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22.再会 絶対に働きたくない蜂蜜妖精と怪しい木

アリサ救出の為に山賊のアジトに向かう社長と、同行する領主と山賊の頭領。

そして感動の再会が・・

私は領主、アイン=ランクシャーの街に行く事になった。

 

 

翌日、私と領主は、山賊の頭領のナビゲーションで、彼等のアジトへ向かっていた。

目的は盗品の回収と、妖精の救出である。

 

山賊の頭領は、足の怪我で動けなかったので、私の背中にしがみついて貰う事にした。

 

 

「うひゃぁ!コイツは楽でいいや。」

 

私の枝に跨って、頭領はテンションを上げていた。

昨夜、百年草の煮汁で消毒し、アダンの実を食わせてあげてから、かなり痛みがひいたようだ。

だが、まだ歩くと痛むらしいで、私は衝撃を与えない様に、平衡移動を心掛けてやっている。

 

「枝を折らないでくれたまえよ。」

 

アジトの場所は、昨日の崖がある場所から、あまり離れていないところにあるらしい。

岩場が多くて、森は深くなく、開けた場所や木漏れ日が多い山を行く。

ある程度の光合成をしながら移動できるので、陽が昇ってから出発した。

 

 

「ザイン!その方は私の賓客だ。失礼だぞ!」

 

調子に乗っている頭領を、領主は名指しで注意した。

 

「うるせぇ!俺は今この旦那の配下だ。お前の指図は受けねぇ!」


配下なら私の幹をパンパン叩くじゃない。


「その前に犯罪者で、私に捕縛されている身だ!」

「知るか!繰り上がりで領主になっただけで、偉そうにすんじゃねぇ!」

「私の苦労など貴様には分からないだろう!」

「苦労を語るなら、結果を出してから語りやがれ!いつも慎重過ぎて、やることが遅ぇんだよノロマ!」

 

ん?

この二人、もしかして知り合いなのか?

 

どうも赤の他人という感じではない。

明確な敵対関係ではあるが、どこか互いの事を深く知っているように感じた。

 

 

「詮索するようで申し訳ないが、二人は旧知なのかね?」

 

私がそう尋ねると、山賊の頭領であるザインは、口を噤んで顔を逸らした。

領主の方は、黙って(うつむ)いていたが、暫くして口を開き、二人の関係を打ち明けた。

 

 

「・・お恥ずかしながら、この賊は私の弟です。」

 

「え?」

 

これは驚いた。

血が繋がっていたのか。

 

しかし、兄のアイン殿は領主で、弟のザイン君は山賊とは穏やかではないな。

一体何があったのだろうか。

 

「俺はお前を兄弟と思った事は一度もねぇ!」

「腹立たしいことに奇遇だが、私もだ。」

 

殺し合いまでする、仲が悪いにも程がある兄弟だことで・・。

ザインとアインか。

 

 

「ザイン君、君は領主家という恵まれた家柄を捨てて、何でまた山賊なんてしていたのかね?」

 

私は当然の疑問を投げ掛けた。

裕福な家系に生まれれば、不自由なく暮らせるものだ。

その権利を投げ捨てて、危険で不衛生で食べる物も少ない山の中で暮らす理由は何だったのか?

普通ならそんな道は選ばない。

  

「アンタにゃ関係ねぇだろ。」

「いいや、関係ある。君は私の配下だろう?」

「うっ・・。」

 

言葉に詰まるザイン君。

 

するとその兄である、アイン領主が、代わりに答えてくれた。

 

「この放蕩者は父に反発し、大金を持ち出し家を出ました。その後は立場を利用し、他の領地や町を転々としながら最終的に資金が尽きて、山賊紛いな事をしておりました。父は早々に縁を切り、現在我がランクシャー家とこの者は無関係です。ランクシャー家で学んだ教養、兵法等で小賢しく立ち回っており、なかなか捕らえられず苦慮していた所です。」

 

「違うな。俺はあんな家で学んだ事なんて一つも無ぇ!俺は行く先々で様々な経験を積んだだけだ。」

 

「黙れ!貴様のせいで私がどれだけ・・!」

「まぁまぁ、喧嘩はこれから好きなだけ出来るわけだ。道中は静かにして貰えるかね?」

 

ヒートアップしそうになったので、私が仲介して場を収めた。

 

「も、申し訳ない。」

 

領主は慌てて居を正し謝った。

 

「へっへー、怒られてやがる。」

 

その様子を見て茶化すザイン。

 

「ザイン君、私は『ライオネルト』という電撃魔法も使えるのだが、喰らいたいかね?」

「失礼しましたー!」

「分かればよろしい。」

「馬鹿者が・・。」

 

それからの道中も、口を開けば兄弟喧嘩である。

あーではない、こーではないと、互いを否定、拒絶、反発ばかり。

性格的に正反対。

ザイン君が家から離反したのも分る。

毎日これでは、息も詰まるし、神経が焼き切れるだろう。

 

「いつか絶対に死罪にしてやる!」

「やってみやがれヘッポコ領主!」

 

 

君達、実は仲が良くないか・・?

 

 

 

 

「あそこだ。」

 

ザイン君が示した方向に、木でカモフラージュされた洞窟があった。

成る程、あれは普通の人間は言われないと気付かない。

 

「あんなところに・・」

 

領主が悔し気に驚いていた。

恐らく、山賊のアジトを潰そうと、何度も探したが見付からなかったのだろう。

 

「いや、あれは分かり易くした囮さ。奥に行ってもちょっとした寝床や竈とか、奪われて構わない盗品のデコイやはした金が置いてあるだけだ。基本的に見張り用の居住区だな。」

「何だと?」

 

なるほど、苦労して見付けた山賊の本拠地と思わせて、それも囮アジト。

もし攻め込まれ、奪われても最小ダメージで済ませる罠か。用心深いな。

 

「本当のアジトの入口は、その上だ。」

 

ザインの言う通りに、先程の洞窟を通り過ぎ、洞窟の上の丘に登って行く。

すると、茂みの中に落ち葉で覆われた木の蓋。

その蓋を外すと、縄梯子のある縦穴があった。

これが本当のアジトか・・これは偶然茂みに入ったりしない限り、絶対に分らないだろう。

 

「この下さ。」

 

穴が狭すぎて私は入れないので、魔力感知で中の様子を確認した。

 

梯子を降りたところは、確かに居住区が広がっていた。

かなり広くて、これなら20人くらいは寝泊まりが出来る。

横穴も延びており、所々細い穴が地表に通じているので、煮炊きしても煙は煙突効果で逃げてくれるだろう。

良い隠れ家を見付けたものだ。

 

岩をくり貫いて燭台にしてたり、ベッドやハンモックがあったり、竈があったりと、生活には困らない設備が揃っていた。

奥に下ったところに地底湖もあり、水場も確保されている。

少々湿気が多く、暗いけどなかなか居心地は良さそうだ。

 

 

ザイン君は、脚が痛むのを我慢して、慎重に梯子を降りて行った。

彼の額と背中には、じっとり脂汗が浮いている。

熱もあるようだが、そんな素振りも見せずに、領主と対等に口喧嘩していた。

強い精神力で抑え込んでいるようだが、常人ならのたうち回っている激痛なのではないだろうか?

 

 

そして、アジトの中には、なかなかの魔力反応があった。

 

やはりアリサだった。

 

思念通話でギャーギャー喚いていたので、すぐに分かった。

 

 

「ちょっとー!何してたのよ!遅かったじゃない。お腹空いたんだけど、蜂蜜頂戴よ!」

 

囚われの身で、随分と上から目線なのだな・・。

 

「うるせぇな。今からお前は自由の身だから、食い物は自分で調達しやがれ。」

 

ザイン君はアリサが入っている鉄籠の錠と留め金を外した。

 

 

「え?嫌なんだけど?」

 

断 っ た ー !?

 

 

「お前は妖精だろ!自由に空飛んで回りたくないのか!?」

「空?もう飽きたし。ここにいれば安全だしー、何もしなくても蜂蜜食べれるじゃない?」

 

引きこもりのエキスパートみたいな事を言っていた。

 

何だこの引きニートは・・。

 

 

「黙れ。何もせずに蜂蜜ばかり食いやがって、この穀潰しが!」

 

いいぞザイン君、そのアホにもっと言いたまえ!

 

「やってますぅ!このアジトの警備は万全ですぅー!」

 

自宅警備員がこの世界にもいるとは思わなかった。

 

「そんなもん頼んでないんだよ!ほら、出ろ!ちったぁ妖精らしくしろ!」

「ヤダー!働きたくないー!」

 

ザイン君が逃げるアリサを捕まえて引っ張り出そうとするが、アリサは鉄格子にしがみついて離さなかった。

こんな囚われの妖精、初めて見たのだけれど・・。


出てきたらハロワにブチ込みたい!

 

 

働き過ぎだった前世の私は、この勤労意欲ゼロな娘を、多少は見習うべきなのだろうか?


いやだ。こうはなりたくない。



ザイン君とアリサの、一向に進展を見せないやり取りを見限ったアイン領主は、梯子を降りて、盗まれた金品を確認に向かった。


うん、それが正解だ。

アリサに付き合っていると、話が進まない。


私はザイン君に助け船を出す為に、こちらから話し掛けた。


「アリサ君、聴こえるかね?」

「あれ?思念通話じゃん?誰?」


私は思念通話で、外から話し掛けた。


「私だ私。ガンプ大森林で会っただろ?」


声だけでは分からないか。

あれからもう3年が経過しているからね。


「あー、それ知ってる。私私詐欺ってヤツでしょ?ママから聞いたことあんだけど。」

「違ーう!」


何で電話の無いこの世界に、そんな詐欺があるのだ?


「蜂に追われていた君を助けた、喋る木を覚えていないか?」

「え?んー、あー!あー、あぅ・・うん、覚えてるよ。アレでしょ?そうそう、木ね。久し振り!」


覚 え て な か っ た 。


妖精の記憶力はニワトリ並みなのか!?


もうそこに拘るのは止めよう。

多分、彼女の性格から悪かったとも思わないだろうし、執拗に言うと、ストーカー扱いされそうだ。


目的を伝えて、早めに要件を済ませる方が建設的である。


「とにかく、私は君に会いに来た。囚われの身だからと聞いて、助けに来たのだが?」


必要なかったようだが・・。


「え?何々?何かアタシ、囚われのお姫様みたいな役なの?じゃあ白馬に乗った王子様が来た的な話?」


現実は、妖木に乗った山賊が助けに来たのだが・・。


それで良ければ出てきて欲しいね。

それと、この世界にも、そんなロマンス物語があるのだろうか?



「そんなところだ。君にお礼がしたくて探していたのだよ。そこを出て、表に来てくれないか?」

「蜂蜜くれるの?」


助けに来たのに、何故私は交換条件を突き付けられているのだ?


「アダンの実ならあるのだが?」

「わ、好物好物!出る出る!」


蜂蜜だけじゃない妖精!


「やっと出やがった。」


なんとも現金な娘だ。

ザイン君が呆れ果てていた。ご苦労さん。



アリサは鉄籠から飛び出し、ヒュンヒュンとアジト内を旋回飛行。

久し振りの飛行魔法の感覚を確かめて、ビュンときり揉み急上昇。

縦穴から勢いよく飛び出して、空へと舞い上がり、陽の光を浴びて背伸びをしていた。


「うーん!外も意外と気持ちいいじゃない!」


相変わらずの天真爛漫さだ。

うん、それが妖精として健全だ。


私は彼女を呼ぶ。


「アリサ!」


すると彼女は振り返る。

そして、私を見るなり・・


「ギャー!妖木じゃん!」

「 失 礼 だ な 君 は ! 」





私を見るなり逃げようとしたので、風魔法Lv4でダウンバーストを起こし、アリサを地面に叩き落として、枝で組伏せた。

「ギャフン」って言ってた。

 

ギャフンって言う人を初めて見た。


 

逃げられたら話もお礼も出来ないし、また捜索に苦労する事となるので、少々荒っぽいが、悪く思わないで欲しい。


そして、抜け出そうとジタバタもがいていたアリサだが、私の姿を見て気付く。


「あー!葉っぱ見て思い出した!あの時のオジサンじゃん!」

「やっと思い出したかね。」


私は彼女を押さえ付けていた枝をゆっくり取り払った。

それを見て、落ち着きを取り戻したアリサは立ち上がり、服に着いた土を払って開口一番こう言った。


「うん、久し振り!あ、アダンの実食べたい。」


食い意地が警戒心を凌駕していた模様だ。


「君はもう少し礼儀とか、デリカシーを覚えるべきだな。」


私は呆れながらも、籠からアダンの実を取り出して、アリサに渡すのだった。


 

「相変わらず器用に枝を動かすよねー。」

「お褒めに与り光栄だね。」


アリサはアダンの実を受け取ると、ガブリと齧りついた。


「うーわ、美味しい!これ熟成されて、凄く魔力が濃いね。甘いし最高!」


頬に手を当てて、アダンの実の甘さを噛み締めるアリサ。


「喜んでくれて良かったよ。食べながらで良い。聞いて欲しい。私は君にお礼がしたかったのだ。」


私は早速彼女に再会の目的を伝える。

食事中に失礼だが、うかうかしていると、この娘は食べ終わった途端に、どこかに飛んで行きそうだ。

早く要件は済ませておきたかった。


「お礼?何で?」


口に食べ物を詰めながら答えるアリサ。

思念通話だからクリアに聞こえるが、行儀が悪い。


「あの時、私に付き合って、色々と一般常識を教えてくれたからね。その後の再会の約束はすっぽかされたが。」

「あ、アハハハ、気にしなくていいよ。」


約束を忘れた事は気にして欲しいのだがね。


「まさかザイン君の所に厄介になっているとは思わなかった。彼に出会わなければ、私は妖精の里を探して、山中を彷徨っていたところだ。」


偶然だが、ツイていた。

無駄足にならずに済んだのは行幸だ。


「あー、彼?アタシの魅力にメロメロで、離してくれなかったのよねー。フフン♪」

「バカ言うな蜂蜜妖精!売り飛ばし損ねただけだ!」

「あ、聴こえてた。」


自分がどこかに売られるかもしれなかったのに、呑気なものだ。



「ザイン君はこれまでに犯した罪で、あちらの領主に捕らえられ、引き渡す事になった。この後、町で勾留されるので、もう戻って来ないよ。そしてこのアジトも、これから領主殿に接収される。」

「えー?住み心地良かったのにー。」


自由に森を飛び回る妖精とは思えない言動だ。

囚われの鉄籠を、完全にマイホームと認識していた。

何だこの駄目妖精は。


「両親が心配しているだろう。里に戻ってはどうかね?」


両親は離婚しているとは言え、それが一番だろう。


「あー、それなら大丈夫。アタシ家出してる身だから。」

「は?帰る家は無いのかね?」

「うん。」


家無き妖精だった。

同情するなら蜂蜜くれと?

ネタが古いか・・。


「そうねー、暇だからオジサンと一緒にいてあげてもいいよ。」


何故か上から目線で同行を許可してきた。


待て。

その許可は私が出すべきものだろう?


「いや、私はこの後、そこの領主の町に行くのだが、良いのかね?君は亜人族が嫌いなのだろ?」


野蛮だから会わない方が賢明だと言っていた筈だが。


「あー、そんな時代もあったわね。蜂蜜くれるから、今は好き。あ、でもでも、アダンの実はもっと好きよ。」


そんなフォロー要らない。


「この実なら君に全部あげようと思っていたものだ。あの時の私には、何も差し出すものが無かったからね。好きなだけ食べて構わないが?」

「え!マジで?やったー!」


妖精大喜び。


「あー!ちょっと旦那、ソイツにいっぺんにやったら駄目だ。際限なく食って、腹パンパンにしながらお代わり要求されるぞ。」

「ちょっとアンタ、余計な事言わないでよ!」


なるほど、確かにこの娘の性格上、その懸念がある。


「分かった。私が与える数を管理しておこう。」

「ヒドイ!」

「ヒドイのはお前だ。お陰で俺達は『蜂蜜山賊』って情けないアダ名がついたんだぞ!」

 

それは本当に情けない。


アリサを食わせるために、蜂蜜を盗んでいたのだろう。

そんな裏事情は、盗まれた人は知らないだろうから、よほどの甘党集団なのだと、思われていたに違いない。


アリサ君に関わると、ロクなことがないな。



「ま、こんな可愛くてキュートなアタシが一緒にいてあげるんだから光栄に思って、アダンの実を献上するのよ。」


106歳のBBAが何を言うのか。



どうやら本当に私についてくるつもりだ。

アダンの実に釣られてかもしれないが。

 

アリサはアリサであり、アリサでしかなかった。

お騒がせ妖精は、これからも社長をトラブルに巻き込んでいくようです。

 

 

■ひと言

いやー、作者に感動シーンは描けそうにないですね。どうしてもコメディタッチに走っちゃいます。

こうなれば、今後も基本的にコメディ特化で行こうかなと。

たまーーにシリアス入れますが、基本的に笑いをお届けすることに専念します。

 

総合評価が100P超えました!読んで頂いて、ありがとうございます。

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