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私、木になります。 ・.:**☘ 平穏願って樹木に転生したのに駄女神のせいで魔王にされた殴りたい ☘**:.・  作者: 湯
第六章 盆栽王に私はなります。~魔法都市ゼムノークス編~
208/210

208.スキルを封じられた私達は貧弱貧弱ぅぅ!

今回の依頼を確認する。

 

・ハラミィの実10個を持ち帰る(鮮度を保つこと)

・魔獣・害獣1体を倒し売却可能な素材を持ち帰る

 

これがFランクが請ける、普通の内容らしい。


ハラミィの実はレールモンド地方では人気の果物で、日常的に食される甘い実だ。

背の高い木に実っているので、採取にコツが必要となり、ハンターの仕事として日常的に依頼が出ている。

同時にハラミィが実る木には、その実を求めて魔獣が寄り付くらしく、その討伐もハンターの仕事になる。


尚、Gランクの依頼だと魔獣の討伐は無し。

実だけ採取し、魔獣を見たら逃げて、どんな魔獣が居たかを報告する、という内容になる。


つまり今回は、Gランクである私達が、初めて魔獣退治を請け負うという形となるのだ。



私達は先導する嵐の波濤について歩き、ハラミィの木がある海岸付近まで移動する。


「こ、こんなにゆっくり移動するんだ・・。」

「まさか歩いて行くとは思わなかった。」


アリサとクルティナ君が、遅い移動速度に困惑していた。

確かに私達の移動は、スキルや魔法を使って、サクッと終わらせてしまうからな。

ましてや走らないとは思わなかったようだ。


「嫌がらせなのかと思いました。」

「リ、リティア様、これが一般人の多くが使用する普通の極意『体力温存』です。」


おお、ゼムノア君が気付いたようだね。

流石知識だけは無駄にある。いや、無駄な知識ばかりあるのか。


「体力・・温存・・?」

「何それ?美味しいの?」

「何故だ?体力をどうして温存する必要がある?」


ゼムノア君の説明に理解が追い付かないメンバー達。


『体力温存か、久しく使って居なかったので忘れていた。確かに体力値が低い間は、いざという時に備えて無闇に消耗しないようにしていたな。』

「おいブサイク、どう言うことなのか説明しろ。ワタシはとにかく走らされたではないか?」


そうだった。

クルティナ君のレベルが低い間は、シゴキの為に移動は全てダッシュだったな。


あと私はモザイクだ。


『クルティナ君、あれは君の為に走らせていたのだよ。』

「ほう?理由を聞こうか?」


おやおや、何故か恐い顔で睨んでいる。

クルティナ君、そこは怒るところではないぞ。

修行中の良い思い出として捉えて貰わないと。


『身体強化スキルの獲得とそのレベルアップの為だ。』

「なるほど、だからヘトヘトのバテバテになるまで、毎回毎回走らされ、力尽きて倒れたら回収されていたと?」


倒れるまで体力を搾り取らないと、スキルレベルが上がらないからね。


『そうだね。お陰でクルティナ君は強くなった。』

「そうね、クルティナ、あなたは強くなりました。」

「良かったねクルティナ。」

「あ、あの時の苦労が、む、報われている。」


そうそう、感謝してくれたまえ。


「で、本当の理由は?」

『ボッチだったクルティナ君が置いていかれたくない一心で、必死に追いかけて来る姿が感動的だった。』

「あ、あのクルティナが、し、死にかけの虫みたいな状態で倒れてる姿を見るのが愉悦だった!」

「クタクタになったクルティナをボロ雑巾のように運ぶのが堪りません!」

「クルティナだって、倒れた後リティアに回収される時、ニチャァって気持ち悪く悦んでたじゃん。」

「よーし、全員殴ってやるからそこに並べ!」


おっと、何故か恨まれているぞ?

筋違いも甚だしいな。


「まー、クルティナは別として、身体強化スキルの強化に、倒れるまでダッシュは常套手段じゃん。」

「た、体力少ない時の方が、こ、効率的に強化できる。」

「一般人の考えることは理解に苦しみますぅ。」

「おい、ワタシは納得してないからな!動けないワタシが何度魔獣に襲われたか忘れたのか!」


あー、何度か回収に戻ったら襲われてたね。

主にリティア君曰く粘液系に。


ボギービル(デカいヒル)とか、キラーマイル(デカいナメクジ)とか、ホールワーム(デカいミミズ)とか。

好きだよね、クルティナ君、粘液系・・。


クルティナ君の血を吸って、異形の姿に異常進化したアイツらは気持ち悪かった。


『体力温存か・・盲点だった。その発想はなかった。』


そうか、クルティナ君は不老不死なので、魔境で倒れてても平気だから平然と置いて行ってたが、普通の人はよく考えたら危ないよね。


「君達の話を聞いていると、呆れと共に我々がおかしいのか?と思えてくる・・。」

『私達にはこれが常識なのだが?』

「改めて常識の乖離を感じました。」

『え?』

 

私達のお喋りを聞いていたシモン支部長がこめかみを押さえていた。

おいおい、何故Bランクの君まで呆れるのだ?


え?これも普通ではないのか?

Bランクでも当たり前じゃないの!?


ちなみに先導する嵐の波濤には聞こえないように話しているぞ。



この事から判ったことがある。


普通のFランクハンターは、スキルや魔法を習得してはいないようだ。

それが普通なのだ。


これは根本的にやり方を見直す必要がある。


『全員傾聴して欲しい。恐らく今回の依頼は、スキルや魔法の使用は一切禁止だ。生身のままで依頼を達成する必要がある。』

「はぁ?何でそんな面倒な事すんの?」


アリサが私の号令に対してクレームを入れて来た。

うんそうだろう。君からスキルを奪ったら、ショボい妖精BBAしか残らないからな。

 

おっと、睨まれた・・。


『それが普通で、一般的なのだよ。』

「マジなの?Fランクって凄くない?」

「ま、まま、魔法無しの生活、考えられない。」

「確かにスキルが無い時期は、本当に厳しかったな。」

「普通に生きるとは、どこまで過酷なのでしょうか・・。」


私達が感心していると、支部長がまたこめかみを押さえていた。

何故だ!?


『私達はスキルに頼り過ぎていたのだ。つまり、スキル無しでも生き残る術を身に付けろ。恐らくこの試練の意図はそこにある。』


まさか普通の常識を身に付けるだけで良い筈が無い。

きっと深い意味が、この試験には込められているのだ。


支部長をチラッ


おや?何故か溜め息を吐いているぞ?

むう、あの反応では意図が分からない。


「やるしかないようね。」


アリサは覚悟を決めたようだ。

魔法の無いアリサは、単なるやかましい妖精。

すばしっこいだけの雑魚。

股間デストロイヤーでも、真空投げマスターでも、蜂蜜妖星王女でもなんでもない。


コイツはもはや蜂蜜だ。蜂蜜。


「魔法無し、魔法無し・・無理、無理無理無理無理無理無理。」


ゼムノア君は常に魔法で能力強化してるからね。

それを切ると、見た目通りの非力な女性と化す。今はヒョロガリ犬人族だが。


魔女から魔法を取ったら、単なる女しか残らない。

魔力が高いだけの深淵深淵うるさい陰鬱な中二病患者だ。


コイツはもはや病気だ。病気。


『問題はクルティナ君やリティア君だ。君達はステータスが高いからね。スキル無しでも異常な力を発揮できる。だから、可能な限り優しく振る舞う必要があるぞ。気を付けたまえ。』

「分かりました。」

「や、優しく・・出来るのか、このワタシに・・。」


分かったと言ったリティア君はどうせ分かっていない。

対称的に考え込んでいるクルティナ君は優しさと縁遠いツンの激しいツンデレ死神。


『無理難題だとは思うが、極力抑えて欲しい。』


なんと困難なミッションだ。

こんなハードルの高い依頼をこなさないといけないとは・・。

Fランク依頼を舐めていた事を後悔した。


「普通ってヤバい!」

「一般人って超人なのでしょうか?」

「Fランクハンターとは、これほどまで窮屈で息苦しい生き方をしているのか・・何と屈強な精神をしているのだ。」

「うっ、うぐっ、苦しい!魔法成分が、魔法成分が足りない!」


スキルを封じられただけで、もはや私達はパニックだ。

かく言う私も、スキル無しでは無力その物!

もはや単なる盆栽だ。

盆栽に何が出来るというのか!

 

支部長をチラッ


あれ?両手で顔を抑えて(うずくま)っている。

どうした支部長、大丈夫かね?

 

 

しかし今回の依頼で私達の弱点に気付かされた。

そうか、支部長はそこまで考えてこんな過酷なミッションを私達に与えたのか。

 

嗚呼、私達は何と脆弱な存在か!

何がSSランクだ、何が魔境の覇者だ。

スキル無しでは普通の事も満足に出来ず、同じ土俵に立てば、陸に打ち上げられた魚同様の無力さ。


それに比べて、嵐の波濤は皆涼しい顔。

何事もなく、リラックスしていた。


凄過ぎる!

流石はハンターの先輩だ。


「おーい、もうすぐ着くぞ!」


おっと嵐の波濤先輩が呼んでいる。

追い付かなければ!


『は、はい!全員先輩の元へ駆け足!』

「センパーイ、待って下さーい!」

「もしや今回、肉、無し?辛過ぎる!」

「優しく・・優しく・・」

「魔法が・・魔法がぁ・・」

 

 

「何故ここまで逆転現象が起きるのか・・。」


支部長のこめかみが、そろそろ破裂してもおかしくないレベルでヒクヒクしていた。





私達は海岸付近の森へと入って止まった。

どうやらこの辺りにハラミィの実があるようだ。


町からそれ程離れていない。

ハラミィの実を目当てに魔獣が寄ってくるようだが、この距離に引き寄せられると魔獣被害が怖いな。

出来るだけ多くの実を採取して、魔獣を寄せ付けない様にしないと。


ハラミィの実の採取依頼が出るのは、レールモンドの治安維持の為でもある様子だ。


「アレがハラミィの実だな。」


嵐の波濤先輩が指差したのは、樹高の高い木に巻き付いた蔓植物

そこに紫色の大きなマンゴーみたいな実が下がっていた。

完全に熟すと赤くなって果皮がパックリ割れて、中の果肉と種が姿を覗かせるようだ。

前世で言えば「アケビ」のような実だった。


って言うか、まんまアケビだ。

アケビより、明らかにサイズが大きいけど。


割れた実がある木に近付くと、甘く爽やかな香りが漂ってくる。

その芳香が動物や鳥を呼び寄せ、種ごと食べた動物が糞をして、分布を広げるのである。


樹高の高い木に巻き付く事で、周囲の木々に邪魔される事なく光合成をするのが、蔓植物の強みだ。

巻き付かれた木は、ハラミィの蔦と葉に生育を邪魔されて弱ってしまう。


なかなかに強かな植物。

私はそこまで非情にはなれないので、蔓植物への進化はしなかった。


ポイントに着いて見上げると、高い所に大きな実がぶら下がっていた。

木に登らなければ採取は出来ないな。

 


「じゃあここからは、君達だけでトライするんだ。」


嵐の波濤先輩がどうぞと私達を誘導する。

 

「えー?お手本見せてくれないのー・・の゛お゛ぉぉぉ!お手本見せて貰えないんですかぁ!?」


アリサが先輩に生意気な口をきいていたので、戒めのスタンヴォルト(弱)。


「それじゃ試験にはならないんじゃないか?」


嵐の波濤がチラっと支部長を窺う。


『いや、お手本が無ければ試験にならないはずだ。』


私達と嵐の波濤が、同時にチラチラ支部長を見る。


「すまんが嵐の波濤、手本を見せてやってくれ。」

「何で!?」

「普通はここで、受験者がどうやって採取するのか見るんじゃないのか?」

 

何を言うのだ。

普通の採取方法が皆目見当がつかないので、それを学びに来たのだ。

お手本が無ければ話にならないのだよ!

 

私達に任せたら非常識な採取方法をして、早々に試験終了となるのが目に見えている。

ざっと思い付くだけで何パターンもの採取方法があるが、そのどれもが怪しい。


アビスゲート採取・・は、勿論駄目だよね?

アリサとリティアが飛行して採取が一番簡単なのに、擬態姿では使えないのが正直辛い。


木ごと切り倒すなんてもっての他か・・。

同様にギガントスタンプのダウンバーストで叩き落とすのも駄目だろう。


光魔法のレーザーでヘタをカット

魔法障壁で足場を作って採取

土魔法で足場を作って採取

これ等は微妙だ。イケるか?いや駄目っぽいなぁ。

スキルや魔法を封じられているんだった・・。


くそ、判らない。


まさか木を登って採りに行くなんて事はしないよね?

樹高が高く、枝が少ないので、登るにはそれなりに大変だし、実がある場所は高くて危険だ。

また枝が細く頼りないので、幹に近い実しか採れなくて非効率だ。

幹から手を伸ばして採れる実はせいぜい3個ほどだぞ。


恐らくは高枝切鋏のような、専用の道具があるのだろう。

それを見せて欲しい。


「彼等はその普通が分らないのだ。すまないが見せてやってくれ。」

「世話の焼ける奴等だな。」

「じゃあ見てな。」


ガシッ、グイ



木 に 登 っ て 採 り に 行 った ー ー !?


専用の道具は!?

 

バカな、非効率とは思わないのか!?

ハラミィの実を10個も採取するのだぞ?

あの方法ではせいぜい3個が限界。

残りは別の木を探さないといけないではないか。


しかも命綱も無しで、危険ではないか。

高所作業だぞ?


こ、これが普通の常識的な採取法なのか!?

非常識だろ!


「ああやって登るんだ。ま、登り方は色々あるけどな。ベルトを使ったりするヤツもいるな。」

「あとはナイフで切って実を落とし、下に居るヤツが受け止める。」

「ハラミィ採取は二人一組が原則だな。」

「やってみな。」


嵐の波濤先輩は得意気な顔だ。

支部長をチラッ


あ、頷いている。

あれが正解なのか・・。


『べ、勉強になります。』


普通って凄い・・。


あんなの前世のTV番組で見た、南国のヤシの木登り名人とかの芸当ではないか。

あんな真似が出来るのは、クルティナ君しかいない。


『クルティナ君、君出来るかね?』

「嫌だ。」


即答で拒否。

またこの娘は・・。


『やりたいか、やりたくないかではない。出来るか出来ないかの話だ。ゼムノア君は非力だし、アリサとリティア君は不自然になる。木登りに適しているのは力自慢な君しかいないではないか。』


クルティナ君なら、小指1本で全体重を支えられるし、落ちても骨が折れる程度で済む。つまり安全だ。(骨が折れて問題ないのは普通でも安全でもないが・・)


「はぁ・・いいかブサイク。ワタシは出来ない訳ではない。嫌だと言った。その意味を理解しろ。」

「あー、クルティナ、無駄無駄。オジサンのデリカシーの無さは昔からじゃん。」

「そう言うところはやっぱりシャ・・モザイク様ですぅ。」

「き、木登りに適しているか否かで言えば、て、適してませんよ?」


はぁ?

どう言うことだね?


『まさか、スカート姿だからとか言いたいのかね?』

「分かってるではないか!」

「じゃあ何でイケるって踏んだのよ!?」

「遂にクルティナにまで露出プレイを強要!?」

「げ、げげ、下衆の極み・・」


おっと女性陣からの猛然なる抗議が。

言ってなかったが、男になってるゼムノア君以外、彼女達は皆スカート姿である。


しかし、それが理由なのか?

まさか、そんな・・


『君には恥じらいという感覚は無いと思っていた!』

「ワタシを露出狂のように言うな!」

「まー解らなくもないけど。」

「クルティナ、スグに脱ぐから・・」

「げ、げげ、下衆の極み・・」


身から出た錆だろうに。



『君はいつも素っ裸でウロウロしているではないか!戦闘中も激しい動きの時は丸見えだ!今更パンツの一枚見られて何が困るのかね!?』


しかも今は擬態姿なので、実質パンツは見られない。

見られるパンツは擬態パンツであり、本物のクルティナパンツはスキルの向こう側に隠されてある。


私だって本物のクルティナパンツを披露しろとは言わない。

擬態姿なら問題ないだろうと思って提案したのだ。


「ふざけるな!自ら見せるのと、他人に勝手に見られるのは違う!」

『結果は同じではないか!』

「違うわ!殺すぞ貴様!」


うわー、オコだ、激オコクルティナ丸だ。

すぐ脱ぐし、すぐ怒る。

クルティナ君はカルシウム足りてない説。


だがこれ以上クルティナ君を刺激するのはやめておこう。


「クルティナ、見せてるんだ・・。」

「モザイク様はクルティナに身内扱いされてる事を喜ぶべきです。神界でも有り得ませんのに。」

「た、確かに、だ、誰にでも、は見せてませんね。」


そこ、何をコソコソ話してるのだ?


「あのカワイイ黒猫族、そんな側面が・・ゴクリンコ」

「登って欲しかった・・ゴクリンコ」


おっと、嵐の波濤先輩も期待してたようだ。

だが、一応乙女の秘密(仮)は守らねばならないな。


『す、済まなかった。クルティナ君を誤解していた。』

「解れば良い事だ。」


『まさかクルティナ君が、故意に私へ見せてくれているとは知らなかったのだ。』

「違うわ!殺すぞ貴様!」


うわっ、また怒った。

クルティナ君はカルシウム足りてない説。


後ろで嵐の波濤先輩が「チィッ」と舌打ちしているのが聞こえた。

何 故 だ !?

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