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領地入手

 リリスの配下はもちろんダンジョンに誘い込んだ魔物や人間、合わせて240程死んだらしい。うんうんわざわざ同盟結んだかいがあったってもんだ。


「ん、何だ森の魔物じゃねーか」


 今回の戦利品を見てホクホクしてると地上から足音が聞こえてきた。見れば魔物の群が街に向かって走っていた。

 いや、種類が多すぎるし統率が滅茶苦茶。逃げてるな……ダンジョンの崩落?いや、多分だが勇者のあの一撃だな。

 さてどうするか。ここで街が襲われれば勇者の悪評もよりいっそう強くなる。けど、あの街に被害がでまくるのはなぁ……。二兎を追う者は一兎を得ずとも言うし……。

 ん?


勇者の悪評(一兎)リリスの財産(二兎)も手に入れてんじゃん。なら、三兎目が見窄らしい結果になるのは避けるべきだよな。リリィ」

「はい……」

「街を救うぞ。ただし、街の住人の人気も欲しいから、街の住人が戦おうと覚悟決めたタイミングで」

「もうしてますよ」

「マジで?主戦力全部ダンジョンに行ってんのに勇敢だなおい」


 そういいながら俺は剣を取り出す。

 追加でホワイトポイズンの濃縮毒を塗っておく。これで攻撃力の低い俺でも十分戦える。


「さて、と。勇者の尻拭いと行くか」



──────────



 街の者達は弓を構え魔法を打つ準備をしていた。

 爆音の後、森が騒がしくなった時点で魔物達が向かってくるのは予想できた。

 襲いに来たわけではない。逃げてきたのだろう。だがパニック状態の魔物は目の前にある邪魔なものを全て破壊しようとするはず。今街にはろくな戦力は居ないがそれでも家族が、友が、恋人が帰ってくるこの街を魔物なんぞに蹂躙させてやる気はない。 魔物達が魔法の射程距離に入る。誰かが撃て、そう叫ぼうとした瞬間、空から二つの影が降りてきた。


「「「───!?」」」


 見覚えがある。勇者と乱闘間際までいった金持ち──貴族か商人だろう──の子とそのメイド。一緒にいた男はいないようだ。

 突然人が空から振ってきたことに混乱するも早く逃げろと叫ぼうとする。が、その前に少年の姿が消える。そして魔物達が倒れた。


「───え?」


 それは果たして誰があげた台詞か、全員の可能性もある。取り敢えず解ったことは少年が消え魔物が倒れたという事実。


「あ、彼処!」


 一人の女性が叫ぶ。弓を使うだけあり目が良い彼女は魔物達の背後に移動した少年を真っ先に見つける。

 何時の間に彼処に?遠目からだと大した距離には見えないが、実際は一瞬で移動できる距離じゃないはずだ。と、混乱する中少年の姿が再び消え、魔物が倒れていく。が、中には倒れない魔物も居た。

 毒に強い耐性を持つ魔物だ。つまり少年は毒使いなのだろう。あの速度で毒を打ち込むなど、敵からしたら何という悪夢だ。敵として戦場で出会いたくない。

 とはいえ、少年は速度こそ途轍もないがそれ以外は低い。駆け出し冒険者より上、程度だろう。故に毒耐性や硬い皮膚や毛を持つ魔物を倒す手だてはない。


「うちもらしが来るぞ!」


 故に少年は一度でも攻撃が無意味となった魔物の相手はしない。それでもかなりの数を減らしてくれた。恨みはしない。残りの魔物は自分たちで、と意気込んだ瞬間、無数の氷の杭が地面から生え魔物の群を貫く。

 街の住民は何が起きたのか理解できず、少年も何が起きたか理解していないのかポカンとしていた。メイドが何事もなかったかのように歩いていることから、彼女がやったのだろう。少年は俺がんばる必要あったかな?とでも言いたげな顔をして街の門に向かう。街の恩人達だ、素通りし中を通り、指揮官をしようとしていた街の長の下へ案内された。



────────────


 ガルドの街の長、名をレンジア・ガルド。45才。彼はこの街の長であるが支配者ではない。

 支配者はその隣に座るラークス・エリデリア・ルア・エイスルグ。エイスルグ家次男。32才。俺が会いたかったのはこっちだ。


「まずは礼を言おう。街を救ってくれてありがとう」

「いえ、何分拠点にしようとしていた宿屋がありますからね。壊されてはたまったものではありません。自分達のためでもありますよ」

「だとしても、冒険者や勇者、衛兵達がダンジョンに向かった今街は手薄。あなた方のような者が来てくれて助かった。私に出来る範囲なら、成果に見合った望みを叶えよう」


 成果に見合った、ね。街を救うのも十分な成果だと思うが、まあそうポンポン叶えられないよな。でもまあ───


「ならこの街及び周辺の土地を頂きたい」


 遠慮なんてしないが。

 俺の言葉に固まるレンジアとラークス。先に復活したのはラークスだ。眉間にしわを寄せ此方を睨んでくる。


「……土地一つだと?成果に見合うと思っているのか?」

「ええ、まあ。元より他の町から離れ、ダンジョンを失ったこんな辺境、それほどの価値はないでしょう?」

「確かにこの地は魔物が住む森が近くにある為農業にも向かず、数年前まであくまで所有する土地となっていたが───今なんと言った?」


 此処の土地がダンジョン以外ほとんど価値がないのは既に調べてある。食材も余所から仕入れるから僅かに高い。それでもダンジョン、それも宝石がでると言うだけで商人はよってくるのだ。魔石も出るしな。ようは鉱山があるようなものだから。

 ま、その鉱山も先程──


「失った、と言いましたね。あ、ダンジョンを失ったと言い直しましょうか?」


 勇者がぶち壊したけどね。リリスの権限を俺が受け継いだ以上ダンジョンとして機能させることは出来るが勇者はダンジョンマスター倒してダンジョン破壊したかったみたいだし?一応倒してもいるしな。


「先程の爆音は……いや、しかしなぜ知っている?」

「使い魔を通して見ました」


 そういって俺は蜻蛉を指に乗せる。


「虫?」

「虫の使い魔は便利らしいですよ?魔力消費少なくてすむし数も多くできるし、偵察には持ってこい」


 まあ使い魔じゃなくてダンジョンの眷属だけど。とはいえ虫を使い魔にするメリットに関しては事実だ。リリィから聞いた。

 ラークスは顎に手を当てる。此処はあくまで此奴が持つ領地の一部。エイスルグ家には後三つ、俺のを含め四つのダンジョンが存在する。

 んでその一つの俺のダンジョンは生まれたばかり。此奴にとってこの土地はそれほど価値がないはずだ。むしろ時折森から出てくる魔物の被害に対処しなくちゃ行けない分損する方が大きい。ダンジョンを失った以上、冒険者の数も減るだろうしな。

 とはいえ、後一押し欲しそうだな。


「『ガルの森』にはエルフが住んでいましたね。この国では亜人も奴隷扱いしては行けないのだとか……実にもったいない」


 エルフってのはお約束通り見目麗しい亜人族の一つだ。魔法に優れる分身体能力が俊敏を除けば人間に劣り、『魔封じの首輪』と言うアイテム一つで遊び放題捕まえ放題になる種族。らしいな……。これもリリィから聞いた。


「………お前の狙いはそれか?この土地を、この国のものではないと主張すると?」

「少なくとも他の貴族どもからしたら願ったりだろ。と言うか、それを押さえるためにも費用をだいぶ使ってるんじゃないか?」

「………それも虫か……?密偵として此処まで恐ろしいとはな。いや、魔法による盗聴は阻害していたから、単純に調べられているというわけか。はっ、とんだ食わせ物だ」


 そういや深く調べようとしたら眷属が通れない場所あったな。使い魔、眷属を通してみるのも魔法による盗聴に含まれるのね──。この場合攻撃性でない魔力を持つ物体の透過の阻害が結界の効果と見るべきか?


「確かにそれならたいていの貴族はむしろ推すだろうな。いざエルフと戦争になればその街は既に我々の国にあらず、と言える」

「自分で言っといてなんだが本当に通じるのか?……ですか?」

「素で良いさ。今の私と君は、交渉人同士。レンジア、彼を見て学ぶと良い」

「え?あ、は、はい……」


 話についていけなかったレンジアは慌てて頷く。


「先の質問に関して、答えは是、だ。エルフとて人間との争いは望まない。この街を滅ぼして、捕まった同胞達の返還を求めて終わりだろう。

 エルフ本国ならこうは行かないがガルの森のエルフは50人規模の集落。エルフを攫うのは話に聞くほど簡単ではないが、殺し尽くすとなると人間に軍配があがる。これも、エルフ本国に伝わらぬようにしたらの話したが、距離を考えて可能だろう」


 成る程。エルフは商品になる、と。覚えとこう。まあしないけど、余程金に困らない限り。


「その辺りを知らぬと言うことはエルフはあくまで建前か。本音は何だ?なぜこの土地を欲する」

「ダンジョン壊したせいで領主に見放された土地を俺が面倒見る。あの勇者がどんな顔をするか楽しみだから」


 これは本音だ。三割ぐらい。


「なに、つい最近良い金儲け方法を思いついたからな。ぶっちゃけ街一つの面倒を見るぐらいなら余裕だ」


 これも嘘ではない。どうも俺が購入した『塩』や『砂糖』なんかは地球品質で地球価格で帰るわけだが、この世界から見れば高級品らしい。お約束だね。

 魔物が蔓延る世界でせっかく苦労して塩田から作った塩や砂糖黍なんかを育てて抽出した砂糖をわざわざ加工するなど手間だ。この世界の獣は鉄の策なんて簡単に壊す大猪や陸地に上がって人を襲う鮫などのモンスター。加工までしてたら割に合わないのだろう。

 故に加工されたものは高級品。俺からすればお手ごろ価格。


「これがその証拠。胡椒だ」

「ほう?まるで砂のような………全ての粒が均等」


 向こうじゃ寧ろ一般家庭でなら粗挽きの方が珍しいぐらいだ。チラリと見てきたのでコクリと頷く。

 ラークスは指で救い一舐め。


「金が十五倍の重さで買えるな。製法は、聞かぬよ。其方の商品だ。しかし、本当にこれほどのものを勇者への嫌がらせのために売るのか?」

「ああ。俺は彼奴が嫌いだ。大好きで大嫌いな両親の大嫌いな部分だけ詰め合わせたような彼奴を見てると殺したくなる」

「…………嘘はなさそうだ」

「目を見ただけで信じるのか?」

「そういうスキルを持っているからな」


 なるほどな。俺は隠し事をしているが嘘は吐いていない。


「一つ質問だ。君の隠し事は私の不利益になるか?」

「ならねーよ………いや、どうだろう。場合によってはなる、か?うん、なるな。暴かれれば」

「即答された時はやめようと思ったが、その反応ならまあ大丈夫だろう。暴かれれば不利益になる契約相手など幾らでもいる」

「と、言うことは?」

「この地を譲ろう。私とて、ダンジョンを壊すなと言ったのに壊した馬鹿に嫌がらせの一つや二つしておきたかった所だ。しかし立場が、ね。

 ああ、この胡椒なのだが、同じ量を月一優先して売ってくれ」

「了解。交渉成立だな、書類だけ用意してダンジョン崩落の知らせが来たら改めて譲ってくれ」

「ああ。だが、少し残って良いか?それと馬鹿を三日ほど滞在させてやってくれ。正義感気取りのバカが己の軽はずみな行動で領主に見捨てられ、大嫌いな君に救われた街で間違いなく非難の目を向けられている様を想像したら、ニヤケてくる。是非この目でみたい」


 なかなか良い性格をしているようで。


「私も三割ほどこれが理由かもしれないな。それに、元々『不返の城』を他のダンジョンに比べれば何時捨てても良い土地ではあったしな」

「んじゃまあ、噂流すのは任せる。この街についてはお前の方が詳しいだろ?どうやって、何処に流せば早く広まるかとは流石に俺も知らん」

「ふふ。心得た、君とは良い酒が飲めそうだ。六十年もののワインがあるのだが、飲むかね?」

「悪いな、まだ酒を飲んだことないんだ。なれたら是非誘ってくれ」


 かくして俺は領地と、意図せず親友を手に入れた。

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