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3.昼寝で私は強くなる!植物はチートなニート?

社長は望み通り「転生したら木になっていた」

それが判明し、置かれた境遇を前向きに捉えるようになった。

 

現在は植物の”種”の状態。

そこで、社長が採った行動は!

 

取り敢えず寝る事にしました~♨

働きたくないでござる!

あれからレベル5になった。

つまり5年経過したが、私は色々考えた結果、植物の種のまま過ごしていた。


ステータスを見てみよう。

 

レベル5

種族:植物の種 →

耐力:2

魔力:4

体力:0

腕力:0

脚力:0

知力:100

精力:0

財力:0

プレイタイム:9999時間

スキルポイント:12

獲得スキル:機能閲覧(ステータス閲覧、スキルツリー閲覧、種族ツリー閲覧、リスト閲覧、言語選択)

 

 

1つツッコミたい。

 

「プレイタイムのカウンターストップ早くないか!?」

 

私が早々にツッコミを入れたのがそこだ。

8760時間毎にレベルが上がるのに、9999で打ち止めって使えない!

何なのだこのクソ仕様は?

 

 

「そして植物の種、弱っ!」

 

5年かけて耐力2!

恐らく踏まれたら死ぬ、どんぐり並の耐久力である。

 

じわじわと魔力が貯まっているが、使い道が分らないので無駄な溜め状態維持を継続している。

その他は、知力以外が全てゼロ。

流石は、単なる「植物の種」である。貧弱だ。

 

そんな死と隣り合わせな、常時風前の灯火が、我が命である。

 

 

そこで私は、5年間放置してレベルを上げていた。

 

恐らく今の私は、地中等に埋まっていて、発芽を待っている状態ではないか?

と私は予想しており、それは正解であると確信している。

 

種族:植物の種 →

 

この矢印の意味は、発芽して新芽を出す準備が整っている事を意味する。

これは、「種族ツリー閲覧」というスキルを、3年目に自動的に取得した時に判明した。

「→」マークが出たと同時に、種族ツリーが閲覧出来るようになったのだ。

 

「植物の種」の次は、「植物の新芽」とクラスチェンジするらしいのだ。

 

 

そして、種族ツリーは、これから私が、どのような木として成長していくのか、選ぶことが出来ると教えてくれた。

 

スゴイではないか。

始めから定められた植物の種ではないのだ。

針葉樹なのか、広葉樹なのか、現段階では決まっていない。

低木なのか、花をつけるのか、果実を実らせるのか、シダ植物のように胞子を飛ばすのか等、様々な種類の植物へ、自分で選択して成長できるのだ。

 

その時から、私はどんな植物になるか、未来を想像して胸躍らせていた。

 

 

しかし、そんな明るく遠い未来の前に、のっぴきならない事情が立ちはだかっている事に気付く。

 

私は貧弱で脆弱だ。

 

私の貧弱過ぎるステータス数値は、下手に発芽すると、取り返しがつかなくなると警報を上げていた。

目の前の大問題を何とか乗り越えなければ、未来は無いのである。

 

植物の新芽は、非常に脆くて弱い。

動物に踏まれたり、折れた枝が落ちて来ただけで死んでしまうだろう。

また、発芽した場所が、運悪く日陰だったら、光合成が出来ずに虚弱なまま枯れるのを待つだけ。

 

自然界に於いて、一体どれだけの種が、成木となる事なく、志半ばに朽ちていった事だろう。

 

私は自然の過酷なる生存競争に晒されている事を実感した。

 

 

そこで私は慎重になった。


種のまま様子を見て、年月経過でレベルを上げよう。

時間はたっぷりあるし、私はまだまだゆっくり(くつろ)ぎたい。

暗黒と静寂を満喫しながら、強くなるのを待つのだ。

 

時は金なりで、時はレベルなり。

果報は寝て待つべきなのだ。

 

レベルが上がれば、スキルが獲得出来る。

そのスキルが、生き残る鍵となるのだ。


私は、発芽した後、命の危機を回避できるように対策する為、レベル7になるまで発芽しない事を心に誓って昼寝を繰り返すのであった。

 


 

 

レベル7

種族:植物の種 →

耐力:2

魔力:6

体力:0

腕力:0

脚力:0

知力:100

精力:0

財力:0

プレイタイム:9999時間

スキルポイント:10

獲得スキル:機能閲覧、魔力感知Lv4

 

 

「蝉の幼虫の気持ちが分ったなぁ。」

 

快適だった。蝉も快適なのだろうか?

 

 

7年間地中暮しを続けてレベル7になった。

いよいよ発芽してしまおうかと思い、試しに「魔力感知スキル」を獲得してみた。

 

植物に目は無い。

なので、発芽しても、外の様子が分らないのだ。

 

もしも発芽した場所が、暗い場所だったら詰みである。

少しでも周辺の様子が察知できるように、目が無くても視覚情報に近い情報取集能力を得ておくべきと考えた。

そこで魔力というステータスがあるのであれば、周辺に魔力を含んだものがあれば、それが何か判るのではないか?と考えた。

 

そして、年甲斐も無くウキウキしながら、スキルを使用してみたのだが・・

 

 

「何だコレは・・?」

 

感じ取れたのは、半径1mほど範囲で、ぼんやりと何かがある程度の情報しか読み取れなかった。

暗闇の中に、赤い光の濃淡で表現される世界。

しかし、如何ともし難いほど範囲が狭い、精度が悪い、感知能力が低い。

要するに使えない駄目スキルだった。

 

絶望に囚われた私だったが、よく見ると魔力感知Lv1とあった。

 

Lv1?

スキルにもレベルがあるのか?

 

もしかしてと思い、魔力感知を更に取得したところ、魔力感知Lv2となった。

すると、今度は半径10mほど範囲に広がり、赤い光もボヤけが少なくなった。

先程は滲む様にボヤけていた輪郭が多少明瞭になり、感じ取れる魔力の発信源の数も増えた。

 

 

これならイケる。

私は確信して、もう2回、魔力感知に投資。Lv4とした。

 

 

そして後日、魔力感知Lv4を使用して判った事がある。

 

流石はLv4だ。

 

半径50m程までに、何があるのか明瞭に判る様になった。

それこそ、精度が高いサーモグラフィーの画像のようで、魔力が強い物ほどクッキリ確認できた。

魔力量が微量なものでも、ちゃんと判別出来るようになっていた。

 

この世界では、万物には魔力が含まれているのか、土や石や植物に至るまで、魔力を持っており、魔力感知でその形を捉えることが出来る。

目が無い植物には、もってこいのスキルだった。

 

但し、色は分からない。

Lv4でも相変わらず、赤い光の濃淡だけの世界だ。

 

 

そして周辺を確認すると、案の定ここは地中で、地表から約30cm程の深さ。

すぐ傍を湧水が流れる小川がある森の中。

周囲には木々が鬱蒼と茂り、恐らく日当たりは良くない思われた。

 

なるほど、ここで発芽するのはリスキーだ。

 

1つ、日光が届き難い。植物の生育には致命的である。

1つ、小川の傍は、水を飲みに来た動物に踏まれたり、草食動物に食べられる危険性が高い。

 

小川があれば水には困らないので、魅力的な立地のように見えるが、吟味すれば危険度が高い場所である事が判明した。

 

 

だが、同時に問題も判明。

 

スキルを使用すれば、魔力が減る。

 

Lvに応じた魔力が失われ、約10分間で感知能力が消えた。時間制限もあるのだろうか?

 

現在の私の最大魔力は6だ。それが魔力感知Lv4を使用後には、2となった。

魔力6に対して、Lv4の魔力感知が10分しか使えない。

 

これは使いどころが難しい。

 

幸いなことに、魔力は時間の経過で元に戻ることが判った。

どうやら私は、地中に含有する魔力を吸って回復している様子だ。

その証拠に、私の周辺は魔力が薄くなっていた。

 

「ふむ・・。」

 

この結果を受けて、私は考えた。

 

 

 

 

考えていたら、更に2年が経ってレベル9になっていた。

前世の激務の反動なのだろうか?のんびりマイペースさが比類なきレベルに到達してきたようだ。

ちょっと考えただけで、2年を過ごせるようになるとは・・

 

時間感覚が、樹木らしくなってきたではないか!

 

私の臆病さと優柔不断さも相まって、2年くらい思い悩みながら昼寝を繰り返しても、全く苦にならないようになっていた。

 

いや~昼寝は最高だ。

 

だが、私は2年間を無駄に過ごしていた訳ではない。

 

 

レベル9

種族:植物の種 →

耐力:3

魔力:8

体力:0

腕力:0

脚力:3

知力:100

精力:0

財力:0

プレイタイム:9999時間

スキルポイント:14

獲得スキル:機能閲覧、魔力感知Lv4、水魔法Lv1

 

 

悩んでいる間に、画期的な発見があった。

 

ステータス欄の「耐力」「知力」等のパラメータ。

そこに植物には関係のない項目がある事に疑問を抱いた。

 

植物なのに、「脚力」という項目があるのは変じゃないか?

動けない存在なのに、そんな項目は無意味ではないか。

動けないのであれば、項目自体が無くても良いのでは?

 

私はそう思いつつ、気紛れにスキルポイントが割り振れないのか試してみた。

 

「脚力に1と・・あれ?割り振れた?」

 

なんと割り振れてしまったのだ。

 

耐力や魔力は、レベルアップで増えていたので、その他のパラメータも、同様にレベルで増える数値とばかり思っていた。

まさかのスキルポイントでも加算が可能!

 

「いや、植物に脚力があってもね。」

 

私はスキルポイントを無駄に浪費してしまった事を悔やんだ。

 

 

「待てよ・・・割り振れるという事は、その力を発揮できるのか?」

 

そうだ。

ここは不思議な世界。

魔力とか言う、奇天烈な力が存在し、思考が出来る気味の悪い植物もいるのだ。

ならば、植物なのに動くヤツがいても、おかしくないのか?

 

私は身体を動かす要領で、力を入れてみた。

 

ブルッ

 

「動いた!?」

 

確かに今、地中であるが、その身を震わせる程度の事は出来た。

手も足も無いのに、何故か動ける。

 

凄いぞ!

 

これなら移動して発芽場所を選べるかもしれない!

生存確率を上げられる!

 

私は更に2つ、脚力にポイントを振った。

 

恐らく植物だから、レベルと共にこの数値はなかなか増えないだろう。

今後はスキルポイントの有力な割り振り項目として重要視する。

 

 

そして、水魔法Lv1も取得した。

水不足の危機回避に、取得しておいて損はないと思ったからだ。

 

Lv1は、周辺を少し湿らせる程度の湿気を発生させる程度。

だが、植物の新芽には丁度良い水分だ。

 

 

 

 

さて、ここで「種族ツリー」について触れておく。

植物の種の次は、植物の新芽だ。

そこから先が多種多様なので、選ぶのが大変だ。

 

尚、全ての派生先が閲覧できる訳ではなかった。

中盤以降は、分らなくなっていた。

 

 

私はどんな植物にもなれる魔法の種なのだ。

無数にある選択肢の中から一つ一つを選択し続け、将来、どんな木になるかを自分で決める。

 

自由だ。

だが、自由とは、自己責任の上に生まれる、僅かな甘味でしかないと、私は知っている。

責任の無い自由は、単なる身勝手・横暴でしかない。

 

自分で進路を決め、行き着いた先で見える景色は、全て自分の選択の結果だ。

望んだ良い結果であろうと、望まない悪い結果であろうと、それを受け入れる覚悟が無ければ選択出来ない。

なかなかに重い、責任の伴う事なので、進路の決定は、本来大変悩ましい。

 

しかし、時間に余裕が有り余っている私は、何年もの間じっくりと考え、悩み、どんな木になりたいかを考え抜いた。

 

その為、私が進む樹木道はとっくに決まっていた。

 

 

・・久し振りに進路を考えたものだ。

 

将来何になりたいか?

 

若い時に進路を決めて、その通りになる事なんて稀だ。

社会を知らない若者に、現実的な進路選択が出来るとは思えない。

「将来は、◯◯会社の社員になって、MC旋盤で機械加工をしたい。」

「医療事務の資格をとって、専業主婦と両立したい。」

そんな地にベッタリと足をつけた中高生がいたら、私は気味悪く思うだろう。

 

だから大抵の人が、若き日に夢見た職業になんて就いてはいない事だろう。

 

 

だが、私はその稀な例だった。

 

若き日の私が選択した進路は、「社長になりたい。」だった。

 

 

そして私は宣言通り社長となった。

しかし、その現実は、若き日に夢見たリッチで余裕のある、お金持ちな姿とはかけ離れたものだった。

 

私はつくづく不器用だ。

もっと狡猾になれば、余裕があっただろう。

もっと非情であれば、裕福であっただろう。

もっと計算高ければ、死なずに済んだのだろう。

だが、私には、それが出来なかった。

 

その結果が呆気ない過労死。お笑いだ。

 

今頃私の従業員達はどうしているだろうか。

私が居なくなって、工場は回っているのだろうか。

いや、案外私が居なくなった方が、利益が上がっているかもしれないな。

ふふふ、会社を頼むよ、みんな。

 

 

私は死んだが、満足だ。よく戦ったと前世の私を褒めてやりたい。

今の私にも満足だ。この幾らでも休める有り余る時間。

こんな時間がずっと欲しかった。有難いことだ。

 

 

しかしずっと種のままでいるのも良くないだろう。

地中で腐ってしまうかもしれない。

 

たっぷり昼寝してスキルポイントも貯まった。

 

さて、そろそろ行こうか。

私は芽吹かなければならない。

 

私は種になりたかった訳ではない。

 

私 は 木 に な り た い の だ か ら 。

 

 

いよいよ私は殻を脱ぎ捨て、大地に根付き、芽を吹くことを決意した。

この社長、臆病で慎重ですが、意外と思い切りが良かったりします。

会社を企業する人ですから、ある程度の楽観視が出来ないと何も出来ません。

やる前にはよく考え吟味するが、やってみて考えられるバイタリティも持ち合わせています。

大勢の従業員の生活をひたすら守って来た社長さんは、肝が据わってました。

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