26.モテない妖木の実、惨劇の試食会
ステータスから見て、そのステータスに至ったエピソードを紹介します。
何故かギャグ回になってしまいました。
さて、現在の私のステータスだが、
レベル28
種族:動く実の生る広妖樹 →
耐力:130
魔力:95
体力:35
腕力:20
脚力:20
知力:100
精力:5
財力:10
スキルポイント1
【獲得スキル】
補助系:吸収Lv5、魔法障壁Lv5、魔力操作Lv3、威嚇
魔法系:水魔法Lv4、土魔法Lv2、風魔法Lv4、光魔法Lv7
耐性系:毒耐性、風耐性、寒冷耐性
機能系:機能閲覧、魔力感知Lv7、視覚情報補正Lv5、思念通話Lv5、鑑定Lv7、秘書Lv3
町にいると安全なので、スキルポイントは1を残して、全部使い込んだ。
上から順にツッコミ入れると、種族名が、遂に広葉樹から「広妖樹」になってしまった。
これで私は、正真正銘の妖木である。
子供達が私の枝でブランコしたり、枝の上に登りたがるので、怪我をさせないように、「腕力」を上げて、より自由に枝葉を動かせるようにした。
お陰で、ウニュウニョ艶かしく動くようになり、アリサからは、「気持ち悪っ!」と揶揄された。
腕力が20を超えると、伸縮性さえも獲得する。
何と枝葉を少しだが伸び縮みさせることも出来るようになったのだ。
魔力の力なのだろう、物理法則を見事に無視してくれる。
そして、腕力20で、種族名が「広妖樹」に変化したのだ。
確かに、あんなに枝が動く樹木は怪しく妖しい。
尚、移動する必要がないので、脚力には一切ポイントを振っていない。
ちなみに「耐力」や「体力」は惜しみない光合成のお陰で数値が元に戻り、幹は直径15cm程に成長。
教会の前は、障害になる木々がない広場。
気候も温暖で、穏やかな地域のようで、暴風雨などは少なく、私は伸び伸びと過ごすことが出来た。
私は思う存分に枝葉を伸ばして、広範囲に日光を浴びれるようにしていた。
夏場は涼を求めて、私の木陰に入りに来る老人や子供で賑わった。
ある日私は、水魔法Lv3と風魔法Lv3の合成魔法で霧状の風を生み出す魔法をサービスしてみた。
気化熱により、冷風になるのだが、これは大変喜ばれた。
ザイン君などは目敏くもそれを見るなり、「納涼パーティー」と称して、私の起こす冷風を売りにした、ガーデンパーティー紛いな商売を始めた。
「そんな事で人が集まるのかね?」
「このクソ暑いのに、旦那は暑くないのかい?毛の多い亜人族にとっては、その冷風魔法は画期的なんだよ。」
私は暑さ寒さをあまり感じないので、この世界の夏の暑さは与り知らない。
エアコンやクーラーが無い世界に、夏の冷風は何よりの娯楽になるそうなのだ。
確かに鬼人族より、犬人族や熊人族などの、毛が多い亜人達は夏バテ気味だった。
「御神木の木陰で、御神木の起こす奇跡の涼という祝福を受けながら食事が出来る。金持ち連中は、こういうのが大好物なんだよ。」
ものは言い様だ。
そして、この催しは富裕層に大好評を博した。
パーティー会場の設営は、領主に頼んでパーティー用のテーブルや椅子を借りた。
料理は酒場の亭主と話をつけてデリバリー。
準備や配膳は、孤児達を教育して、身なりを整えて対応させる。
よくもまあ、ポンポンそんなアイデアが出てくるものだ。
子供を働かせるのは、私からすると抵抗があるのだが、発展途上で余裕のないこのランクシャー領では、子供も貴重な労働力。みんなで働かなければ食ってはいけない。
それに、このパーティーでの労働姿勢が金持ちの目に止まれば、雇って貰える可能性もあるので、孤児達はやる気満々だった。
彼等は日頃から、自分の食い扶持を、自分で見付けるように教育されている。
行儀作法という、孤児に欠ける教養も、この機会に身に付けられるので、熱心にザイン君の教えを聞いていた。
この世界の子供は逞しいものだ。
このパーティーの売上も、孤児院の運営資金に回し、孤児達への食料配布に大きく貢献出来た。
私は風と水魔法を連発したお蔭で、両方の熟練度が上がり、当初はLv3で起こしていた冷風が、Lv2でも同様の冷風を吹かせる事が出来るようになった。
それは良かったのだが、ザイン君?
これ、相当な重労働なのだが、分かってくれているのかね?
「旦那、もう出せないのか?」
「いや、1日20回が限度だよ。勘弁してくれ。」
彼はパーティーの開催回数を増やしたいようだが、私の魔力には限界がある。
彼の要求は「日中はずっと吹かせて欲しい」だ。
私 は エ ア コ ン じ ゃ な い の だ が !
「体力」が上がったので、一度発動させれば、持続的に冷風を発生させられるが、10分が限度である。
それをパーティー開催中、ひたすら続けるのだ。
ま た 過 労 死 す る ぞ !
そして合成魔法は魔力消費が激しい。
それ以上放つと、日常生活に支障を来す。
アリサが遊びから帰ってくると、私に噛み付いて魔力を吸うからね。
少し残しておかないと、衰弱してしまう。
あの吸血妖精、アダンの実を早々に食い尽くすと、次の食事は私の魔力になった。
妖精は魔力補充で生命維持をしているようだ、
ちなみに、蜂蜜に含まれる魔力はなかなか多いが、町人達から貰える蜂蜜は彼女の昼食だ。
晩御飯が私。
私 は 食 料 じ ゃ な い の だ が !
「出来れば日中はずっと冷風出し続けて欲しいんだけどな。もっと魔法を鍛えろよ。」
君の発言はおかしいと思うのは、私だけなのだろうか?
何この過酷な労働環境!?
君は私の配下だよね?忘れてないかな?
私の方がこき使われているのは何故だろうか?
しかも、私の労働の対価は無い。
無償労働。
労働基準監督署はないのかね!?
前世では経営者側だったので、面倒な組織だったが、今は私が逃げ込みたい!
こ こ に ブ ラ ッ ク 企 業 が あ り ま す よ !
尚、「吸収」スキルを使えば、一日中吹かせる事も出来ない事はないが、あれを発動すると、私の周囲から生気が奪われ、大地の養分や草が枯れ果ててしまうのだ。
妖木感が出過ぎるので、それは避けたかった。
そして夏場のアリサは、私の木陰の下で昼寝か、川遊びしかしていなかった。
夏休みの小学生みたいな生活を送っていた。
尚、この冷風合成魔法、冬の晴れた日に、零下-5℃以下の空気で使うと、一瞬で水分が凍りつき微細な氷が舞うことになる。
すると、日光が反射して、キラキラと綺麗なのだ。
冬はザイン君に見付からないように楽しもう。
■
そして精力5。
昨年、旅の疲れから回復した私は、遂に実をつけることが出来た。感無量である。
これで「実の生らない実の生る広妖樹」という汚名が返上出来た。
と言っても、実の数は一つだけなのだが・・。
それでも、まるで子供が産まれた気分で、アリサに喜びを伝えたのだが、
「何これショボっ!」
「ショボいとはなんだ。私の初めての実なんだぞ!」
散々な感想しか返って来なかった。
「これだけ枝があって、一つだけとかあり得ないんですけどー!キャハハハ!」
ぐうの音も出ない。
精力たったの5・・ゴミクラスの精力では、実を1つが限界なのだろう。
前世から数えて、彼女居ない歴78年という、とことんモテない私だ。
精力値が低いのは、宿命なのだろうか。
そんな宿命嫌だ!
一度で良いからモテてみたい!
前世の飲み屋でならモテた事があるが、それも最初だけだ。
社長という役職から「お金持ちかも!」と思われるのだが、自転車操業な零細企業の社長の手持ちなどたかが知れている。
逆に借金の方が多いくらいだ。
飲み屋の女の子達が魅力を感じていたのは、私の財布であって、私個人ではなかった。
その財布にも、あまり入っていないことに勘づくと、私に構う女性は、店のママ一人になった。
一 度 で 良 い か ら モ テ て み た い !
悔しいので言い返す。
「私はまだ木としては若い。これから沢山実をつけるはずだ。」
「若いってマジウケるー。喋りは完全にオジサンじゃん。」
「君はキャピキャピしているなー、私より年上なのに!」
「妖精に年齢は関係ないよ。永遠の18歳だもん。」
どこのアイドルだ。
「普通は歳を重ねると、落ち着いて態度や言葉に含蓄が生まれるものだが、君は身体年齢も精神年齢も変わらないな。」
言動が見た目通り無邪気な子供だ。
この調子で100年間も遊んで暮らしていたのだろうか。
真性の放蕩者だ。
「そう?いやー、照れるぅ。」
「嫌味を言ったのだが!」
全然効いていなかった。
くそぉ、無駄に前向きだ。
しかし、大人になることが良いと思うのは、前世の私の価値観の押し付けなのだろうか。
彼女は毎日楽しそうだ。
妖精は妖精らしい生き方があるのかもしれないな。
■
私は自分の枝に下がった実を眺める。
アリサにコメントを求めると、気味悪いとか、形が変だとか、色が美味しそうに見えないとか、言いたい放題である。
言われてみると、我が実ながら確かに不気味だ。
拳大の大きさまで膨らんでおり、形はマンゴーのようだが、細長い根のような毛が生えている。
熱帯の果物、ランブータンのようだ。
毛先は黄色と黒の縞模様。
タイガースファン!?
本体の赤紫という毒々しい色も手伝って、心臓に本当に毛が生えたら、こんな形になるのかもしれない。
しかも、何故か果実のクセにドクドクと脈を打っていて、動く・・。
気 持 ち 悪 い !
これは私のせいなのか?
気持ち悪くて、食べたいとは全く思えなかった。
さすがは妖木の実である。
「君はバカにするけども、もしかしたら美味いかもしれないだろう?」
見た目と味は連動しない事も多いではないか。
「そう?じゃあ食べてみよっか♪」
ブチッ
え?
「オジサンの実だけあって、魔力は凄いんだけど、見た目が毒々しいのよねー。」
有無を言わせず、アリサが千切ってしまった。
あ、脈が止まった・・。
死 ぬ な ー ー !
「ちょっと待ちたまえ!私の、私の大切な実がぁ!」
一人息子を奪われたー!
「ハァ?植物の実なんて、ぶら下げてても何の役にも立たないじゃない。後生大事にしてても、腐って落ちるだけよ?」
ぬぬう、アリサのクセに核心を突いてきた。
確かに、植物の実は子供ではない。
人間で言えば精子や卵子だ。
食べた動物に種を運んで貰って、新たに芽吹く事が出来て、初めて子が出来たと言える。
しかし、記念すべき初結実で、1つしかない実を、断りなく問答無用で収穫するとは容赦がない。
「君はもう少し配慮とか、遠慮とかはないのかね?」
「何それ美味しいの?」
「もういい。とにかく調べてみよう。」
納得いかないが、アリサに何を言っても無駄だ。
私は「鑑定」をしてみた。
ちなみに、枝に付いたままで鑑定しても、私の一部なので、私自身の鑑定結果しか出ない。
切り離されると、個別の物となるようで、別途鑑定結果が出るようになるのだ。
それは葉や、枝も同じだった。
そして、鑑定の結果、これは凄い実であることが判明。
ちなみに、色々あって現在の鑑定レベルは7で、その内容もある程度改善されている。
取得情報「 シャチョーの実、薬効:Lv8(代謝促進・鎮痛・解毒・抗生抗ウイルス作用・細胞再生作用あり)、魔力:50、可食性:可(見た目はエグいが見なければ生食で食べられる、熟成すると渋みが出る)、錬成素材価値:高(薬草系に多用途)、価値:高価、弱点:火、概要:一本のモテない妖木から少量しか獲れない大変貴重な薬果実、甘苦く独特の香りが無駄に強いクセのある味は一部のマニアックな味覚の持ち主には中毒性をみせる、種子数1(笑)、熟成するとカレー臭が漂う 」
「モテない妖木ってなんだ!その形容詞要らないだろ!鑑定スキルのクセに心の傷をエグるな!」
ただ、鑑定レベルが上がってもツッコミ処は、キチンと残しているのは仕様のようだ。
「相変わらずポンコツね。」
アリサにポンコツ呼ばわりされるとは大概である。
「色々な意味で心外です。」
今発言した登場人物については、後述するので、今は放置して欲しい。
それと、種子数1のあとの(笑)とはなんだ!バカにしてるのか!
「カレー臭って何?」
「君は知らなくて良い。」
加齢臭か?
加齢臭と言いたいのか?
私は木としては、まだまだ若者だぞ!
人間で言う、高校生か大学生くらいの溌剌年代だ!
何故実から、加齢臭が漂うのだ!?
本当なのか怪しい。
鑑定結果に恣意的な悪意を感じる。
とにかく、薬効は私の葉を軽く凌駕する有効性。
魔力保有量も1つで50と規格外だ。
一般ウケはしないようだが、食べられるみたいなので、人の役には立ちそうであった。
鑑定が終わると、アリサが私の実を抱え上げて宙に浮かんだ。
「ねえねえ!凄い実ができたよー!」
「あ、コラ!勝手に持っていくな!」
アリサが教会に持ち去ってしまった。
■
その後、私の実の試食会が催された。
領主、ザイン君、そして薬効があるとの事から、病人や怪我人まで集められた。
臨床試験か・・。
「では切ってみようか。」
代表して領主が毛の付いた皮を剥く。
枝から切り離すと脈が止まるのは良かった。
ドクドクしているものに、ナイフを入れるのは嫌だろう。
皮を剥いた後で、果肉にナイフを入れた途端。
ブシャー
鮮血のような汁が飛び出した・・。
えええええぇ・・。
「・・・。」
返り血を浴びた領主がドン引きしている。
気を取り直して血・・ではなく、汁を拭き取った領主が、ヘタの部分を切り取った。
そして二つに割ると、果肉の中身が顕わになる。
「うーわ、中身は脳味噌みたいね。キモっ。」
「さすが旦那の実だな。キモっ。」
アリサ、ザイン君、君達はあとで『ライオネルト』の刑だ。
確かにタラの白子のような脳味噌っぽい形。
色は食品にあるまじき、見事な白と青の斑模様。
よくもまあ、ここまで食欲が失せる色や形に育つものだ。
「シャチョー殿・・これは本当に食べられるのか?」
疑わしいことこの上ないだろう。
毒があるとしか思えない。
「私の見立てでは、食べられるはずだ。しかし、魔力保有量がアダンの実の何倍もある。君達亜人族が食べるのであれば、少量の方が良いかもしれない。」
「これは沢山は食いたくないな。」
「ザイン!シャチョー殿に失礼だ!」
いや、もう皆さんの反応を見れば、思念通話を使わなくても心の声が聞こえるよ。
「いや、私も正直、美味そうには見えないので気にしなくて良い。」
「確かに・・。」
切り分けられたが、誰一人として手を付けようとしない。
完全にゲテモノ扱いだ。
病気の子供に至っては、差し出されると泣き出す始末だ。
これ試食会だよね?
罰ゲーム会場になっているのは何故なのだ?
ちなみに、実の中には、アーモンドのような種が1つだけ入っていた。
私が種だった頃の姿とも違うな。
種族を変えたからかもしれない。
こうして、鮮血が散ったような跡の卓上に、毒々しい果実が皿に鎮座したまま、時間だけが過ぎて行く。
誰もが口を噤み、目配せをして、肘をぶつけ合い、無言の牽制が繰り広げられていた。
『お前が食え。』『嫌よ、アンタが食べな。』『俺は死にたくない!』
そんな気まずい雰囲気が、この場を支配していた。
そして遂に勇者が現れた!
「じゃあ老い先短い私が食べてみよう。」
病気の老人が沈黙を破った!
「済まんな、毒味役になってもらって。」
遂に毒物扱いになった。
老人はゆっくりと歩み出て、恐る恐る果実を口にした。
すると、
「んん!」
「どうした!?毒か!?」
最初に毒気を疑うのは、泣きたくなるのでやめて欲しい。
「不味い。」
「そりゃそうだろう。」
待ちたまえ。不味いのが前提なのも心外なのだが。
「だが、甘苦く独特の香りが無駄に強いクセのある味じゃな。一部のマニアックな者はクセになるんじゃないかの?」
鑑定結果そのまんまのレビュー!
これを聞いて、安堵の空気が流れた。
しかし・・
「なるほど、食えないことはないのか・・。」
「しかし、これはな。」
食べられると判っても、誰一人食指は微動だにしなかった。
泣 き た い !
「目を瞑って、覚悟を決めるしかないでしょ!仮にも御神木の実なんだ、有り難く頂きな!」
「うっ、吐き気が。」
私 の 実 !
「ほら、病気が治るかもしれないのよ、食べなさい。」
「うわーん、ヤダー!」
「食べたくないー!」
「恐いよー!」
食べられると判明してから現場は騒然とし、困惑を極めた。
嫌がる子供に、大人が無理矢理食べさせようとするので、阿鼻叫喚だ。
試食会とは名ばかりの、処刑場のような有り様。
この時ほど、涙を流したいと思った事はない。
私 の 実 っ て 一 体 !
■
その後、病気が治ったり、化膿した傷が塞がったなど、喜びの声が次々届いた。
少量で凄い効果があることが判り、葉と並んで、領の特産品として、高値で取引される事となる。
それと、
「クセになる味だ。また食べたい。」
特殊な味覚の人もいた。
尚、ステータスの財力だが、これは私の持ち物の総価値で、数値が変わると判明。
その為、葉や実など、私自身から生み出されるものは、数値化されないようだ。
ちなみに、次回もステータスに関するエピソードです。




