ダンジョン視察
俺は冒険者モッブ。今日は相棒のモーブと使命依頼をこなしにきた。
「ダンジョンつったって生まれたてだろ?んなもんEやDランクにやらせりゃ良いじゃねーか」
「文句を言うな。そのダンジョンが彼の『束の間の災禍』みたいなダンジョンだったどうする」
モーブは冒険者になってからの知り合いだ。名前が似てると言う理由で仲良くなったが、如何せん適当すぎる。逆に俺は真面目すぎると、周りの連中からは二人あわせて丁度良いなどと言われている。
「『束の間の災禍』なんてそんな頻繁に現れるのか?前現れたのは45年前だろ?俺ら生まれてねーじゃん」
「だが周期が決まっているわけじゃない。だから俺達に依頼が来たんだ」
『束の間の災禍』と言うのは不定期に現れるダンジョンの中で、さらに不定期に起こる現象……いな、災害だ。
生まれたてのダンジョンは大した力を持たない。どういう理屈で力を得ているのかは不明だが、倒すとダンジョンが消滅するダンジョンマスターと呼ばれる者が居るらしい。あるいはダンジョンコアと呼ばれる器官の破壊。まあこっちは一時的に機能を止めるだけだが。
しかしダンジョンは無限に物資を生み出す。進んでその破壊をしたがる奴なんて宗教国家リュミエルか光の神の信者ぐらいだろう。
しかし例外もある。確実に破壊しなくてはならないダンジョン。
新規ダンジョンでありながら強力、もしくは大量の……或いは両方のモンスターを生み出し、ダンジョンの外に溢れさせる事がある。そういうダンジョンは即座に潰される。故に『束の間の災禍』と呼ばれるのだ。
まあダンジョンの中には当初はともかく長い年月をかけ人類の驚異になるものもあるがそういうダンジョンは勇者達に対処される。
それに強大になっても全てのダンジョンが人類の驚異になるわけでもない。
「が、可能性があるならつまなきゃならない……っておい、聞いてんのか?」
「ん?ああ、聞いてる聞いてる。それよりほら、見えてきたぞ」
森の中にポツリと現れた木のない空間。その中央に洞窟が見える。洞窟タイプで、しかも地下か。
マイナーだな。ありふれたダンジョンだ。取り敢えず、中を確認するか。
「なあなあ、ダンジョンアイテムあるかな?」
「あるわけないだろ」
ダンジョンアイテムとはダンジョンでしか手に入らないようなアイテムだ。ダンジョンは人を食らうなどと言う説もあり、人を呼び寄せる餌である宝物があるのだ。もちろん市販で手に入るはずれの方が多いが物によっては一攫千金を狙える。もっとも、そういうのが存在するのは年月の経ったダンジョンだけだ。
「キシャー!」
「おっと……」
不意に暗闇の中から襲撃者が現れる。が、動きが遅く、攻撃も軽い。腕の防具で防ぎすぐさま腰の短刀を振り抜く。
「グギャ!」と音がして首が落ちた。ゴブリンだ。追撃はない。
「………ゴブリン一匹だけか?」
「油断するな。しばらくこの辺りに滞在するぞ」
結局その一週間、現れたのはゴブリン五体。内一体はナイフを持っていたがそれだけだ。今のところ良くある初期ダンジョンだ。
「帰るぞ。それと、この近隣に盗賊のアジトがあるらしい。油断するなよ?」
「行きは来なかったじゃねーか。大丈夫だよ」
全く此奴は。