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私、木になります。 ・.:**☘ 平穏願って樹木に転生したのに駄女神のせいで魔王にされた殴りたい ☘**:.・  作者: 湯
第六章 盆栽王に私はなります。~魔法都市ゼムノークス編~
203/210

203.周囲を意にも介さず肉しか見てない女神が最強過ぎる

「・・・何だ、アレは。」

「・・・凄い。」

「何でGランクの駆け出しが・・。」

「あの規格外の魔法、もしかして」

 

目の前で起きた非現実的な光景に目を奪われ、固まっているハンターや漁師達。


『おーい、呆けている場合ではないぞ、今の内にアンゴラトードを解体したまえ。』

「あ、そうだった。」


呆然としている隊員に呼び掛けると我に返った。

焦って行動を開始しようとした隊員達が、異様な音を聞く。

 

 

ズル・・ズルズル・・


「「「 ? 」」」

 

そして、またも彼等を呆然とさせる事態が訪れた。

 

遠くから近付いて来る異形の影。

岩礫の上をガラガラと、何か大きな物を引き摺る鈍い音だけが、何故か風の音よりも不気味に響く。

 

  

ズルズル・・ズルズル・・

 

 

そしてその正体が明らかになると、周囲は驚愕に包まれた。

 

「シャ・・モザイク様、お肉を獲って来ました。」

 

リティア君がアンゴラトード二体を引き摺りながらやって来たのだ。


いや、怖い怖い怖い!


巨大なトド2体を、満面の笑みで事も無げに引き摺って歩いてくる血塗れの狐人族。

それホラー!ガチのホラーだから!


ズルズル・・ズルズル・・


「「「「・・・。」」」」


絶句。


全員が絶句していた。

そりゃそうなるか・・。


ズルズル・・ズルズル・・


アンゴラトードの群れを真っ直ぐ突っ切って歩いてくる。

リティア君の前にいたアンゴラトードが慌てて逃げている。

身の危険を察知したのだろう。

お陰でモーゼの十戒の如く、群れが割れていた。


「あら、鳥肉も落ちてますね。纏めて解体してしまいましょう。寒いとお肉が痛まないので、ここは良い場所ですね。あ、すみません、道を開けて貰えますか?」

「ヒッ、ヒィィ!」

「ば、化け物!?」


慌てて道を譲るCランクハンター。

すみません、その人、化け物ではなく女神なんです。


『お疲れリティア君。もう良いのかね?』

「はい、五体を仕留めて来ました。モザイク様、解体しますので、ぶつ切りにして貰えますか?」


ああ、大きくて捌き難いのか。

既に息絶えているので、可愛そうだけど涙を呑んで肉として食べる事で供養しよう。


『アビスゲート』


必殺アビスゲートカッター

アビスゲートの次元断絶で、アンゴラトードを三分割にした。


「「「「!!?」」」」


ああ、見たことなかったらビックリするよね。

アビスゲートは何でも切れるから本当に便利だ。


「ありがとうございます。さすがにこの大きさは持ち上げられなかったので助かります。ちょっと海で洗ってきます。」


リティア君が1/3になったアンゴラトードを掴んで海に歩いていく。


「あら、こちらのアンゴラトードもお亡くなりですね。早く内蔵を抜かないと痛んでしまいますよ?」


先程ゼムノークス有志隊が狩った個体だ。

グレイトブルズリーにやられて、少し傷が入ったがまるまる残っていた。


「ついでに解体してあげます。お腹が下ですね。アリサ、これひっくり返せますか?」

「んー、ソコとソコを持ち上げてくれたら出来るよ。」

「クルティナ、手伝ってくれる?」

「はい、リティア様。」


どうやら解体職人の血が騒ぐようで、ゼムノークス有志隊の獲物もついでに解体するようだ。


「あんな細腕でアンゴラトードが持ち上がるのか?」

「いや、見た目に騙されるな、さっきも小型だが二体を引き摺ってきたぞ。」

「アンゴラトードをひっくり返すって、大人が七人がかりでやっとだぞ。」


巨体な上に重いから、ひっくり返すだけで大仕事になる。


「行くぞアリサ、セイッ!」

「フラッシュブレス」


ゴロン


おお、巧い。

重心を捉えた絶妙なフラッシュブレス具合。

あの巨体をよくコントロール出来るな。

アリサ、フラッシュブレス職人。


「「「!?」」」


小柄で腕の細い狐と黒猫族が、アンゴラトードを少し持ち上げると、兎人族が触れずに転がした。

現実離れした現実に、目を回す隊員達。


リティア君はゴリティア君パワーで持ち上げ、クルティナ君は身体強化とレベルによって得られた腕力で持ち上げ、その加速度を利用、増幅させてアリサが魔法で転がした。


少ない人数で効率的に重量物を取り回す。

息の合ったチームワークである。


「ありがとうアリサ。では解体開始します。」


早速リティア君が取り付いて、手際よく腹をかっ捌き、内蔵を取り出していた。

あー、あれで血塗れだったのか。

 

ところであのナイフ、いつもリティア君が解体の際に使っているけど、異常な切れ味だよね。

もしかしてアレも神アイテムなのでは・・。

 

「ゴラちゃん可哀想。」

『あんな愛らしいアンゴラトードをよくズタズタに出来るなぁ。』

「ワタシも無理だ。」

「ジャ、ジャコウドリは躊躇なく潰すのに・・。」


確かに比べると、圧倒的にジャコウドリの扱いが酷い。

ジャコウドリだけ見敵必殺だったからな。


「あれのどこがGランクなんだ・・。」

「ランク詐称じゃないのか?」

「本当はAランクなんじゃ。」


ん?疑っているのかね?


『私達は間違いなくGランクだよ。』

「ヒエッ!」


近寄った私に驚くハンター。そんな恐れる事ないのに。

まあ正体不明のモザイクなので気味は悪いだろうけど。

魔境の前庭では「妖魔の王は面白い」と人気あるんだぞ。


『クルティナ君、ハンター証を見せてあげて。』

「チッ面倒な。ホラ。」


クルティナ君がプレートを見せる。

打刻されたランクは間違いなくGだ。

 

「本当だ。」

「こんなGランクが有り得るのか。」


ふふふ、まぁ中身が妖魔の王だけどね。

私達もハンター紛いな事を続けて長いから、熟練のハンターみたいなものだ。


「アンゴラトードを一人で狩ってくる狐。」

「ハクエナを投げ飛ばして、アンゴラトードを触れずに転がす兎。」

「ハクエナの群れを一人で蹴散らす黒猫。」

「グレイトブルズリーを吹っ飛ばす犬。」

「アンゴラトードを一瞬でぶつ切りにする物体X・・。」


「俺達、とんでもない奴等に舐めた事言ってなかったか?」

「・・・・。」


なんか恐縮させてしまったようだ。


悪いことをした。

中身が妖魔の王だって判っていたら、彼等の言動も変わっていたかもしれない。

姿を変えてるから、そう思われても仕方ないので気にしないで欲しい。

 

私だって大逸れたことを言うGランクハンターが隣にいたら窘める。

だから彼等は当然の事を言っただけで悪くない。


悪いのは外見を偽って、やりたい放題してる私達の方だ。

良くも悪くもマイペースだからね、私達は。

 

 



「「「すんませんでしたー!」」」


拠点の小屋に戻ると一緒に狩りをしたハンターから、一斉に謝られた。


『いや、別に気にしていない。』

「アタシは良いんだけど、クルティナがねー。」

「肉です。肉を焼きましょう!」

 

謝る必要はないと思うが、若干一名根に持ってる人がいるんだよね・・。

 

「ワタシに舐めた口聞いたヤツは殺す。」

『やめたまえクルティナ君、大人気ない。』

「肉です。肉を焼きましょう!」


クルティナ君さえ抑えられたら、ウチには好戦的な人物は居ないので大丈夫だ。


「ボ、ボクは慣れてるから。」

『確かに君は普段からオドオドしてるから舐められ易いだろうな。』

「肉です。肉を焼きましょう!」

 

『って、肉肉うるさいなリティア君!分かったから用意しなさい。』

「もうしました。」

『早いな!』


私達は拠点の小屋の中で暖をとっていたのだが、暑さ寒さが関係ないリティア君は、一人外でBBQの準備をしていたようだ。


いや、屋内で焼こうよ・・。

 

 

解体して切り分けられた山盛りの肉を小屋の中に運び込む。

 

リティア君が狩ったアンゴラトードの肉を、全員に振る舞うと言ったら感謝された。

加えてリティア君からお酒の差し入れもすると、更に喜ばれた。


解体を終えた狩り場からの帰り道。

いつの間にか消えた、リティア君が狩ってきた小型のアンゴラトードに、全員が不思議そうな顔をしていたが、気にしないでくれと言って誤魔化した。

この振る舞い酒で忘れて欲しい。


暖炉の火と、炭火グリルで、串に刺した大きな肉をじっくりとローストしていく。

一酸化炭素中毒に気を付けて、たまに換気しながらだ。

少し屋内が煙で充満しているけど、気にしたら焼肉は負けである。

 

 

そして肉と酒が揃えば、あとは騒ぐだけである。


「アヒャヒャヒャ!違うってば、ホラこうだって。」


グルン、スタッ


アリサは酔っぱらって、真空投げでリティア君をその場で一回転させるという妙技を披露していた。


「どうなってんだ?」

「わかんねぇ。」

「スマン、もう一回出来るか?」


どうやらアンゴラトードをどうやって転がしたのか、実演しているようだ。

いや、真似は出来ないと思うぞ。


「はぁ?もう一回?リティア、また太股上げてみて。」

「アリサ、肉が食べにくいのですが?」


グルン、スタッ


再びその場で綺麗に一回転して着地を決めるリティア君。

これ、リティア君は足踏みする要領で、太股を少し上げるだけでバック転にしているのだ。

曲芸じみたフラッシュブレス扱い!

 

ただアリサに一回転されているにも関わらず、無言で肉を食い続けるリティア君も凄い・・。

勝手に身体を回されているのに、気にした様子もなし。

一回転しながらも、両手に肉の串を持って真顔で黙々と肉を食い続けていた。


もはや猟奇的な肉への執着心だ。



私は隊のリーダーである護衛君と会話をしていた。


「こんなに早くアンゴラトード狩りが終わるなんて思わなかった。」


アンゴラトード狩りの依頼は今日中に達成してしまった。

目標の量が確保できたので、あとは町へ持ち帰るだけなのだ。


『普段はもっと時間がかかるのかね?』

「ええ、今回のようにグレイトブルズリーやハクエナに邪魔されて、一回二回では持ち帰れない事が殆どなので。」

『なるほど。』


アンゴラトードを倒した傍から他の魔獣が奪いに来る。

奴等を撃退すると怪我をするので、分け前を与えてやり過ごし、他の魔獣が満足したらやっと持ち帰りが叶う。

従来はこうして来たのだろう。


「矢の補充や回収にも時間がかかりますし、何より運ぶのが大変なんです。」

『大きいからなぁ。』


現場から持ち帰るのが、一番大変だった。


「魔お・・モザイク殿が、ぶつ切りにしてくれたお陰で、スムーズに運び出せました。」


アビスゲートだからな。当然だ。

肉は拠点の外に並べて冷凍中である。

明日の朝、荷車に積んで港町へ運ぶ。


『今回のようにぶつ切りにして運んでいたのではないか?』

「アンゴラトードの大きくて硬い骨を分断なんて出来ませんよ。あの場で解体して、少しずつ運ぶんです。」

『その間にもジャコウドリとか襲ってくるだろう?』

「そうです。だから解体途中で諦めて、持ち帰れる分だけ持ち帰ります。翌朝行くと、大抵食い荒らされてるので、また狩り直しです。」


一歩進んでは二歩下がり、また三歩進めるみたいなやり方だったのか。

大変な作業だったのだな。


『後でリティア君に効率的な解体方法を聞いておくよ。』

「良いアイデアがあれば助かります。」


護衛君がそう言って酒を呷った後、アリサの笑い声が響く。


「アヒャヒャヒャヒャ、でしょ!風魔法が最強よ!」

「おう、最初に習得するなら風だよな。」


アリサは風魔法特化だからな。

風魔法推しなのはよく分かる。


「だが君達ハンターなら水魔法一択ではないか?」

「ああ、飲み水に困らないのは大きい。あと、水は重いからな。」

「俺達漁師も水魔法は重宝するぜ。」

「第二階位のスプラッシュが何気に使い勝手良いからな。水場での立ち回りが格段に楽になるぞ。」


おやおや、魔法議論かね。

ゼムノークスらしい話題だな。

 

「ん何を言うんれすか、光魔法こそ至高れす!」


そこに酔いちくれたゼムノア君が割り込む。

彼女が何故光魔法好きなのかは、単に「カッコいいから!」だろうな。

 

「でも兄ちゃん、光魔法って習得が難しいんだよなぁ・・。」

「最初に習得するにはハードル高いっていうか。」

「にゃんだとぉー!」

「ウゼぇなこの犬の兄ちゃん。」


て言うか、魔法の始祖であり、元魔王が普通に一般人の魔法談義に割り込んで、ウザがられてる・・。


「バカを言うな、闇魔法が一番効果的ではないか!」


更に闇魔法好きなクルティナ君が乗り込んで行った。


「闇って陰険なのよねー。」

「ううウンコ猿も使ってくるので、い、印象悪い~。」

「何だとぉー!」


闇魔法の悪口言われて怒ったクルティナ君から、ゼムノア君がほっぺを摘ままれていた。

ならば私も参戦しよう!


『何を言うのかね、土魔法以外有り得ない。土魔法にはアビスゲートがあるからな。』

「うるさいアビスゲートバカ!」

「アビスゲートであの世まで飛んでこい。」

「アビスゲロ・・うぷっ!」


おやおや


「エアロスプレッドにフラッシュブレス。一般人が覚えられて一番使えるのは風魔法よ!」


確かに低レベル帯の魔法で、よく使うのが風だね。

入門としては優秀だ。


「ひ、火熾こしから目潰しまで、た、多種多様な魔法があり、何よりスタンヴォルトの威力は他系統の第二階位魔法の中でも随一!光魔法を覚えるべきですー!」


エネルギーを操る光魔法も多方面で活躍する。

スタンヴォルトはLv2とは思えない高威力だし、習得して損がない魔法だ。


「戦術的には闇魔法一択だろう!ワースゲインとスロウの使い勝手は他の追随を許さない!」


戦闘に限って言えば、闇魔法は極めて優秀だ。

職種を選ぶ魔法だよね。


『工夫次第で様々な役に立つのは土魔法だ。習得しておけば潰しが効くぞ。』


だがやはり土魔法だ。

攻撃、防御、トラップ設置、妨害、目眩ましと戦闘でも使え、農作、工事、工作と生活にも役立つ優れた魔法系統である。


何より行き着く先にアビスゲートがある!


すると静観してた(肉に夢中で会話に入って来なかった)リティア君が、遂に推し魔法を言い放つ。


「待ってください。やはり聖魔法です。安心安全のバフ魔法が、最も高効率で底力があります。なんと言っても聖なる魔法!そう、わたしのような神聖な存在には聖魔法こそ相応しい!」


おやおや、認識に大きなズレのある発言だ。


『さっきまで血肉に塗れてた、邪悪な存在が何を血迷ったのかね?』

「ゴラちゃん殺しが笑わせるわ。」

「リティア様も闇魔法を極めませんか?ニコッ」

「リ、リティア様、せ、説得力がまるでありません。」

「 わ た し だ け 全 員 か ら 反 論 さ れ る !? 」


反論ではない。似合わないと言ってるのだ。

君は確かに女神だが、神聖さなんてどこにもないではないか。

先般異形の箱を生み出した君の涙事件を忘れたのかね?

どちらかと言えば邪神寄りだよ君は?

 

あと君にあるのは、ただひたすらに残念な印象のみだ。


そんなんだから自分の教徒に神扱いして貰えないのだ。



ま、リティア君は別にして、この魔法議論は決着が付かないんだよね。

皆得手不得手、好き嫌いがあるからね。

だからこそ主義主張が違って盛り上がるんだけど。

 

ちなみに水魔法は、私達のパーティーでは人気がない。

一般的に水魔法は、旅にも生活にも戦闘にも、使い勝手が良いので人気があるのだが、ウチのメンバーは各員尖った性能してるのであまり使わないのだ。


その後もワチャワチャ楽し気に言い争っていた。

 

平和だね~。

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