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11.私の常識は非常識 ~衝撃の妖精結婚事情~

蜂にフルボッコにされそうになってた妖精を匿って、デカ過ぎるスズメバチの群れをカッコよく瞬殺。

光魔法Lv6を見た妖精は、『ライオネルト』と呼び驚いていた。

この世界について、何も知らない社長は、この妖精に色々と訊いてみる事にした。

そして、この世界の常識が判明する!(妖精視点)

私は改めて彼女に向き合った。

そして彼女をよく見る。

 

彼女は魔力が強いみたいだ。

魔力感知の視界だと、強い光で輪郭が判らない。

視覚情報補正を入れて、やっとその姿を確認できる。

 

大きさは細長いウイスキーのボトルくらい。

意外と大きい。妖精って、もっと小さいイメージだった。

 

人間の女性の様な姿で、スラッとしたスリムな体躯。

容姿は可愛らしく、整っている。

胸は・・触れないでおこう。地雷かもしれない。

 

洋服を着ている。

と言う事は、縫製技術や装飾の文化があるという事だ。

裸がデフォルトでなくて良かった。

 

服飾の美術センスは近代や現代に近い。

ゴテゴテしたゴシックな装飾より、シンプルでスッキリしたスタイルを是としているようだ。

剣と魔法の中世世界観ではないのか?

 

妖精らしい羽が背中に生えており、淡く光っていた。

身体と羽根の大きさの対比は1:1程度。

あのような比較的小さめな羽根で、しかも強度的にも弱そうな造りでは、物理的には空を飛べないであろう。

なるほど、物理的に重力に打ち勝ったり、揚力を利用して飛翔しているのではなく、魔力的に飛翔している模様だ。

 

他にも観察すると興味深い特徴は山盛りあるが、レディをジロジロ見るのはあまり行儀が良くないと思い自重する事とした。

 

 

そこで私は、彼女ともっとお話しが出来ないか確認をする。

 

 

「あー、キミ、済まないが時間はあるかね?」

「え?ん~、まぁあるけど?」

 

「ちょっと付き合って貰えないか?」

「何何?おじさん、ナンパしてんの~?」

 

ノリが軽いなぁ。

 

「ははは、ナンパではないが、私は世情に疎くてね。色々と世間の事を教えて貰えると嬉しいのだが。」

「え~?メンドくさーい。」

 

最近の若いのはスグこれだ。ウザい、キモイ、ダルイ、メンドクサイ。

 

だが私はこういう手合いには慣れている。

前世の社長時代、余所でハブられた色の濃い人材を多く引き取っていたからね。

 

最初は手を焼くが、彼等も好きでツンツンしてる訳ではないのだ。(好きでしていた者もいたが)

社会に適合出来ずに、他人を警戒したり、自分に自信が持てないだけなのである。

キチンと向かい合えば、いつか必ず心を開いてくれた。

そして、我が社の安月給にも文句を言わずついて来てくれたものだ。

 

「そこを何とか。少しだけお願いしたい。」

「ん~、もう仕方ないね。命の恩人だし、ちょっとだけなら付き合ってあげる!」

 

ほら、いい子だ。

 

「付き合ってくれる御礼がしたいのだが、私は何も持っていないんだ。済まないね。」

「別にいいよ。お話するだけなんでしょ?」

「有難い。」

 

 

「で、おじさん、名前何て言うの?」

 

「名前?」

「あ、そうか、無いよね?」

 

木だからか?

 

名前か・・。

前世の名前をここで出すのは違う気がする。

あれは親に貰ったものだ。

この世界には、私の両親は居ない。


「あったけど・・忘れた。」

 

私はそう答えてお茶を濁した。

 

「そう。じゃぁ、オジサンはオジサンね。アタシはアリサ。宜しく!」

「アリサか、宜しく頼むよ。」

 

 

こうして女三人集まらずとも、一人でも(かしま)しい妖精のアリサに、この世界の常識を教えて貰うことにした。

 

 

 

 

「じゃぁ何から知りたい?」

「そうだね。キミの種族は?」

 

訊きたい事は山ほどあるが、まずは手始めに簡単な質問から始めよう。

 

「アタシ?アタシは『フォレストフェアリー』だけど?」

 

なるほど、森の妖精か。分かり易い。

棲んでる土地が山ならマウンテンフェアリー、平原ならフィールドフェアリー、花畑ならフラワーフェアリーなのだろうか?

 

「キミはこの近くに住んでるのかい?」

「近くってほど近くはないけど、この『ガンプ大森林』の向こうの山の高原に住んでるよ。」

 

遠いじゃないか・・。

ところで、ここは『ガンプ大森林』という森なのか。

地名があると言う事は、何らかの用途や目的があり名打たれている証拠。

この世界にも知的生命体は、意外と多いかもしれない。

 

 

「ご両親は?」

「離婚した。」

「ぶっ!」

 

イキナリ俗な単語が出て来て吹いた。

 

「ちょっと、何?」

「結婚制度があるんだね?」

 

離婚があるなら、結婚もあるんだろう。

 

「うん、パパは今別の森に住んでて、私はママと一緒にいるの。」

「そうか、変な事を訊いてしまったね、申し訳ない。」

「別に変じゃないよ?離婚なんて普通じゃん。」

「普通なの?」

 

離婚が当たり前になってきた、現代社会のようだ。

 

「うん、子供が育ったら、普通離婚するじゃない?じゃないと、子供が増やせないよ。」

 

この娘の話を解釈すれば、どうやら結婚は子孫を残す為だけにするものらしい。

他に子孫を残したい場合は、取り敢えず離婚して、また別の者と結婚をする・・みたいな制度なのだろうか?

 

果たしてその認識で良いのか・・?

情報源が彼女だけなので、本当に正しい情報なのか判らない。

取り敢えず、鵜呑みにはせず、仮で認識しておこう。

 

「分かった。それとこの世界には、人間はいるのかい?」

「ニンゲン?」

 

あれ?言葉の意味が通じてない。

もしかして人間は居ないのか?

 

「ああ、キミのような容姿をしていて、背丈がそこの岩くらいの高さで、背中に羽根がなく、地上で暮らして、火や道具を使って文明を築いている動物だよ。」

 

「あ~『亜人族』ね。いるよ。」

「亜人族?」

 

人間とは違うのか?

 

「『鬼人』とか『猫人』とか『熊人』とか、色々種類が居るから、丸ごと含めて『亜人族』って呼んでるの。」

「なるほど。」

 

う~ん、亜人と聞くと、言葉のイメージから混血種みたいに聞こえる。

純粋な人間は居ないのか?

だが、実際には同じ人間で、見た目で区別され”呼び方が違うだけ”という可能性もある。

昔の外国人を知らない日本人が、漂着した白人種を「鬼」と表現したように。

やはり実際に見てみないと判らないな。

 

「彼等はどこに住んでるんだ?」

「北の森の外の『大草原』とか、東の『ドラム大河』の近くとか、あと南の『アルブ山脈』の麓にも大きな集落があるよ。」

 

アリサはこっち、あっち、と指を差していた。

実は北がどっちなのか、ずっと判らなかったのだ。

この世界には北極星は無いし、太陽が東から昇るとも限らない。

現在地も北半球なのか、南半球なのかも判らなかったので、これは有難い情報を得られた。

 

そして、多種族の集落や都市が、どちらの方角にあるのかも判明。

いずれもこの『ガンプ大森林』を抜けた所か。

そんな遠くまで行く事は無いだろうけど、知っておいて損は無かった。

 

 

「この森にも来たりするのかい?」

「あー、こんな深いところまでは、さすがに来ないんじゃない?」

 

どうやら大森林と呼ばれるだけあって、広大な森らしい。

しかも、この場所は中心部の深い位置にあるようだ。

 

「言葉は通じるのかな?」

「会う気?やめた方がいいよ、野蛮だから。」

 

アリサは知っているようだ。

 

「危険な奴等なのかい?」

「うん、好戦的で、自分さえ良ければいいみたいな迷惑なヤツ等よ。私達を捕まえに来たことがあるから知ってるの。」

 

妖精を捕まえる目的は何だろうな。

焼いて食っても美味そうには思えないが・・。

 

「悪いヤツなのだな。」

「そうよ。」

 

種族全員がそんな物騒な奴等なのかは判らない。

アリサが会ったという奴等は、山賊みたいな集団だったかもしれない。

 

 

「ところで、アリサは思念通話のスキルをどうやって身に付けたのかね?」

「あ、その話?なんかオジサンが言ってる方法と全然違うから腹立つんだけど、普通に練習よ、練習!」

 

その練習して覚えるというのが、普通じゃないと思うのだが・・。

 

「どうやって練習するんだい?」

「思念通話はフェアリー族の得意科目なの。小さい頃から、ずっと両親と会話して、やっと身に付くのよ。最初は親からの通話に頼って感覚を馴染ませて、少しずつ自分から発信できるようになるのよ。」

 

なんと、習得方法は地道な反復練習だった。

 

「それ以外に方法は?」

「無いよ!あったら知りたいんですけどー!」

 

だったら私のこのネットショッピング方式は何なのだろうか?

 

 

「『スキルポイント』って聞いた事あるかい?」

「何それ?おいしいの?」

 

食べ物じゃないのだけど。

 

ショックだ。

このゲームの様なシステムは、どうも私だけに適用されているらしい。

 

 

「アリサは他にどんな魔法が使えるの?」

「えっとぉ、中級風魔法の『フラッシュブレス』よ。スゴイでしょ、へへん♪」

 

アリサは得意気だったが、名称で言われても判らない。

 

「それはどういう魔法なんだい?」

「石とか、弓とか、トゲトゲとかを、その魔法に乗せて飛ばして威力上げるやつ。」

 

なるほど、直接効果がある攻撃魔法じゃないのか。

しかし、私が習得している風魔法Lv2では、そんな事は出来ない。

恐らく、風魔法Lv3以上の魔法なのだろう。

 

「それだけ?」

「むぅ、それどういう意味?嫌味なの?『ライオネルト』が使えるからって、嫌味なの!?」

 

アリサは馬鹿にされたと思って、プンプンしていた。

 

「違うんだ。アリサなら他にも習得していそうだったから、隠してるんじゃないか?って疑ってみたのだよ。」

「べ、別に隠してなんて無いわ。それで全部よ。ねえ、アタシってそんなに才能ありそうに見える?」

「ああ、知的なオーラっていうか、醸し出す雰囲気というか、ね?」

「えへへ~、そう?まぁね~?」

 

チョロい。

『フォレストフェアリー』チョレストチョロリーだ。

 

「『フラッシュブレス』か、強力そうだな。」

 

それより恐ろしい魔法を知っているが、(おだ)てておくに越したことはなさそうなので、尊敬の念を込めてそう言った。

 

「まぁね。使えるの同年代じゃアタシくらいだもん。」

 

更に胸を張るアリサ。

よし、チョロい。

 

「他の人は使えないのかい?」

「アタシより年上の人は何人か使えるけど、同年代にはかなり厳しいんじゃない?才能ってヤツ?アタシだって70年かかったんだもん。」

 

魔法って70年もかけて習得するものなのか!?

 

何故だ?あんなに手軽に取得できるのに、何故そんな遠回りをするのだ?

いや、逆か。

普通はそんな遠回りをしなければ、習得できないのだ。

 

一般的に、スキルはネットショッピングで買えない!

これが常識だと判明した。

 

彼女の口振りから察するに、やはり私の習得方法は特殊な例のようだ。

 

『フラッシュブレス』

私なら恐らく1年昼寝すれば習得できそうだ。

そんな事は口が裂けても言えなくなってしまった。

 

 

それより気になるが・・

 

「アリサって何歳なの?」

 

レディに年齢を訊いて良い世界なのだろうか?

 

「アタシの歳?103だけど?」

 

 

BBAだった。

 

前作でも妖精モドキのアンドロイド「アリー」が活躍しました。

殺戮妖精アリーという異名を持ってましたが・・。

 

一つ弁解したい、作者は妖精好きという訳ではありませんよ?

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