第三章 音楽談義(2)
「先生、昨日のニュースはご覧になりましたか?」
私がストローに口をつけるかつけないか、瓦木紗綾はそう切り出した。はて、昨日のニュースというと……ああ、そう言えば五反田のとあるアパートから首なし死体が見つかったっけ。その事件のことだろうか。
「ひょっとして君が関わってるのは、あの首無し殺人の事件かい?」
ぱぁっと紗綾の顔が明るくなった。
「ええ、そうです、そうです。先生、知ってましたか。それはよかった。知っているなら好都合です。でも確かニュースではそこまで詳しいことは伝えられなかったと思いますから、ちょっと重複するかもしれませんけど説明させてください。今日に至って分かったことも少し、これからすることの予備知識として知っておいてほしいんです」
「はぁ、確か……、バンドのボーカルが殺されたんだっけ。確か被害者は三条さんと言ったね」
「そう、それでメンバーへの聞き取りをしたら、被害者三条昭代には双子の姉晴代が居るという証言が出てきたんです。駅の花屋でバイトをしているという証言で、今日になって警察が調べたんですね。そしたら確かにその駅の花屋には、昭代によく似た晴代という女性が働いているとわかったんです。そして晴代は事件のあった日から無断欠勤を続けていると」
瓦木紗綾はそう言って、私に試すような瞳を向けてきた。私はオレンジジュースのコップを置くと、ウームと唸った。
「なるほど……。確かに双子だったらDNA鑑定での判別は難儀するな。それで、警察はその晴代の行方を?」
「ええ、そうです。それに晴代はいつもバイトの終わりに、売れ残った花を全部引き取っていたことまでわかったんです。それが現場に落ちていた沢山の花々と大体一致した」
「花々? なんだい、現場には花が散っていたのかい」
「ああ、そこは御存じなかったですか。そこまではニュースもまだ流さなかったんですね。ええ、そうなんです。現場は一面の花畑といいますか、たくさんの花が敷き詰められていたんです。そしてその真ん中に、花畑に眠る首なき姫君が。そしてその胸には一本の青い薔薇が置かれていたんですよ」
「青い薔薇……?」
「そう、そんな現場ですから、花屋がこの事件に関わっているんじゃないかと推測された。そこに行方不明の双子の姉、しかもそれが花屋に務めているとわかったんです」
「なるほど面白そうな事件だね。でも、それじゃあ、この事件もう片が付きそうなんだね」
私が事もなげにそういうと、瓦木紗綾は何がおかしいのかアッハッハと笑い出した。




