13.鑑定スキルさんにツッコミを Lv1
ある意味の登場人物?鑑定スキルさんの話(ギャグ回)です。
社長の渾身のツッコミをご堪能下さい。
私は旅立ちの前に、アリサに会った時に備え、鑑定スキルをLv3まで取得した。
その時の事を振り返る。
――――取得後
「さて、試しに使ってみようか。面白そうだしね。」
私は早速試しに目の前に落ちていた石を鑑定してみた。
まずはLv1だが、これまでの経験から、Lv1は効果が微妙で、他のスキルでもあまり使えないものが多いと判っている。
案の定、鑑定のLv1も使い物にならなかった。
得られた情報:「 石、硬い、多分食べられない 」
「 見 れ ば 分 か る わ ! 」
私は天に向かって咆えた。
この瞬間から私は、鑑定スキルを盛大に疑い始めた。
このスキル・・本当に大丈夫か?
Lv1だから期待はサラッサラしていなかったが、予想以上の駄目さ加減に呆れ返った。
ギャグとしか思えない結果を報告してきた。
とんでもないポンコツスキルである。
この調子では、Lv2も思いやられる・・。
このスキルで、相手のステータスなど、本当に見る事が出来るのだろうか?
不安が残った。
それ以上に、不満も残った。
貴重なスキルポイントを無駄遣いさせられた鬱憤を、ツッコミで晴らさせて貰う。
今から鑑定結果に盛大にクレーム申し立てる!
まず、「多分」とは何だ、「多分」とは!
結果報告に推測を混ぜるんじゃない。そんな確証の無い情報要らない!
テキトーか?「テキトー答えとけw」みたいな感覚なのか!?
普通は無機質で機械的に淡々と鑑定結果を報告するのが、スキルの機能じゃないのか?
随分と感覚的でファジーな回答まで用意できるんだな鑑定スキル!
「私、ファジー回路を備えてるんです。スゴイでしょ?ニコッ」
とでも言いたいのか?
前 世 の 世 界 で や れ !
今は要らん!
それから、もう一つ良いだろうか?
『食べられない』
コレである。
何で「可食性」という評価項目を敢えて報告した!?
要らないだろ!
石に対して誰が食欲を覚えるの!?誰も食わないよ!
何だその不必要な鑑定結果は!
そして、「多分食べられない」じゃない!
見 た ら わ か る ! 食 べ ら れ な い よ !
こんな石、確実に食べられないから!
そ ん な 事 も 判 ら な い の か 鑑 定 ス キ ル の ク セ に !
「はぁ・・はぁ・・」
鑑定Lv1の、あまりのポンコツ性能に、荒げる筈がない息を荒げてしまった。
興奮すると、植物でも息が切れるのか?
気を取り直して、次に鑑定Lv2を試す。
少しはマシになっている事を期待する。
土魔法なんて、Lv2はかなり使えるからね。あの土柱には世話になっている。
もしかすると鑑定も化けて、一気に有用性が上がるかもしれないのだ。
そう淡い願いを抱きながらLv2を取得。
再び同じ石を対象として、性能比較をしてみた。
得られた情報:「 微魔石、硬い、魔力微量、食べられない、使えない 」
食う・食わないから離れてくれないかな!?
石 に 対 し て そ ん な に 重 要 な 情 報 か な !?
しつこい可食性評価に脱力感が激しい。
何なのだ鑑定スキル。私と漫才がしたいのか?
それから、「 使 え な い 」 っ て 何 だ !
何に使えないのか判らん!
使 え な い の は お 前 だ !
あと、「硬い」の結果は微動だにしなかったな・・。
鑑定結果を見ていると、ストレスが溜まる。
何故結果に悪ふざけのようなギャグを織り交ぜてくるのだ。
そういうの要らないから!
しかし、流石はLv2。ツッコミどころは減って来た。
まずこの石が何なのか判る様になった。
種類なのか固有名詞なのか判らないが、情報としてこれは大きい。
他に魔力含有量も評価対象に加わった。表現は大雑把だが、マシな情報である。
そして、何に「使えない」のか判らないが、もう一つ評価対象が追加されているという事実。
これでレベルを上げれば、得られる情報の質と量が増えることが判明した。
だが現状では、まだまだガラクタスキルである。
やはりもう一段階くらいは上げておかないと、取得した意味が無い。
今のままでは使えば使う程ストレスを溜める、ストレス量産工場だった。
何だその嫌なスキル!
私は思い切って鑑定Lv3にした。
レベルを上げるか迷ったが、Lv2ではあまりに頼りない。
さて、Lv3の結果はいかほどだろうか?
得られた情報:「 微魔石、硬度:6、魔力:0、可食性:不可(毒無し)、錬成素材価値:無し、概要:欠けた泥岩、美味しくない 」
「 最 後 の が 要 ら な い ! 」
美味しさは求めてないのだが!
個人的な感想じゃないか!
「美味しくない」って、食ったのか?バカなの!?
何 で も 食 う の な 鑑 定 さ ん !
しかしまぁ、やっとまともな情報源になった。
恐らく評価項目は以下のようになっていると思われる。
対象の名称、特徴、含有魔力、可食性、錬成素材価値、概要
石→硬いという代表的な特色を評価し、それを硬度として数値化されるようになった。
含有魔力も数値化されている。これは分かり易い。
ゼロと評価されているのは、微量なので1にも満たないのだろう。
可食性に関しては、生きて行く為に必要な判断材料なので、優先的に含まれているのかもしれない。
食料が無い状況で、この項目があれば心強いだろう。
なるほど、それで「食べる」という項目があったのか。
Lv2での「使えない」という評価は、錬成素材として、という意味だったようだ。
最初からそう言って欲しい。
最後の概要だが、鑑定対象に対する概略の説明なのだろう。
レベルを上げれば、ここの情報量が増えそうだ。
あと平均売買価格など判れば有難いな。
とにかく最低限の情報は、鑑定によって得られるようになったのだった。
■
そして私は身の回りにある、あらゆる物を鑑定して回った。
鑑定Lv3発動!傍に生えてた草。
取得情報「雑草、薬効:1、魔力:0、可食性:可(毒無し)、錬成素材価値:無し、概要:世界中にある、美味しくない 」
味評価は変わらないのか!?
植物の場合は、硬度ではなく、薬効になるのだな。
対象物に合せて、評価項目が変わることが判った。
鑑定Lv3発動!落ちてた木の実。
取得情報「パイの実、薬効:0、魔力:1、可食性:不可(中毒)、錬成素材価値:有り得る、概要:たまに見かけるパイの木の実、ぱい揉みではない 」
『可食性:不可(中毒)』って、確かにパイの実、中毒性あるけど・・。
・・って、パイという名称の木があるのだな・・。
紛らわしい。
錬成素材価値:「有り得る」ってなんだ!
また予想か!
有るのか無いのかハッキリしろ!
そして問題の最後のヤツ。
ツッコむと調子に乗りそうなので、敢えて無視したが、もう我慢出来ん。
報告に下ネタを入れてくるという暴挙。
ロ ッ テ に 謝 れ !
『ぱい揉みではない』
見 れ ば 分 か る と 何 度 言 っ た ら 分 か る ん だ !
鑑定Lv3発動!川の近くに落ちてた黒い石。
取得情報「劣化火魔石、硬度:5、魔力:2、可食性:不可(切れ痔性)、錬成素材価値:有、概要:火魔法の触媒となる、食べますか? 」
遂 に 問 い か け て き た !
お前の仕事は答えることだろう!?
何で疑問を投げかける!?
何なの?
私のツッコミ待ちなの!?
要らないって言ってるだろそういうボケ!
食わないよ!
口がないから食えないけど、あっても絶対食べようと思わない!
切 れ 痔 に は な り た く な い し な !
よく見れば石炭っぽい。
この世界では火魔石と呼ぶのか?
こんな調子で、毎回ツッコミを入れていた。
こんなに精神が疲弊するスキルとは思わなかった。
すると、その評価結果は『リスト閲覧』に残る様になった。
ずっと謎だったリスト閲覧の使い道が判明。
記憶する必要が無いので、非常に便利で助かる。
重要なデータストレージとなった。
キーワードにも注釈が付いており、鑑定さえすれば、自動的にリストに記録される。
面白くなって、片っ端から鑑定を続けていたら、狭い「倒木日向」では、調べる物が無くなってしまった。
そして、いつまで待っても現れないアリサ。
私は「倒木日向」を出る事を決意するのだった。
鑑定スキル・・ある意味、独りぼっちの社長には、最強のパートナーかもしれません。
これからもちょいちょい鑑定スキルさんとのボケツッコミはありますよ。
またまた評価頂きましたん!
感謝!圧倒的感謝!
なんか少しずつ作品が成長してる感じで、これ毎回嬉しいですね。