エピローグ
エピローグ
翌日の朝。
「おはよー。」
あくびと共に言った「おはよう。」はほぼあくびだった。
こんなこと、前にもあったような気がするな。
「おはよ。」
「おはようさん。」
紗雪と大輝はもう先に席についていた。
「というか、この三人だけで食べていい部屋とか超良いね。」
紗雪はぐるっと部屋を見渡した。
「まあ、あと百部屋くらい使ってないとか佳弥さんが言っていたような。」
「まじ!?俺、そこ全部使っていいかな。」
「ダメに決まってんでしょ!」
紗雪は大輝を叩いた。
「失礼します。」
その時、襖が開いて、藍子さんが入ってきた。
「今日の朝ご飯をお持ちしました。」
藍子さんと何人かの女の人が三人分の朝ご飯を運んできてくれた。
「あざーす。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます!」
私達はひとりひとりお礼を言った。
「では、ごゆっくり。」
女の人達は上品に襖を閉めて、部屋を後にした。
「私達って、本当にこれからここに住んでもいいの?」
紗雪が再確認してきた。
「もちのろんさ!というか、私がお願いしたらあっさりオッケーだったんだよ!」
「やったぜ。」
大輝はガッツポーズをした。
「そういえば、ネーヴェってどうなったの?」
私は気になって紗雪に聞いた。
「なんか、天馬誠の部下たち、ほとんどネーヴェから離れていったそうだよ。残ったのは側近の部下だけだって佳弥さんが言ってた。」
「やっぱり、ネーヴェの情報は紗雪に教えるのな。」
「まあ、私はもうネーヴェに関わるつもりなんて一切ないけどね。」
「そういえば、将也君は!?」
「将也君、無事みたい!佳弥さんが私に教えてくれた。将也君も天馬誠から離れて、普通の社会人になるとかなんとか。今度、佳弥さんが居場所を突き止めてくれるらしいから、みんなで会いに行こうよ。」
「そうだね。」
そこで私は、あることを思いだした。
紗雪が止まった時の中でも動けた理由。
「紗雪、紗雪って実はちょっと魔力あるらしいよ。」
「そうなの!?」
紗雪は椅子から立ち上がった。
「うん。ネーヴェさんの記憶に行ったとき、紗雪の潜在意識が魔力の存在を思い出して、それから紗雪には私の時間を止める能力が効かなくなったんだってさ。」
「なんで?」
「能力がある人同士だと、効力が打ち消されるとかなんとか…。」
佳弥さんに聞いたことを、そのまま紗雪に言った。
「お前ら、そんな話は後にしてよお、そろそろ食べようぜ。朝から刺身はワクワクが止まらない。」
「そうだね。そういえば、私は今まで毎朝、紗雪の特製朝ご飯だったんだよね…。」
「なにそれ!美和、美味しいって言ってたじゃん!」
紗雪は再び椅子から立ち上がった。
「紗雪、どんなの作ってたんだ?」
「ブロッコリーマフィン。」
私は即答した。
「ぶはっ!」
それ聞いた瞬間、大輝は大笑いし始めた。
「それ、俺も食べてみたい!」
「もう!二人ともバカにしないでよ!」
「失礼します。」
その時、襖が開いた。
「楽しくお食事しているところ申し訳ないのですが、今日のご予定を…。」
入ってきたのは佳弥さんだった。
「大輝さんと紗雪さんは特に予定はございません。美和さんはこれから毎日、『水篠家を引っ張っていくためのお勉強』をするので、私と一緒に頑張りましょうね!」
佳弥さんは満面の笑みで言ってきた。
「毎日!?」
私は驚きとともにため息をついた。
「頑張れ、美和。私と大輝は気ままに過ごすから。」
紗雪は親指を立てた。
「まあ、今の美和が水篠家を引っ張っていったら大変なことになりそうだもんな。」
大輝も親指を立てた。
「もう!二人とも!」
私は大輝と紗雪を追いかけ回した。
紗雪も大輝も大笑い。
私はふと、紗雪の笑顔を見た。
その笑顔はまるで、冷たい雪が温かく笑っているようだった。
終わり
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