迷子確保(とある隊員視点)
ーとある第5警備隊所属隊員side
今日と明日は休み!
第5警備隊宿直を終えた僕は詰め所前でグッと背伸びをした。宿直は昼から翌朝まで務めるという中々キツイ内容だが休みが立て続けで貰えるので不平不満を言う者が少ない。その恩恵に僕もあやかってるしね。
「お疲れ、今日と明日まで休みだな」
「はいっ、今から何しようかワクワクしてるんだ」
「分かる分かる。休みってだけでな、こう……気持ち的にな?」
「軽くなるよね」
詰め所待機の任に付いてる同僚であるハンスは背伸びをする僕に笑いかけながら軽い世話話をしていた。それで休みはどうするかの話になったが……どうせ、今日も変わらない内容になるだろ。
「本と魔道具でも見て回ろうかな……」
「相変わらず健全的だな、お前」
「健全って……別にそんなつもりないんだけど」
「お前、20になって本と魔道具中心の生活とか寂し過ぎるだろっ!!俺なら酒と女だな」
ゲヘヘ、と笑うハンスに僕は呆れながら話の内容を軽く流してから距離を取った。これ以上、ハンスから「如何に女性が素晴らしいか、特に娼婦は最高~」と聞かされるので早々に見切りを付けて離れようとしたら、
「お前も俺みたいに見れる顔になれたらなぁ……」
「こればかりは仕方ないよ。その代わり、魔法が優れてたから(孤児の)僕は食い扶持稼げるだけありがたいよ」
「お前なら王都や城勤めも夢じゃねえのにな」
「ふふ、まさか、顔で落ちるとか思ってなかったけどね」
僕は人一倍魔法に優れた魔法使いで、人一倍顔が不細工な第5警備隊員としてナクラーキの人たちに認識され馴染んだ。
孤児で不細工の僕は他の子よりもマイナススタートだったが、魔法が誰より優れていたのでこうして第5警備隊の隊員になれた。
会話の種になるくらい自分が不細工であることを認めている僕は王都務めの不採用時の話になると自然と笑いが込み上げてきた。それを見たハンスの顔は眉を寄せていた。
「まさか、顔で判断されるとか王都の魔法使いは大丈夫か逆に心配するがな。あれで国を代表してるとか笑えねえな」
「でも、今考えると馴染んだこの街を離れなくてすんで良かったよ。1から人間関係作るのはさすがにね……」
「そりゃ、さすがに億劫だな。俺もごめん被るぜ。それにアリィちゃんも居ない王都なんて尚のことごめんだ!!」
「そこで馴染みの娼婦を出す辺りがハンスらしいね。僕も生まれ育った街を離れるのは嫌だしね」
「だな!!」
お互いに笑い合ってから、僕はその場を離れた。
王都の魔法使いには少なからずの憧れていたが、あれ以来喪失してしまった。まさかの顔で落とされるなんて……はぁ。笑って流したが実は今でも引きずっていたりしていた。
王都の魔法使いの武勇伝は孤児の頃から聞かされてきた。勿論、王都の騎士団も凄いと思ったが、魔法使いである僕としては憧れるのは魔法使いの武勇伝である。だから、第5警備隊に居ても王都の魔法使いみたいに僕も誰かを守れるようになろうと思って頑張った。その頑張りが領主さまの目に止まり、王都の魔法使いになれるよう採用試験に行ってみて蓋を開けたら……
(王都に相応しくない身形と出身で落ちるなんて……っ!!)
ふざけるな!!と言いたかった。王都の魔法使いが居る騎士団には既に孤児出身の者もいた。そこから落ちた理由は顔だと分かった、分かってしまった。分かりたくなかった、理解したくなかった。
だから、デューク副隊長は僕を止めようとしたんだ。採用試験に勇んで行こうとした僕を。
(デューク副隊長も僕と同じ思いをしたのかな?)
第5警備副隊長、デューク。
顔が僕同様に怖くて不細工なのに親しみやすい副隊長。男気があって強くて、芯のある人だ。
デューク副隊長なら騎士団に入れそうだが……誰も聞いたことがないけど、僕と似たような経験が有りそうだ。いや、経験してるからこそ、僕を止めようとしたんだ。
「あの、すいません」
「……え?」
「…………もしかして、急いでましたか?それでしたらすいませんでしたっ」(優男っぽいから聞いてくれそうだったが、宛てが外れたな。ま、あんだけ顔が整ってたらリア充してそうだしなー)
「あっ、待って!」
デューク副隊長について有ること無いことを考えていたら、横から声を掛けられた。
思考に耽っていた僕は声を掛けた人物に顔を向けると、そこには黒い髪に黒い目をした中性的な顔立ちの子供が1人。
少年?少女?どっちだろ、この子?
それに珍しい色合いだな。目まで黒い子なんて初めてかも。それに僕みたいな奴に気後れせずに話し掛けるなんて中々肝が据わってるかも、この子。
自他共に認める不細工の面は時として顔面凶器となり、人を厭な意味で威圧してるのだな。あと、厭な意味で人を寄せ付けないし、寄ってこない……自分で言ってて地味に傷つくな。
僕が黙ったままなのに子供はそれを何かと勘違いしたようで丁寧な物言いで謝っては踵を返そうとしたところで僕は慌てて腕を掴んだ。
「……どうか、しましたか?」(何か不味い事でもしたか?)
「あ、急に掴んでごめんね。さっきのは君の髪と目が珍しい色に見とれてただけだから、何も用事はないから大丈夫だよ。それに何か困った事でもあるんでしょ?」
「はぁ、そうですか」(良かったー!ただのお人好しだった!!)
腕を掴まれて驚いた顔で僕を見上げる子供。見慣れない黒い瞳に見られた僕は慌てて腕を離しては出来る限り怖がられないように話し掛けた。それに子供はホッとした様子で浅く頷いた。
優しく、笑顔で……この場合笑わない方が良いのだろうか?この年になって、子供との交流は孤児院ぐらいで見知らぬ子供に笑いかけたところで怖がられないか今になって心配してきた。
子供を見た限りでは特に嫌悪感が浮かんでる様子も無いけど……大丈夫だよね?
「実はお恥ずかしながら迷子でして周辺の方に聞きながら第5警備隊を目指してたのですが、また分からなくてなってですね。それで第5警備隊が何処か教えて頂けないでしょうか?」
「それなら……」
不安気な様子で第5警備隊を探していたが地理に疎いのか迷子だと言ってきた子供。
不安なのに出来るだけ笑いながら話し掛けてくる様子が保護欲が湧いてきた僕は行き慣れた第5警備隊の場所を説明しようとして口を閉じた。
ここでこの子が辿り着けるか解らないし、折角なら第5警備隊まで連れて行こう。その方がこの不安そうな子供の行く先が心配な僕の精神的にも良いだろう。そう締めくくった僕は子供に提案をすることにした。
「どうせなら一緒に行こうか?」
「そんなそこまでお手数かけれませんよ。私1人で大丈夫ですから」
「仕事の都合で行くから気にしないで良いよ」
「そうですか?」(進路方向と逆の道……気、遣われたか。こいつ、マジでお人好しだなー)
「うん、大丈夫だから」
「では、よろしくお願いしますっ」
僕の申し出に対しての反応は僕に対して申し訳ないといった様子で首を横に振っては丁寧に断る様子を見せる子供。
今になって気付いたけど、もしかして、良いところの子供さんじゃないだろうか、この子?
清潔感溢れる様に丁寧な物言いに物腰がそれを顕著に示していた。あと、僕に対して嫌な顔や様子を見せないことがとても教育された子と思う。不細工に優しく丁寧な子供、余り見掛けない擦れてない子供……うん、どう見ても貴族か大きな商家の子だろう。
「じゃあ、迷子になると困るから、ほら」
「ん?」
手を差し出すと子供はその手を見て首を傾げた。意味が解らない、というような様子だった。
手を繋いだ事ないのかな?いや、さすが貴族だからといって、それはないか……ないよね?
なんて考えていたら、子供は小さな声で告げてきた。
「あ……すいません、お金持ってないんですよ。だから、お礼のしようがないと言いますか………」(マジかー、ここで金とか絶望的だろ)
「え?……って、違うよっ。ただ迷子にならないために手を繋ごうって思っただけだからっ!」
「そうなんですか?」
「そうだよ。だから、ほら」
「良かったっ。お兄さんが良い人で本当に良かったです!!」(紛らわしい言い方すんなよ、ホント)
泣きそうというか、哀しげに顔を歪めた子供は申し訳なさを全開にして小さな声で謝ってきた。それに僕は慌てて否定すると子供は安堵の様子を見せては少しばかり砕けたような口調で嬉しそうに手を重ねてきた。
笑いかけられた上に手を重ねる子供に先程までにささくれ立った心が凪いだ。
可愛いな。なんだろう、凄く癒やされるんだけど、この子。
「じゃあ、行こうか」
「はい、よろしくお願いしますっ」
宿直開けだけど、今日1日くらいこの子の面倒を付きっきりみるのも有りかな?
今日の予定を子供のために使おうと思った僕は子供に笑いかけながら言った。
「僕、ゼルトって言うんだ、君は?」
「明人って言います」
「そうなんだ、じゃっ、第5警備までよろしくね」
「はい、こちらこそっ」(イケメン優男で良い奴過ぎだろ、でも、手は繋がなくてよかろうに)
案内される事で迷子の心配を無くした子供は安堵から緩んだ表情のまま、僕の言葉にハキハキと答えた。
うん、子供はやっぱり元気なのが1番だね。子供の姿にまたもや癒やされる僕は子供の手を引いて第5警備隊へと戻って行った。
仕組みがよく解らない(泣)