28.鑑定スキルさんの中の人へ物申す
ステータスに関するエピソード
今回は新たなスキル「秘書」に関してお届けします。
レベル28
【獲得スキル】
思念通話Lv5、鑑定Lv7、秘書Lv4
そして、気になる思念通話Lv5、鑑定Lv7、秘書Lv4
「思念通話」は、指向性を持たせたかったのと、長距離でクリアな通話の実現に、早めにレベルを上げた。
Lv5となれば、かなり長距離でも通話が出来て、音声もクリア。
しかも、話したい相手にだけ思念を送受信できるようになり、アリサの思念通話よりも高性能になった。
「何なのソレ、反則よ!」
アリサは私のお手軽スキル習得術に憤った。
また、Lv5にすると、派生スキル「転送」が解放された。
えーっと、何を転送するの?
メールかね?
そして、何かと問題の鑑定さんである。
アリサのステータスを見れるまで、意地で投資し続けたら、Lv7まで上げてしまった。
Lv7で、やっとステータスらしいところまで確認することが出来た。
Lv5で、品物は価値評価。人物には財力の項目が増えた。
Lv6で、品物・人物共に弱点評価、人物には耐力・体力・精力の項目増。品物は各項目の説明増。
Lv7で、品物・人物共に各項目の詳細説明増。人物には腕力・脚力・知力の項目増。
という流れ。
その途中、Lv6で派生スキル「秘書」が解放されたのだが、これで一悶着あったのだ。
「秘書」か・・。
前世は社長だったが、秘書なんて贅沢な人材は雇えなかったなぁ。
このスキルを取得すると、秘書になれるスキルが身に付くのか?
いや、そんなスキルを獲得して、一体誰の秘書になるのだ?
ふと一瞬、ザイン君の顔が思い浮かんだ。
ブルッ・・
おお、植物なのに何故か寒気が!
ザイン君の秘書なんて絶対に嫌だ!
あ ん な ブ ラ ッ ク 企 業 、絶 対 に お 断 り だ !
休日出勤、深夜残業当たり前。
アットホームという名の無基準労働、断固反対!
まるで借金返済の為にがむしゃらに、身を粉にして働いた前世の私に逆戻りではないか!
しかも、彼からの依頼の場合、私は常に無償労働だ。
働きたくないから、木に転生したのに、彼の秘書になんてなったら馬車馬のように働かせられる!
ほぼほぼ奴隷!
彼の秘書などあり得ない!
第一彼は私の配下でないか!
そもそも何故、就職先に彼の顔など思い浮かんだのだ。
いや、彼の顔が思い浮かんだのも分る。
これまで彼にコキ使われ続けたからね・・その惰性ではないか。
最近、事ある毎に私を使った儲け話を持ちかけてきて、私を巻き込むのだ。
「御神木の樹脂を採らせろ」とか、「御神木の株分けをしたいから、挿し木させろ」とか、「御神木テーマソングを考えたから歌ってくれ」とか、「御神木ダンスで祝福して金をとろう」など。
無茶振りばかり。
何 だ こ の 御 神 木 プ ロ デ ュ ー サ ー !?
孤児の救済の為だからが殺し文句。
孤児の救済は君の仕事であって、私の業務範囲外だ!
と斬り捨てる事は言えずに、手伝ってしまう。
そんな私の意志の弱さが、彼を調子付かせているのだろうか・・。
お蔭で立場逆転現象が起きて、私が彼に使われているように錯覚してしまっていた。
とにかく、彼の秘書なんて断固お断りだ!
セールス、ザイン君、お断り!
アイン領主の秘書も同様だな。
彼も前世の私並みに多忙だ。
彼の秘書になっても馬車馬確定だ。
彼はまだ若いので良いが、あのままだと、私みたいに50で過労死だね。
とにかく、秘書スキルは不要。
絶対にこんな無駄スキルにポイントは振らないと、私は堅く決意したのだった。
すると、
『・・・・です!』
ん?
何か聞こえたか?
『・・秘書・・とって・・』
は?
聞こえ辛いが、やはり聞こえた。
レベルの低い思念通話だろうか。
近くに誰か居るのだろうか?
「誰だね?」
私は問い掛ける。
・・・・。
返事が無い。ただの空耳の様だ。
『秘書・・とって・・お願い・・』
んんー、やはり何か聞こえる。
気になるのは、この声だ。
聞き慣れた声と思ったら、レベルアップ時にどこからともなく聞こえてくる『レベルアップしました。』のアナウンスと同じ声だった。
・・・・「秘書スキルを取れ」だと?
気は進まないが、1つくらいならポイントを振っても良いか・・。
取得しても使わなければ良いのだ。
私は天啓にも似た声に応じて、秘書スキルを取得する事にした。
すると、
「はー、やっと取ってくれましたね。」
「は?」
突然声が明瞭に響いた。
やはり、レベルアップ時のアナウンスで聴く女性の声だ。
「お久し振・・ではなく、初めまして。秘書のリティアです。宜しく御願いします。」
え?
秘書スキルって、秘書のスキルを得るスキルじゃなくて、秘書を雇えるスキルなのか?
いや、肝心の秘書の姿が見えないのだが・・。
私はまず、この声の主の正体を確かめる。
「あの、どちら様でしょうか?」
「秘書のリティアです!お忘れで・・ではなく、シャチョー様の秘書として、これからお力になる為に頑張ります。」
ううむ。先程から「久し振り」とか「忘れたのか?」など、彼女は私の事を知っているような口振りだが、私は記憶にない。
レベルアップ時くらいしか接点が無いのだがね・・。
いちいち訂正して、言い換えているのも意図不明だ。
「姿が見えませんが?」
「スキルレベル1では、実体を持てません。レベルを3まで上げて頂ければ、顕現可能です。」
また不思議な存在が現れたものだ。
しかしスキルのレベルアップボーナスを教えてくれるとは有り難い。
本当に秘書のようだ。
あ!
ふと私は記憶の片隅から、この声の主を思い出した。
聴いた事があると、ずっと感じていたのだ。
「あの時」の事は、印象深い出来事だったので、忘れる筈もない。
そう、私が「転生するなら木になりたい」と願い、それを叶えた天の声だ。
「その声!思い出したよ。確か私がこの世界に転生する時に聴いた・・」
「 人 違 い で す 。 」
・・即座に否定された。
だが怪しい。
「いや、そんな事はない。私は癖で、一期一会を大事にする。」
会社を運営していると、様々な出会いがある。
思わぬ時に、ひょんな事から、その出会いに助けられる事があるし、あったのだ。
会社は一人では支えられない。様々な人との出会いがあって、人に助けられて支えられているのだ。
だから私は一期一会の縁を大切にして、忘れないようにしている。
「だから、君の声も忘れては・・」
「他人の空似です。」
「いや、でも・・」
「人違いです。」
「・・・・。」
「・・・・。」
どうにも誤魔化したいようだ。
まあいいか。
話を前に進めよう。
「分かった。もう詮索はしないでおこう。」
「はい、ありがとうございます。」
と思わせて・・
「では、改めて挨拶しよう。久し振りだねリティア君。」
「はい、お久し振りです、シャチョー様。」
彼女、どうにも天然のようだ。
私の「久し振り」というフリに、簡単に引っ掛かっていた。
初めましてではなかったのかね?リティア君。
気付いていないようなので、そのまま続ける。
「君は私の秘書として働いてくれるのか?」
「はい。」
「レベルアップのアナウンスなどはどうするのかね?」
「今まで通り続けます。」
隠す気があるのか無いのか、分からない天然振りだな。
もはや素で答えていた。
「これからは私の知らないこと等を教えてくれたりするのかな?」
私は、この世界における秘書とは何をしてくれるのか確認してみた。
「レベルに応じた範囲までならお答え出来ます。」
「レベルとはスキルの?」
「いえ、シャチョー様のレベルです。」
それは時間がかかりそうだ。
既知の事以外を知りたいと思えば、翌年まで待たねばならない。
そして私はもう一つカマをかけてみる。
「なるほど。君は女神か、何かでもやっているのかね?」
「ええ、わたしは・・ええーーっとぉ!ええ、そんな事はありません。はい。」
こ の 人 、ど う も 女 神 様 ら し い 。
転生時の会話や、レベルアップに関係していたり、何故かスキルなどの裏側を知っている事など、状況から言って超常の存在かな?と思ってカマをかけてみたのだ。
彼女は否定するので、女神なのか、天使なのか、邪神なのか、悪魔なのかは、細かな正体は明確には分からない。
だが肯定しかけたので、女神に類する何かのようだ。
しかし誤魔化し方が稚拙過ぎる。
アリサに引き続き、アホの子が現れた。
女神なのに・・。
「やはり君はあの時の・・」
「人違いです。」
「縦の人はあなた♪ 横の人は私♪」
「糸違いです。」
よく分かったな・・。
「・・・・。」
「・・・・。」
どうも私に構ってくれるらしいので有難いが、女神様にそんな暇があるのだろうか?
それと、先程までの天然ボケ。
なんだか既視感を覚えた。
そして、奇しくもそれは、これまで散々私がツッコミ続けてきた、問題スキルと通じるものがあった。
言わずと知れた、鑑定さんだ。
私は再びカマをかけた。
「鑑定スキルのレベルを上げて現れたという事は、もしかして君は鑑定スキルの中の人なのか?」
「い、意味が分かりません。中に人なんて入ってませんよ。夢と希望と愛が詰まっているんです。」
中 の 人 っ ぽ い 。
動揺を隠せていなかった。
しかも、「中の人」という前世の言い回しすらも理解しているので、世界を超えての知識を持っていることも判明。
鑑定の中の人という事は、彼女があのポンコツ回答の主であると判明した。
これは、なんとも微妙な秘書が出てきたものだ。
コ イ ツ は 駄 目 だ 。
こ の 秘 書 は 使 え な い 。
この天然女神秘書から得られる情報は、眉に唾をつけて聞いておくべきだな。
どうでもいい情報ばかり持ってきそうだ。
鑑定結果は、食べる事に関しては、何故か詳しい解説が載っている割に、それ以外の内容がプアだった。
酷いときには、予想や憶測だった。
鑑定報告に、予想とか求めてないのだがね!
せ め て グ グ っ て か ら 書 け !
特に備考コメント欄など悲惨だ。
個人的な感想まで載っていた。
むしろ鑑定Lv4は個人的感想がメイン。
鑑定結果は、このポンコツ女神様のブログと化していた。
それから、鑑定の中の人という事は・・
何 で も 食 べ る ぞ 、こ の 秘 書 。
兎人族は「美味しそう」だったからな。
兎人族の町人は、彼女を見たら逃げて欲しい。
鉈まで食おうとしてたからね。
まずは食べてみる事をネタにしていた節がある。
そんなネタ要らない!
鑑定してるのは、君へのネタフリじゃないのだが!
私は君のブログが読みたいのではない。
どちらかと言えば、百科事典を読みたいのだ!
コンテンツが違う!
前世のネット閲覧を思い出すなぁ。
観たいページをクリックすると全然関係の無い広告ページに強制的に飛ばされたようなイライラ感。
お蔭で鑑定の度にフラストレーションばかり溜めていた。
是非ともそのブログ筆者に文句を言いたいと思っていたところだ。
渦 中 の 張 本 人 が 現 れ た !
真犯人とも言える。
「♪」
本人はバッチリ誤魔化せていると、謎の確信に至っていた。
どうもアホの子らしい。
脱力感が激しいので、今は可哀想なのでクレームは申し立てずに、流すことにしてあげた。
私は大人だ。
だが、続いて私は極めて残念な事実に気付いた。
もしかして、この女神様、秘書スキルとして、ずっと付き纏う気か?
これは由々しき事態だ。
この溢れんばかりの天然ボケ具合から、私のツッコミ頻度が倍加すると容易に予想される。
こんなポンコツ秘書と、四六時中一緒なんて、悪い冗談はよして欲しい。
アリサと合わせて喋られると、それはもう疲れそうだ。
おお、そうだ。
早速秘書らしい仕事をして貰おうではないか。
私は今最も知りたいことを訊いてみた。
「スキルとは、アンインストールすることは出来ないのかね?」
消したい過去もある。
「あ!今わたしを消そうと考えましたね!?」
鋭いではないか。
「ふふん、でも出来ませんから、ごめんあそばせ♪」
イラッ
「まあ構わないよ。威嚇スキルと同じで、ON-OFFは出来るのだろうから、普段は切って・・」
「切らないでーー!」
ええい、心の中で泣き付いてくるな。鬱陶しい。
「あのね、私は木だが、意外に忙しくてね。君の暇潰しに付き合ってばかりはいられないのだよ。用があれば呼ぶから、それまで待機という訳には・・」
「シクシクシクシク」
悲しみに暮れ始めた。
泣きたいのは私の方だ!
とんだババを引いてしまった。
使えそうな秘書なら歓迎だったのだが、問題児が増えただけではないか。
「分かったから、切らないから、私の思考内で悲しむのは止めてくれたまえ。だが、普段は大人しく、静かにしてくれていると助かる。」
「はい!頑張ります!」
声が大きい。
静かにと言ったそばからうるさいのだが・・。
やる気だけはあるようなので、袖にするのは可哀想だ。
なので、少しずつ構ってあげよう。
そして、この女神様から仕入れられる情報は、可能な限り吸い上げておこうと思うのだった。
社長の周りに、もう一人残念な人が加わりました。
次回もリティアさんの話です。




