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私、木になります。 ・.:**☘ 平穏願って樹木に転生したのに駄女神のせいで魔王にされた殴りたい ☘**:.・  作者: 湯
第六章 盆栽王に私はなります。~魔法都市ゼムノークス編~
210/210

210.クロコレオン討伐と疑惑の女の子クルティナ君

『モザイクおじさんに緊急指令!全員偶然獲物を仕留められた風に装いたまえ!』


私は全員に誤魔化すよう指示を出す。


『はぁ?どうすりゃいいのよ?』

『ラッキーだったと喜んでいれば良い。』

『ワタシは知らん。妖木、貴様が説明しろ。』


駄目だ。彼女達では誤魔化せる気がしない。

ここは私の腕の見せどころか。


『分かった。くれぐれも余裕だった的な振る舞いはしないように!』


簡単な指示を残して、私は思考加速スキルでこのピンチを脱する策を考える。

だが、私達を心配してスグに先輩方が駆け寄って来た。

無駄に早い!


そして先輩方は私達が倒したブッシュボアを見付けてしまう。

 

「うわっ!二体とも倒したのか!?」

「どうやって!?」

「武器も持ってないのに!?」


あわわわ、疑われてる。

 

『さ、先程のように体当たりして、た、たまたま突き飛ばした先が深い茂みになっててね。ボアが脚を取られて動きが鈍った所を皆で袋叩きにしたのだよ。』


く、苦しい言い訳だが、有り得ない事ではない。


「「「・・・・。」」」


怪しまれてるぅー!?


『たまたまだが、動きを阻害出来たのがラッキーだったよ。』


実際は茂みに突き飛ばしたところで、暴れられて逃げられるだろうが、運が良かったと主張。

どうでしょうか先輩方・・。


「なるほど!そんな捕え方もあるのか!」

「確かに。準備出来てない時は、茂みに追い込むのもアリだな。」

「運が良かったなお前達。」


ホッ・・何とか誤魔化せた。


『良かったら、一体は先輩方に譲ります。先輩方が引き付けてくれていたので、倒せたようなものなので。』

「いいのか?なんだか悪いな。」

『どうぞどうぞ!』


支部長をチラリ


難しい顔をしているが、何とかセーフのようだ。



だが、もう一つ大きな問題があるのだ・・。



うん、()()()()()()()()()()()


こっちは明らかにFランクハンターが相手をするレベルの魔獣では無さそうなのだ。


『シモン支部長、これは支部長にしか聞こえない思念通話だ。聞こえていたら、頭で考えるだけで答えて欲しい。』

『お、おお、何ですかこれは。凄いですね。』

『それでいい。』


思念通話は初めてだったようで、支部長は戸惑っていた。

私は常に思念通話で会話しているが、私の声は相手にとっては普通に音として聞こえているからね、区別しにくいだろう。


『これで聞こえているのですか?』

『そうだ。そこで話がある。別の魔獣が近くに来ているが気付いているかね?』

『いえ、どの方向ですか?』

『支部長の後方、家五~六つ位の距離だ。』


約100m強の距離に、ワニみたいな大きさのカメレオンモドキが居て、少しずつ近付いて来ていた。


『・・確かに、何か居ますね。』

『流石はBランクだね。魔境の連中も索敵能力が鋭かった。』


亜人族やたらと目が良いし、洞察力も高い。


『どんな魔獣か判りますか?』

『クルティナ君、近寄って来ている魔獣の種類は判るかね?』


私は知らないので、ここは鑑定スキルに頼ろう。

鑑定スキルその人であるクルティナ君に確認する。

鑑定スキルLv7(差押え)発動!


『知らん、自分で調べろ。』


ふむ、ツンの時間か。


『リティア君。』

『クルティナ、お願いしますね。』

『魔獣はクロコレオンだ。熱帯から亜熱帯地域に生息する雑食の爬虫類魔獣。食物連鎖上は捕食者になるので、好戦的な魔獣だ。』


なるほど、ワニカメレオンか。


『・・特徴は?』


もう一度鑑定スキルLv7(差押え)発動!


『知らん、自分で調べろ。』


ふむ、またツンの時間か。


『リティア君。』

『クルティナ、お願いしますね。』

『大きさは太った亜人族くらいあるな。樹上を跳び移ったりや地面を走ってもそこそこ速い。攻撃は噛みつきとスパイク状の尾を叩き付けてくる。皮が硬く、斬撃は通り難い。だが寒さには弱い。』


ワニっぽい特徴だな。

だが、水辺ではなく森を生息域にしているのか。


『他に固有の能力は?』


鑑定スキルLv7(差押え)発動!


『知らん、自分で調べろ。』


ふむ、またツンの時間か。


『リティア君。』

『クルティナ、お願いしますね。』

『擬態スキル持ちだな。それから長い舌を巻き付けて動きを阻害してくる。また唾液には亜人族にとっては毒となる成分が含まれている。傷などから染み込むと麻痺するな。』


カメレオン要素もしっかり保有して、更にバジリスクみたいな毒持ちか。厄介な奴だ。

速い、硬い、嫌らしいと三拍子揃っている。

この魔獣、普通に強くないか?

 

『・・君達、いつもこんな回りくどい事をやってるのか?』


おや支部長、君もそう思うかね?


『形式美というヤツらしい。私だって面倒だと思っているが、知識の泉クルティナ君は、こうしないと答えてくれないのだよ。』


私の中ではもはやコレがスタンダードと化してしまっている。

最近では「知らん、自分で調べろ」が「かしこまりましたご主人様」に聞こえるように脳内変換している。

すると腹も立たなくなった。私エライ。


『変わっていますね・・。』

『まさか、これも減点対象かね!?』


変っている→普通じゃない→減点!?

減点怖い!


『いえ、そこまで言いませんが・・それよりもクロコレオンはマズい。早くこの場を離れた方が良い。』

『警戒すべき魔獣なのかね?』

『アレは最近現れた、この辺りを根城にしている主です。討伐推奨ランクはBランク、君達は問題ないでしょうが、嵐の波濤が危険です。』


フィールドボスとエンカウントしてしまったのか。


『分かった。ここは退散しようか。』


それが普通だろうからね。

討伐ランクBの魔獣を、Gランクの私達が倒したら、それはもう普通じゃない。

間違ってもGランクでは倒せないレベルなのだ。


『・・アレを偶然を装って倒せますか?』

『ん?倒しても良いのかね?』


おや、意外な要望が出たな。


『あくまでGランクが頑張って、知恵と工夫で偶然倒せた風に装えるのであれば歓迎します。アレにはハンターが何人かやられてまして、優先討伐依頼が出ています。身を隠すのが上手く、神出鬼没なので発見する事自体が難しく、手を焼いていた魔獣なのでこの機を逃したくはないのです。』


なるほど、事情があるのか。

この機を逃すと被害が拡大する為、支部長として見過ごせないと。


クロコレオン。

擬態スキル持ちなので潜まれると発見困難になる。

動きも速く、痕跡を追っても逃げられ易い。

擬態で姿を隠し、死角から噛み付かれたり、毒を食らうので戦闘になっても危険だ。

普通のハンターでは対処が難しい厄介な魔獣という訳か。


だが、魔力感知にはバッチリ引っ掛かるので、私からすれば丸見えのお粗末な潜伏だ。

倒すのは容易い。

問題はどうすればGランクっぽく倒せるか・・。

 

課せられた問題は、掻い摘んで言うとこうだ。

「そこの一般人よ、素手でワニに挑めますか?」

「素手でワニを倒せますか?」

と問われている。

 

前世の私なら即答でNOである。

この世界でも普通のハンターなら逃げの一手だろう。


一般人が武器も無くワニとタイマン張って敵う訳がない。

人は知恵と道具を持ってるから、自分より強い相手を倒せるのだ。

裸一貫で猛獣と戦って勝てる道理はない。

 

つまり、Gランクっぽく倒すなんて無理ゲーなのだ。

討伐ランクBって言ってる時点で、非武装のGランクが倒すのは現実離れしていた。

 

んーー、どうすれば・・

 

 

って、そうか!


『シモン支部長、要するに嵐の波濤を巻き込まず、安全に、だが確実に、偶然を装ってクロコレオンを仕留められれば良いのだな?』

『そうですね。』


支部長はクロコレオンを仕留めたい。

確実に仕留められるのは、妖魔の王である私達しかこの場には居ない。

だが、モザイクおじさんである私達がクロコレオンを倒すと正体を疑われる。

だからGランクっぽく倒せるかと尋ねた。


『別に私達が倒したという事実は要らない。で、良いかね?』

『そうですね。確かにそうです。』


要するに欲しい結果は、クロコレオンの死であり、いつ誰がどうやって等の経過に関してはどうでも良いのだ。


『ならば簡単だよ。ヴォルドアーク。』


ドゴォォォーン


「うわあ!何だ!?」

「雷!?何でこんな時期に!?」

「晴れてるじゃないか!」


嵐の波濤先輩が青天の霹靂に驚き戸惑っている。

すぐ近くに突然雷が落ちたら、そりゃパニックにもなるか。


『モザイクおじさん総員、驚いたフリ!』


ここで先輩方を見倣って、こちらも驚いておく!


「キャー!恐ーーい!(笑)」


アリサ、半笑いでクネクネするのをやめたまえ。

全然恐がってないではないか。


「シャ・・モザイク様ー!恐いです!抱き締めて下さい!(テヘペロ)」


リティア君、余計なコメント加えなくて良い。


「キャ・・あ、ボクは男役だった。うわー!(棒読み)」


うーん、酷い大根役者である。

君は紛いなりにもアリティア芸能プロダクションの女優だろ。もう少し演技を磨きたまえ。


「・・・キャー、こわーい(照れ+棒読み)」


クルティナ君のキャーという女の子っぽい声が違和感しか覚えない。

君、女の子だったのかね?


『幼木、貴様覚えてろ。』

『心を読むんじゃない。』


クルティナ君から専用回線の思念通話でクレームが入った。


『ただクルティナ君も女の子だったんだなーと感じただけだ。』

『ワタシは女の子だ!』

『え!?』

『あ゛?』


ヒッ、恐い顔!

そんな顔するから女の子扱いされないのだ!


「なっ、何だあの雷は?」


支部長まで愕然としていた。


『光魔法第七階位魔法ヴォルドアークだよ。』

 

私は種明かしをする。


「七階位!?そんな魔法を放てるのは、世界に一人、魔王ゼムノーディア=ダーククライシスしか居ないと・・モザイク殿がゼムノーディア様?」


ああ、そう勘違いしてもおかしくはないか。

尚、嵐の波濤が離れた場所にいるので、思念通話は切っている。


『違う違う。魔王ゼムノーディアなら、そこの犬人族の大根役者だよ。私も撃てるだけだ。』

「ええ!?本当に魔王ゼムノーディア様を仲間に引き入れているのですか?」


あー、そこも驚くんだ。

王都の武闘大会の一件で周知と思っていたが、意外に知れ渡ってはいないのだな。

ま、正体は公にはしていないし、擬態してるので分かり難いか。


『まあ成り行きでね。ちなみに、ゼムノア君は魔王の座を私に譲って、ゼムノークスの今の魔王は私だ。だからゼムノークスの魔法大学長とも知己にある。』

「それであの達成証明書が・・。普通、ゼムノークス魔法大学長が依頼の達成証明をするなんて有り得ませんので、正直疑っていました。」


おっと、そんなところでも私達の非常識が炸裂していたのか。


『な、なるほど・・それは済まなかったね。より証明効力が高い方が良いと思って、あの土下座衛門・・ではなく、キーフェル学長に書かせたのだ。』


あんな土下座衛門でも、魔法付与技術の権威だからね。

その地位を甘く見積っていたな。


「妖魔の王・・確かにSSランクと言われる理由が分かりました・・まさかクロコレオンを瞬殺してしまう上に、魔王ゼムノーディア様まで仲間にしているとは・・。」


そうか、支部長は妖魔の王の実力が、どれ程のものなのか噂でしか知らない。

ここで初めて確認できたと言うことか。


『ちなみに移動は私の土魔法第七階位アビスゲートの転移を使っている。』

「その実力で、どうしてFランクハンターにああもへり下り、卑屈になれるのか・・。」

 

あ、またこめかみ押さえてる。

血圧大丈夫かね?


『何を言うのかね。私達に足りない能力を持つ者を尊敬するのは当然ではないか。』

「普通はもっと尊大になるものと・・。」


普通はと言うがね・・


『だから何度も言っている。私達は普通ではないのだ。』

「今、身に染みて解った気がしました。」


解ってくれたようだ。


『ところで、クロコレオンだが、偶然の雷に打たれて死んでる所を発見した、で、良いかね?』

「ええ、構いません。ありがとうございました。」


よし、事の顛末の落としどころを共有できた。


この一件でシモン支部長と少し打ち解けた感じがする。

そうか、彼は妖魔の王の情報は、断片的にしか知らなかったのだな。

だから私達を訝しく思っていた。


それでこんな試験をしつつ、私達を自分の目で観察していたと言うことか。


「うわっ!すげぇ!クロコレオンだ!」

「死んでるぞ!さっきの雷、コイツに落ちたのか!」

「支部長!来て下さい!クロコレオンが死んでます!」


嵐の波濤が落雷現場に行ってみて、クロコレオンを発見したようだ。

遠くから呼ぶ声がする。


「わーすごいねー(棒読み)」

「肉は貰えますか?ニコッ」

「あ、あの、肉はリティア様に分けないと暴れますよ?」


君達は演技する気があるのかね?


「キャーすごーい!」


え?クルティナ君?

もしかして本気で女の子の振りをしてみたのか?


『クルティナ君が普通の女の子のフリをすると違和感が凄い。』

「クルティナ、アンタ・・。」

「クルティナがご乱心です。」

「ク、クルティナ・・プッ」

「よーし全員そこに並べ!一人ずつぶん殴る!」


可哀想なクルティナ君。


君に可愛らしい女の子は似合わない。

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