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不返の城攻略戦④

 アカツキはダンジョンの中を駆け抜ける。


「……こっち」


 先行するのはユノ。彼女は元暗殺者で、特に成績が良かった。その理由の一つが彼女の持つ地形把握(マップ)というスキルだ。

 自分から半径5メートルの周囲を把握することが出来て、更に一度把握した地形は忘れない。おまけに把握した中にいる生物を色分けして索敵できるらしい。気配遮断系のスキルを持っていれば意味ないがミミックなどには引っかからない。

 そして一番の長所は目的の対象を設定すれば対象の方角が分かるのだ。今回は、ダンジョンボス。

 方角は分かるし長年鍛えられた成果で、行き止まりの道は風の流れでわかる。


「早く、このダンジョンを破壊しよう」


 と、アカツキは真剣な面もちで告げる。別れてしまったエルザとセイレン、彼女達を探すより、ボスを倒してダンジョンの機能を停止させることを優先したのだ。


「っ!止まって……」


 と、不意に先頭を走っていたユノの足が止まる。

 把握範囲に反応があった。それも複数。色は青、人間だ。

 先行していた人間?追い抜かれた?

 ユノが警戒する中、その男達は姿を見せる。髪の毛はボサボサで髭も手入れがされておらず目は虚ろ。

 そして服を纏っておらず痩せこけた身体が晒されていた。


「きゃ!」


 エンリが男性の裸に頬を赤らめ顔を手で覆う。アカツキは同じ男とはいえ、ここまで堂々と晒されていれば不快感を覚える。

 唯一()()()()()()()に馴れさせられていたユノだけは無表情で男達を睨んだ。


「こいつら人間、どうする?」

「…………そこを、通してくれませんか?」


 ユノの言葉にアカツキはフラフラと寄ってくる男達に声をかける。返答は、動物の骨を削ったナイフだった。


「くっ!」


 反射的に剣で防ごうとしたアカツキ。その剣は骨のナイフをあっさり切り裂き、男の手首を切断する。


「───うっ!」


 飛び散った血とドシャッと生々しい音を立てる手首を見て顔を青くするアカツキ。

 が、男は手を失ったことを気にせず反対の手でアカツキの喉を絞めようと伸ばしてくる。


「此奴等、本当に人間なのか!?」


 アカツキが力任せに腹を蹴ると複数の男を巻き添えに吹き飛ぶ男。倒れた男達は直ぐに起きあがり迫ってきた。


「間違いない………おそらく、操られてる」

「洗脳か……卑劣な」


 アカツキがギリッと歯噛みする。このダンジョンのボスだけは、決して許すわけには行かなくなった。

 このダンジョンで行方不明者が増える理由も解った。やはりこのダンジョンは滅ぼすべきだ。


「うぐ………げぼ!」


 と、アカツキに蹴り飛ばされ未だ床に転がっていた男がビクン!と身を跳ねさせ口から血を吐く。

 背骨が折れたのか腰が妙な方向に曲がっており手をバタバタ動かしているが足は動かない。グルリと上半身だけが一回転し、骨が砕けたため柔らかくなった腰が180度捻れそのまま腕の力でカサカサ動く。片手は切断されているため動きがガクガクしており余計に嫌悪感を煽る。


「──ひっ!来るな!」


 その嫌悪感から床を這う男の顔を蹴ると首が千切れ壁に当たった頭はグシャリと潰れた。


「え、あ……違う、僕じゃ──」

「セイヤ!」


 顔を青くして後ずさるアカツキの襟をユノが掴み引き寄せる。別の男が持っていた凶刃が通過した。


「くっ!」


 レベル差を考えれば、反射的な攻撃で死んでしまう彼等ではアカツキに致命傷を与えられるとは思えない。しかし、毒が塗ってあるかもしれないし骨と言うことを考慮すると呪具かもしれない。食らうべきではない。


「セイヤ、命令……」

「ッ!駆け抜ける………この人達は洗脳されているんだ。傷つけるわけには行かない」

「………うん」


 アカツキの言葉にと、ユノとエンリは微笑む。

 ユノはポーチからアイテムを取り出そうとする。が、その間にも迫ってくる無数の男達の一人が骨のナイフをアカツキに向かって振り下ろしてくる。

 反撃せずにかわそうとしたアカツキだったがユノ達が自分の言葉を肯定してくれた事に安堵し、警戒が僅かに解けた。

 どこかに隠れていたのか後ろから迫る裸の男。その手にはやはり骨のナイフ。


「───ッ!」


 長い訓練の末体に刻まれた動きは、そう簡単には消えたりしない。ユノは内心では慌てながらもその体は最高戦力であるアカツキを守るために動き出し、男の首を切り落とした。


「───あ」


 少し前までの彼女なら特に気にしなかっただろう。そう思うように、洗脳に近い教育を受けていたのだから。

 だが今は違う。

 アカツキに教えられた。

 それは悪だと。

 それは罪だと。

 それは忌避するべきことだと。

 良くも悪くも幼かった彼女は染まりやすい。あの地獄のような訓練を続けられる場所から救ってくれた、特別な存在であるアカツキの教えを素直に受け、人を殺すことに忌避感を覚えれる程に成長した。

 成長()()()()()()

 それはこの世界で冒険者として生きて行くには間違った成長。何時か盗賊と戦わなくてはならなくなる可能性もあるのに、その可能性から目を反らす行為。故にその隙をつかれユノの腹にナイフが当たる。


「────ッ!」


 衝撃は来たが、対して痛くない。単なる骨のナイフのようだ。ステータス差でダメージは通らない。


「つっ……きる……」


 ならば無視して走り抜ける。ユノが走り出すと後ろの方からも裸足の足音と鉄板入りの靴の音が聞こえた。

 アカツキとエンリは付いてきているようだ。音だけで確認して、振り返らない。人を殺した自分を、彼等がどう見てるか知りたくないから。

 道中壁を這っていた蜘蛛が嘲笑ってきたような気がして、ナイフを投げつけ殺した。





「………来たか」


 開けた場所に着いた。

 その中央に鎮座するのは黒い鬼。人間の胴体ほどありそうな太い手足、大きな体を守るように鎧があしらわれている。


「………お前が、ボスか?」

「だとしたら?」


 黒鬼の言葉にアカツキを剣を構える。


「殺す。お前のような邪悪は、この世界に必要ない」

「ぐははははは!」


 アカツキの言葉に黒鬼は大声で笑った。空気がビリビリと震える。


「邪悪?我等の住処で、宝物を奪いに来るだけではあきたらず名誉だ何だと奥までやってきて殺すお前達人間よりか?ああ、我等は邪悪であろうさ!何せ、悪行を正義だと思う者にとって、敵は等しく悪なのだからな!」


 ゲラゲラ笑う黒鬼にアカツキは顔をしかめる。

 自分達が悪だと?あれだけのことをしておいて、相手を悪などと良くほざける。


「その戯れ言もここまでだ。命を弄んだお前を、許しはしない」

「許しなど求めていない。何より、我等の命を弄ぶ悪鬼にはな…………」

「………勇者、暁晴也」

「…………クローニ」


 黒鬼、クローニは面倒くさそうに返した。まるで親に適当に名前を付けられて、その由来を知ってしまい落ち込むように。






「あれ、取り乱さないんだねお嬢ちゃん」


 ニコリと笑うリリスの言葉にリリィは無表情で主を殺した男を見る。


「ちなみにネタばらしすると、ジャオは素面で私に惚れてるの。だから、この契約の対象外」

「そうやって、幾つのダンジョンマスターを騙し討ちしたのですか?」

「騙される方が悪いし、覚えてなーい。それについてまあ、利用できる奴はきちんと残してるよ?まあ影では『新人潰し』なんて呼ばれてるけどね」


 自分の名を知らない新人に、歩み寄り利用する。それがリリスの手口だ。今回はたまたま近くにダンジョンが出来たから顔を出してみれば予想外の方策だった。


「この子、顔は可愛いし私に惚れてたみたいだし生かしても良かったんだけど……ま、気分よ」

「そう、ですか………」

「あら、怒った?でも無駄よ、もう貴方達の主は私だもの。あ、ジャオに八つ当たりしちゃ駄目よ?」

「八つ当たり?それはこんな風に?」


 ドゴ!とジャオが壁に叩きつけられた。本物のダンジョンマスターが隠れる部屋のため、維持ポイントが使われており壊れない壁のため罅は入らないがその音でどれだけの威力で殴られたのか察する。


「…………へ?」

「何時まで寝ているんですか?起きてください、マスター」

「な、何言って………」


 ドシャリと虚空からシュヴァハがもう一人現れ床に転がった。近くに転がる己の死体の血を浴びながらピクリと指を動かす。


「成る程、こういう風に残機が消費されるのか。わかりやすい」


 ムクリと起き上がったシュヴァハは己の死体を見やると興味深そうに笑った。


「は、はあ!?何で………待て、残機?まさか、残機の事!?有り得ない、お前みたいな新人がそんなレアスキル持ってるわけ………非売品なのよ!?」

「非売品?あ、俺は持ってるから売ってたのか………けどまあ、これが現実だぜ?」

「……………ごめんなさいね」

「………あ?」


 あっさり謝罪したリリスにシュヴァハは顔をしかめる。軽い感じの謝罪には誠意がこもっておらず、とりあえず言っただけ感が半端ない。


「騙そうとしたのは謝るわ。でも、お互い傷つけ合えないんだから無意味じゃない?」


 ジャオを見ると目が虚ろになっていた。魅了状態にあるのだろう。となると確かに契約対象内。

 『互いの眷属、または魅了した僕やテイムした者達同士によるマスターへの攻撃、戦闘行為の禁止』という盟約がある限り攻撃は出来ない。ハズだったが…………。


「リリィ、やれ」

「はいマスター」


 シュヴァハの言葉にリリィはジャオの腹を蹴りつける。


「な………!?」

「忘れたのか?契約内容には、『契約内容は勇者アカツキ・セイヤの対処が住むかどちらかのHPが全損するまで有効』って書いてたろ?」


 通常、そのような内容が無くても相手が死亡した場合生き残った方がダンジョンの全てを受け取る。が、蘇生系のスキルを持っている場合は話が別だ。


「そのための内容………私が裏切ると解って………!ジャオ、何時まで寝てるの!早く殺せ!」

「じゃ、俺は逃げさせてもらうぜ。後は任せたリリィ」


 シュヴァハはそう言うと扉を開け逃げ出した。ステータスを弄り素早さを強化していたのもこの為なのだろう。


「ジャオ、その女を殺して起きなさい。油断するじゃないわよ!」


 回復魔法をかけ、更に魅了の応用でリミッターを外されたジャオがリリィに迫る。これで此方の足止めは出きる。

 リリスは自分をこけにしたシュヴァハを殺すために部屋から飛び出した。

感想お待ちしてまーす



魔蟲王 名前:シュヴァハ 状態:寄生 Lv12 魔結晶24

HP 654/654

MP 680/680

CP 最大10710

DP 5207

攻撃力:151

防御力:95

精神攻撃:168

精神防御:1204

命中力:104

素早さ:10000

運:2206


スキル

《ガチャ》 《ログインボーナス》 《創糸Lv3》

《操糸Lv6》 《残機Lv3》 《斬糸Lv4》

《寄生》《韋駄天Lv1》《逃げ足Lv1》

《蜃気楼Lv1》

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