女騎士との密談
「まあ端的に言うとだ、ユノは君に不快感を覚えているんだ」
エリザは何の躊躇もなくそう言い切った。
ユノってのはあのロリッ娘の名前らしい。
「不快感だぁ?」
「彼女は元々暗殺者でね……幼少より命を落としても可笑しくない訓練を受けてきた。
冒険者は常に身の危険があるだろう?自分と同じぐらいの子供が、自分から身を危険に曝すのが気に入らないんだ」
ロリッ娘暗殺者って、ますます勇者がラノベの主人公じみてきたな。今回の失態でこの街での評価は落ちてるけど。
「……ん、暗殺者?勇者君なんでそんな奴と一緒にいんだ?人を殺す生業なんて、あの勇者君が最も嫌いそうな職業だけど」
「ああ、彼女は元々、エンリ様の婚約者を狙っていた貴族達の送った暗殺者なんだが、私が捕らえてね。殺す前にセイヤに止められたんだ」
「成る程。大方『君のような子供がこんなことをするべきじゃない』とか『例えどんなに君の手が血に汚れていても、僕はこの手を離さない』とか『罪を償おう、僕も手伝うから』なんて言葉にのせられたんだろ?」
俺の言葉にエリザは初めて僅かに動揺した。
「すごいな。その通りだ。良く解ったな……あ、まさか──」
「同じ事を言うだろうな。勇者君みたいな“本心”ではないが……まあしかし何だ……あのチビ、チョロインなんだな」
「チョロイン?」
けど勇者の奴随分甘いな。けど、丁度良いかもな。エリザはあくまで借りを返しただけ。今後此奴から得られる情報は限りがあるし有料になる。
勇者アカツキが脅威になるのは間違いないし、スパイは造っておいた方がいいだろうし。
「悪い顔だな。ユノのような存在を作る気か?そううまくは行かないさ、他の暗殺者の処刑には特に何か言われた覚えはない。ユノが特別なんだろう」
「どうせ他は『こんなことしても良い大人』や『血に汚れて掴みたくない手をした男』や『贖罪に付き合う気も起きないブス』だっただけだろ?」
「ふふ。良く解るね」
「解りやすいんだよ彼奴は。彼奴の正義は『弱そうな相手のために戦う』だろうからな……まあ、大抵の奴がそういう正義を尊ぶんだろうが」
そんな本人の主観や多数決で簡単に変わるものを正しい義なんて名付けて掲げるんだから少数派は何時も迷惑すんだ。
「弱そうな相手、か……言えているな。平和な世界で育った殺し合いも知らず、力だけ手に入れたガキが見下してくれる」
まあエリザの言葉もわからんではないな。あっちはあっちで極希にだが誰かが誰かを殺すこともあるが。
1人死んだだけでニュースになる当たり、この世界に比べると遙かに平和なんだよなぁ。
「つーかお前、勇者嫌いなのか?」
「この世界である程度生きた転生勇者や純粋にこの世界の住人である選定勇者ならともかく、この世界も知らずにこの世界を救うなどと吠える輩は基本嫌いだ」
「なのに勇者と共に、ねえ……それはやっぱり主の命令か?」
「ああ。あのセイヤを殺す方法を考えてくれるらしいからな」
「…………へえ」
殺す方法を考える。ねぇ。随分とぶっちゃけてくれる。
俺があの勇者を嫌っているから………じゃないよな。この部屋に入った瞬間リリィに魅惑の芳香を弱めに使ってもらったから思考力が落ちているのだろう。狙い通り。
とはいえ、今のエリザは同じ相手を嫌いだから話があった、程度の親しげしかない。深くやりすぎると前回の盗賊達みたいに完全に意識を失って、違和感を持たれるだろうしな。
ギリギリを見極めないとまずいだろうな。此奴の主は勇者を殺そうと考えるような奴だ。連絡手段だって普通じゃないだろうし、状態に《魅了》と表示されるレベルで魅了したら察知する、なんてスキルを持って此奴を監視しているかもしれない。
リリィ曰わく現在は監視されていないが、条件を満たすと連絡が行くような術式もこの世界にはあるらしいし、状態異常にはならないようにしねーと。
「ちなみに今回来たのは、その方法が整ったからか?」
「いや、下準備だ。最も、必要なくなってしまったがね」
「……………」
必要なくなったってのは、もう起こったからだろう。つまりモンスターの襲撃と、それによる素人の無能さか?
そういえば此奴だけ市民の盾になるだけで破壊力のありそうな攻撃はもちろん指揮なんかもしてなかったな。ドラゴンが出たばかりの村に顔を出すぐらいだし、指揮をしたことがないわけではないだろう。
さすがにモンスターの被害があったばかりの村に兵を引き入れずに向かう貴族なんていないよな?
「お前が勇者を殺したいのは解ったが、随分な理由だな。嫌いだからって」
「失礼な。この先脅威になるからだよ……好き嫌いで人を殺すほど落ちぶれてはいないつもりだからね」
脅威ねえ。まあ確かにあのスキルは驚異だわなぁ。おまけに勇者はあんな性格。ひょっとしたら国の闇を見てこの国を変えるべきだなんて言い出しかねん。
ゲームかなんかじゃ敵を倒してはい終わりでもこの世界じゃ国の上層部を倒した後国を回していける人材を見つけなきゃいけないだろうし……ひょっとしてそれか?此奴の主が恐れているのは。
殺されるかもしれない側の上層部なのか殺されはしないがタイミングに気を使ってる上層部なのかは知らんが。
「正義を振りかざして世を混乱させる輩は、初めから敵と公言してくる相手よりよほど厄介なんだよ。特に、勇者に王族がペアではね……いい御輿にされる」
「だから発言力をそぎ落として早めに殺したいわけか」
「ああ。と、話しすぎたな……」
エリザはチラリと外を見る。だいぶ日も傾いてきたな。
「では私はコレで……」
「ああ。リリィ、途中まで送ってやれ」
「はい」
知りたい情報は知れたが、少し知りすぎた。
エリザが親しい仲には包み隠さずはなすタイプってのもあるんだろうが幾ら何でも勇者殺しはな。
帰り道、酒で酔わせてから魅了をかけて今回の記憶を有耶無耶にさせておいてもらおう。
と、思った時……
「そうそう。私の主に君達の話をしたらいたく興味を示してね。今回は投資だそうだ。それと、これで称号《高潔なる者》を持っているので魅了耐性は持っている。ステータスに表示もされない程度の魔道具では私を操る事は出来ないよ」
「………」
パタンとドアが閉まる音を聞いて俺はベッドに身を投げ出す。
「……どうします?」
「手を出すなよ。向こうの地位がわかんないんだから」
リリィの言葉に俺はそう返してため息を吐く。
やられた。俺が勇者を殺すという話を聞いても気にしないどころか、興味を持ったことまで知られた。
正体まではバレてないと信じたいが……。
「……アルカード」
「ここに」
影が蠢き中からアルカードが現れる。
「ご要望通り冒険者何名かを一時的な眷族にして、会議を円滑化させておきました。明後日の日の出とともに不返の城に向かうことが決定しました」
「じゃ、帰るぞ。んでリリ──」
「あの小娘の城に向かうのですね。畏まりました」
「あ、うん……」
何かリリィの奴リリスをリリスと呼ぼうとすると口を挟んでくるな。名前が似てるから気に入らないのか?
魔蟲王 名前:シュヴァハ 状態:寄生 Lv12 魔結晶24
HP 654/654
MP 680/680
CP 最大10710
DP 93514
攻撃力:151
防御力:95
精神攻撃:168
精神防御:1204
命中力:104
素早さ:11
運:2206
スキル
《ガチャ》 《ログインボーナス》 《創糸Lv3》
《操糸Lv6》 《残機Lv3》 《斬糸Lv4》
《寄生》
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