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20.山賊の親分が私より経営能力高そうで凹んだ

領主と会話をして、警戒を解いてもらうように働きかける。

討伐対象にされたくない!

そしてその様子を見ていた山賊の頭領は・・

「お前は何者だ?高度な魔法を容易く操り、言葉の節々には教養すら感じられる。こんな魔物は見た事も聞いた事も無い。」

 

どうやら私は非常識な存在のようだ。

薄々気付いていたが、彼等の反応を見て、どうやらかなり異常な存在と思えて来た。

 

「うむ、何者かと訊かれても困るな。私はガンプ大森林で生まれ、今は森で偶然出会った妖精族に、色々と世間の常識を教えて貰った御礼をする為に旅をしている途中だ。」

 

私は正直に返答した。

 

「妖精族だと?」「本当か?」

「あの危険な森から出て来たのか?」

「こんな化け物が、あの森にはいたのか。」

 

私の説明に動揺が走り、色々な思考が伝わって来るが、領主は落ち着いていた。

 

「・・・ガンプ大森林から歩いて来たのか?」

「そうだが?私は木なので、歩みは遅いのだ。ここまで1年かかったよ。」

 

領主は信じられないような目で私を見ていた。

まあ疑いたくもなる。

木が動くこと自体が、異例なのだから。

 

「・・・人里を襲ったりは?」

「まず、人に会ったのは先日のガイムという人物と君達が初めてだ。それから、里を襲う必要性が、私にはないのだが?」

 

どうも話の内容から類推すれば、現在地は、この領主のランクシャー領域内に属するようだ。

 

私が得体の知れない化け物だから、どんな行動を起こすのか心配なのだろう。

しかも、自分達では手に負えない、災害のような魔物である。

 

領主としての責任感から、自分の領内に恐ろしい化け物が徘徊しているのを、是とはしないだろう。

彼の立場を考えれば、もっと大きな組織に協力を要請して、再度討伐に乗り出すのが正解だ。

だから、私の第2希望「存在の秘匿」に待ったをかけたのだ。

 

しかしこの領主、なかなか誠実な性格をしているようである。

こんな気味の悪い化け物とは話だけを合わせ、口約束しておいて、後でこっそり通報しつつ、軍備を整えてから再度討伐に乗り出せば良いものを、生真面目に私の意志を確認するとは。

裏のない、実直で好ましい人物ではある。

 

「それだけの力と知性があって、他者の物を奪おうとは思わないのか?」

 

私がそんな悪辣非道な凶悪犯に見えるのかね?

まぁ、怯えというフィルターを通して見れば当然でもあるか。

 

 

「私は木であり、光合成さえ出来れば良いのだよ。」

 

「コウゴウセイ?」

 

あれ?どうやら光合成を知らないらしい。

どうも植物に関する研究は進んでいないようだ。

 

「ああ、植物サイドの話だ。気にしなくて良い。とにかく、私は日光が浴びれれば幸せなのだよ。」

「そんなものなのか?」

「ああ、それが植物というものだ。」

 

あの気持ち良さを知ってしまうと、次の転生先も植物で良い気がしてきた。

 

「ちなみに、この籠に入っているものは、妖精族へのお土産だよ。大森林で採取したものだ。」

「な・・なるほど。」

 

領主がチラチラと私が背負った籠を見ていたので、先手を打って弁明した。

 

 

「分かった。お前の存在はここに居る者だけの秘密とする。」

 

どうやら領主は納得してくれたようだ。

他の者は訝しんでいるが、代表者が約束してくれたので、取り敢えずは安心しておこう。

 

 

「お願いする。さて、それより、この山賊達を捕えなくて良いのか?」

「! そうだったな。しかし、たった四人では・・。」

 

領主は動ける者の数を見て絶望していた。

4人ではせいぜい数人を捕える程度が関の山だ。

他は見逃すしかない。

 

「毒で倒れている者に、良ければコレを使ってはどうだね?」

 

私は枝を動かし、百年草を籠から取り出して、領主に渡した。

まだ3束ほどあるので、別に惜しくはない。

 

「これは百年草!?良いのか!?」

 

領主は私が器用に枝を動かし、百年草を籠から取り出す様を見て、驚きを隠せずにいた。

そして、恐る恐る受け取った草束を見て、更に驚いていた。

 

「構わない。まだ沢山あるからね。」

 

恩を売って置けば、討伐対象から更に外され易いだろう。

山賊の毒に効くのか判らないが、どうも薬効成分はかなり優秀らしいので、試してみる価値はあるだろう。

 

これで効けば、私の事を「人畜無害の良い木、討伐不要」と認識してくれると助かる。

頼むから、放っておいて欲しい。

 

「あ、有難い!おい!湯を用意しろ!」

 

領主は慌ただしく薬湯の準備を始めた。

先程まで野営していたので、竈に湯を貯めた鍋が残っていた。

そこに百年草を入れて、かき混ぜていた。

 

 

 

 

領主サイドが毒の治療に勤しんでいる間、私は暇になったので、負傷で動けない山賊達を見た。

よく見ると皆若い。

半数ほどは子供ではないか。

 

これから捕縛され、領主の町に連行される事だろう。

領主に討伐対象に認定されていたので、色々と悪事を働いている筈だ。

こちらの秩序や法規は知らないが、罪人は投獄されて何かしら処罰されると思われる。

盗賊の末路だが、罪人となった時に、そうなる覚悟はしているものとみなす。

 

しかし、私に鉢合わせなければ、まだ捕まらなかっただろう。

先程の戦闘を見ても、この盗賊の頭領は頭がキレる人物だ。

簡単には捕まらなかったのではないか?

 

「チッ、ツイてねぇ!こんな化け物に絡まれるなんてよ!」

 

山賊のリーダーは悪態をついていた。

脚が痛むはずだが、タフな精神力だ。

 

「確かにな。もう少し違う場所に、あの領主様を追い込んでいれば、私は実害が無いので、静観していたのだが。」

 

あの領主達の人間シャワーが降って来ないのであれば、私は無視していた事だろう。

そんな意味では、この山賊は確かにツイていない。

 

「うるせぇ化け物!喋るんじゃねぇよ、薄気味悪ぃな!」

 

私が話し掛けると、神経を逆撫でした模様で怒られた。

勝利を目前にしての、悪夢の逆転劇。

捕まって逃げられない事が悔しいのだろうか、かなりカリカリしている様子だ。

 

「それは済まなかった。ところで君の先程の戦術は見事だった。軍の経験者かね?」

 

子供20人で大人10人を封殺するのは、並大抵の事ではない。

一斉に襲い掛かるような粗野で野蛮な山賊なら、考えなしに突っ込んで、返り討ちに遭っていた事だろう。

 

相手と自分達の力量判断も正確、地形的な有利を崩さない立ち回り。

仲間から信頼され、統率力があり、完全に動きを掌握していないと出来ない連携だった。

そこには確かな智謀があった。

 

「話し掛けるんじゃねぇよ!何なんだお前。」

 

褒めたのに邪険にされた。

 

私にとって、この山賊には何の恨みも無い。

この罪人の咎が何なのかも知らないし、どんな恨みを買っていようが私には関係が無い事だ。

なので、単に一人の人間として会話する。

 

「私は朝日が昇るまで暇なのだ。少しくらい話しても良いだろ?」

 

邪険にされても、再び話し掛けた。

久し振りの会話を堪能したかっただけである。

この後、アリサに会う事が出来るか判らない。

そうなれば、今後も暫く会話する事は出来ないだろう。

私は少し我儘になっていた。

 

「こんな怪我負わされた相手と、呑気にお喋りする馬鹿がどこにいるんだ!?」

 

それもそうだ。

 

「それくらいスグに治るだろう。」

「こちとらお前みたいな化け物じゃねぇんだ、治らねぇよ!」

 

傷跡は残るだろうが、完治しないとは思えないのだが・・。

 

いや、この世界の医療レベルを私は知らない。

軽視は出来ないのか。

 

「そうなのかね。では、君と君の仲間にもアダンの実をあげよう。多少治りが早くなるのではないかね?但し、あの領主の町に着いてからだ。だから、領主に渡しておく。着いたら食べさせて貰いなさい。」

「はぁ?余計な真似すんじゃねぇ!」

 

私は山賊に個人的な恨みはない。

彼等を行動不能にしたのは、私の目的の障害を排除したに過ぎない。

人間シャワーを防いだだけ。

 

やや過剰防衛になったが、私の目の前で戦闘を継続されるのは困るので、一方を沈黙させただけだ。

別に領主側を沈黙させても良かったのだが、前世の記憶と価値観から、犯罪者側を応援する気にはなれなかっただけである。

 

結果的には、部外者が気紛れに二者の闘争に飛び入り参加して、場を治めてしまった。

加害者となってしまったので、その点に関しては、少なからずお詫びはしたいと思ったのだが、拒否されてしまった。

 

「君のような優秀な人材が、何故山賊なんてやってるのか、詮索するつもりはないが、もし罪を償い、真っ当な人間に復帰できれば、その頭を使って商売でも始めなさい。キミは人の上に立つ才能がある。」

 

私にはその才能が無かったので、才能がある者には敏感なのだ。

きっと彼なら、従業員を上手く導き、安定した経営が出来る事だろう。

 

少なくとも私より、人を使う才能がありそうだ。

 

異世界の山賊に才能で負ける私・・凹むなぁ。

 

「放っとけよ。」

 

山賊の頭領は遠い目をしていた。

何か私の言葉に引っ掛かるものがあったのだろうか。

 

 

「邪魔して悪かったね。」

 

これ以上踏み込んでは、彼の迷惑になりそうだったので、私は会話をやめようと思った。

 

 

すると、逆に彼の方から話し掛けてきた。

 

「・・・アンタこそ、何でこんな所をほっつき歩いてんだよ。」

 

その言葉の裏には、私への畏怖心が強く表れていた。

”お前のような恐ろしい化け物が、このような街道付近に出没するなど聞いてない。”

そう言いたいようだ。

 

RPGで言えば、始まりの町周辺に凶悪なボスモンスターがウロついていて、積極的に低レベル者狩りをしているという鬼の難易度、発狂地獄モードライクである。

「製作者の暴走だ!暴挙だ!無駄で余計なリアリティは要らん!」と、クレームしたくなる気持ちは分かる。

 

しかし、そんな非情で無情で残酷な事が、実際に起きるのが現実(リアル)である。

絶対にこうなりたくはない!と思っても、何故か吸い込まれる様にそうなってしまう。

忘れてはいけない物を忘れたり、落としてはいけない物を落としたり、踏んではいけない地雷をいつの間に踏んでいたりする。

それが現実。

 

そう、経営の才能が無いのに起業してしまった私のように。

 

運命とは実に恐ろしいものである。

きっと神とは極悪非道のサディストなのだろうと、私は確信するに至った。

 

 

ちなみに、ゲームに例えたが、私は昔ゲームが大好きでハマっていた。

子供の頃の夢は、お金持ちになって、沢山のゲームに囲まれてゲーム三昧する事だった。

だが、社会人となって起業してからは、忙しくてゲームどころではなかった。

なので最新のゲームは殆どしていないが、RPGは好きだったので、現在いるこの世界の、剣と魔法とスキルとステータスがある世界観は、私にとっては馴染み易いシステムであったのだ。

 

 

話は逸れたが、彼の疑問に答える事にしよう。

 

「私だって好きで徘徊している訳ではない。向こうの山に棲んでいる妖精に会いに行く途中なのだ。」

「妖精か、どんなヤツだ?」

 

ん?そこに食い付くのか?

 

「年齢は私の5倍のババアなのに、見た目は可愛らしい女の子、という詐欺のような姦しいレディだ。ところで、妖精を見た事があるのかね?」

 

妖精は珍しい生物ではないのだろうか?

あまり人前に姿を現す性格ではなさそうだが。

 

「ああ・・というか一匹捕まえている。」

 

よくあんな飛び回る知的生命体を捕獲出来たものだ。

魔法も使うのに危険ではないか。

いや、魔法の威力は大した事が無いので、人間でも捕まえる事が出来るのか・・。

 

しかし、問題がある。

捕まえているという事は、彼等のアジトに逃げられない様に監禁されてるという事だ。

ここで山賊が全員逮捕となり、アジトに戻れなくなれば、捕まえている妖精はどうなる?

 

妖精が何を摂取して生きているのか分からないが、過去私が会った妖精は、蜂蜜を狙って、巨大蜂にフルボッコにされかけていた残念な妖精がいたので、少なくとも蜂蜜は食べるのだろう。

食べる物が与えられなければ、囚われの妖精は餓死確定であろう。

 

アリサを知っている手前、その仲間が不遇な死に直面しているのを、見過ごすのは気がひける。


「それはいけない。アジトの場所を教えてくれるかね?逃がしてあげないと、死んでしまうだろう。」

「じゃぁ交換条件だ。俺を逃がせ。」

 

山賊の頭領は、交渉を仕掛けて来た。

 

「それは私が決める事ではないな。」

 

解放の決定権があるのは、今薬湯を部下に飲ませて回っている領主だ。

私には、山賊に関するあらゆる事に関係が無い。

領主も山賊も、私には真っ赤っかの他人だ。

 

私は単なる通りすがりの木だ。

 

彼等を行動不能にしたのは、私の目的の障害を排除したに過ぎない。

彼等が犯罪者なので、領主側に正義があると思い加勢した訳ではないのだ。

 

「妖精が餓死してもいいのか?」

「私が探している妖精と同一人物でなければ、私が積極的に関与するところではないな。」

 

偶然知ってしまった事だから、哀れに思い首を突っ込みかけたが、アリサ以外なら私が無理に出張る必要はない。

不憫には思うが、その妖精の運命だろう。

あくまで私の目的は、アリサにお礼をする事だ。

 

 

「探している妖精に名前はあるのか?」

「アリサという、フォレストフェアリーだが。」

 

「あー、えっと・・・ソイツなんだけどな。」

「ぶっ!」

 

まさかのご本人だった。


偶然にも妖精アリサの足跡を掴んだ社長。

果たして、山賊に捕まっている妖精は、本当にアリサなのか。

 

※今回からしばらくの間、アップ時間を朝6時に変更致します。

 

■感謝

またまた評価ポイントを入れて下さった親切な方がいらっしゃいました。

これ、ホントに嬉しいんですよね。

読んでいただいた上に、ひと手間をかけて下さるとは、天使か!?っていつも思います。

 

さて、この話を書いていたのは、実は2020年のGW。

新型コロナウイルスのお蔭で、休みなのに、どこにも行けないという悲劇に見舞われていました。

しかし、ずっと家に居て時間があったので、よっしゃ書いたれー!ってなりました。

お蔭で、全く暇をしなかったなぁ。

小説を書くのって、読むのと同じくらい時間潰しになりますね。

小説書いてコロナ対策ステイホームをしていた、作者の湯でした。

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