序章 ジョン・ポール
賀東先生のコップクラフトに影響されて拙いながら書かせていただきました。読んでいただける方は亀更新になると思いますがどうぞよろしくお願いいたします。
とある異世界の荒野 早朝の時間帯
遠く山の合間から日が登って地平線の彼方まで広がる草原を照らし出し草原に引かれた一本の道を3両のSUVが駆け抜ける様子が顕となる。スモークガラスで覆われ車内の様子は外から見えることはない。しかし車列を追跡している者はその正体を既に見抜いていた。疾走する車列に付かず離れずで追い掛けるはUHー60ブラックホークヘリコプターの二機である。機体にはUNの文字とエンブレムが描かれており如何なる国家にも属していない事を示している。
《停止せよ!こちらは国連だ!直ちに停止せよ!停止しない場合は実力行使に移る!》
ヘリからスピーカーでの警告が発せられたが車列が止まる気配はまるで無い事を確認したブラックホークは機体に装備した機関銃で先頭車の数m先を横一線に銃撃で凪ぎ警告射撃を行う。並行してもう一機が高度を下げて車列に近づき機内の狙撃手が先頭車のボンネットに照準を絞る。ヘリからの警告射撃を受けて尚止まらない車列はしかし唐突に先頭車のボンネットから血飛沫の如く黒い液体を吹き出すと速度を落として煙を吐きながら道から外れて停車した。続く2両も銃撃され同じ道を辿った。高度を落としたブラックホークはもう一機の援護を受けつつそのまま停止した車列の傍に降り立つと機内から完全武装の兵士たちが躍り出て瞬く間に車両を囲むように展開する。彼らはライフルを油断なく車両に向けて構えつつ近づいていく。上空のヘリの援護を受けて車両の前まで近づくとSUVから何人かの男達が出てきた。手に銃を持っている者もいたが勝ち目が無いのは分かっているようですぐに撃ってくるような様子は無い。尤も手放す気も全く無いようで逃亡のタイミングを見計らっているようだった。だが誰もそんな真似を許すわけがない。特に今容疑者たちに銃を突きつけている特殊部隊員のように訓練された兵士たちに通じる手ではないのだ。
「動くな!銃を捨てろ!何言ってるかわかるな!?」
男たちは返事はしなかったが兵士達の殺気を前に銃を地面に置いた。そこで後方からUNマークの車両が列を成して到着すると降りてきた捜査官たちがSUV3両を臨検する。
容疑者の一部が喚いて動いたのを特殊部隊員たちが強引に組伏せると手錠で拘束する。それを皮切りに残りの容疑者も皆拘束され車両に詰め込まれる。それを尻目にSUVを臨検していた捜査官たちは二両目のSUVで目的を達成した。彼らが車両から引っ張り出したトランクケースに入っていたのは耳長の少女たち、その数6人。1週間前に誘拐された少女たちとの一致を確認した捜査官たちは解放した彼女たちをヘリに乗せて帰投の途に就く。この状況に加えて彼女たちの証言があれば人身売買で立件することが出来る。先に容疑者を積んで戻った車列を追ってブラックホークヘリが飛翔する。後には爆破処分されて黒こげのゴミと化した車3両の残骸だけが残されていた。
西暦2011年、地球の各地に突如として出現した門から異世界との邂逅は始まった。地球各地
に確認された65の門<ゲート>はそれぞれが別々の異世界へと繋がっていた。突然に起きた異世界と地球の邂逅は多くの交流、衝突、そして、犯罪を生んだ。2013年、国連は組織犯罪の異世界への拡大、そして異世界からの流入を阻止するべく国家の枠組みを越えた警察機構の創設に踏み切る。OtherUniversTrafficPoliceOrgnisation(OUTPO 外界交通監視警察機構)、世界中から人員と情報を集め、文字通り世界の枠を越え地球と異世界の両方で犯罪組織と戦いを続ける彼らを、人々はアウターポールと呼んだ。
2016年5月2日 地球 日本国静岡県御殿場市第8ゲート管理区
古代よりの霊峰にして日本国の陸の象徴である富士を仰ぐこの土地にこの第8ゲートが出現したのは2011年、最初のゲートの出現とほぼ同じタイミングだろうと云われている。
5年を経た今、ここは日本でないどころか地球ですらない、第8世界と呼ばれる異世界への玄関口となっていた。専らフジゲートと呼ばれるこの土地は国連事務局直轄の機関の基地となっており、この5年間絶えず第8世界と地球の交流と駆け引きの舞台となってきた。
そのフジゲート基地のヘリポートでジョン・ポール・トレンチは一人喜色の笑みを浮かべていた。その理由はたった今彼の視界に映った2機のブラックホークへリだった。53歳
という年齢とは裏腹に若々しい足取りで降り立つヘリに近寄るジョンの目の前に2機のヘリが降り立つ。二機のブラックホークヘリコプターから兵士たちが6人の少女たちを支えて降りてきた。ジョンが今回の作戦で望んだ通りの結果を持ち帰って今この場所に降り立った彼らは保護した少女たちを基地施設の中へと連れていく。その中からジョンの方へと一人の兵士が歩いてくる。
「よくやったケント。完璧だぞ。」
「情報が正確だったからな。おかげで作戦通りに行った。」
ケントと呼ばれた兵士はヘルメットを外してジョンに答えた。元イギリス海兵隊員のケント・ハワードは十数名からなるアウターポールのSWAT一個分隊、E9チームを率いるベテランのオペレーター(作戦要員)であり26歳とアウターポール全体でも若い指揮官だった。身長165cmの小柄な体躯からは窺えない強靭さと見た目以上の俊敏さを兼ね備えるエリート兵士はジョンに今回の作戦で押収したPDAを手渡す。標的の車両にあったもので中には犯罪の履歴が長々と綴られている。受けとったジョンはクリスマスプレゼントを受け取った子供のような笑顔で歩き出しケントも彼に続いた。出来るならこのまま作戦参加者全員で祝杯を挙げてもいいくらいだったが、ジョンにとってはここからが本番だった。今回得た成果を元手に更にその成果を拡大するのがアウターポール捜査官であるジョンの仕事である。ジョンはケント達部下を労いつつ捕らえた容疑者たちの資料に今一度眼を通した。
「やはりバモスの組織も関わっているな。」
「ああ、だが今回の標的はレイヤーワンじゃなかった。」
レイヤーワンとは最優先目標対象の事で目下ポール率いるチームが追いかけているレイヤーワンがバモス・カルロス・サンチェス。アメリカ合衆国フロリダ州の第16ゲートで密輸入業者として名を馳せた男で、自身のゲート犯罪グループを率いてアメリカ大陸の他にヨーロッパ、アフリカ等で活動し、約20箇所以上のゲートで密輸を中心とした組織犯罪に手を染めておりアウターポール内でも至急対処すべき問題としてジョンのチームを含め複数の捜査チームのレイヤーワンとなっている。
「奴は日本には来ていない。」
「分かるのか?」
「あいつが直接関わっているなら、俺たちが人質の輸送に気付くのはもう少し遅れたろうな。買い被りすぎと思うか?」
ケントへのジョンの問いは質問というにはその答えに確信のある言い方だった。
答えはノーなのだろう。それはケントにも分かった。
「正直俺じゃ判断がつかん。俺達はあんたらが捕まえてこいと言った奴らを見つけ出して連れ出してくることだけだからな。判断はそっちでしてくれ。ボス」
笑ってそう云うとケントは自分の装備を格納しにアウターポールの隊舎へと向かう部下たちに加わって行った。
『さてと、まずはお前さんから話を聞こうか。』
ジョン・ポールは狭く暗いコンテナハウスに入り扉を閉じると変声機で開口一番そう言ってパイプ椅子に腰かけた。座ったジョンと机を挟んで同じパイプ椅子に座らされている男は目隠しをされた状態でジョンの声に反応し俯いていた顔を上げる。
『悪いがサウンドオンリーだ。お前さんと話したい事は尽きないが時間が惜しい。これから質問することに正直に答えろ。そうすればこの星で然るべき裁判を受ける段取りが出来る。答えなければ、お前をゲートの先まで連れていくことになる。分かるな。』
ジョンが話しているのは国連とゲート先の世界とで交わされている協定についてだった。俗称としてレーニア協定と云われるそれにはゲート犯罪者を場合によっては被害者である異世界の政体へと引き渡す条項が定められている。異世界の過半が法治国家として未整備な現状もあり実行されるのは稀だが残虐かつ捜査に対し非協力的な犯罪者に対しては実行された例がいくらかあった。今回被害を受けた第8ゲート世界は、法治思想と裁判制度が存在する少数派だが、地球国家のそれと比べれば大分に前時代な代物であるので送られればこの男の運命は言うまでもない。このレーニア協定はゲート犯罪者の間でも有名なものなので今更この男に説明してやる必要性をジョンは認めなかったし男の方も分かっているのか無言でただ頷いている。この様子では資料通りにこいつも末端の末端なのだろうなと思ったジョンは早速尋問に取り掛かった。
『まず一つ、今回の誘拐計画はいつお前たちに持ち込まれた?』
「・・・二か月くらい前だった。」
『話を持ってきたやつについて知ってることを言え。全部だ。一つ残らず言え。』
「白人の男だ、色白で、北欧とか、ロシア人みたいなやつだった。」
『白人?名前は?』
「名前は分からない!でも電話口ではマリオとか言ってたから・・・イタリアの奴かもしれないくらいしか」
答えられない質問におびえるように語気が強くなる男を半眼で見つつジョンはメモにマリオと加えて質問を続ける。
「どこで会った?」
これについてはジョンはある程度目星がついている。捜査資料によればこの男のグループはテキサス州とメキシコの国境での密入国斡旋業者のパートタイマーで過去に二度国境警備隊と銃撃戦を演じている。末端ですらアメリカの警察組織相手こんな事が可能なのだから当然メキシコ国内では彼らのような無法者を止めるのは困難で、21世紀に入って尚も映画のマッドマックスのような混沌にある隣国の人間をジョンは軽蔑しきっていた。とはいえ彼の祖国も正直に言えばメキシコよりはまだマシというレベルの地域もあるのであまり口や態度に出せたものでもないのだが。
「メキシコシティにいるときに電話が来たんだ。それで2日後くらいに船に乗せられてフィリピンに、そっから先は、どうやって異世界に行ったのかわからない。」
ゲート犯罪にはよくあることで末端の連中はゲートの通過を目隠しした状態で通される。秘密が広まるのを防ぐためだが、それ以上に末端の連中は信用されていないからだ。この男のようにぺらぺら質問に答えるのだから当然といえば当然で、こいつらのようの小物にしても金が貰えれば知らなくていい秘密など知るだけ危険だと知っているので詮索しない。かくして捕まって吐かれても困らない手駒を整えるのがゲート犯罪組織の常だった。
『フィリピンのどのあたりだ?』
「パンパンガ州のどこかとしか分からない。目隠しを外された時に見えた地名がそれだった。」
これもジョンは知っていた。そもそも今回の件を摘発できたのはフィリピンで行われた犯罪組織拠点の制圧作戦によるものだった。アメリカとフィリピンの陸軍による合同作戦で制圧された拠点に隠されていたのは非常に小さいが未発見のゲートだった。時折見つかるこうしたゲートは大概が犯罪組織の手に落ちているもので、そうした闇ゲートを通じて犯罪組織は異世界へと手を伸ばしている。地球上で現在国連に管理されているゲートは65の大型のものに加えて部屋のドアくらいのサイズや車のガレージくらいの大きさのものが23個ほど、そして未発見の闇ゲートは推定に過ぎないが管理されているゲートとほぼ同数と見積もられていた。
『そうか、他に実行メンバーはいたのか?』
「俺たちだけだ・・・・いや、二人途中で別れた。」
『マリオか?』
「そうだ、話を持ってきた白人と、アジア人だ。何語か分からなかったけど、ミンダ何とかって言ってたのと、サマーって単語だけは聞き取れた。」
アジア人、ミンダとサマー・・・ようやく新しい情報が出たなとジョンは次の質問に移った。
10分の尋問でジョンは今回の件の報告書を仕上げられるくらいの情報は入手することが出来た。
だが、
『次のやつを連れてこい。』
ジョンの仕事はあと十数人分あるのだった。
ジョンが尋問を終えて戻ると彼のチームの指揮所兼待機場所となっている車両倉庫にはケント達E9が集まっていた。彼らを見渡して口を開いた。
「皆ひとまずご苦労だった。といいつつ済まないが次の仕事だ。諸君が捕まえた連中から新しい情報が出てきた。」
「いい加減な情報じゃなくて?」
茶化すようなケントの声
「奴らがウソを吐いていたらエルフの土地で土に返ってもらう予定だ。どっちに転んでも美味しいだろ?」
ジョンは本気で言っているんだろうなとケントを始めチームの全員が思った。思うだけだが。
「でその新しい情報ってのは?」
「順を追って話そう。まず今回の件には俺たちが追っているラテン男とは別の連中が関与してる。今回の犯行を指揮していたと思われる白人とアジア人がいる。そいつらから当たろう。奴らを尋問して得た特徴をまとめて、本部に照会を取ってみたら面白い顔が出てきた。まず一人目、サミール・バレンタイン。二人目、マオ・カウルーン」
「・・・もしかして、ベトレイヤーズの?」
ケントの言葉にジョンは口角を上げて頷いた。
「その通り、元同業者だ。」
アウターポール捜査官はゲート犯罪に関して大きな裁量権を持つが、時折その裁量を悪用して裁くべきゲート犯罪に自ら加担し利益を貪る輩が出現する、元アウターポールの裏切り者のゲート犯罪者、そうした者は一般にベトレイヤーズという直球そのものな名前で呼ばれ、その優先度はゲート犯罪者の中でもトップクラスのものとなる。
「有名なのか?」
E9チームの狙撃手であるウィリアムがケントとジョンを見やって尋ねる。
「捜査官時代からのコンビで揃って裏切った奴らさ。会ったことはないが世界中で名前は聞く。」
「4年前にゲート犯罪に手を染めて行方を晦まして以来少なくとも7つの異世界で悪行を働いてる・・とされている。2年前に一度だけフランス オルレアンの第4ゲートで国家憲兵隊とハリウッド映画の真似事をして以来公的機関のマークに一切引っかかっていなかったが、まだ廃業してはいなかったわけだ。」
「バモスと関わりが?」
「あると見るべきだ。それもかなり前から」
ジョンはそう言って手元のコーヒーを一口飲んで次の仕事の説明に入った。
「諸君、次の行先はフィリピンだ。今回得た情報を統合するなら奴らはメキシコとフィリピンのゲート犯罪組織に関わっている。そして先日抑えたフィリピンのブラックゲートの他に奴らはアジア地域、おそらくはフィリピン国内にゲートをまだ抱えてる。ついさっきフィリピン海軍に問い合わせたら一昨日にフィリピンのサマール沖の領海で海軍の魚雷艇が密漁船と思われる船と交戦してる。逃げられたそうだ。」
「海軍相手に逃げおおせるってやつら駆逐艦でも持ち出したのか?」
「そこまでじゃないが、ガンシップだ。旧式だがハインド。ビッグターゲットだな。哨戒に就いていたフィリピンの魚雷艇が生き残れたのは奴らが足止めだけに徹したからだろう。国家との戦い方を心得てる。余裕のある組織なのは間違いないが現在捜査線上に上がっているのはイスラム進歩主義の過激派組織とフィリピン革命解放軍の下部組織といまいち候補がパッとしない。ただCIAからの情報によればこいつらは先月に3機のハインドを調達していた痕跡があるそうだ。関りはあるかもしれん。」
「それを掴んでおいてCIAのやつら 事が起こるまで放置してたのか?情報を抱えたまま?」
ケントの部下であるジョージが心底不思議そうな態度で言った。
「やつらにヘリを調達した人物が問題だったそうだ。マーティン・オルロフ。フリーの武器商人だが色んなとこに顔の利く奴でな。こいつがCIAの外部協力者でアメリカ国籍、おまけにやつらの標的が合衆国以外のどこか、という所までCIAの奴ら掴んでたそうでな。それもあって手出し無用の案件と化していたらしい。」
どうせ意図して撒かれた情報だろうが、と言外に渋い表情を浮かべるジョンの口調には呆れた様子が滲んでいたが。今現在は米国に限らず国家の情報機関に対して一昔前のような火遊びも辞さないアグレッシブな姿勢は最早期待できないご時世であり、こういったことは決して珍しいことでも無かった。特にゲートに関する情報についてはゲートへの特定の国家の関与を禁止する協定の存在もあって情報の操作はおろか収集でさえ碌に行われない。ロシアや中国のような強権的な政権の国でさえ国内のゲート管理区に連絡員を常駐させる程度に留まっている。それほどにゲート関連の情報は国家の耳目から遠ざけられていた。そしてそれ以前の情勢としてかつて世界中を自分の庭同然に嗅ぎ回り荒らして回った列強各国のインテリジェンスコミュニティーは今や民間の情報産業に大きく水を開けられてしまっている。民主主義国家では冷戦時代のような秘密作戦は政権にとって致命的なスキャンダルとなるし、非民主主義的な国家にあってさえも主人に内緒で事を進め、挙句に粗相をするような犬は煙たがられる時勢の中で国家の情報機関は軍の情報部のような一部を除き最盛期を終えて衰退期に入っていた。そしてそんな彼らに取って代わったのが民間の企業、或いは個人の情報戦争屋たちだった。単体では国家機関と比べて小規模であったが、情報技術が発達し世界中と端末一つで繋がれる現代ではそれは全く弱さではなかった。国家機関のような手続きや制約に縛られることのない彼らは仕事の内容に応じて迅速かつ臨機応変に世界中とネットワークを構築し情報を手に入れる。その情報を用いてどうするかは顧客次第で、武力が必要なら提携する民間警備会社に情報を託して顧客と繋げれば良いし情報操作を行うならPR会社に繋げばいい。それら全てを単独でやる総合情報サービスを行う企業もある。情報産業の分野はかつてのインフラ関連と並んでさらに「民営化された諜報戦」という一昔前の娯楽小説で描かれたような産業分野を確立しつつあった。そしてそれはゲート犯罪においても同様で、今やアウターポールが世界各国に置いている情報源の8割が民間の情報戦争屋である。
ジョンとしてはその現状に少々思うところがあったが一介の捜査官にどうこう出来る話ではない。とコーヒーをもう一口飲んでいる所へケントが尋ねた。
「で、そのハインドはどこへ消えたんで?」
「フィリピン海軍の言い分を信じるならば公海へと出ている。」
ジョンとしては間違った情報だと直感していたが、その直感以外の根拠が乏しかった。しかしながら部下であるE9だけなら彼の直感が根拠でも自分の裁量で動かすことが出来る。ひとまずはチームでフィリピンに入りたかった。
「出てないと?」
ケントが心底楽しそうに聞いてくるのをジョンもまた楽しげに応じる。
「絶対に出てない。まだ奴らはフィリピンのどこかの島にいる。」
根拠はわずかな推測と直感だったがジョンの勘働きをよく知るE9の面々から反論は出ない。根拠の有無がどうあれ自分たちにはどこへ行ったかなど検討が立たないのだ。ならば信の置けるリーダーの直感に従う方がいくらもマシな選択だろう。チームの面々が思うことと云えばフィリピンに行く前にせっかく来た日本で観光が出来ないかという事くらいのものだった。
フィリピン行きはその日の内に決まり彼らは米軍基地から輸送機でフィリピンへ飛んだ。
読んでいただき本当にありがとうございます。次もノロノロとですが進めていきますのでどうぞよろしくお願いいたします。