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女騎士とダンジョンマスター

 冒険者証明書を門番に見せ、あっさり中に入った。やっぱ取っといて良かった。

 フリークエスト扱いのモンスターの部位を売り、ポイントを受け取ってギルドから出る。

 パンデミック・スパイダー達は普通の蜘蛛にキチンと紛れていて、餌も路地裏や料理店の裏で取っているようで減っていない。むしろ増えてる。

 さて、早速街の情報を整理するとしよう。


「………お」


 勇者が何やら面白いことしてるな。





 路地裏に行くと勇者が炊き出しをしていた。

 言葉だけじゃないのはまあ、感心するが炊き出し目当ての客に比べ金や人手が足りないのか量はあまりないな。

 それに、本来なら路地のゴミを集めたり掃除したりして小金を何とか貰ってる奴らに飯を与えているせいで街の汚れが前回より増えている。さらに付け足すなら人手不足で列の整理ができないから割り込みが多発し子供達なんかが無理矢理追い出され、一度並んだ奴がまた並んだりしている。


「国の援助金は出なかったのでしょうか?」

「今の現状が答えだろ。国としては税も払えない貧民達に施しを与えてやる義理はないしな……というかそういう連中がいた方が案外国は回る。そうなりたくないと働く奴が増えるし、ならず者もそっちに行って暴れるから表の被害は少なく住むし」


 もっとも、そのならず者を捕まえるだけの兵力や最低限の金は与えてやれるだけの仕事があるのが理想の国家なんだろうが。


「あの様な輩がダンジョンマスターになっていたら、水源だの果樹園だのを生み出しCPで破産しそうですね……」

「元々水源があるならともかく水を生み出す場所をダンジョンの力で創りゃそれはな……」


 割に合わないだろうな。

 水源の一日の消費CPは規模にもよるが現状この場にいる人数に賄うなら最低でも2000。

 果樹園なら3200ってとこか?無限の水と食い物が手にはいると考えればまあやすい方だが流石に冒険者でもない貧民から得られるCPじゃ数週間で尽きる。


「まあそんな無駄かつリスクの高い事なんてお人好ししかしないだろ。するなら金を貰う」


 金をDPに返ればCPを買える。割に合うわけだ。無償の善意で寄ってきた奴らにもう無理ですなんて言って切り捨てることになるなら初めから手を差し伸べるべきじゃない。


「あ、おいアンタ!アンタ確か金持ってたよな!」


 と、列の後尾に居る連中が不意に此方に来た。大方なかなか自分の番が回ってこずにイライラしていたのだろう。


「そんだけ金を持ってるならアンタらも勇者様を見習ったらど──」

「リリィ」

「はい」


 ゴシャア!と音がして何時の間にかリリィが男の頭を踏みつけていた。地面に罅入ってるけど生きてるよね?


「う、ぐ……」


 あ、生きてた。


「悪いなおっさん。俺は家畜の主、牧場主になる気はないんだ」

「ぼ、牧場主……?」

「ああ、無制限に何かを対価もなく求めてくる奴らなんて獣と同じ。おまけに豚や牛と違い肉にならないのだから質が悪い。

 俺はお前等に無限の水源や、食糧を与える力があるがしない。働くならまあ一部を与えてやるがな」

「い、一部だと……そんな財力があるくせに……」


 財力じゃないんだけどね。


「少しの労働に多くの報酬を求めるのは獣にも劣るぞ。そんな生き方ならしたいなら大人しくその列に並んでろ」

「…………」

「そうだな……しかし俺は優しい。お前は男だし冒険者をやってける。登録料と食費を何時か返してくれるなら、この場で奢ってやっても──」

「そこまでです!」


 と、俺が自費で金を与えようとすると割り込んで来る者が居た。この国の第二王女エンリ……何だっけ?ああそうだ、エンリ・イリアーナ・エーデル・リスリーゼだ。


「おや王女様、私のような一介の冒険者に何か御用で?」

「話をする前に、その足をどけさせなさい」

「コレはとんだ失礼を。リリィ……」

「…………」


 リリィが足をどかすと男はひぃぃ!と逃げ出していった。


「相変わらずですね。飢える者に手を差し伸べようとしないのですか?」

「これは意外ですね。会ったのは一度きり、なのに相変わらずと言ってくれるほど私を理解してくれるとは」

「人を見る目はあるつもりですから」


 嫌味だよ。


「それに手を差し伸べないとは人聞きの悪い。私は彼に冒険者になるという道を示すつもりでした。

 甘やかされ、怠惰な豚になるよりはよほどましな生活ができるかと思ったのですがね」

「自分の持つ金銭を守りたい者には、セイヤ様の優しさが理解できませんか」


 嫌味言ってんのはこっちなのに嫌味返しされた。

 優しさねぇ。永遠に続けられない救いならやらない方が優しさだと思うんだけどな。


「出来ませんね」


 少なくとも俺から見た勇者のやってることは優しさじゃなく、単なる自慰だ。

 目の前の人を救って自分には人が救えるだと思い込みたいだけのようにしか見えない。


「っ!もう良いです。時間を無駄にしました」


 そう言うとお姫様は去っていった。こっちも時間を無駄にした気分だよ。


「すまないね、エンリ様はセイヤにぞっこんなのでつい、彼とそりが合わない者に強く当たってしまうんだ」


 と、そこへエリザが困ったような顔をしてやってきた。なる程ぞっこんね……。

 物語なんかじゃ勇者が魔王倒して褒美に姫を貰って結婚するのが定番だしな。素人を王にしても政治が乱れるだろうけど。下手したら贅沢するために圧制なんてな……。

 あの勇者なら逆に国庫を開いて施しをしそうだけど。


「セイヤも悪い奴ではないんだ……」

「だろうな。連れの女騎士の『あんな風に施しを与えたり敵意を向けたりして、彼が嫌がらせに少女を殺すかもしれない。自分を嫌う相手の前で人に優しくしないことだ』なんて助言をあっさり信じちまうお人好しだもんな」

「何のことかだ?」


 おお、大した演技力。見てなかったら騙されてたかも。


「そうか、俺の勘違いなら良いんだ。こんな映像があるからついな」

「なんだい、その板は……」


 エリザは俺から受け取った片手サイズの板をのぞき込む。そこにはこの街の光景が移されていた。勇者達が飯を配ってるシーンもな。


「……これは?」

「風景を記録する魔道具だよ。これに映ってた奴、てっきり勇者君達と思ったんだがな……そういえばお前が誰かに連絡する光景も映ってたんだが」

「……………」


 もちろん嘘だ。

 これはDPで買ったスマホ。ネットには繋がらないし充電もできない。電池が切れるまで映像を映したり写真を撮ったりするにしか役に立たないゴミだ。そのくせ結構高い。

 リリィに魔法と組み合わせられないか尋ねたが内部が複雑なので無理ですと断られた。異世界でスマホ使うの憧れてたんだがな。おまけに買いたてだから音楽を聴くのにすら役に立たないし。


「………目的は何だ?あいにく、私の主については話せないぞ」

「やだな、俺とお前の仲だろ?脅しになんて使わんさ」

「……成る程、子供でも男というわけか」

「おい、なに勘違いしてやがる。勇者君の情報を逐一俺に流して貰いたいだけだ」

「それは無理だ。私の主は、雇い主などという関係には収まらないし、私1人よりあの方の御身の方が大切だからな」


 ッチ。流石に聞き出せないか。

 しかも此奴の言う大切な御身が此奴個人なのか国にとってなのかも解らない。


「なら、勇者君をけしかけた理由を教えろ」

「黒髪だからね、てっきりセイヤの同郷か、子供にしては大人びていたから転生勇者の可能性を考えたんだ。彼等は基本的に強大な力を有している……」

「ぶつけあわせりゃその力が見れるかもと思ったわけか。生憎だけど俺はすんごく弱いぞ。この二人がいなきゃ強くでれないしな」


 嘘を見抜く方法があると困るから嘘は言わない。

 エリザはしばらく俺をみた後、そうか、と納得した。


「約束は守ってくれよ?」

「解った。どのみちコレはあまり価値がない」


 DP的な意味でも、交渉材料的な意味でもな。だってこれ、本当は会話のシーンなんて撮ってないもん。

 スマホを地面に投げつけると踏みつける。

 ………あまり壊れていない。いや、機能は完全に停止してるんだろうけど。


「……アルカード」

「はい」


 アルカードが踏みつけると完全に砕け散った。


「個人的には仲良くしたいんだ。恩もあるしな……お互い、深くは尋ねないようにしようじゃないか」

「そうだな。表面だけ見て中身をみようとしない輩との付き合いにはなれている。貴族なのでね」

「貴族ってのは恐ろしいねぇ。ははは」

「ふふふ。最近増えてきているマヌケ共よりは、君の方が恐ろしいよ」


 俺達はお互いに笑うとその場から去った。

 しかし、配膳をしていたあのロリッ娘まぁた俺を見てたな。本当に何なんだ?

 まあ良いか……。

 お待たせお前等。時間だ、来い!


『『『ギャオオオオオオ!!』』』


 と、森の方から叫び声と共にレッサーワイバーン達が現れた。さて、早速始めるか。勇者アカツキを殺すための前準備を……。

魔蟲王 名前:シュヴァハ 状態:寄生 Lv12 魔結晶24

HP 654/654

MP 680/680

CP 最大10710

DP 93514

攻撃力:151

防御力:95

精神攻撃:168

精神防御:1204

命中力:104

素早さ:11

運:2206


スキル

《ガチャ》 《ログインボーナス》 《創糸Lv3》

《操糸Lv6》 《残機Lv3》 《斬糸Lv4》

《寄生》


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