魅了
リリスとの契約内容である
『・互いの眷属、または魅了した僕やテイムした者達同士によるマスターへの攻撃、戦闘行為の禁止。
・CPは共有。ただしDPは互いの手持ちを使うこと。
・作戦は互いに意見を尊重するため、話し合いを行う。DPの消費が片方側のみ場合はその限りではない。
・以上の契約内容は勇者アカツキ・セイヤの対処が済むかどちらかのHPが全損するまで有効』
この中に俺に対する魅了禁止項目はない。まあそれが攻撃、つまり戦闘行為に含まれる可能性もあるが少なくとも俺と会った時点では魅了していたはずだ。契約がやりやすくなるしな。
が、俺は彼奴を少しも好きにならなかった。精神防御が高いからと考えたが普通にレベルから来るステータス差を思えば有り得ない、と思う。向こうは魅了が基本の女淫魔の魔王だ。年代から考えて俺の精神防御より遙かに高い精神攻撃を持ってるはず。
となると他の可能性は、リリスでは上書き不能な格上により魅了済みだということ………。
「むしろ良かったでしょう?私が居なければ、あの程度の小娘に溺れて利用されてましたよ?」
「いやまあそれはそうなんだけど……てか否定しないのな」
「事実ですから」
リリィの魅了はリリスの魅了を上回る……のかは解らないが少なくともリリスが相手が既に魅了済みであると気づいてない限りは上書きできないのは確かだ。
やはり俺がリリスに魅了されなかったのは単純にリリィに魅了されていたかららしい。となると、何処までが俺の思考だ?
そして何より、何故リリィは俺に自分を解放させない?その方が自由も利くだろう。俺の下にいたって強さが制限されるだけだろうに。もしくは俺に魔結晶を貢がせればいいのに、一個しか受け取らず使わない。
まあ、ここまで思っても、疑えても、どうこうしようとは思えない。
「で、結局の所お前の目的は何だ?俺に何をさせたい」
「別に敵対する気はありません。と言っても、信じられませんよね?だから私の目的を言いますね」
「おう……」
まあそれも信じられるかは微妙だがな。いや、リリィがその気になったら俺はリリィの言葉を少しも疑うことは出来ないだろう。たぶん『ウ○コ』と言われても好感度あがるんじゃないかな?
「貴方を私好みの魔王に育てることです。で、結婚します」
「うん、ちょっと待て───」
「なので貴方の脅威は私が残らず消し去───なにか?」
「なにか?」じゃねぇよ、何言ってんだこの淫魔。
「私好みの魔王って、何だそりゃ」
「そうですね。私、これでも真龍ぐらいには強いので、強さは求めません。私が貴方を守ります」
「あら素敵」
「性格は、露悪的のくせに不必要な犠牲は嫌い、それでいて必要な犠牲は躊躇いなく行えて、躊躇った部下をなあなあで許さずキチンと罰を与える厳格な感じで……あ、でも基本的には身内に甘くて、敵対しない限りは優しく接してくれる魔王が良いですね。それと剛胆な性格ならなお良し。此奴、何か隠し玉が?と思わせるほど恐れ知らずに見えて、実は内心恐々とか萌えます。あと、お嫁さんには二人きりの時は甘えさせて───」
「いや、お前の好みを聞いたんじゃ………聞いてたな」
というか急に饒舌になったな。好きなアニメについて語るオタク並だぞ。
「そしてそんな魔王を自分の手で育てることこそが私の夢だったのです。そんな折、マスターに召喚されました。しかも、見下すほど矮小な、言い換えれば育て概のある方に………これはもう、マスターを私好みの魔王にしろと言う啓示………ところで私はやっくん様もひーちゃん様も信じてませんが、これ、誰の啓示でしょう?」
「知るかよ」
「まあ、誰でも良いですね。そういうわけで、マスターには私の理想のお婿さんになってもらいます。異論は認めません」
「だったら手っ取り早く惚れさせりゃいいんじゃねーの?」
少なくとも俺は此奴に惚れてはいない、筈だ。此奴に何かしようともされたいとも思わない。人を好きになったこと無いから知らんけど。
「それでは面白くないでしょう?だから、あくまで警戒心、疑心を向けられない程度に。疑うと簡単に信じませんからね、常に裏があると考える。信用をえるのはとても大変。なので、その程度の好意を植え付けました」
「俺は育成ゲームのキャラかよ。ま、強くなれるなら良いさ」
「因みにそこは素ですよ」
「言われるまでもない」
そもそも俺の目的は生き延びること。死ぬなんて真っ平ごめんだ。そもそも死んだとして、俺に目を付けたやっくんが逃がしてくれるとは思えない。今度は最強からはじめよーとか言ってくる可能性だってある。いや、むしろその可能性の方が高いな。
まあつまり、俺は死ぬ気はない。だからこそそもそもリリィを疑わしいという理由だけで切り捨てることは出来ない。俺に縛られている間は俺を殺せないし、本気だって出せない。まあ、本気出せなくても俺の現部下全員より強いんですがね。
「俺はお前と手放す気はねーよ。だから、これからも俺を守れ。お前の理想の魔王になれるかは知らんがな」
「魅力的な言葉ですね。心配せずとも、してみせますよ」
理想の魔王、ね。俺がたまたま此奴を呼んで、此奴はたまたま自分の王子様を作りたかった?やっくんの陰謀を感じるな。
「いやいや、僕関係ないよ?世界の深層に刻まれた存在は、既に僕達の管轄外。呼び出すための穴は開けられるけど穴に手を入れて探るなんて事は出来ないのさ」
「うぉう!?」
唐突にやっくんが現れた。リリィが蹴りを放つ!やっくんはかわす。
「何しに来やがりましたかやっくん様。私とマスターのいい雰囲気を壊しやがって、死んで詫びてくださいませ」
「他のダンジョンボス殺したでしょ?」
「殺したのは俺じゃねーよ」
「まあ君が殺したようなもんでしょ。はい、これけーひん」
と、何やらチケットを渡してくるやっくん。
「これは世界の深層に刻まれた存在が居座る場所から彼等を引きずり卸す穴をあけるチケットさ」
「いらない」
「何で!?」
「お前、今いったな?この世界に卸すことは出来る。だが、管轄外だと。リリィは今俺の影響下にあるが、それはリリィが俺を理想の魔王にするため。本当は、従える事なんて出来ねぇじゃねーのか?」
「そうだよ?実はリリィちゃんの弱体化は君の支配下に組み込まれたからじゃなくて、組み込まれるためなんだよね。で、何か問題が?」
「あるよ。俺殺されるわ。良くわからんが、そいつ等ってリリィみてぇなもんなんだろ?」
「流石にリリィちゃんクラスは希だよ」
つまり少しはいるのね、リリィクラスが。なんだこの世界。というか世界の深層ってなんだ。
「簡単に言えば災害、奇跡に値する人材の保管庫だね。人類の歴史が失敗したと思ったら消すための災害人員、一度滅ぼした文明に知恵を与える奇跡人員」
「………お前って、この世界の創造主じゃないのか?」
「そんなわけ無いじゃん。何、世界を作るって。馬鹿じゃないの?」
うわぁ、こいつぶち殺してぇ。
「宇宙って知ってる?あの星一つ一つ、大きさも輝きもエネルギーも重力も距離もバラバラなんだよ?それ、いちいち創るのって絶対大変だよね。そんなことやる奴、単なるドMだ」
「俺の世界はビッグバンにより偶然生まれたって聞くけど、それはこっちでも同じって事か」
「あはは。同じ?本当馬鹿だね君は。そもそ────と、危ない危ない」
「───────」
「なにさ、そのわざとだろって目は」
ヘラヘラと楽しそうに笑うやっくん。実際、今重要なことを言い掛けたのはわざとだな。
この世界はやはり偶然生まれた訳ではないのか?或いは、そもそも俺や勇者君のように、同じ異世界から来てるのがおかしいと思っていたが……。
「まあ、その辺は追々自分で見つけなよ」
「最後に一つ。お前、俺に嘘ついてることはあるか?」
「もちろんさぁ!」
どこぞのハンバーガーのチェーン店の支配者のような事を言いながらドロンと消えるやっくん。最後、消える際忍者ポーズをとって消えたぞ彼奴。
「──────」
「リリィは彼奴が嫌いか?」
「心底。ええ、もう、本当に。超強い神格欲しいぐらいに」
「神格?」
「彼奴を越える神格を得られれば、彼奴を殺せるんですよ」
「淫魔神ってか、世の男共を軒並み虜にしそうだな」
てか、神格って得られるのね。やっくんを殺すのに必要なのか、やっくんを殺せるぐらいの強さを得るために必要なのかは解らんが。
「ま、ありゃ気にしても仕方ない類だろ。少なくとも、それだけの差が俺達とやっくんにはある。違うか?」
「ええ、その通りです。では、我々も行くとしましょう。使える部下達を手にしたわけですし」
「ああ、彼奴等が普通に仕えるのは意外だったが、話が早い」
スラムの一角。元々は犯罪組織の拠点だった場所に、垂れ幕が下ろされ月明かりすら差し込まぬ暗い部屋で男の呻き声が響く。グチャグチャという湿った音も。
男の上にまたがった女たちが揺れる度に鳴っているようだ。と、その時扉が開き月明かりが差し込む。
月明かりは背後に佇む二つの影に女達は構え、しかしその顔を見て直ぐに警戒を解く。
「魔王様、お疲れさまで~す」
「ちょっと、無礼よ!」
人懐っこそうな少女の挨拶に真面目そうな眼鏡の少女が叫ぶ。叫ばれう、と唸る少女。ここまで見れば、まあ普通だ。ただ、充満した臭いがこの部屋で行われていた行為を物語る。
「その、すいません。この子、まだ前の魔王様のくせが抜けてなくて」
彼女達は女淫魔。リリスの元部下で、支配権がシュヴァハに移ったダンジョンモンスター達だ。
現在女淫魔しても食事中。
「それと、これが聞き出した顧客のリストです」
「ん。サンキュー───ええっと、とりあえず地位の低い奴らを纏めて10ほど纏めてくれるか?」
「はい。けど、こんなの何に使うんですか?」
「取引」
とりあえずはエルザ辺りに売りつける。今回はただでな。この程度ならまあ、簡単に切り捨てられるだろ。どの程度切り捨てるのかは知らんが。
やりすぎると繋がってる奴らの上層部も気付くだろうし。そうなれば尻尾を隠されるどころか報復に動かれる可能性もある。その辺は向こうが調整してくれるだろ。
「何故わざわざ?せっかくの物流ですし、利用すれば良いのでは?」
「俺に奴隷商になれって?合法ならともかく違法はなぁ。リスクが高いのはお断りだ」
「そういうものですか」
「そういうもんだ。俺はわざわざ人間に殺しにきてくださ~い、なんて言う気はねぇからな。それなのにダンジョンってだけで壊しにこられるんだよなぁ。だから、出来るだけ勇者が来ない平和なダンジョンを目指す」
「死者を出さないのですか?」
「ダンジョンに入るなら死ぬ覚悟ぐらい出来てんだろ?なら、死ぬことに文句は言わせねぇよ」
少なくとも命をかけてダンジョンに潜るのだから、安心してください安全ですよ、なんてやり方で経営する気はない。
「だから食いたい時に食って良いぞ」
「「「…………♪」」」
しかし、本当に罪悪感がわかないんだな、とその命を搾られていく男達を見て思う。
「んー、久しぶりの新鮮精気。あ、これってどの程度を献上すれば良いですか?」
「新鮮?献上?」
「リリスは家畜として飼う人間達を生かさず殺さずで搾れって言うんですよ。その精で、うっすいし鮮度も少ないし……おまけに吸い取った精気をCPやDPとして返還するからよこせって……」
だから、嫌われてたんですよ。と、呆れたように言う女淫魔。初めて知った知識にリリィが舌打ちしていた。
それが知られれば女淫魔が召喚されるからだ。事実、他の大型ダンジョンはまず女淫魔や男淫魔を揃える。
「ふぅん……」
「あ……」
シュヴァハが知らなかったようだと気付いた女淫魔はしまった、と言うような顔をする。
「よし、その月に取った精気の一割を献上しろ」
「…………え、それだけですか?」
「ん?ああ………それと、お前ってそのまま死ぬまで搾りたいか?」
「んー、特には。どちらかというと新鮮な方が好きですね」
殺すのも楽しいですが、と笑う魔性なる物。
シュヴァハは顎に手を当てる。殺すほどではない搾精で満足できるなら使い道はある。
「取り敢えず今日はそいつ等処理しとけ。死体は虫の巣や餌にするから後でダンジョンに届けとけ」
「「「はーい」」」
魔蟲王 名前:シュヴァハ 状態:寄生 Lv18 魔結晶48
HP 802/802
MP 1050/1050
CP 最大11100
DP 15742
攻撃力:242
防御力:184
精神攻撃:268
精神防御:1741
命中力:229
素早さ:10002
運:2486
スキル
《ガチャ》 《ログインボーナス》 《創糸Lv4》《操糸Lv6》 《残機Lv3》 《斬糸Lv4》
《寄生》《韋駄天Lv2》《逃げ足Lv2》
《蜃気楼Lv2》
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