ダンジョン増築
「うはは!速い、速いぞ!」
カサササ!と高速で移動する俺の新たな足、ブラックプレート。名前の通り黒く平べったい、犬ほどの大きさの………ゴキブリだ。
忌避感はあんまない。すばしっこく、かつ『騎馬』というスキルを持っていて乗った者とステータスを共有するらしい。これで踏まれただけで死ぬこともなくなった。
「いやー、転成してから速く動けたことないからな。新鮮だ。ありがとなゴキ」
『キー!』
ちなみにリリィは苦手なのか常に距離を取り、かつ浄化の魔法を使ってから俺に近づくようになった。
青虫は平気なのにゴキブリは苦手らしい。すごいのにブラックプレート。此奴等繁殖するんだぞ?しかも繁殖した子はダンジョン眷属扱いでもCPを消費しないという。さらに同じ虫だから消費CPは本来の半分の10ですむらしい。
「さて、残ったDP1067をどう使うべきだと思う?」
「ガチャはどうなってます?」
「シルバーガチャってのが解放された。一回100CP、10連で900」
「………なら、陣地を増やしましょう」
「ん?」
「増やす?買うのか?」
「いえ、周辺の森をそのままダンジョン陣地にします。野生の動物も居ますし、丁度良いかと。原生植物は消費CPに含まれずむしろ侵入者扱いでCPを稼げます。少ないですが……DPは樹木10本で1ですね」
植物だって生き物だもんな。しかしひょっとして、眷属も眷属扱いしなければCPを消費しないんじゃ……。
「はい。大抵の中位以上のダンジョンは眷属登録されていない魔物を放し飼いにしてCPを補ってます。マスターはCPだけなら中位に位置しますし、そのような方法を採ってはいかがですか?ダンジョン内なら進入した者の位置も解りますし」
「でもダンジョンの位置も、人間は解るんだろ?」
そうじゃなきゃこの前みたいにあんなに速くダンジョンの調査が来るわけがない。
「彼等が解るのはダンジョンの出現だけです。預言者が行うんです。まあその預言者も………」
と、遠い目をしながらはぁ、とため息を吐くリリィ。預言者もやっくん関係なんだろうか?だとしたらやっくんの目的って何だ?
「と、話しすぎましたね。100×100の10000平方メートルで100CPです。一度に買ってしまい、後は放置をおすすめします。暫くは原生生物で稼いでから罠や道などを造りましょう。ああ、餌となる宝なども必要ですね」
「取り合えずは?」
「800DP程使い土地を増やしましょう」
元々あった100×100メートルの10000平方メートルを八つダンジョンの周りに囲うように購入して、今は縦横300メートルの90000平方メートルのダンジョンになった。
「………あんま溜まんない」
いやまあ、そこまで広くないもんなこれ。時折野生のモンスターが紛れ込んでくるぐらいだ。つーか野生のいるのか、ダンジョンから生まれてくるのに。ああ、捨てられるんだっけ?それの子孫か?
「他にも消滅したダンジョンの生き残りとかですね。まれにですがダンジョンが消滅しても生き残るモンスターがおり、外で繁殖するんですよ」
「あ、おかえり。また大物だな」
と、そこへフレイムボアという燃えた猪を抱えたリリィが戻ってきた。
ゴキリと首の骨をはずし殺す。DPとCPが入った。あ、新しい魔結晶。
周辺のモンスターを連れてきて殺す。これが最近の日課だ。リリィのな。俺弱いもん。まあ眷属が殺すと経験値が反映されるからレベルは上がってるんだけどな。それでもスライムと互角に戦える程度だ。
「それと、どうぞ」
と、リリィは林檎を差し出してくる。この辺りに群生していたらしく、最近の俺の食事だ。シャリシャリと食べていく。芋虫の顎の力って意外と凄いんだ。芯や種まで噛み砕ける。
「そういやさっき待ってる間知ったんだが、敵味方の死は魔結晶会得に関係ないと思ってたけど繁殖が売り系眷属の子を俺らが殺すのは駄目らしい。効率的だと思ったのに」
「………そうですか。そういえば、今日のログインボーナスは?」
「魔結晶×5」
「では45ですね」
「44だぞ?」
「私に渡した一つを使いましょう」
と、リリィは魔結晶を渡してきた。緊急時に使うように渡していた物だ。
「それはお前に──」
「はい。私の物です。どう使おうと私の勝手でしょう?」
「……………そういうなら」
さっそく10連ガチャを。引いてみるか。
魔法陣が現れ虹色のやっくん像が現れる。相変わらず壊したくなる造形だ。
「相変わらず壊したくなる造形ですね」
「言っちゃったよこの子」
やっくん像はポーシングを取りながら青く輝き口からカードを吐き出す。青いモンスターカードが一枚。スキルカードが1枚。金色のモンスターカードが5枚。アイテムカードが3枚。スキルカードが1枚。
Sランクのモンスターとスキル、Aのモンスター、スキル、アイテムが出たのか。DPカードとか欲しかったんだけどな。
「アイテムはハイポーション2と火の魔剣。モンスターはヴェアウルフ、ハイヴァンパイア、ビックスパイダー、テンタクルスライム、ラミアですか。スキルは……弱点無効」
Sランクを後回しにAランクのカードを眺めていくリリィ。時折頭を押さえている。まあAランクばっかだもんね。しかもこの後Sランクが控えてるんだ。
「残機Lv1……また珍しいのが」
「どんなの?」
「体力が一度0になっても1日のうち一度だけ10%まで回復して復活するスキルです。Lv2なら20%で1日2回、と増えていきます」
そりゃ良い。一度だけでも死なずに済むとか結構チートなスキルじゃないか。さすがS。SSスキルとかその内当たらないかな~。
「Sランクモンスターは………マスター、貴方本当に運はいいですね。スコロペンドラゴンですよ」
「スコロペンドラゴン?」
カードに描かれているのは黒く硬そうな体を持った百足だ。ただし翼が生えており、顔だって爬虫類と虫を合わせたような感じだ。翼も虫の羽のように半透明ではなく蝙蝠の翼を甲殻で覆ったような感じ……。
百足とドラゴンを合わせたような感じだ。ドラゴンといっても、この体だと東洋の竜を思わせるが。
「ん、百足?」
「はい。虫系統ですから消費CPは半額です」
「350か………」
本来ならば700ってことだよな。そうなるの二万のリリィがいかに規格外なのか解る。
「Sランクは上下が激しいですからね」
「そうなのか……」
問題は此奴等を顕現させるかだな。人手が増えれば狩りの効率も上がるだろうがAランクのモンスターだ、冒険者にばれれば………来るんだろうなぁ。
隠せる部屋もあるわけじゃないし。
「隠せますよ。コアルームと言うのがあるんです」
「……え?」
魔蟲王 DL5 Lv8 魔結晶0
HP 58/58
MP 45/45
CP 最大10524
DP 2712