ガーとチョーの一日
ガーとチョーは王の菜園で飼育されている、白と黒のガチョウである。
リュシアンが聖誕祭の丸焼き用にと、卵から育てた。
だが、リュシアンに懐いている様子を見たコンスタンタンが、丸焼き計画を反対。
以降は王の菜園の虫や雑草を食べる益鳥として、日々奮闘していた。
そんなガーとチョーには、王の菜園の片隅に小屋が与えられた。
他の家畜や家禽はこの小屋で飼育されていない、ガーとチョーだけのマイホームである。夜はここで、スヤスヤと眠っているのだ。
朝になると、農業従事者がガーとチョーのマイホームの扉を開く。
もちろん、ガーとチョーは起きていた。
挨拶代わりにガアガア鳴くと、「おお、今日も元気だなあ」と返してくれる。
マイホームから飛び出したガーとチョーが真っ先に向かったのは、王の菜園から少しだけ離れた、アランブール伯爵家の敷地にある池。
ガーとチョーのために、コンスタンタンが掘ったのだ。
ガアガアグワグワ鳴きながら泳いでいると、リュシアンが通りかかった。
『クワ~~~~~~~!!』
ガーとチョーは甘い声で鳴き、リュシアンのほうへと駆け寄る。
『クワクワクワ!』
「あらあら、ガーとチョーではありませんか。おはようございます」
『クワ~~~』
ガーとチョーはリュシアンを母親のように慕っているのだ。
クワクワという声も、リュシアンに向かってくるときにしか鳴かない。
「今日は、キャベツの収穫をするのですよ」
『クワクワ!』
そこから、ガーとチョーはリュシアンの騎士のごとく、付き添って歩く。
リュシアンに下心を抱いて近づくような男が現れたら、全力で攻撃するのだった。
「どわーーーー!!」
今日も、リュシアンに近づこうとした男が、ガーとチョーによって撃退される。
リュシアンに声をかけようと目論むのは、王城からやってくる文官だったり、取り引きを行う商人だったり。
下心があって近づいたというのもあり、被害届は提出されない。
今日もリュシアンを守るために戦ったと、ガーとチョーは誇らしい気持ちでいた。
畑の野菜に付く虫をはんでいると、コンスタンタンが通りかかる。
ガーとチョーは挨拶した。
『グワ!!』
「ガーとチョーか」
コンスタンタンはしゃがみ込み、目を細めてガーとチョーを見つめる。
彼はリュシアンに好意を寄せる者のひとりであり、最初は敵対心を抱いていた。
しかし、コンスタンタンは他の男共とは違ったのだ。
まず、ガーとチョーのために、休日を潰して池を掘ってくれた。
それから、マイホームを作るように命じたのも、彼である。
また、他の男共と違い、リュシアンに対していやらしい視線を向けなかった。
ロイクールに売り飛ばされたときも、颯爽と助けてくれた。
ガーとチョーは、リュシアンにはコンスタンタンしかいないと認めている。
だから、他の人よりは優しく接してあげるのだ。
コンスタンタンの傍に寄ったガーとチョーは、お尻を向けて「撫でてもいいぞ!」と尻尾を振る。
コンスタンタンは「ふはっ」と噴きだしつつも、ガーとチョーを優しく撫でる。
ガーとチョーは、人知れずうっとりしていた。このコンスタンタンという男、撫で方が超絶に上手いのだ。
あの凶暴なリュシアンの猟犬も、コンスタンタンに撫でられると愛玩犬のように「くうん」と鳴くほどである。
騎士にしておくのはもったいない。そんなことを考えるガーとチョーであった。
お昼になると、ガーとチョーは一旦小屋に戻り、用意されていた食事を食べる。
畑で虫や雑草を食べるものの、与えられた食事は別腹なのだ。
鶏の絵が描かれた食事の袋は気になるものの、これがまた美味い。
おいしい、おいしいと言いながら平らげる。
昼食後は池で遊んだあと、お昼寝をする。
日当たりのよい場所で、羽をじっくり乾かすのだ。
夕方からは、王の菜園を巡回する。怪しい奴がいれば、嘴で突いてやるのだ。
太陽が沈みかけると、リュシアンがガーとチョーの名前を呼ぶ。
優しく抱き上げ、マイホームまで連れ帰ってくれるのだ。
この時間帯になると、マイホームはきれいに清掃されている。
太陽の匂いがする藁の上に横たわり、眠るのだった。
以上が、ガーとチョーの一日である。




