

緊張が走る。

次回に続きますぅ。

 

ちなみに、この回を書いていたのは2020年GWでした。

新型コロナウィルスの影響で、緊急事態宣言が発令。不要不急の外出と県外への移動が制限されてしまって、どこにも行けなかった。

こんなに家にいたGWって初めてです。

 

キャンプが趣味な作者にとっては、地獄の日々であった。

涼しくて、虫が少なく、温泉と焚き火がオイシイ最高の季節をフイにすることになって、悲しみに暮れていた。

そのせいで、悶々と鬱憤が溜まっていたからか、特別給付金は、キャンプ道具を購入して速攻で消えた。

給付前に買っちゃったw 経済回してはりますわ。

お蔭で少しは気が晴れた。

 

コロナ禍後は、今回買ったギア使って、ガンガンキャンプ行くぞー!

ちなみにソロキャンプです。

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