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私、木になります。 ・.:**☘ 平穏願って樹木に転生したのに駄女神のせいで魔王にされた殴りたい ☘**:.・  作者: 湯
第六章 盆栽王に私はなります。~魔法都市ゼムノークス編~
209/210

209.普通のFランクハンターの真の実力に驚愕した!

『では仕方がない。最終手段だ。』

「どうするつもりだ?」


やりたくはなかったが、もはやコレ以外に方法がない。


「モザイク様、まさか・・やる気ですか?」

「オジサン、ソレはやめといた方が良いんじゃない?」

「で、出来れば見たく、ない。」


そうか、全員分かっていたのだね。


『私が登ろう。』


私はリティア君から地面に降ろして貰って、ハラミィの実がなる木の根本へ降り立つ。

そして鉢を脱ぎ捨て、木の幹に根を這わせて取り付いた。


垂直の岩でも難なく登れる私が、何故木登りごときを敬遠していたのか?


その理由はコレだ。


「エッッグッ!気持ち悪っ!」

「モザイクが明らかに悪い方に作用してますね・・キモッ!」

「ううう~っ!見ていると寒気がする!」

「お、おお、おぞましい・・み、見てはいけない何かが、這い上がっていく。」


想像してみて欲しい。

私は全身モザイク姿だ。

それが木の幹にひっついていると、まるでお茶の間に届けてはいけない気持ち悪い何かが、そこにいる様に見えるのだ。


しかも動く。妙にウネウネする。

モザイクが木の幹をゆっくりと移動する。


「毛虫の大群がいるみたい。」

「もしくは触手系異形のモンスターの蠢きです。」

「自然の中にアイツがいると、様々な想像が働いて余計に気持ち悪いな。」

「し、深淵より這い出る、醜悪なる混沌生物・・。」


うるさいな君達は!

だからやりたくなかったのだ。


「何だか分からないが、見ていると嫌悪感を感じるな。」

「何故か忌避したくなる光景だ。」


ああ!嵐の波濤先輩にも嫌がられている!

先輩スミマセン!



しかし結果としては、これが正解だった。

私自身が非常識な存在なので、それが今更木を登った程度では減点にはならないだろう。


私はウネウネ這い登り、難なくハラミィの実がぶら下がっている高さまで到着。

そして私の体重なら細めの枝でも折れる事はない。

つまり亜人族が届かない範囲の実も落とせる。

これなら効率も良く、安全だ。


幹周辺のハラミィの実は他のハンターに刈り取られていたが、枝の先端部には沢山実っている。

この木だけでノルマの10個には余裕で届くだろう。


『落とすよ。』

「オーライオーライ!」


幹から離れた場所にある実を優先的に採取しよう。

実が残っていると魔獣を呼び寄せるので、ノルマ以上に収穫しても問題はないし、逆に推奨されている。

 

私は次々と実を落としていく。

ヘタの切断はモザイクで見えない事を利用して、吸収スキルでボロっとして落としている。


『落とすよ。』

「いいぞブサイク。」


ムカッ・・ええい何度もモザイクだと言ってるのに。

クルティナ君にはここらでワカらせておく必要があるようだ。

私は心の中でニヤリとほくそ笑む。

 

ハラミィの実は、色が赤くなったら熟した証拠。

そのまま放置すると、果皮がパックリ割れる。

通常は赤くなりきる前に収穫する。


私は果皮が割れる一歩前の、真っ赤に熟してグジュりと軟らかくなった実を落としてやった。

すると、それを受け止めるクルティナ君がどうなるかと言えば・・


グシャベチャ!


受け止めた衝撃で実が崩れ、派手に中身が飛び散った。


「ウギャー!」

『ブハハハハ!私の名はモザイクだクルティナ君!』


実の中身がぶち撒かれ、クルティナ君の手と下半身はハラミィのピンク色の果肉と黒い種まみれとなり、甘い香りを漂わせていた。


「グッジョブですモザイク様!」

「アヒャヒャヒャヒャ!酷い!」

「ブプッ!」


クルティナ君の不幸は蜜の味な三人には好評だ。

ザマァ!


「貴様!わざとやったな!殺す!」

『優しく受け止めないからそんな事になるのだよ。これは君の手加減の練習だ。悔しかったら登ってきたまえ。』


ふふふ、これに懲りたら私に舐めた口を聞かないことだ。


「イタズラがえげつねぇ・・。」

「あんな、カワイイ娘に何て事を・・ゴクリンコ」

「鬼畜だ。」

「悪辣非道だなあの物体X・・。」


嵐の波濤先輩が呆れていた。

嗚呼、また鬼畜カウンターが伸びる・・。


「貴様、下りてきたら覚えてろ!」

 

まだ懲りないようだなクルティナ君。

では再び赤いジュクジュクの実投下だ!

 

 

その後も収穫を続け、気が付くと大量に収穫していた。


私達と嵐の波濤先輩、支部長の昼食用に15個程度

私達の依頼分と嵐の波濤先輩の依頼分に20個

私達のオヤツと嵐の波濤先輩及びハンター協会へのお土産に5個程を収穫した。

すると、この木に実っていたハラミィの実は、殆ど無くなった。

 

一つが握りこぶし2つ位の大きさなので、一度に大量には運べない。

一人四つずつ持って帰れば良いだろう。


「すげぇ、1本の木だけで依頼分はおろか、お土産まで。」

「あの物体Xがいれば、ハラミィの採取は楽チンだな。」

「お前達、ハラミィの実採取依頼の専門家になれば、儲かるんじゃないか?」


おお!嵐の波濤先輩から褒められた。

これは嬉しい。


だが、浮かれていてはいけない。

先程のおふざけのせいで、香りに釣られた魔獣が近寄ってきていた。


しかし、通常のGランクハンターは、魔力感知スキルなんて習得していないだろうから、ここは気付いていない様に装う必要がある。


『モザイクおじさん専用回線で通信する。皆、気付いているかね?』

『あー、魔獣でしょ?小さいのが何体か寄ってきてるね。』

『クルティナが甘い香りで引き寄せてますね。』

『リティア様、これは不可抗力です・・。』

『迎撃しますか?』


クルティナ君がハラミィまみれのままなので、その香りに釣り出されて魔獣が寄ってきている。

クルティナ君は魔獣に好かれるなぁ・・プッ。


『いや、今は迎え撃ってはいけない。今回は魔法とスキルを使わずに撃退する必要がある。勿論のこと神の権能も、常軌を逸したパワーも禁止だ。ここは再び嵐の波濤先輩のお手本を参考にしよう。』


私は待機指示を出して、嵐の波濤先輩が気付くまで待つ事にする。



そろそろ50m位に接近されている。


先輩はまだ気付かない。

呑気にハラミィを食べている。


バカな、魔境ではここまで接近されたら、もう逃げることは出来ないぞ。

 

あっ!

そうか、気付いていないフリをしているか!


確かに魔獣は不利と分かると襲って来ないし、直ぐに逃げるからな。

依頼の為に獲物を逃がさないように引き付けているのか。勉強になるな。



20mまで接近された。


先輩はまだまだ気付かないフリをしている。

ここまで近付かれると、攻撃された時に態勢を整えられるギリギリの間合いだ。


危険な距離だが、まだ引き付けるつもりか。

何という胆力!先輩方は恐れ知らずか。



残り10m、私の感覚では既に肉薄されているも同然。

いつでも不意打ちが入る近接間合いだ。


先輩、ヤバいッスよ!

「ハラミィうめぇ」とか言ってる場合じゃあ・・あ、もうそこの茂みから様子を見てる。


Fランクハンターとは、獲物を確実に狩る為にここまでするのか。

どこまで肝が据わっているのだ。


あ、遂に獲物が飛び出した。


「うおお!?」

「うわぁ!何だ!?」


先輩が突き飛ばされた。

 

 

え え え え え ぇ ー ?


先制攻撃されるまで待っていた!?

いや、まさか、本当に気付いていなかったのか!?

こ、これが一般的で普通の反応なのか?ヤバ過ぎる!


現れた魔獣はブッシュボア。緑の猪だ。

全部で四体。

空腹なのか、興奮しており攻撃的になっている。


ハラミィの木の下にいる先輩方を優先的に攻撃している。

押し倒した先輩を執拗に突き上げ、何度も突進を繰り返していた。

地面を転がされる先輩方。


先制を許した先輩方は、身を守りながら立ち上がる機会を探っているが、ブッシュボアの激しい連続タックルに翻弄され追い詰められていた。


マズイ、このままでは押し切られる。


支部長をチラッ


うんと頷く。


よし、ここは先輩方を支援だ。


『モザイクおじさん四天王に告ぐ。嵐の波濤先輩の体勢の建て直しを支援せよ!但し、ターゲットを倒してはならない。』

「オッケー!」


私が指示を出すと、早速動き出す四人。

私はその様子を観戦する。


果たして彼女達は制限を守れるのだろうか?


「石が落ちてないけど、これなら!」


アリサが動き出す。


近くに落ちていたハラミィの実を投げるアリサ。

するとその実が急激に加速して飛んでいく。

使用したのはフラッシュブレスだな。


なるほど、石だと殺傷力が高いが、軽い果実ならそこまで威力は出ない。

上手い手加減を思い付いたな。


「ブギャッ!」


加速されたハラミィの実がブッシュボアに直撃。

ブッシュボアは衝撃でバランスを崩した。

そこで生まれた隙に先輩は立ち上がる事が出来た。


「先輩、大丈夫!?」

「スマン、助かった。」


流石はフラッシュブレス職人たるアリサのフラッシュブレス。

加減が絶妙だった。


動き回るブッシュボアにクリーンヒットさせる技術も地味に凄い。


遠距離攻撃とは、発射から着弾までのタイムラグが無ければ無いほど、狙いに当たり易い。

つまり、初速の速さは命中率という武器となる。


フラッシュブレスという魔法は、その弾着時間を短縮させるので、より狙いが定め易くなるメリットがある。

だが、一方で速くすればする程威力が増して、殺傷力も高まる。


今回は魔獣を倒してはいけないという制限があった。

その為、威力が上がるのはこの場面に限ってはデメリットとなる。

 

ここで石などの重い物を投げつけた場合は、次のような結果を生む。

1)弾速を速くすると命中率は上がるが、威力が高くなって緑猪は死ぬ。

2)弾速を遅くすると威力は下がるが、命中率が下がり当たらない。

つまり両すくみ状態となる。


そこでハラミィの実を選んだことが功を奏した。

軽いハラミィの実ならば、初速を速くし、命中率を上げても威力は大して強力にはならない。

つまり一挙両得となるのだ。


アリサ、そこまで考えてたのか?


いや、ないな。

たまたまハラミィの実が近くにあっただけか。



ともかく、アリサは上手くやった。


問題は両怪力女神だが、先にクルティナ君がブッシュボアへ逼迫する。


「優しく、優しく、優しく!」


およそ倒すべき相手に向かって放つ言葉ではないが、今必要なのは手加減だ。

クルティナ君は、ダッシュからヘッドスライディングして両手でブッシュボアを突き飛ばした。


「ブギャァ!」


おお、素晴らしくダサい!

あれなら素人ハンターっぽくていいぞ!


下手に殴ったり、蹴ったりするとブッシュボアを倒してしまうから、絶妙な手加減となった。

行為自体に全然優しさはないが、結果として緑猪は数メートル突き飛ばされただけで済んだ。

偉いぞクルティナ君!



そしてもう一人の問題児、リティア君だが、


「モザイク様、お願いします。」


はい、私に丸投げと・・。

 

諦 め る の 早 っ !

 

 

だが、判断が早くてよろしい。

出来そうも無い事を無理にやって失敗するより、早々にお手上げ宣言し、より確実に結果を出せる手段に移行するのはリスク管理として重要だ。

自己分析が出来ていないと、この判断を誤り易い。

無理な事を無理と言うのも責任感の表れだよね。


・・・ま、リティア君の場合は、単に面倒だから丸投げしようと思い付いただけだろうけど。

 

それでも私をハーネスベルトでぶら提げているのが彼女の強みだ。

ならば私が対処しよう。


『リティア君、体当たりしたまえ。』

「はい!」


クルティナ君同様に体当たり作戦とした。

猛然と緑猪へダッシュするリティア君に合わせ、私は魔法を準備する。


緑猪がこちらに気付いて逃げようとしたが、ホーミングミサイルと化したリティア君からは逃げられない。

茂みに逃げ込んだところを一気に迫って密着状態に


『グランドアッパー弱』


土魔法で斜め上に撥ね飛ばす。


「ブギャ!」


茂みの中だったので、盛り上がった土は目立たない。

周囲からはリティア君が蹴り上げたように見えただろう。

空かさず土魔法で均して、魔法の跡を目立たなくした。

よし、これで2頭を捌いた。

 

 

そしてゼムノア君だが、


「無理無理無理無理ぃー!」


魔法を使うなという指示を律儀に守って、生身で突撃したゼムノア君。

すると緑猪のヘイトを買って追い回される事に。


その隙に先輩は体勢を立て直せていた。


現在のゼムノア君は、近くの木に登って難を逃れてはいる。

だが、幹にしがみついて耐えている状態で、ズルズルと落ちて来ている。

下にはブッシュボアが、ゼムノア君が力尽きて落ちてくるのを待ち構えていた。


素晴らしい囮役ではないか!エクセレントだ!


その情けない姿こそまさにGランクハンターの動き!

ブラボーゼムノア君!


「お前達、助かった!サンキューな。」

「油断した。お前らが居なかったら危なかったぜ。」

「もう大丈夫だ、後は任せろと言いたいが、お前達も最低一体は倒す必要があるぞ。」

「出来るなら二体を引き付けておいて欲しい!」


そうだった。

依頼はハラミィの実の採取と、魔獣一体の討伐だったな。


「何だ?もう倒してもいいのか?」

『先輩方も大丈夫だと言っていたので良いだろう。最低一体は倒さないと依頼達成にならないからね。サクッと狩った方がいい。』

「じゃあ逃がさないように速攻ね。」


と言うとアリサとクルティナ君が駆け出した。

取り敢えずゼムノア君が引き付けている一体を仕留めよう。


「もう一体そっちに行ったぞ!気を付けろ!」

『先輩、こっちのボアは私達が倒しますので、そっちの二体をお願いします。』

「分かった、無理するなよ!」


先輩方は自分達が担当するブッシュボアに集中している。

では、こちらもサクッと仕留め・・


「終わったよ。」

「見えないように蹴り倒したぞ。」


早っ!


見られていない事を確認して、瞬殺したようだ。

だがそれが正解で、チマチマしていると直ぐに逃げられる。

今回向こうからやって来たのは好都合なのだ。

普通は警戒して、姿を現さないからな。


先輩方も同様に、もう倒してい・・



「うおお!逃がすか!」

「一体逃げられた!」

「構うな、こっちを囲め!」

「くそっ、素早くて捕まえられない!」


え え え え え ぇ ?


一体には既に逃げられ、もう一体を四人で囲って逃がさないように包囲していた。


そんな雑な方法でいいの!?


ブッシュボアは、既に戦意喪失で、逃げの一手になっており、隙を見て包囲を突破しようとしている。


全員短剣装備で、ジリジリと間合いを詰めているが、アレだと一撃では仕留められないので、強引に間を縫って逃げられる可能性が高い。

弓とか網とか持ってないのか?


獲物を逃がさない為には、接近せずに死角から攻撃するか、動きを封じて袋叩きにする必要がある。

その為の道具がないと、素早い魔獣を捕まえるのは難しい。


あ、やっぱり逃げられた。


えええええぇー?


ウソぉ!?大丈夫って言ったではないか!

こっちは二体とも仕留めちゃったよ。

マズくないかねコレ!?


「くそぉ、仕留め損なったか。まあ仕方ないな。」

「おーい、そっちはどうだ?」

「まあ逃げられるよな、準備も出来てねぇし。」


この場合、逃げられるのが普通はなのかね!?


あわわわわ!こっちに来る。

しまった、油断した。


あまりにも簡単だったので、先輩方も普通に倒してしまうと思っていた。

誤魔化さねば!

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