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23.山賊は真の姿を現した!

今回は真面目な内容ですよ?

ところで、今度は盗品を確認していた領主殿が怒鳴っていた。


「ザイン、貴様こんなものまで持ち出していたのか!」

「あーバレた?」


悪びれもしないザイン君に、更に領主の血圧が上がる。


「これは『エルムの宝玉』。父上が代々受け継いできた家宝だぞ!」

「あんなクソ親の物なら売っ払って金にした方が世の為だろ。ただ、持ち出したのは良いんだが、足がつくんで売れなかったんだわ。」


骨折り損だな。

それを聞いて領主殿が剣を抜いた。


「死罪だ!今から叩き斬ってくれる!」

「ちょちょっ、旦那ぁ助けてくれ!」


ええい、アッチもコッチも騒がしいな。

ザイン君は丸腰なので、応戦は不可能。

私が止めないと、バッサリやられそうだった。


「アイン領主殿、落ち着きたまえ。罪状を増やしたいのであれば、好きにして良いが、彼の身柄は私が預かっている。剣を収めて欲しい。」


「も、申し訳ない。取り乱した。」

「けけけ、ザマァ。」


ザイン君は舌を出してからかっていた。


「ザイン君は、よほど私の『ライオネルト』を味わいたいと見える。」

「ひぃ!悪かった!」


次からバッサリ斬られるまで放置しようかと、本気で悩む。



こうして暫く盗品の確認作業が終わるのを待っていた。

アリサが暇だとうるさいので、アジトに残っていた蜂蜜壺を渡したら静かになった。

私はひたすら蜂蜜をなめているアリサの横で、光合成をして待っていた。



幾度となく剣を抜く領主を諌めたり、この機会に持ち帰る品物の引き揚げを、枝を使って手伝ったり、食べ過ぎのアリサから蜂蜜を奪ってポカポカ叩かれたりで忙しい。

私は一体何をしているのか、自問自答したくなった。

 

作業が終わる頃にはザイン君の懲役年数は、180年になっていた。

もう無期懲役で良くないかね?

 

当のザイン君は、全く気にしていない様子でどこ吹く風だ。

彼、絶対脱獄するつもりである。

 

 


一通り確認が終わり、アジトにあった食糧で、昼食をとってから山を降りることになった。

ちなみに私の枝には籠が4つ下がっており、中身は盗品だ。


私は盗品を確認して気が付いた。


山賊の割には、盗品に偏りがある。

高価な物は極端に高そうなもので、あまり実用性がなさそうな壺や絵画等の調度品ばかり揃っていた。


山賊をしていて、このような山奥にアジトを構えているのであれば、生きる為に役立ちそうな物や、自衛の為に武具を盗むのが定石と思うのだが、置いてあるものは粗末な生活用品に、殺傷力の無さそうな武器ばかりたった。


領主の討伐隊を襲った際に使用した毒も、致死性のものではなかった事も気になる。


また、山賊らしく、行商を襲って生計を立てていれば、もっとバラエティーに富む品物があって良い筈だ。


高価な盗品以外の持ち物は、とても慎ましく見えた。



「ザイン君、君は何の為に山賊をしてたのだね?見たところ、あまり派手な活動はしていないようだが?」

「・・・・。」


あまり答えたくないようだ。

すると、領主が食器を置いて立ち上がり、ザイン君を指差して説明してくれた。


「私が代わりに答えましょう。この賊は、貴族の屋敷ばかりを狙って盗みを繰り返す最悪の悪党なのです。」


「金持ちからだけ盗んでいたと?」


まるで義賊だな。

その後、貧しい町人にお金をバラ撒いたのか?


思考を読んだが・・違うようだね。


「勿論それだけではなく、行商からも食糧や生活用品等を強奪をしています。」


そうだろうな。

そんな義賊みたいな真似して食っていけるほど、山賊生活は甘くないだろう。

第一は自分達の食い扶持だ。

餓えては盗みも出来ない。


「お陰で我が領の交易が阻害され被害は甚大、死者も出ており、商人から根絶の要請が絶えない毎日。自警の為、定期的に街道を巡回させていたが、発見しても逃げ足が速く、組織だって逃走を援護される為、なかなか捕らえられずにいました。」


先日のガイムという臭そうな男達は、自警団だったのかもしれないな。


「また、略奪して得たもので、孤児を(たぶら)かし、仲間に引き入れて組織化。子供に窃盗行為を斡旋して自らは高見の見物という極めて悪辣非道な手口。しかも、この者を真似するような輩も増え、領内の治安は乱れる一方。諸悪の根源です。」

「けっ、好きに言え。」


ザイン君に反省の色は微塵も見えない。



「孤児か・・。」


成る程、事情が見えてきた。


「ザイン君、憶測だが、君は孤児の命を救うために、山賊行為を続けているのではないか?」


山賊仲間の半数は、まだ子供だった。

そして、子供達はザイン君の事を完全に信頼してついてきていた。


そして、このアジト。

何故蜂蜜など、甘味があったのか?

アリサ用だけではなかったのではないか?


予備の服も子供用が多く、人形や積み木の玩具まであった。

とても山賊のアジトとは思えない和やかな空間が、奥の隠し部屋にあった。

私の魔力感知センサーは誤魔化せない。


そう、これではまるで孤児院だ。



「違うね。その偉そうな領主殿の言う通りの最悪の大罪人さ。」


うーん、核心を突いたのに、なかなか素直に白状しないな。


「孤児達を庇って真実をはぐらかすのはやめたまえ。私は君の主となった。私には本当の君を知る権利と責任がある。」


「・・チッ、面倒な奴の配下になっちまったな。木のクセに、妙に勘が鋭ぇ。」


私は木だけど、元人間だからね。


「今から配下になることを取り下げるかね?そこの領主殿は、早く君を死罪にしたい様子だが?」


剣の柄に手をかけている領主をチラリと見るザイン君。


「あーもー分かったよ。正直に話す。俺が山賊やってんのは前クソ領主への当て付けさ。」


「ザイン、貴様!」

「アイン殿、済まないが彼の話が聞きたい。言いたいことは、話が終わってからにして頂けるかね?」


「失礼した。」


ザインは領主が引き下がったのを見てから、ケッと吐き捨てて、語り始めた。



「前クソ領主、つまりそこの領主殿の馬鹿親父の戦好きのせいで、このランクシャー領の領民は、何度も戦に駆り出され、まともに働ける大人が極端に減ったんだ。当然そうなれば領内の財政は困窮を極め、借金だらけ。なのに、懲りずに戦、戦、戦の馬鹿の一つ覚え。挙げ句に発令した政策は、ロクに食わせるメシもねぇのに、徴兵の為に産めや増やせだ。イカれてやがるだろ?戦に勝てば、豊かになるだとか、御大層な大義名分を打ち立てやがって、そう言うのは勝ってから言いやがれ!お陰でこの領地には、飢え死にを待つ孤児で溢れかえってやがる。」


やっと本心を吐露した。


「アイン領主殿、この話は本当なのか?」


私は念の為に事実確認をした。


「・・言い方に耐え難い不満があるが、大筋はその通りだ。」


この領主の良いところは、生真面目且つ誠実で、事実をねじ曲げず、現実を正確に把握し、受け止めている点だ。

自分に都合よく解釈して、現実から目を背けたり、ザイン君の言い回しに、いちいち腹を立てて否定しない忍耐強さがある。


ザイン君が続ける。


「幸いにして、能無し親父が早々に戦死して、そこのアイン領主殿に変わってからは、少しはマシになったがな。だが、町に行けば分かるが、相変わらず孤児は、吐き溜めで泥水すすってバタバタ死んでいく状況さ。」


あらら、兄が兄なら、弟も弟だ。

ザイン君も正確に物事を認識している。

アイン殿の功績は、キチンと認めているようだ。

 

何なのだ、このツンデレ兄弟。

男のツンデレなんて、植物の肥料にもならない。


何故いがみ合っているのだ、この兄弟?


「父上を侮辱するのは許さんぞ!貴様も子供の頃は、父から与えられる食事を食べて育ったであろう!」

「あんな贅沢な食い物が無くても人は育つ!お前らが贅沢しなければ、餓えて死んでいく奴等が減ったんだ!もっと食わせるべき奴等に食事を回せ!いつまで汚ねぇところから目を背けてお気楽に生き続ける気だ!」


また始まった。


「山賊行為で幾ばくかの孤児を助けたつもりか!貴様がやったことは偽善に過ぎない。私はこの領をこれから豊かにしていく。そうすれば多くの領民が救われる。その為に感情を圧し殺して堪え忍び、領主になった!目先の事ばかり、順序や規律を無視して好き放題な貴様のやり方は間違っている!」

「欺瞞だな。少なくともお前より俺の方が、殺した命より救った命の方が多い。」

「詭弁だ。貴様のせいで、領民の生活が今尚圧迫されているのが分からないのか!」


はあ・・飽きないなぁ。


「分かった。もうそれくらいしよう。」

「「・・・。」」


何故か私が、毎回仲を取り持つ役割になっていた。

そして、二人の言い分を聞いていて気付いた。


思ったことを素直に伝えよう。



「君達兄弟はよく似ているな。」

「何を言う!?」

「やめてくれ、ブツブツが出らぁ!」


猛烈な拒絶反応を示すが、発言のタイミングが同じで、息ピッタリなのが妙にコミカルだ。


「互いに領民の事を思いながら、やり方が違うせいで反発しているだけではないかね?」

「「・・・。」」


図星なのだろう。反論はなかった。


「部外者の私から見て、率直な意見を言っても良いだろうか?」

「構わない。」


領主殿の了承を得て発言する。


「ザイン君、君のやり方は間違っている。」

「チッ、アンタもそこの石頭と同じか。」


私からの指摘に、少なからずショックを受けているザイン君。

だが、「反対されることにはもう慣れた。」

そんな表情をして、私の意見を吐き捨てていた。


「では、君は何故、その困窮した町に居ない?後ろめたさがあるからではないかね?胸を張れるような正しい事をしているなら、領民達にもっと理解を得るように、表立って働きかけてはどうかな?」

「それは・・。」


胸を張ることは出来ないだろうな、山賊行為じゃ・・。

ザイン君には、やや酷な言い方だったかもしれない。

だが、それが世間の目であり、評価だ。

 

山賊行為は許されない。

 

 

見たところ、この二人はまだ若い。

前世で人間だった私の年齢よりも。

そんな意味では、人生経験は私の方が数段上だ。

少しくらい先輩風を吹かせて貰っても良いだろう。



胸を張って正しいと言える事なら、どんな反論や批判に曝されても貫けるものだ。

その自信が無いから、及び腰になる。


そして、自信が無いのなら、素直に人の意見を聞くべきなのだ。

意固地になって、反発していては、良い答えに辿り着かない。


前世で経験から学び、私はそう努めてきた。

ザイン君も、領主殿の意見を噛み砕いて、よく聞くべきだ。



「そういう意味では、アイン領主殿の方が正当性はあるのだろう。だが、私はザイン君の精神と積極性、決断力と行動の早さは評価するよ。君の心根は実に真っ直ぐだ。」

「ハイハイ、ありがとよ。」


彼が犯罪者だからと、その人格や人と成りを全否定する必要はない。

肯定出来るところは認めておいた。

そして、ザイン君の「巧遅は拙速に如かず」の姿勢は、領主殿に足りないところでもある。


ちなみに、その意味は「出来は良いけれど完成に時間がかかるものは、多少拙くても迅速に出来上がるものには及ばない」といった意味。


物事は、やってみてから考えても、間に合う事は多いものだ。



「対して領主殿のやり方は正しいが、即効性は無い。将来的には財政は立て直せるかもしれない。だが、それを待てずに亡くなる人も多いだろう。」

「耳が痛い。」


彼も判っている様子だった。

だが、責任感が強い故に、慎重になり、なかなか決断できない歯痒さを感じている。



「私は君達二人が、反発するのではなく、もっと認め合うべきだと思う。ザイン君はやり方を改め、領主殿はより領民に寄り添う事で、もっと良い方法が見付かると確信しているよ。」

「こんな賊を!?」

「こんなノロマを!?」

「ほら、そっくりだ。」


「「ッ!!」」


二人で目が合って、慌てて顔を逸らしていた。

君達、付き合っていいよ。



「すぐに認め合うのは無理だろう。幸い私は君達の町に招待されている。今後、君達が良好な関係を築けるように私が仲介してあげても良い。私には、それが領民にとって最良だと思うのだがね。どうかね、一時休戦という訳にはいかないかな?」


共に頭が良いこの二人が協力して、領地の事を第一に考えたら、きっと発展する事だろう。

決断力、熱意、行動力のザイン君が裏で支え、

分析力、誠実、堅実正当派のアイン領主が実行する。

二つの個性と能力は、本来反発しない。

交わってこそ本来の相乗効果を発揮するものだ。



「ま、旦那が言うなら、俺は配下として従うしかねぇけどな。」


ザイン君は満更ではないか。

彼は理解が早い。


「いや、待ってくれ。この者は罪人だ。罪人を認めるなどしたら、示しがつかない。」


領主殿は生真面目な性格が邪魔して、同意出来ないようだ。

山賊に反感を持つ領民や、恨みを持つ領民を納得させる処罰が必要だと考えている。

勿論それで良い。


「あ、勿論ザイン君の獄中生活は覆らないよ?犯罪者なのは、変わらないからね。ただ、ザイン君の意見は、あくまでも私を介して伝える。私の話の中に、ザイン君のエッセンスが加わる程度だ。あくまでも私の意見として聞いて貰い、それが良いと感じれば、領主殿はザイン君を少しだけ見直してあげるだけで良い。焦ってはいけない。少しずつだ。少しずつ前に進めば、必ず良い未来に辿り着ける。」


「・・考えてみよう。」


領主も半分納得してくれたようだ。

彼はザイン君の柔軟な考え方を見習うべきかもね。


「ありがとう。」



少しずつ動いて、倒木日向に辿り着いたように。

少しずつ歩いて、ガンプ大森林を抜けたように。

確実に、着実に、前に進めば、大業も成し遂げられるものなのだ。


私は前世でも不器用で、細々とした事業をずっと続けて来た。

莫大な利益を上げて、ボーナスを大盤振る舞いしたような事が一度もない。

一度くらい、皆の喜ぶ顔が見たかったが、とうとう出来なかった。

従業員には苦労を強いていたことだろう。


だが、苦しくとも、約束した支払いや、給料を、一度も遅延滞納したことはない。

 

対価を支払う。

それは当たり前の事ではある。

だが、零細な会社にとっては、その当たり前の毎月の支払いが、なかなかに大変なものなのだ。


それを一度も遅延しなかったのは、私の密かな自慢だった。


そんな地道な努力の甲斐があって、少しずつ従業員は増え、少しずつ利益は上がり、少しずつ取引先の信頼を得ていた。

会社の業績や規模は、相変わらずの横這いだったが、それでも、仕事を通じて笑い合える関係が、長く続いていくことが、私の自慢だった。

自己満足だが、それがないと、社長なんてやってられないものである。


そんな私の経験が、もしも彼等兄弟の役に立てるのなら、この世界に転生した意味があるのかもしれない。

そう感じて、私は彼等の町に行くことにしたのだった。



 

「ねえ?蜂蜜もうないの?」


え?


「あー!コイツ、壺ごと蜂蜜食いやがった!」


放置していたら、お腹パンパンになって蜂蜜の入っていた壺を覗き込むアリサに気付いた。


お前はクマのブーさんか!



結局、私は盗品の荷物に、ザイン君と、お腹一杯で飛べないアリサを抱えて山を下りることになった。



飛べない妖精は、ただの荷物だ・・。

最後のオチはアリサが持って行きました。

 

次回、ランクシャーの町に向けて移動します。

そして第2章の終幕なのですが、それが「鑑定スキルさん回」・・。



■ひと言

また一つ評価頂きました。感謝感激でございます。

そしてユニークHITもたった22話で1000超えた!すげぇ!

感想も頂いており、読んで貰ってるんだと実感しますね。

 

コロナ禍の緊急事態宣言が解け、キャンプ場が再開したので行ってきました。

ちなみに作者はソロキャンパーです。(家族は虫を嫌ってついて来ない)

久し振りのハンモック、久し振りの焚き火。

はぁ~癒されるわー♡

 

キャンプは自然と触れ合うし、色々な工夫や失敗を乗り越えて楽しむものです。

なので、この物語にも生かせる部分が多くあります。

読み心地にスピード感が出せるよう、文章での風景描写等はあまりしていませんが、森の中や草原など、物語の中の景色は、キャンプ場の風景と重ねている事がありますね。

 

そしてハンモックが好きな作者は、いつも木で吊って、ユラユラ揺られています。

くつろぐ時も、寝る時も、いつも木と一緒。木と一体同体!

つまり、木は友達なのです!木に感謝!

だから木の物語書いてるのかな?

 

あ・・ヤバい。

 

友達(薪)を焚き火で燃やしてる事に気付いた・・。

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