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迎撃準備

「へえ、明日ねえ……意外と早かったのねぇ」


 俺の報告を聞いたリリスは爪を磨きながら余裕そうに言う。ちなみに今現在俺がいるのは不返の城の深層。

 客人が珍しいのかさっきまで虚ろな目の男達を相手していた際どい格好のサキュバス達がチラチラ此方を覗いてはリリィの一睨みで引っ込んでいく。


「まあ取りあえず、罠について考えましょう?」

「分断系でいいんじゃねーの?お前の目的、勇者を手に入れることだろ?」

「…………え?」


 そもそも此奴が本当に戦う気なら、俺みたいな素人とくむ理由なんて無いはずだ。足を引っ張る可能性があるのに。

 幾ら強い眷属がいるからって、足並みをそろえられるわけでもない。大方勇者に当てて疲弊した勇者を魅了するのが目的だろう、と当たりはつけてみたが、正解だったみたいだな。


「……バレちゃったか♪そうだよ、私は勇者という戦力が欲しかったんだ。でも、あなた達に期待しているのは本当よ?」

「…………」


 正解は正解でも、半分は……がつくみたいだな。

 何か別に目的があったみたいだが、まあそれは予想してた。問題は俺が立てた保険がどの程度通用するかだな。


「なら良いか。でだ、分断なんだが……地下に空間作ってそこに落とすってのはどうだ?普通に分断するより時間が稼げるだろ?」

「……手伝ってくれるんだ?」

「すでに契約してるしな」

「それもそっか」


 それに俺1人で勇者を相手に出来るとは思えないしな。リリィに魔結晶を渡せば違うのかもしれないが『破邪の一閃』の現在の威力が解らない以上、その手は使いたくない。

 というわけで考えた罠の図をリリスに見せる。まあ基本的に落とし穴とか突き出してくる壁で、致命傷になるのはないが。


「これだけ?」

「こっちも眷属に戦闘経験を積ませたいんだよ」

「そういうこと……なら良いわ。でも、こんなに地下深く造ったらCPが……」

「上の城の維持を一時的に解除したらどうだ?」


 その場合、壊されるようになるが。

 けど此奴の城はそこそこの広さだし、壁だって厚い。いちいち破壊してショートカットなんて脳筋な方法をとれば即座に質量トラップの仲間入りだ。


「それと深層のサキュバス達はどうする?」

「避難させるわ。あの子達は家畜を飼う意外には使い道ないもの」

「そうか。家畜はどうする?」

「もちろん使うわ。勇者を手に入れた後で増やせばいいしね」


 やれやれその家畜達も可哀想になぁ。ダンジョンの深層に入ったばかりに、ひょっとしたら友人と殺し合いになるかもしれないんだから。まあ、俺には関係ないけど。

 後はそうだな………


「召喚、ブラックオーガ…」


 俺の言葉と同時に黒い肌をしたオーガが現れる。前回召喚したオーガよりも僅かに大柄で、しかしその人見に宿る理性の色は比べ物にならない。


「惨状奉りました我が王よ」

「よろしくな。お前には勇者の相手をお願いしたい。あ、もちろん強化はしてやるよ」

「御意」

「……ブラックオーガを出すの?」

「ボス部屋造ってそこに入れとくんだよ。全快の勇者に魅了かけられるならこんな面倒なことしないが……」

「よろしくねぇ♪」


 エリザの件から解ってたことだけど、やっぱり魅了にあらがうのは不可能じゃないっぽいな。

 多分だけど、ステータスの精神防御が大きければ大きいほど抵抗できるんじゃないか?


「よし、んじゃステータス強化っと………」


 メニューを開きDPショップの強化を選び、対象にブラックオーガを選ぶ。

 増やす量が増えるほど高くはなるが纏めて買ったら1割引になるみたいだな。あ、これ俺もステータスを買うことが出来るのか。


「まあそれは後で良いか。それよりリリス、上の迷宮も少し変えたい。勇者達とはち合わせたくないしな」

「あら、貴方も私のダンジョンにいてくれるの?」

「……女だけ危険な場所においてけるかよ」

「ふーん……」


 その言葉にニマニマ笑うリリス。チョロいな。

 女相手にすんのは前世で馴れてるんだ。少し恥ずかしげに、誤魔化すように言うのがキモだ。女は自分に好意を持っていると思った相手には警戒心が薄れる。

 特にこいつは見目麗しいサキュバスだ。会ったばかりの奴に惚れられる、という自信はあるだろう。


「で、でだ。こういう風にしねーか?」


 ダンジョンと言うのは、誰でもクリア出来るようにしなくてはならない。0に近くても完全に0には出来ないようになっているのだ。絶対に壊れない壁とか無料で作れるゲームとか羨ましいよなマジで。

 話がそれた。ようするに一本道に即死系の範囲トラップは置けないのだ。魔法とかで対処可能なら別だけど。

 今回はそんなCPが掛かりそうなもんじゃないがな。迷宮を二つに分けて真ん中に壁。唯一の入り口をブラックオーガ用の偽ボス部屋に作るという簡単なものだ。

 まあCPの消費を押さえるために城の維持にCPをかけてないから完全に封鎖も出来るんだけどね。


「成る程、此方に来るには嫌でもブラックオーガと戦わなきゃならないわけね」

「そういうこった。まあ勇者君が壁破壊する脳筋なら話はかわるけど……」


 最も、迷宮を分ける壁の一部を壊したら周辺が確実に崩落するだろうが。


「アナタって思ったより優秀なのね。どう?今回の協力関係が終わっても、個人的につきあわない?」

「やめとく。まだまだ若輩者なんでね」

「部下の貸し借りだけでもいいのよ?」

「それもだめだ。俺糞弱いから護衛を万全にしときたい」

「………そう」





 ベートとハクを護衛として扉の前に立たせ、用意された寝室のベッドに寝転がる。

 本当なら寝る時は本体と器を切り離したいがここはリリスの本拠地。何時監視されてるか分かったもんじゃない。器を俯せに寝かせて最近俺の監視カメラとして活躍中のパラサイト・スパイダー達を少しずつ放っていく。

 リリスは……ふむ、俺の提案通りにダンジョンを作り替えてるな。ぶっちゃけ、あれそんなに良い作戦でもない気がするが、まあダンジョンマスターとしてはともかく、勇者を迎え討つのは素人ということだろう。

 俺は……ステータス強化でもするか。

 しかし俺のステータス見事に運が高いな。

 多分だけど、レベルアップの際のステータス向上条件はそのレベルの間に何をしていたかだ。ガチャばっかやってた俺は当然運が強くなるし、経験値は基本的にダンジョン内で部下が倒したおこぼれを貰って動かないから素早さを筆頭に他のステータスは軒並み低い。

 そうなると何で精神防御が高いのか謎だけどな。

 実は大量の蜘蛛やゴキブリ達に思うところでもあったのだろうか?

 それとも実は罪悪感がないのはやっくんに初めからコレを高められてたおかげ?或いは……だとしたらまあ、俺に打つ手なんてないけどな。

 それよりちゃっちゃとステータス強化をしよう。

 後使えそうなスキル買っとくか。ん?へえ、手に入れるステータスによっても値段変わるのか。



 さて翌日。

 俺は部下にそれぞれある物を渡すことにした。


「ハク」

「はい……」

「これをやる」


 DP2000の薙刀と、顔を隠す仮面だ。俺の部下たちには何時か人化してもらう時が来るかもしれないから顔を隠しておいてもらわないと。


「ベート」

「おうよ……」

「お前は顔隠す必要ないし、取りあえず朝飯」


 そう言ってDP3000のA5肉を与えるとうまそうに食い始めた。


「アルカードはコレを使って顔隠せ」

「………畏まりました」


 此奴、今一瞬迷ったな。まあ良いか。


「最後にリリィ……」


 ちなみに他の眷属、スコロペンドラゴンやレルム・グリレとかはダンジョンで番をさせてる。


「仮面と魔結晶。魔結晶は必要に応じて判断してくれ」

「………はい」

「それと………いや、何でもない」

「………そうですか」


 どうやら俺の持つ懐疑心に気付いたみたいだ。そりゃ気付くか。謎が多い奴だけど、多分敵ではないと思う。思いたい。

 実際、リリィは当初こそ直すように言われるまで俺のことをチビだのチキンだの言ってたが盗賊達相手に使った『ゴミ』とか人間に対して使う『害虫』なんて単語は使わなかった。今はまだ、聞かなくて良い。

 大事な作戦実行だってのに、余計なこと言って拗らせるわけにも行かない。


「………この戦いを無事、切り抜けましょう」

「そだな……」


 リリィの言葉に俺はただ頷くのだった。

魔蟲王 名前:シュヴァハ 状態:寄生 Lv12 魔結晶24

HP 654/654

MP 680/680

CP 最大10710

DP 5207

攻撃力:151

防御力:95

精神攻撃:168

精神防御:1204

命中力:104

素早さ:10000

運:2206


スキル

《ガチャ》 《ログインボーナス》 《創糸Lv3》

《操糸Lv6》 《残機Lv3》 《斬糸Lv4》

《寄生》《韋駄天Lv1》《逃げ足Lv1》

《蜃気楼Lv1》


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