儀式しました
ちょっと、納得出来なかったので後半を大幅に加筆修正しました。深夜の変なテンションで投稿するのはもう止めにしよう。
遂に待ちに待った魔法を使うための儀式が来た。こんなにワクワクしたのは修学旅行以来だなー!ウッキウキのワックワクでゼルトさんと教会に向かい、儀式を受けた結果。
「あれ?使えないのですが?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?天の神と地の神の加護を受け付けないモノがいるなんて!?!」
「静粛に!!加護を受け付けないということはこの者は異端者である!!これより異端審問のため、身柄を拘束しろ!!」
「え……??」
私の言葉にショックを受けた神父さんに回りが動揺し、騎士みたいな人が沈めつつも私の身柄を拘束する発言に耳を疑った。
きゅ、急展開過ぎて思考が追いつかないんですが?
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という事はない。
儀式を受けて魔法もすんなり問題なく使えました。この世界の住人ではない私としては冒頭のような事を少し頭に掠めていたが、何も無くてホント良かったー。
ゼルトさんに連れられて訪れた場所は教会。キリスト教みたいに十字ではなく、なんか分からんマークが付いていた。英語のIのマークの上下に小さな丸が付いた馴染みのないマークだ。こういうのを見ると異世界特有だなー、と観光気分で飾りを眺めた。
(上が男神で下が女神か……)
ゼルトさんが言うにはあの小さな丸は神様を表してるとのこと……うん、よく分からないが頷いとこう。いっそ、日本みたいにキャラクター化してくれたら私にも解るんだかなー。もしくは緩キャラでも可。
内装は日本のテレビで見た教会みたいに厳かで声を出すのも躊躇われる雰囲気を醸し出していた。声も凄く反響するので余計に声を出すのを気持ち小さめの声量で会話したかったが、ゼルトさんは慣れた様子で「こんにちはー!!」と大きな挨拶で入っていったのにはスッゲー焦った。
中に入ってからは私はゼルトさんの出身について聞かされた。ここの教会が経営する孤児院出身で神父さんにはとてもお世話になったよー的な感じの話だ。
出会って数日しか経たない私としては「1人で語り出したんだけど、この人」である。困惑しか出ない。それでもバイト先で培った酔っ払いの話に耳を傾けつつ切りの良いところで話を切る事が出来た私。まさかの恩人に酔っ払い対策をするとは思わなかった。
改めて神父さんを訪ねたら、「神父様はお出かけなのでお昼過ぎにまたお越し下さい」茶色の服を着た修道女らしき人に言われた私のこの気持ち!!
今の気持ちはアレだ。好きなモノの発売日が急遽延期された時に
似てる憤りだ。 ま、相手にも都合があるし仕方ないよなー……クールダウンするんだ、私、クールダウン。
んでゼルトさんの奢りで飯食って……益々、受けた恩がデカくなって居たたまれない。早いところ返してスッキリしたいんだけどなー……お金を稼げない現状が辛い。小遣い程度は貰ってるけど、やっぱ、少ない。
なんて、沈んだまま教会を再度訪れると神父さんはいた。水色の服を着た優しい好々爺って感じでチョー介抱したくなった。思わずお爺ちゃんって言いたくなるくらい和んだ。
ゼルトさんの育ての親である神父さんは偉い人らしく、常に教会専用の騎士が着いていた。こういうの聖騎士って言うのかな?いや、面倒だし教会騎士で良いか。
教会騎士はゼルトさんと同じ孤児院出身らしく、性格は微妙に俺様?小生意気?なんか腹立つ。何でもズバズバ言ってくるサバサバ系だ。歯に絹着せないってことの事を言うんだろうな。
だが、それでもフルプレートはカッコイイ。金属特有の光と音を放つ鎧。サイコーに良いよね。ドラ〇エやF〇をやって来たゲーム好きとしては感動モノである。出来るなら今度剣を振るところを遠くから見てみたいなー。
あ、言い忘れてたが、神父さんの名前はルバシェフ。お付きの教会騎士はロスシールドだ。
「これでアキトも魔法が行使することが出来るね」
儀式を無事終えた私が安堵の息を吐き出してるところに微笑みを浮かべたゼルトさん。教会の雰囲気と内装にとてもマッチして立っているだけで神々しい感じがしてきた。拝んだらご利益ありそう。
「はい、これで私もなっかま入りーですね!!」
「なっかま入りーか。良かったね」
……イケメンの「なっかま入りー」とか可愛すぎじゃね?まさか、真似されるとは思わなかっただけに胸にキてしまった。ふざけていた分、身構えてなかっただけにグボッと腹にワンパン喰らったような感じでキたなー。
「魔力値も多いみたいだから魔法には困らないと思うよ、僕に次いでだけど」
「ゼルトさんの次に多いと言うと?」
「酷い状況下で魔物討伐をしたことがあったんだけど、その時は攻撃魔法をぶっ続け……何時間かな?生きるか死ぬかの局面下でもあったから必死だったけど、太陽が天辺から沈むまで使ってた、かな?」
笑顔でさらりと九死に一生な体験を吐きやがったぞ、この人。思わず、驚きから目を剥いてゼルトさんの顔をよーく見ると目が明後日の方向を見ていた。うわー、この人なんか病んでない?
哀愁とも何とも言えない複雑な雰囲気が漂うその姿に体を労るように背中を軽く叩きながら、
「無事で何よりです。怪我とか大丈夫でしたか?」
「……うん」
「後遺症とかも無いですか?」
「うん、大丈夫だよ……ありがとう」
その内、良い事あるさ。イケメンなんだからリア充も夢じゃないからなー。
そんな思いを込めて言葉を掛けると何故か、ありがとうの言葉を掛けられた。ホントに大丈夫か?
「ホッホッホッ、ゼルトは良い子に巡り会えたようじゃの」
「神父さま……はい、そうですね」
神父さんの言葉に笑みを浮かべて返事を返すゼルトさん。育ての親と育てられた孤児という関係性の2人の会話に興味があったので黙って耳を傾けようとしたところで頭に重くて硬いモノが乗っかってきた。
「んがっ」
「おい、ガキ。お前、このままだと苦労するぞ?」
それは神父さんに付き従っていた騎士ロスシールドの手だった。
今更だが、私の身長は153㎝、そんなに小さくないはずだが、この世界では子どもサイズらしい……遺憾の意である。そんな私より高い身長を有するロスシールドの手が頭に乗ってるのだ。フルプレートである鎧の重量も多少含まれているのか地味に重いだけどなー。というか、邪魔だなー。
手を退かしながら騎士に言われた言葉を反芻して考えてみたが……苦労とは一体なんだ?
「苦労ってどういう意味ですか?」
「見て分からねえか?ゼルトだよ。あいつのせいで苦労するって言ってるんだぞ、俺は」
「………ん?」
「……本当に分からないのか?」
「…………」
何こいつ?
何を言いたいのか伝えたいのか、サッパリ分からない。もしかして、魔法の事か?いや、それにしては物言いがゼルトさん自体を差してる気が……うぅん、分からん。
無い脳味噌で教会騎士であるロスシールドの言いたい事を黙って考えいたら、ロスシールドからため息を吐かれた。
「ゼルトの外見」
「はぃ?」
「あいつの見た目のせいで苦労するぞって言ってるんだよっ」
「見た目?」
見た感じは優男風なイケメン。あと、夏場に見ると涼しそうな色合い。教会に居たら神々しくて近寄り難い感じの見た目だが、何か不味いのだろうか?
言われた言葉に呆然とする私を呆れた様子で見下ろすロスシールドから何故か苛立ちようなモノを感じた。なんか地味に苛立ってるんだけど、この人。見た目のせいって、あれか?イケメンだから妬みや僻み的な……あー、もしかして、私ってゼルトさんに寄り付く害虫認定されているのか?
この態度から見て、会ったばかりの私の心配よりもゼルトさんの心配をしていると思った方が良い。幼なじみの青年が連れてきた所在の知れないガキが1人……うん、私がロスシールドの立場なら根掘り葉掘り聞きたいかなー。寧ろ、友人と関わりがないような場所に預けたい。
なら、出来るだけ波を立てないように言い返さないとな。
「見た目とかどうでも良いんですよ。私はゼルトさんに頂いた恩を返したいだけなんです」
「恩?それ、どういう意「迷子の私に気遣って第5警備隊まで一緒に行ってくれた人ですよ?」…………」
ロスシールドが何か言いかけたが速攻に被せて言うと、私の言葉に耳を傾けてくれた。声量はロスシールドに聞こえるぐらいの大きさで更に私は話し続けた。
「迷子の私が迷子なりに色んな人に話を聞いて第5警備隊を目指しましたが、皆アッチだとかコッチだとかで大まかだし、中には違う方向を教える人も居ました。そんな中、ゼルトさんだけが心配して道案内も兼ねて一緒に行ってくれたんですよ?」
「…………」
「見知らぬ土地で迷子だった私としてはゼルトさんの優しさはそれはもう身に浸みましたね。あの時の安心感は忘れられないですね。それに第5警備隊でも色々お世話になったし、身の回りが落ち着くまで傍に居てくれた事、心強かったです」
「あいつはお人好しだからな」
「そうです。少ししか会ってない私でも解るくらいのお人好しです。だから、受けた恩はキッチリ返さないと気が済みません。あの人から受けた親切のおかげで今こうして居ることを感謝してます。だから、ゼルトさんに迷惑掛けないように気を付けますから、その……」
途中まではスラスラ言えたが、最終的にロスシールドに何を言ったら良いのか言い淀んでしまった。
「ゼルトさんと一緒に居て良いですか?」しっくり来るが毎日一緒ってわけじゃねえしなー。
「大丈夫、私、イケメンに惚れ込んで一緒に居るわけじゃないから!」受けた恩、云々《うんぬん》が台無し。
「ロスシールドさん、ゼルトさんを私に下さい!」嫁を貰いに来た彼氏かよ。
ああでないこうでもない、と考えた結果。
「近くに居て良いですか?」
一緒だと近すぎる感じがするので濁すように近いという言葉にしてみたが、やっぱり微妙に言い方になったなー。なんか、彼女の父親と上手く折り合いを付ける彼氏みたいな気分なんだが、
「……好きにしろ」
「っっ、はいっ、ありがとうございますっ」
ロスシールドからまさかの了承。頭の中でドラ〇エのレベルアップのBGMが流れた。
よっし、言質取った。いや、頂いただな。
特に言い合いをしてないが言い負かした感がして勝利の優越感に浸りながらゼルトさんと神父さんに目を向けると、
…………何故か、ゼルトさんが泣いていた。
おぉ、神よ。彼は何故泣いているのですか?(汗)
1Pの誤字脱字修正、今度こそしよう。