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ダンジョンマスターの戦闘?

 リリスは高速で逃げ回るシュヴァハを追うが、素早さに全振りしたシュヴァハに攻撃が掠りもしない。

 しかも舐められている。

 シュヴァハはリリスと共に罠を張り巡らせた。当然、この迷宮の構造も知っているはずだ。故に行き止まりに追い込もうとしても常に逃げられる。

 だが、見失わない。門を曲がり、その先に別れ道があったことを思い出し慌てて向かえば笑みを浮かべながら門を曲がる様を見せ付けるシュヴァハ。


「この、クソ餓鬼がぁぁぁ!」

「おっと──」


 炎を、氷柱を、風の刃を放つが全て寸でで回避される。

 趣向を変える。

 黒い槍を生み出し投げつけた。それは完全にシュヴァハには掠りもしない位置に飛び、訝しんだシュヴァハが槍を睨みつけた瞬間槍が爆発し黒い霧を辺りに撒き散らす。


「うお!?」


 視界を遮られ、シュヴァハの足音が止まる。その瞬間ありったけの魔法を撃ち込む。


「これ、なら…………」


 一度に大量の魔力を消費して肩で息をするリリス。回避力重視とはいえ見えなければ避けようも無い。殺気や気配で攻撃を読めるとも思えない。これなら当たったはず………。


「ゲホゴホ!ゲーッホゴホ!」

「───!?」


 が、煙の中から聞こえてきたのはシュヴァハの咳き。煙が晴れるとそこには無傷のシュヴァハが居た。


「そんな、馬鹿な………!お前、一体何をした!」

「秘密」

「───この!」


 虚仮にされている。苛立ったリリスだが追いかけるが俊敏特化のシュヴァハに追い付けるはずもない。

 本来ならシュヴァハはとっくにリリスの視界から消えることも出来た。なのにリリスの視界から消えたのは一瞬だけ、間違いなくからかわれている。

 ブチブチと血管が切れるような音が聞こえた気がした。


「これなら、どうだ!」

「おとと!」


 広範囲攻撃。床を炎の津波が這い広がっていく。シュヴァハは壁を蹴りながら進むがその移動速度は遅い。


「食らえ!」

「うわち!?」


 ゴォ!と顔面に炎が直撃した。今度はその瞬間をきちんとこの目で見た。魔力がつき膝を突く。


「………何をしているのよ私は」


 素早いだけの遥か格下相手に向きになり魔力を使い切るなんて、他の魔王達に知られればいい笑い物だ。そのやり方から他方から恨みも買っているし、これを気に攻め込まれるかもしれない。


「ほんと、おとなげねーぞ何やってんだお前」

「────!?」


 ドガッ!と顎を蹴られる。ダメージが無いのはステータス差だろう。次の瞬間押しつけられるような感覚が襲う。


「これは……糸?」


 よく見れば細い糸が四肢や体に巻き付いていた。

 見た目より硬い。恐らく魔物の糸だろう。引きちぎろうとすると頭を踏みつけられる。

 床に鼻をぶつけるがやはりステータス差でダメージは無いが、屈辱だ。速度だけ上回るような雑魚に良いようにされるなど………。


「下手に動かない方が良いぜ?よーく斬れるからな」


 と、魔法を打ち込まれ砕けた壁の瓦礫に糸を絡め切り裂く。


「ぐ、ぎ………なめ、なめるなぁぁぁ!」

「お?」


 ブチブチと糸が千切れる。リリスの肌には傷一つない。それを見たシュヴァハは舌打ちして距離を取ろうとして、リリスの抜き手が顔面を貫く。


「────」

「!?」


 が、手応えがない。ニィ、と笑ったシュヴァハの姿が消える。まるで蜃気楼のように……。


「残念、はずれ」

「幻惑魔法!?」


 背後から聞こえた声に振り返り、腹を蹴りつけられる。


「正確には【蜃気楼Lv1】だ。姿を消したり俺を起点に半径5メートル以内に幻影を生み出すスキルさ」


 なる程そうやってこれまで攻撃を回避していたのか。ならば三次元的にも広範囲な魔法で……駄目だ、魔力が残っていない。

 魔力回復系のスキルは持っているが中々高く効果は今一つのモノしかない。


「というわけで俺は逃げるぜ!さらば!」

「な───!?」


 魔王とはいえ魔力を大量に消費し疲弊している敵を前に、ほぼ万全な筈のシュヴァハがあっさり逃げ出した。

 いや、確かに彼の攻撃は全く聞いてないが披露した相手に逃げるか普通?なめられてる?それとも状況判断が出来ない?どちらかは不明だが、魔力回復の時間が出来たのは確かだ。見失わぬように再び追いかける。


「ははは!鬼さん、こっちら!」

「────ッ!!」


 我慢だ。ここで下手に魔力を使うより、貯めておく。あれが【蜃気楼Lv1】なら本体は近くにいる。広域殲滅魔法ならば当たるだろう。

 敵の話を鵜呑みする気はないが探知でも僅かにずれた場所に反応するし、少なくとも幻影の近くにいるのは確かだ。

 そのまま小一時間追いかけっこが続く。魔力は十分回復したが、シュヴァハをここにきて見失った。

 しかし探知魔法を使い直ぐに見つける。


「漸く追いついたわよ………さんざん調子乗ってくれたわね」

「と、やべ。見つかった」


 見つけた先は行き止まり。探知でも目の前から僅かに横にずれた場所に反応がある。ここなら、逃げられない───!


「死ね───」

「─────」


 天井、床、壁、いっさいの逃げ場を許さぬ炎の津波。残機が幾つかは解らないがジャオにあっさり殺された所を見るに俊敏以外のステータスは低いはず。このまま殺し続ければ───


「惜しい」

「───へ?」


 炎が消える。魔法でもスキルでもない。シュヴァハに触れる瞬間、シュヴァハの体を覆うように黒い靄が一瞬だけ現れ炎が触れた瞬間、炎が消えた。


「………神の、加護?契約がまだ……?何で……」

「決まってんだろ。契約がまだ有効だからさ……」


 ガチ、とシュヴァハが壁の石を押す。ズゥン!と音を立てリリスの後ろで天井が落ちる。この辺りは破壊不可の設定はしていないから壁を壊せないこともないがあの音からして相当ぶ厚い。時間がかかるだろう。それに───


「どうしてまだ契約が……有効って、どういう事!?」

「ま、教えてやっても良いぜ」


 どうせ何も出来ないのだから、と嘲るように笑ったシュヴァハはその場で突残倒れる。困惑するリリスはしかし首筋辺りが動くのを見てビクリと震える。


「────虫?」


 そこから現れたのは、青虫だ。。青っぽい体色、尻の辺りに生えた先端が黄色い刺を持つ幼虫。

 魔蟲と呼ばれる際弱の魔物。いや、魔物と呼ぶことすら不快な雑魚。


「この体は俺の持ち物とはいえ寄生されてただけ。俺の体じゃない。だから俺は、一度だってHPを全損していない。

 お前が裏切るのはハナから予想してたからな。保険としてずっと正体を隠していた」

「───つまり、何か?私は、お前に……魔蟲族なんかに、騙され、良いようにされていたと?」

「ああ。お前が調子に乗ってる様は、最高に面白かったなぁ」


 虫故に表情は変わらない。解らないが、馬鹿にされているというのは解る。単なる擬態の模様でしかないはずの目の模様がニヤケているように見えて仕方がない。

 ギリギリと歯軋りして目を血走らせ青筋を浮かべるも、現状どうしようもない……。


「────勇者が去った暁には必ず殺してやるわ」

「怖い怖い。まあその時はリリィ達に守ってもらうよ。何せ勇者が死ぬにしろ逃げるにしろ、その時点で此方も其方に攻撃出来るんだからな」

「────?」


 ふと違和感を覚える。現在この場には2人だけ。つまり勇者の対処が終わるか意図せぬ事故でどちらかが死ぬまで契約は続く。つまりお互い手を出せないはずだ……。


「………あれ?」


 だがリリィは、魅了状態にあったジャオを攻撃していた。契約によって不可能なはずなのに。


「お前の疑問に答えてやろうか?簡単さ、あの男はお前に魅了されてたんじゃなく、リリィに魅了されて三文芝居を打っただけ。俺とお前の部下同士ではなく、俺の部下の奴隷。契約の対象外なのさ」

「──────は?」


 なんだそれは?あり得ない。自分は女王淫魔(サキュバス・クイーン)だぞ?

 魅了において女淫魔(サキュバス)に遅れをとるなどあるはずがない。いや、そもそも、あれは本当に女淫魔(サキュバス)だったのか?

 魔王(自分)の持つ特性の一つとして通常種は敬意を覚えてしまうはずだ。他人の配下であってもそれは変わらない。もちろん裏切らせるなんて事は出来ないが、それでもあの反応はおかしかった……。

 だが確かに淫魔系統の魔力を感じた。だとしたら、まさか魔王(自分)より上?あり得ない。そんな淫魔は…………いや、存在する。()()と言うべきか……。

 既に滅んだ、自身がそうなりたいと願い付けた名を持つ最強の女淫魔(サキュバス)………


「けどこれから死ぬお前が何を知ろうと意味はねーし。考えるだけ無駄だぜ?」

「え───」


 その言葉と同時にリリスの背後の壁が吹き飛び、壁を消し去った光が2人を飲み込む。






──────────────


「ふぅ、馬鹿げた威力だなぁおい。ステータスどんだけ上がりゃこうなるんだよ………どうせなら人里の方向に向かうようにしときゃ良かったか?」


 まあそうなるともう一つの目的が果たせなるから流石に行わないが………。しかしこの威力をみるとそれもありだったかもしれないと思えてきた。


「さてさて………よし、ダンジョンの権限は俺に移ってるな。宝と、サキュバス達は回収しとくか」


 再び器に寄生して瓦礫の上を進みながら呟くシュヴァハ。ふと後ろを振り返れば壁や天井、床が吹き飛んでいた。一階層、二階層どころではない。それに森も一部吹き飛び遠くの山にはクレーターが見える。

 ふざけた威力だ。最弱の魔王である自分はもちろんそこそこ年期のある魔王を消し飛ばすなんて。


「とはいえダンジョンマスターを倒して俺の役にもなったんだ。俺は魔王……つまり王だし、褒美はくれてやるべきだよな?」


 誰に言い聞かせるでもなくケラケラ笑うシュヴァハは回収できるモノを回収した後部下たちに撤退を命じる。


「壊したかったんだろ、ダンジョン。良いぜ、おめでとう。このダンジョンは攻略された」


 パチンと指を鳴らす。途端、巨大な地下空間の柱となっていた非破壊属性が消え去る。ビシリと迷宮に亀裂が走り、壁の大穴から外に飛んだシュヴァハを翼を広げ飛んできたリリィが抱え上げる。

 次の瞬間轟音をたて《不返の城》が崩れる。地下空間に吸い込まれるように瓦礫が落ちていき、朦々と砂煙が立ち上る。


「まるで爆破解体だなぁ………しかし一気にDPとか手に入ったな。なるほどここは俺のダンジョンっつー扱いなのね」


 DPとなったのは、備えてダンジョンで放し飼いにしていた魔物、そして人間達。

 この人間を誰が殺したかとなれば、まあやはりシュヴァハなのだろう。


「だがな勇者、俺が此奴等を殺したのはたまたまだ。たまたま同盟を結んでいたから結果的にそうなっただけ。同盟もなく、あの女が普通にお前に殺されれば、やっぱりこうなる。

 まあそりゃ、地下空間が内分此処まで派手に壊れなかったろうが、少なくともダンジョンを破壊するっつー事はダンジョン内の奴らを生き埋めにするって事だ。よーく覚え時な………」


 まあこの距離からは流石に聞こえないだろうが。流石に面とむかって言えないので此処で口にしておく。


「誰か!誰か来てくれ!此処に仲間が埋まってるんだ!」「足がぁ!俺の足が、いでぇよぉ!」「助けてくれ!弟が死にそうなんだ!」「ああ嘘だろ!起きろよ、お前、帰って告白するって……!」


 悲鳴、怒号、慟哭、絶叫、絶望。

 何とも悲惨な光景だ。けど仕方ない。ダンジョンマスターを失ったダンジョンは滅びる。特にあんな滅茶苦茶な作りの城は。

 勇者達は高いステータスに加えのし掛かる瓦礫か魔少なくすむ上層にいたため元気だった。


「さて、と……俺達も俺達で一足先に街に戻るぞ。やるべき事もあるしな」

「かしこまりました」


 リリィはシュヴァハの命に頷くと翼を羽ばたかせガルドの街に向かって飛んだ。

魔蟲王 名前:シュヴァハ 状態:寄生 Lv15 魔結晶48

HP 745/745

MP 810/810

CP 最大10800

DP 15048

攻撃力:172

防御力:99

精神攻撃:194

精神防御:1401

命中力:120

素早さ:10002

運:2385


スキル

《ガチャ》 《ログインボーナス》 《創糸Lv3》

《操糸Lv6》 《残機Lv3》 《斬糸Lv4》

《寄生》《韋駄天Lv1》《逃げ足Lv1》

《蜃気楼Lv1》




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