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薔薇と首  作者: 裃白沙
序 薔薇と首
1/18

薔薇と首

 昔々、とある国のお話。

 その国には、かわいいお姫様がいたそうだ。そのお姫様はとても愛され、可愛がられた。その国の人々もお姫様を愛し、誕生日には国中の家という家に花が咲いた。お姫様のもとには数え切れないほどの香しい花束が贈られたという。

 そのうち、お姫様は成長していった。かわいいお姫様は、世にも美しいお姫様に成長した。その国はいつしか花の国と呼ばれるようになり、風に乗って運ばれてくる芳香を他のどんな国も羨ましく思った。美しいお姫様のもとには、国中から花束が届いた。そして隣国だけじゃない、遠く離れた国からも色とりどりの花束が届いた。それぞれその豊かさを競うように、毎年その量を増やして花束が贈られた。

 ある日、お姫様はある国の王子様から結婚を申し出られた。

 美しいお姫様はかくして女王様になった。王子様は王様になって、花の国はますます美しく、甘い幸せの香りに包まれた。


 しかし、それをよく思わない人がいた。


 女の子は、お姫様に憧れていた。ずっと一緒にいた可愛いお姫様、でも、気づいたら二人の間には大きな距離ができてしまった。女の子はどうして? と思った。私も同じ女の子なのに、どうしてこんなに不幸せなの、私ももっともっとたくさんの花を贈られたかった。でも、それはいつまでたっても叶わなかった。お姫様が王子様と一緒になると、女の子はますます孤独になった。周りには綺麗な花もなく、枯れて打ち捨てられた花ばかりが積み重なっていた。

 女の子は女王様を呪った。この国の人々を恨んだ。あの時、お姫様と一緒に産まれた自分を呪った。枯れた花を握っては、崩れ落ちてゆくのを眺め、血をにじませて不幸を祈った。


 その国は悲しみに包まれた。女の子とお姫様は時を同じくして死んでしまった。二人の棺は、何もかも同じだった。女王様の棺も、女の子の棺も、花束でいっぱいだった。それは、今まで気がつけなかったことへの、今まで女の子を邪険にしていたことへの、せめてもの償いであった。

 二人の安らかに眠る顔は、誰にも見分けがつかなかった。


 昔々、とある国のおはなし。



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