三話 翌日の朝、思い出す過去
「おはよー。」
「おはよう…。」
今日の紗雪は元気がない。
それは多分、昨日の大輝とのことがあったからだと思う。
「紗雪、今日一緒に学校休まない?」
「え?」
私の言葉を聞いた紗雪はきょとんとした。
「だって、昨日大輝がぜーんぶ丁寧に警告してくれた通りに考えてみるとさ、刺客はすぐそこまで迫ってるんでしょ?もしかしたら生徒の中に刺客が紛れ込んでいるかもしれないってことだよ。そんな危ない所にはいけないでしょ?」
「うん…。」
面白いジョークのつもりで言ったのに、紗雪の顔は恐怖に怯えていた。
「ねえ、紗雪。」
「…なに?」
「まずさ、相手がどんななのか、調べてみない?」
私は出来るだけ明るい声で言った。
もちろん、私は『裏社会』なんてドラマの中だけだと思ってるから、大輝の話は全くの嘘だと思う。紗雪も、こんなに明るい私を見れば、この話も嘘だと思ってくれるだろう。
でも、
「私、知ってるの…。」
「はい?」
あまりにも予想外な一言。
「どういうこと?」
ピーンポーン
その時、突然家のチャイムが鳴った。こんな朝早くから誰だろう。
玄関へ行こうとしたその時、
「だめっ!」
紗雪が後ろから飛びついてきた。
「ええっ!」
驚いて転んでしまった。
「どうしたの、紗雪!」
「もしかしたら裏社会の刺客かも知れないじゃん!」
「そんなことある訳ないじゃん!」
私は大笑いしてしまった。
紗雪を押しのけて玄関を開けた。
「宅急便でーす。」
やっぱり、刺客なんかじゃなかった。
「ありがとうございます。」
お礼を言って荷物を受け取った。
そして、玄関の扉を閉める。
「ほら、大丈夫でしょ?」
私は少し怖かったが、何とか笑って見せた。
「何か頼んだっけ?」
紗雪はまだ警戒している様子だ。
「多分、靴だと思う。ほら、靴がボロボロになっちゃったからって頼んだじゃん。」
それを聞いた紗雪は、やっと安心した様子だ。
でも、こんな小さいダンボールに靴って入るのかな。
これを口にしたら、きっと紗雪はまた騒ぎ出すだろう。
とりあえず、開けてみることにした。
ダンボールをを開けると、一枚の新聞が入っていた。
「ん?」
首をかしげていると、紗雪がこちらに向かってきた。
「どうしたの?」
紗雪は一枚の新聞を手に取って裏返した。その途端、紗雪の動きが止まった。
「紗雪?どうかした?」
聞いても返事が帰ってこない。
私は、固まった紗雪の手から新聞を取った。
見ると、そこには、
【あやめ孤児院 謎の爆破 死者二十人】
と書いていた。
私はその記事を見て、言葉を失った。
私たちが、必死に忘れようとしていた『あの事件』だ。