コアルーム
コアルーム。ダンジョンの中に存在する何かを媒体に異空間を作りその中にダンジョンマスター専用の部屋。その媒体の総称。
コアルームとなった媒体はダンジョンコアと呼ばれるようになり、それを破壊されるとダンジョンの機能が一時的に停止してしまうらしい。
「でも何で今更?もっと速く教えてくれりゃ……」
「すいません、忘れてました。自分の部屋をつく……るダンジョンマスターも多いので」
まあ機能を一時停止してしまう要因を作る理由はないからな。隠れるところがない初期ならともかく、ある程度領地を広げたら必要ないか。
「俺とかぶっちゃけ木に住めばいいしな。リリィは普通に寝てたし……布団でも出そうか?」
「必要ありません」
さいで……。
リリィは当初は洞窟の壁により掛かるように寝ており、冒険者が来ていた頃は木の上で枝に腰掛け寝ずにずっと監視していた。最近では動物の毛皮で造ったベッドで寝ている。
「ちなみにコアルームに保管している間はCPを消費しません。便利ですよ」
「便利だな」
じゃあダンジョンコアを作るか。
「まずはダンジョンコアにしたい物に触れ、そこからメニューを開いてください。『ルーム作成』が追加されているはずです」
物、か……どれにしよう。それこそその辺の石でも良いんだろうが……あ。
「魔剣はどうだ?」
「成る程。確かにAランクアイテムですし、耐久値には期待できますね。それに折角の魔剣をわざわざ破壊しようとする者もいないでしょう」
ダンジョンコアは魔力を持っている怪しい物として判別されるらしい。元々魔力を持つ魔剣なら疑われにくいはずだ。
というわけでアイテムカードから魔剣を顕現して、リリィに洞窟の奥に突き刺してもらう。
早速触れ、メニューを開くと確かに『ルーム作成』の項目があった。脳内でクリックすると『YES/NO』という文字が出てきたのでYESをクリック。
パソコンでよく見るバーが現れ左から右に向かって青く染まっていく。やがて消えた。
「……これで入れるんだよな?」
前に体重をかけると顔が剣に沈み、真っ白な空間が見えた。リリィが俺を抱えると片手を柄の先端に置く。
カッ!と光り俺達は真っ白な空間にいた。
「ここがコアルームか……んじゃさっそく」
「はい…」
リリィがカードを放るとカードがそれぞれの色に光り輝きモンスターが現れる。百足とドラゴンが融合したような黒い巨大な虫、スコロペンドラゴン。
黒色の体毛を生やした狼の顔をした人型のモンスター、ヴェアウルフ。
貴族風の豪華でいて悪趣味でない服を着た金髪の男性、ハイヴァンパイア。
短い体毛が生えた巨大な蜘蛛、ビックスパイダー。
ピンク色の液体がまるで蛸のような形を取ったテンタクルスライム。
女性の上半身に蛇の下半身を持つラミア。
「「「参上奉りました我らの王よ」」」
『ギチチチチチィィ』
『キチキチ』
『…………』
俺の前に跪く一同。
俺が死ぬと消滅するから従ってくれてんのかね?俺って最弱種族だし。
「…………」
「あ、えっと……俺がここのダンジョンマスターだ。よろしく」
リリィに催促され名乗る。しかし顔を上げない。
「えっと……楽にしてくれ」
「おう!やー、面倒な儀式だよなこれ!よろしく頼むぜボス!」
「口を慎めケダモノ風情が。王の対して無礼だぞ」
「ああん?やんのか虻蚊野郎」
ヴェアウルフがチャラい感じで顔を上げるとハイヴァンパイアがギロリとヴェアウルフを睨む。
「やめなさい二人とも。王の御前よ」
「「………」」
ラミアの声に二人は黙り込んだ。何か此奴等、忠誠心高くない?
「眷属とは一部例外を除きこんなものです。まあ、時が経てば植え付けられた忠誠心は消えますがそれまでに主に相応しいと思わせる事ですね。まあどのみち眷属はダンジョンマスターを傷つけることは出来ませんが」
忠誠心はあるがそれは偽りの物。本物の忠誠心は自分で手に入れろってことね。上等。
「で、王よ。我々は貴方をなんとお呼びすれば?」
「………ん?」
「「「ん?」」」
ラミアの言葉に固まる俺。そういや、俺名前なんだっけ?
「………リリィ?」
「覚えてないのですか?人の頃の名を……」
覚えてない。多分消されている。前世の記憶を探っても俺の知人や家族が俺をどう呼んでいたか思い出せない。
そうだ、名前を決めよう。
魔蟲王 DL5 Lv8 魔結晶0
HP 58/58
MP 45/45
CP 最大10524
DP 2712